Waardenburg症候群1型
(Waardenburg Syndrome Type 1)

Gene Reviews著者: Jeff Mark Milunsky, MD.
日本語訳者: 佐藤康守(たい矯正歯科)、櫻井晃洋(札幌医科大学医学部遺伝医学)

GeneReviews最終更新日: 2022.10.20.  日本語訳最終更新日: 2023.1.8.

原文: Waardenburg Syndrome Type 1


要約

 

疾患の特徴 

Waardenburg症候群Ⅰ型(WS1)は、先天性感音性難聴、虹彩・毛髪・皮膚の色素異常、ならびに内眼角開離(内眼角の外方への転位)を呈する聴覚-色素疾患である。WS1における難聴は、罹患者の約60%にみられるが、これは先天性で、通常は非進行性、片側性のことも両側性のこともあり、感音性である。WS1で最も一般的にみられる難聴は、両側性で極度(>100dB)というパターンである。WS1罹患者の大部分に、white forelock(訳注:前頭部を中心に、ごく一部の領域にまとまった形で白毛が生じる状態をいう)ないし30歳未満の若年性白髪化がみられる。典型的なwhite forelockが罹患者の約45%にみられ、WS1でみられる毛髪色素異常としては最も一般的なものである。虹彩については、全部性虹彩異色症、部分性虹彩異色症、あるいは低形成性ないし鮮輝性青色虹彩などがある。先天性皮膚白斑が顔、体幹、四肢にしばしば現れる。

診断・検査

WS1の診断は、大多数の罹患者については、感音性難聴、毛髪や眼の色素変化、W指数を算出して確定する内眼角開離、特異的顔面所見といった臨床的基準に関する診査をもとに下される。臨床所見だけで確定が難しいときは、分子遺伝学的検査でPAX3の病的バリアントのヘテロ接合を同定することで診断が確定する。

臨床的マネジメント 

症候に対する治療:
難聴に対する対応は、重症度によって異なる。WS1罹患者には人工内耳手術が有効とされている。

リスクを有する血縁者の評価:
家系内にあるPAX3病的バリアントの内容がわかっている場合は、リスクを有する血縁者に対して分子遺伝学的検査を行うことで、難聴のリスクをもつ人の早期スクリーニングにつながる。

妊娠管理:
WS1に伴って神経管欠損症のリスクが高まる可能性があるため、子にWS1が生じるリスクが高い妊婦に対しては、葉酸の補給が推奨される。

遺伝カウンセリング

Waardenburg症候群(WS1)は、常染色体顕性の遺伝形式をとる。発端者の大多数は、罹患者である片親からの継承例である。少数の発端者については、親は非罹患者で、de novoの病的バリアントに起因するWS1と推定される。WS1罹患者の子が、病的バリアントを継承する可能性は50%である。家系内に存在するWS1の病的バリアントが同定されている場合は、臨床検査機関でこの疾患/遺伝子の検査ないしカスタム型の出生前検査を行うといった形で、高リスクの妊娠に備えた出生前検査を行うことが可能である。この検査を行うことで、PAX3の病的バリアントが胎児に継承されているか否かについては判定可能であるが、臨床症候の内容やその重症度までは把握することができない。


診断

本疾患を示唆する所見

以下に示す大基準・小基準のいくつかを有する罹患者については、Waardenburg症候群Ⅰ型(WS1)を疑う必要がある。

大基準

小基準

注 ― W指数W指数の算出に必要な計測値(mm単位)は以下の通り。
内眼角間距離(a),瞳孔間距離(b),外眼角間距離(c)。
Xの算出 X=(2a-[0.2119c+3.909])/c
Yの算出 Y=(2a-[0.2479b+3.909])/b
Wの算出 W=X+Y+a/b
W指数算出用ツール(xlsx)のダウンロードはこちらをクリック。
Minamiら[2019]は、W指数1.95超を基準として規定したWS1罹患者の日本人コホートにおいて、その61%が、PAX3にではなくMITFSