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ウィリアムズ症候群
(Williams syndrome)

[同義語: Williams-Beuren Syndrome]

Gene Reviews著者: Colleen A Morris, MD, FACMG, FAAP
日本語訳者: 荒川航太、髙野亨子(信州大学医学部遺伝医学・予防医学)

Gene Reviews 最終更新日: 2017.3.23 日本語訳最終更新日: 2017.12.29

原文: Williams syndrome


要約

疾患の特徴 

ウィリアムズ症候群(Williams syndrome:WS)は心血管疾患(エラスチン動脈症、末梢性肺動脈狭窄、大動脈弁上狭窄、高血圧)や特徴的顔貌、結合織異常、知的障害(通常軽度)、特徴的な認知特性、独特な性格特性、成長障害、内分泌異常(高カルシウム血症、高カルシウム尿症、甲状腺機能低下症、早い思春期)を特徴とする。摂食障害は多くの場合、乳幼児期の成長障害につながる。筋緊張低下および関節過伸展は運動機能の発達に遅れをもたらす。
訳注:原文で"early puberty"と"precocious puberty"と2種類の記載があります。それぞれ「早い思春期」、「思春期早発症」と訳している。

診断・検査 

ウィリアムズ症候群には臨床診断基準があるが、診断にはエラスチン遺伝子(ELN)を含むウィリアムズ症候群クリティカル領域(Williams-Beuren syndrome critical region: WBSCR)の反復性の7q11.23隣接遺伝子欠失の検出を要する。この隣接遺伝子欠失は、蛍光 in situ ハイブリダイゼーション(FISH)法や欠失・重複解析で検出可能である。
訳注:反復性の欠失(recurrent deletion) とは特定の大きさの欠失(WSでは7q11.23における1.5~1.8 Mbの欠失)のことを示す。

臨床的マネジメント 

症状出現時の治療:
早期介入プログラム、特別教育プログラムおよび職業訓練は発達障害に対処する。

プログラムには言語聴覚療法、理学療法、作業療法、摂食療法、感覚統合療法を含む。心理学的、精神医学的評価と治療は、特に注意欠陥障害や不安障害に対し、個人に合わせた行動カウンセリングと薬物療法を提供する。大動脈弁上狭窄、肺動脈狭窄、僧房弁閉鎖不全や腎動脈狭窄に対し手術を要することがある。高カルシウム血症の治療には食事制限、経口コルチコステロイド剤、パミドロネートの静脈注射がある。腎石灰化や持続性の高カルシウム血症や高カルシウム尿症の治療のため腎臓専門医を受診する。高血圧、遠視、再発性中耳炎の治療は一般集団と変わらない。不正咬合は歯科矯正紹介を考慮すべきである。摂食障害のある乳児には摂食訓練が有用である。便秘は年齢問わず積極的に管理すべきである。早い思春期にはゴナドトロピン放出ホルモンアゴニストで治療をする可能性がある。

二次的合併症の予防:
関節拘縮予防や改善のための関節可動域訓練、外科的手術前に麻酔科受診と心電図のスクリーニングを行う。

サーベイランス:
1年毎に、視力検査、聴力検査、両上肢の血圧測定、随時尿のカルシウム/クレアチニン比の測定、尿検査などの医学的検査を受ける。2歳未満の小児は血清カルシウム値を4~6カ月毎に検査すべきである。甲状腺機能の評価は3歳まで毎年、その後は2年毎に行うべきである。更にすべての患者において以下の定期検査を行う、血清カルシウム値の測定は2年毎、エラスチン動脈症は最初の5年間は少なくとも年1回、その後は2~3年毎に検査を行う。腎臓と膀胱の超音波検査を10年毎に行う。成人では経口グルコース負荷試験、僧房弁逸脱、大動脈弁閉鎖不全、高血圧、QT延長や動脈狭窄に関する心臓検査、白内障の眼科的評価を定期的に実施する。

避けるべき薬物や環境:小児用マルチビタミン剤はビタミンDを含むため小児に対する投与は避ける。

遺伝カウンセリング 

ウィリアムズ症候群は常染色体優性遺伝形式で遺伝する。大部分が新生突然変異(de novo)であるが,親から子へ遺伝する症例もある。出生前診断は可能だが大部分の症例は家族内で1名だけのため、ほとんど行われず、低リスク妊娠に対する出生前の指標は存在しない。


診断

ウィリアムズ症候群(WS)には臨床診断基準がある[Preus 1984, Committee on Genetics 2001, Committee on Genetics 2002]。WSの表現型は様々であり、一つの臨床的特徴では診断を確定することは出来ない。

示唆される所見

ウィリアムズ症候群(WSは以下の所見を呈する場合疑われるべきである。

fig1

図1.ウィリアムズ症候群患者における星状虹彩パターン

fig2

2広い額、両側頭の狭小化、上眼瞼膨満、斜視、短い鼻、広い鼻尖、頬の平坦化、長い人中、厚い上下口唇の唇紅、広い口、不正咬合、小顎や大きな耳垂は年齢・人種問わずみられる。年齢は、次のとおりである。AとB:3歳 C:4歳 D:7歳 E:8歳 FとG:12歳 H:12歳 IとJ:16歳

fig3

図3.ウィリアムズ症候群の若年の小児では典型的に内眼角贅皮、ふっくらした頬、隙間の広い小さい歯がみられる。以下年齢 A:新生児 B:10カ月 CとD:21カ月

fig4

図4.成人の典型では長い顔と首を有し、なで肩で強調されるためとても痩せて見える。
写真は43歳のウィリアムズ症候群患者。

確定診断

ウィリアムズ症候群(WS)は7q11.23における1.5~1.8 Mbの微細欠失をヘテロ接合性に認めることにより診断される。本稿では、WSはchr7:72,744,454-74,142,513(NCBI Build GRCh37/hg19)領域における反復性の1.5~1.8 Mb の欠失を認めることと定義する。

注:この領域の非常に大きいまたは小さい欠失による表現型は臨床的にWSと異なることがある( 遺伝学的関連疾患の項を参照)。

反復性の1.5~1.8 Mbの欠失領域の中にはいくつかの興味の対象となる遺伝子(例ELN)が含まれるが、単一遺伝子変異によるWSは報告されていない(欠失領域の興味の対象となる遺伝子については 分子遺伝学の項を参照)。

シークエンスのコピー数を検出するゲノム検査にはマイクロアレイ染色体検査(chromosomal microarray: CMA)や蛍光 in situ ハイブリダイゼーション(FISH)法による欠失解析がある。注:WSは染色体G分染法やその他の従来の細胞遺伝学的な分染法では診断することができない

注:(1)大部分のWS患者は発達遅滞や知的障害や自閉スペクトラム症に関して、CMAを行い診断される。(2)反復性の欠失は初期のアレイで検出された(例BACアレイ)。

表1  WSで用いられるゲノム検査

欠失 ISCA ID 2 領域の位置3,4 検査法  検査感度
発端者 リスクのある親族
7q11.23における1.5~1.8 Mbのヘテロ接合性の欠失 ISCA- 37392 GRCh37/hg19 chr7:72,744,454-74,142,513 CMA 5 100% 100%
FISH 100% 100%6
  1. 欠失の詳細は分子遺伝学の項を参照
  2. ClinGen(以前のISCA Consortium)によるゲノムバリアントの標準的臨床的アノテーションおよび解釈
  3. ゲノム座標はClinGenで決定された7q11.23における反復性の微細欠失の最小欠失サイズを表す。欠失範囲の座標は検査会社で使用するアレイのデザインによって少し異なることがある。ゲノム位置から計算した微細欠失のサイズは切断点付近の分節重複の存在のため、予測された微細欠失のサイズと異なることがある。この領域の非常に大きいまたは小さい欠失による表現型は、反復性の7q11.23微細欠失の表現型と異なるかもしれない(遺伝学的関連疾患の項を参照)。
  4. 欠失領域の興味の対象となる遺伝子については 分子遺伝学の項を参照。
  5. オリゴヌクレオチドアレイやSNPジェノタイピングアレイを用いたマイクロアレイ染色体検査(CMA)。現在臨床に用いられるCMAのデザインは7q11.23をターゲットとする。
  6. FISH法はこの領域を標的として設計されたCMAやFISH法で診断されなかったWS患者の親族の診断方法として適切でない。

リスクのある親族の評価. FISH法は発端者のリスクのある親族の診断に用いることができる。両親検体の検査は、親族がWSの徴候や症状を呈する場合のみ適応となる(遺伝カウンセリングの項参照)。

検査の特徴.感度、特異度を含めた検査の特徴の情報はClinical Utility Gene Card [Koehler et al 2014]を参照。


臨床的特徴

臨床像

乳幼児期:WSの乳幼児はしばしば予定日超過で出生し他の家族と比べて出生体重が小さい。摂食障害による体重増加不良は一般的で、胃食道逆流(GER)、吸啜・嚥下障害、テクスチャ嫌悪(textural aversion)、嘔吐が見られる。長期にわたるcolic(4カ月を超える)はGER、慢性便秘や特発性高カルシウム血症に関連している可能性がある。最初の年によく起こる他の医学的問題は斜視、慢性中耳炎、直腸脱、臍・鼠径ヘルニアや心血管疾患がある[Morris et al 1988]。WSの乳幼児は低緊張であり典型的に関節の過伸展があり、その結果運動発達が遅れる。大抵2歳までに歩行を開始する。発語も遅れるが後に比較的長所となる。微細運動障害は年齢に関係なく認められる。

認知能力:知的障害は通常軽度で、WS患者の75%に認められる。認知特性は独特で、言語短期記憶や言語能力に優れるが、視空間認知能力は極端に低い [Mervis et al 2000]。その結果、WS小児では視空間認知能力を測定する検査と比較して、言語能力下位検査の得点が通常高い[Greer et al 1997, Mervis et al 1998]。IQの性差の報告はなく、小児期間を通じて安定している[Mervis et al 2012b]。

学業においてWS患者は比較的読字は得意であり、到達度には幅があるが成人では高校レベルまで読字が可能かもしれない。読字能力は言語関連能力よりむしろ認知能力に相関する [Levy et al 2003]。書字、描画、計算の困難は著しいが、多くのWSの成人では簡単な足し算は可能である。
適応行動は小児と成人でIQから期待されるより低く [Davies et al 1997Howlin & Udwin 2006Mervis & Pitts 2015]、WSの成人の自立能力に不利な影響を与える。

独特な性格・行動:WSの特徴的な性格特性には過度の友好性、社会的脱抑制(social disinhibition)、過剰な共感、注意力の問題や社交不安がない(non-social anxiety)ことがあげられる[Einfeld et al 2001, Doyle et al 2004, Morris 2010, Munoz et al 2010]。他によくみられる行動上の問題に感覚調整・感覚処理の困難、情動調整の困難、固執や特定恐怖(80%)がある[Dykens 2003Laws & Bishop 2004John & Mervis 2010Pitts et al 2016]。限定された興味や反復的行動などの自閉スペクトラム症の症状とオーバーラップする患者もいる [Klein-Tasman et al 2009]。他の障害児と比較しWS児は以下の尺度が高いと評価される:共感、社交性、対人関係志向、緊張(tenseness)、感受性および「視認性」(すぐに気づく)[Klein-Tasman & Mervis 2003]。小児では65%に注意欠陥障害、57%に不安障害(通常は特定恐怖)が認められる[Leyfer et al 2006]。不安症は通常生涯認められ、長期的研究によるとその有病率は80%である[Woodruff-Borden et al 2010]。

睡眠:睡眠障害は65%にみられ、睡眠潜時の増加や睡眠効率の低下がみられる[Goldman et al 2009Mason et al 2011]。夜間のメラトニン分泌の異常や欠如が最近の研究で報告された[Sniecinska-Cooper et al 2015Santoro et al 2016]。

心血管疾患:エラスチン動脈症は患者の75~80%に存在し、あらゆる動脈に影響を与えうる[Morris et al 1988, Pober et al 2008, Del Pasqua et al 2009, Collins et al 2010b]。

末梢性肺動脈狭窄(PPS)は乳幼児によくみられるが、通常時間の経過とともに改善する。

最もよく起こる動脈症は大動脈弁上狭窄(SVAS)で時間の経過と共に悪化し、特に生後5年まで悪化する可能性がある。最も狭窄が進行した病状は限局性砂時計型狭窄あるいはびまん性大動脈狭窄である。未治療の場合、動脈抵抗が上昇しその結果として、左心室圧の上昇、心肥大、心不全を引き起こす。胸部・腹部大動脈の広範囲な狭窄を含む腹部大動脈狭窄症(middle aortic syndrome)は稀にしか起こらないが、治療が難しいため再介入が必要になる可能性がある[Radford & Pohlner 2000]。

SVASとPPSを併せ持つ患者(両心室流出路狭窄)では両心室肥大と高血圧になる可能性があり、心筋虚血、不整脈および突然死のリスクが増加する[Pham et al 2009]。冠動脈狭窄症がWSの突然死に関与したという報告もある[Bird et al 1996]。293人のWS患者におけるコホートでの突然死の発生率は1/1000 patient-yearsで同年齢の非患者と比較し25から100倍高い[Wessel et al 2004]。補正QT延長は、WSの13.6%に報告されており、再分極異常のスクリーニングが推奨される[Collins et al 2010a]。

麻酔や鎮静はWS患者において心停止を含む有害事象の増加リスクと関係がある[Burch et al 2008Olsen et al 2014]。鎮静と麻酔のリスク評価と管理ガイドラインが開発されている [Burch et al 2008Matisoff et al 2015Latham et al 2016]。

WSの患者における高血圧の有病率は40~50%である。高血圧症はどの年齢にも起こり[Broder et al 1999, Giordano et al 2001, Eronen et al 2002, Bouchireb et al 2010]、腎動脈狭窄によって2次的に起こることがある[Deal et al 1992]。WS患者で血管硬化度の増加が報告されていて、降圧剤に反応する [Kozel et al 2014]。

僧房弁逸脱と大動脈弁狭窄は成人で報告されている[Morris et al 1990, Kececioglu et al 1993, Collins et al 2010a]。

腸間膜動脈の狭窄は腹痛を引き起こすことがある。

神経血管異常はほとんど報告されていないが、脳卒中になることがある[Ardinger et al 1994, Soper et al 1995, Cherniske et al 2004]。

目、耳、鼻、喉:鼻涙管閉塞、遠視(67%)、斜視(~50%)は WS患者でよく認められる[Kapp et al 1995Weber et al 2014]。白内障は成人で報告されている[Cherniske et al 2004]。

慢性中耳炎は患者の50%に認められる。音過敏はよくみられ(90%)、対照群よりも20 db小さい音に不快感を訴えた[Gothelf et al 2006]。特定の音に対する特定恐怖症が多数報告されている[Levitin et al 2005]。

進行性感音難聴がみられ、軽度から中等度の難聴が小児の63%、成人の92%に認められた[Gothelf et al 2006, Marler et al 2010]。耳垢の過剰蓄積もあるが、軽度から中等度の高音域感音難聴が成人でよくみられる[Cherniske et al 2004]。

大部分の患者は嗄声や低い声で、エラスチン欠乏による二次的な声帯の異常がおそらく原因である[Vaux et al 2003]。

歯科的問題は、小歯症、エナメル質形成不全、および不正咬合がある[Hertzberg et al 1994]。一つもしくはそれ以上の永久歯欠損がWS患者の40%でみられる[Axelsson et al 2003]。

胃腸障害:WSの患者は聴覚と触覚の感覚防衛(sensory defensiveness)を有する[Van Borsel et al 1997]。食物テクスチャ困難が乳児期の母乳やミルクから固形食への移行を妨げることがある。

慢性的な腹痛はWSの小児や成人でよくある訴えで、原因として考えられるのは胃食道逆流、食道裂孔ヘルニア、消化性潰瘍、胆石症、憩室炎、虚血性腸疾患、慢性便秘や不安の身体化がある。憩室炎の有病率は青年期[Stagi et al 2010]から大人[Partsch et al 2005]にかけて増大する。便秘の合併症として直腸脱、痔、腸管穿孔の可能性がある。

高カルシウム血症は易刺激性、嘔吐、便秘、および筋痙攣を起こすことがあり、幼児期によくみられるが、成人で再発することがある[Morris et al 1990, Pober et al 1993]。

尿路系異常:頻尿と遺尿(50%)はWSの小児でよく認められる。WSの50%に腎動脈狭窄、10%に尿路系の構造異常、50%に膀胱憩室、腎石灰化は5%未満である[Pober et al 1993Pankau et al 1996Sforzini et al 2002Sammour et al 2006Sammour et al, 2014]。膀胱容量は減少し、排尿筋の過活動が60%でみられる[Sammour et al 2006]。平均的に日中の排尿調節は4歳、夜間の排尿調節は10歳までに50%で獲得される。成人のおよそ3%に夜尿が認められる [von Gontard et al 2016]。

筋骨格・神経学的問題:幼い小児では筋緊張低下と関節弛緩により、安定性を得るために異常な代償性姿勢をとる。WSの年長小児と成人は典型的に筋緊張亢進や深部腱反射亢進を呈する。徐々にアキレス腱やハムストリングが拘縮し、その結果、青年期までに硬直しぎこちない歩行や脊柱前弯や後弯になる。側弯症は18%にみられる [Morris et al 2010]。10%に先天性橈尺骨癒合症がみられる [Morris & Carey 1990]。微細運動機能障害があり、年齢を問わず道具の使用や書字が苦手である。

成人における小脳症状には運動失調、測定異常、振戦がある[Pober & Morris 2007]。

神経画像:脳容積は小さく、特に頭頂部と後頭部の灰白質容積の減少が認められ、脳回の複雑さが増えている所見が脳MRI検査で認められる[Jackowski et al 2009Eisenberg et al 2010]。後頭蓋窩の大きさが減少しているが、小脳の大きさが保たれていることが、一部の患者にキアリ1型奇形がみられることの原因である可能性がある[Pober & Filiano 1995, Mercuri et al 1997]。

成長:WSの患者は他の家族と比べ身長が低い。WSの固有の成長曲線が参照可能である[Morris et al 1988, Saul et al 1988, Martin et al 2007]。乳幼児の70%に体重増加不良がみられる。成長パターンの特徴は、出生前の発育不全、体重増加不良、生後4年までの身長増加不良、小児期は健常児の75%の成長率、短い思春期の成長スパートなどがある。WS成人の平均身長は3パーセンタイル以下である。肥満は年長の小児と成人でよくみられる問題である [Cherniske et al 2004]。

思春期は早く発来し、18%に中枢性思春期早発症を認める [Partsch et al 2002]。ゴナドトロピン放出ホルモンアナログによるホルモン抑制は、女児において早い思春期、思春期早発症いずれにおいても良好な耐容性を示し、治療を受けた女児は受けていないWS患者より身長が高かった [Spielmann et al 2015]。

高カルシウム血症:特発性高カルシウム血症は15~50%に認められ、最初の2年間はほとんどの場合症候性(易刺激性、嘔吐、便秘)である [Martin et al 1984Morris et al 1988Kim et al 2016]。高カルシウム血症は脱水、高カルシウム尿症と腎石灰化と関係する。すべての年齢層で血清カルシウム値の中央値が対照群と比較し高い [Sindhar et al 2016]。WSの高カルシウム血症の原因は不明である[Stagi et al 2016]。

内分泌系異常:内分泌系の異常は甲状腺機能低下症(10%)、早い思春期(思春期早発症ではない)(50%)がある[Kim et al 2016]。潜在性甲状腺機能低下症(TSH上昇、T3/T4正常)は31%でみられ、成人より小児で頻回に発症する[Palacios-Verdú et al 2015]。耐糖能異常は青年の26% [Stagi et al 2014] と若年成人の63%にみられる [Masserini et al 2013]。経口ブドウ糖負荷試験の異常および糖尿病の発生頻度の増加がWSの成人でみられる[Cherniske et al 2004]。

その他

遺伝子型と臨床型の関連

7q11.23の反復性のWBSCRの欠失は1.55 Mb(90~95%のWS患者)または1.84 Mb(5~10%のWS患者)である[Bayés et al 2003Palacios-Verdú et al 2015]。

WBSCR内の短い欠失はその程度によって様々な表現型を示す。

WBSCR欠失は父または母由来かもしれない[Ewart et al 1993aDutly & Schinzel 1996Urbán et al 1996]。表現型の違いは両親由来に関係しないという報告もあるが[Wu et al 1998]、小頭症は母由来WBSCRの欠失に相関しているという報告もある[Del Campo et al 2006]。

浸透率 

浸透率は100%。表現型の特徴の発現は様々である。

病名
WSの最初の記述は不完全であった、それは患者の主訴と医療者の専門分野を反映したものであったからである。すなわち、腎臓専門医や内分泌専門医は「特発性乳児高カルシウム血症」(IHC)と記載し、心臓専門医は「大動脈弁上狭窄症候群」(SASS)と報告していた。
初期の報告書ではまた、伝説のエルフに似ていると考えられた特異顔貌について言及していた。そして一時の間「ウィリアムズ妖精顔貌症候群」が使われていた。
Williams et al [1961]Beuren et al [1962]の報告の後、米国ではWilliams症候群、欧州ではWilliams-Beuren症候群と呼ばれるようになった。

頻度 

ノルウェーでのWS研究では7500人に1人と報告がある[Stromme et al 2002]。


遺伝学的関連疾患

常染色体優性皮膚弛緩症(Autosomal dominant cutis laxaは、弾性線維の構造に優性ネガティブ効果を引き起こすELN遺伝子のフレームシフト病的変異によって起こる[Tassabehji et al 1998, Zhang et al 1999, Sugitani et al 2012]。

常染色体劣性皮膚弛緩症(Autosomal recessive cutis laxaは、ELN遺伝子エクソン12におけるホモ接合性の劣性病的変異を持つシリア人家系で報告されている [Mégarbané et al 2009]。

常染色体優性大動脈弁上狭窄症(SVASELN遺伝子の変異または遺伝子内欠失によって引き起こされる[Ewart et al 1993b, Olson et al 1993, Morris & Mervis 2000, Micale et al 2010]。常染色体優性SVASの患者は、一般的に結合織異常のみを有し、WSを呈さない。

常染色体優性"SVAS plus"ELN遺伝子と他の隣接遺伝子を含むWBSCR内の欠失によって起こる。これら短い欠失を有する家系では、古典的WSよりもむしろSVASが認められる。しかし、視空間認知能力の低下[Morris & Mervis 2000, Morris et al 2003]を含むWS表現型の特徴をいくらか呈する。

7q11.23重複症候群(ウィリアムズ症候群領域重複症候群)はWSで最も典型的に欠失する1.5 Mbの領域の重複によって起こる。典型的な頭蓋顔面の特徴は、大頭、突出した広い額、直線状の眉、深い眼球、長い睫毛、低くぶら下がったまたは低く付着した鼻柱、短い人中、高口蓋、軽度の顔面非対称、薄い上口唇の唇紅、過剰に折れ込んだ耳輪および小顎がある。最も重要な臨床所見は、WS患者で相対的に優れている言語能力と比較すると、音韻障害を含む重篤な表出言語の障害である。多くは、ADHD(注意欠陥多動症)や不安障害、典型的には分離不安や社交不安を有する。多くの小児は片足立ちと継ぎ足歩行の困難を呈する[Somerville et al 2005Berg et al 2007Van der Aa et al 2009Dixit et al 2013Morris et al 2015]。大動脈拡張は46.2%で報告されている[Morris et al 2015]。


鑑別診断

ウィリアムズ症候群(WSは発達遅滞、注意欠陥多動症、低身長、特徴的顔貌、およびまたは先天性心疾患を特徴とする他の症候群と鑑別すべきである。これらには、ヌーナン症候群、22q11.2欠失症候群(DiGeorge症候群)、スミス・マゲニス症候群、歌舞伎症候群、および胎児性アルコール症候群などがある。

大動脈弁上狭窄症(SVAS)を有す患者では、WSもしくは常染色体優性SVAS (OMIM 185500)のどちらが適切な診断か決定するために評価されるべきである。

表2  ウィリアムズ症候群と鑑別診断として考慮する疾患

疾患 遺伝子 遺伝形式 臨床症状
最も一般的な
先天性心疾患
特徴的な顔貌 その他の症状
ウィリアムズ症候群 脚注1を参照   AD 大動脈弁上狭窄
  • 星状・レース状虹彩
  • 上眼瞼膨満
  • 広い口
  • Cupid's bowの欠如
  • 厚い下口唇
  • 大きな耳垂
  • 高カルシウム血症
  • 嗄声
  • 過度の友好性
ヌーナン症候群 PTPN11
SOS1 RAF1
RIT1
KRAS
NRAS
BRAF
MAP2K1
AD 肺動脈弁狭窄
  • 眼間開離
  • 上眼瞼膨満・眼瞼下 
     垂
  • 深い人中の溝
  • 上口唇の唇紅の先端の輪郭が明瞭
  • 低位で後方回転した耳介
  • 太い頸・翼状頸
  • 胸郭変形
  • 乳頭間距離の開大
  • リンパ管形成異常
22q11.2欠失症候群 脚注2を参照 AD 円錐動脈管奇形
  • 腫れぼったい瞼
  • 鼻翼低形成
  • 高い鼻根部
  • 小さな耳
  • 低カルシウム血症
  • 免疫不全
  • 口蓋の異常
スミス・マゲニス症候群 RAI1 3 脚注3を参照 中隔欠損
  • 深い眼球
  • 虹彩異形成
  • 眼瞼裂斜上
  • 短い人中
  • 下向きの上口唇
  • 自傷行為
  • 嗄声
歌舞伎症候群 KMT2D AD 4 大動脈縮窄症
  • 長い眼瞼裂
  • 下眼瞼外反
  • 大きな耳
  • 口蓋裂
  • 脊椎奇形
KDM6A XL 5
胎児性アルコール症候群 NA 6 中隔欠損
  • 短い眼瞼裂
  • 平坦な人中
  • 薄い上口唇の唇紅
  • 小さな耳
  • 脱抑制行動

AD:常染色体優性、XL:X連鎖性、NA:該当しない

  1. ウィリアムズ症候群はエラスチン遺伝子 (ELN)を含むウィリアムズ症候群クリティカル領域(WBSCR)の隣接遺伝子欠失により起こる。
  2. 22q11.2欠失症候群はDiGeorge chromosome region (DGCR)内の遺伝子欠失により起こる。約93%はde novoの欠失で、7%は親由来である。
  3. スミス・マゲニス症候群は17p11.2にあるRAI1遺伝子の欠失または変異によって起こる。実質的にすべてde novoの発症である。
  4. KMT2D遺伝子変異による歌舞伎症候群は常染色体優性遺伝形式である。
  5. 現時点でKDM6A遺伝子の病的変異による歌舞伎症候群は6例しか報告されていない。すべて証明されたまたは見かけ上のde novo変異である。X連鎖性遺伝は理論上可能性があるが、KDM6A遺伝子の病的変異による歌舞伎症候群の家族例は報告されていない。
  6. 胎児性アルコール症候群は出生前のアルコール曝露により起こる。

臨床的マネジメント

最初の診断時における評価

ウィリアムズ症候群(WSと診断された患者の疾患の程度とニーズを確立し医学的管理に導くために、以下の評価が推奨される。[Committee on Genetics 2001, Committee on Genetics 2002]

病変に対する治療

認知・行動:発達障害は、早期介入プログラム、特別教育プログラム、および職業訓練によって対処されるべきである。推奨される治療法は、言語聴覚療法、理学療法、作業療法、特に感覚統合が含まれる。Hippotherapy(乗馬を使った言語聴覚療法、理学療法や作業療法)を検討。

心理評価、睡眠ポリグラフ、および精神医学的評価は、個人に合わせた治療の指針にすべきである。

心血管疾患:SVASの外科的修復は20~30%で必要になる[Kececioglu et al 1993, Bruno et al 2003, Collins et al 2010b]。僧房弁閉鎖不全や腎動脈狭窄の外科的治療が必要になることがある。

高血圧は通常、薬物治療する。カルシウム拮抗剤が奏功したという一連の報告がある[Bouchireb et al 2010]。高血圧の治療は血管硬化度の改善もきたす [Kozel et al 2014]。生涯にわたり、WS治療に精通した心臓専門医による心血管系の検診が推奨される。

高カルシウム血症:高カルシウム血症の管理は以下

・内分泌専門医や腎臓専門医への紹介が、持続性の高カルシウム血症や高カルシウム尿症、腎石灰化の治療のために推奨される。

目、耳、鼻、喉:遠視は矯正レンズで処置し、斜視は片眼のアイパッチ装着または手術で治療する。鼻涙管閉塞は一般的な方法で治療する。

再発性中耳炎は、鼓膜チューブで治療することがある。

音過敏は騒音レベルの上昇が予測される場合、防音保護具を装着することで対処することができる。

歯の手入れは、毎日のブラッシングやフロッシングの補助が必要な場合がある。歯のクリーニングの頻度は、青年および成人では4カ月毎に増やすべきである。矯正歯科の紹介は、不正咬合の治療のために考慮されるべきである。

胃腸:乳幼児期における摂食問題と小児・成人における腹痛の治療は原因によって異なる(例:GER、高カルシウム血症、食道裂孔ヘルニア、憩室炎など)。乳幼児にはしばしば摂食療法が有用である。

便秘は早期発症憩室症・憩室炎を防ぐために、すべての年齢層で積極的に管理されるべきである。治療は通常、食事で水分量や繊維を増やし、続いて浸透圧性緩下剤を使用する。激しい腹痛では憩室炎や腸穿孔を起こしている可能性があり、WSではそれらは若年で起こる可能性がある。

尿路系異常:有熱性の尿路感染症を発症した患者では、治療方針決定のため排尿時膀胱尿道造影等の下部尿路の評価をおそらく要する。

内分泌:早い思春期には、ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニストで治療することがある[Partsch et al 2002, Pober 2010]。甲状腺機能低下症は経口サイロキシンで治療する。潜在性甲状腺機能低下症は通常モニターするが、治療を要しない。

二次合併症の予防

以下に示す

経過観察

表 3.
ウィリアムズ症候群のサーベイランス

間隔・年齢 検査・測定
乳幼児
  • 2歳までは4~6カ月毎の血清カルシウム測定
  • 3歳まで毎年甲状腺機能検査
毎年
(すべての年齢1
  • 医学的評価
  • 視力検査で屈折異常や斜視をモニターする
  • 聴力評価
  • 両腕の血圧測定
  • 随時尿のカルシウム/クレアチニン比の測定および尿検査
  • 生後5年は少なくとも毎年心臓の評価、その後は2∼3年毎
2年毎
  • 血清カルシウム濃度
  • 甲状腺機能とTSH値
10年毎
  • 腎臓と膀胱の超音波検査
成人
  • 20歳から糖尿病の評価を経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)にて開始する2
  • 僧房弁逸脱、大動脈弁閉鎖不全、高血圧、QT延長と動脈狭窄の評価
  • 白内障の評価
  1. 特記すべきことがない場合
  2. もし正常であれば、OGTTは5年毎に検査すべきである

回避すべき薬物や環境

全ての小児用のマルチビタミン剤はビタミンDを含むためWSの小児はマルチビタミン剤を摂取すべきではない。

リスクのある親族の検査

リスクのある親族の検査は遺伝カウンセリングの項を参照のこと。

研究中の治療法

疾患や状態に対する広い領域での臨床研究の情報はClinicalTrials.govにアクセスし検索する。

注:この疾患に対する臨床試験は存在しない可能性がある。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

ウィリアムズ症候群(WS)は常染色体優性遺伝形式であり、ほとんどの欠失は de novoであるが、親から子へ遺伝したまれな例が報告されている [Morris et al 1993Sadler et al 1993Mulik et al 2004]。

患者家族のリスク

発端者の両親

発端者の同胞

発端者の子

他の家族

ほかの血縁者のリスクは発端者両親の遺伝学的状態によって決まる。発端者の片方の親が罹患している場合、その親の親族はWSのリスクがある。

遺伝カウンセリングに関連した問題.

家族計画

DNAバンキング 

DNAバンクは主に白血球から調製したDNAを将来の使用のために保存しておくものである。検査法や遺伝子,対立遺伝子のバリアントに対する私たちの理解が進歩するため,罹患者のDNAを保存することは考慮すべきかもしれない。

出生前診断

ウィリアムズ症候群のリスク増加が知られている妊娠:発端者で見つかった7q11.23微細欠失を検出するゲノム検査を用いた出生前検査が次のような状況で提供されることがある。

ウィリアムズ症候群のリスク増加が知られていない妊娠:ウィリアムズ症候群のリスク増加が知られていない妊娠において行われるCMAは反復性の微細欠失を検出することができる。低リスク妊娠に対する出生前の指標は存在しない。

注:出生前診断の結果は確実に表現型を予測することができない。

WSのリスク増加が知られていない妊娠に対する出生前診断は可能であるが、大部分の症例は家族内で1名だけ罹患のため、めったに行われない。低リスク妊娠に対する出生前の指標は存在しない。

着床前診断 はCMAで同定された7q11.23微細欠失をもつ家系における一つの選択肢となる可能性がある。


更新履歴

  1. Gene Reviews著者: Colleen A Morris, MD, FACMG, FAAP
    日本語訳者: 荒川航太、髙野亨子 (信州大学医学部遺伝医学・予防医学)
    Gene Reviews 最終更新日: 2017.3.23 日本語訳最終更新日: 2017.12.29 in present)

原文: Williams syndrome

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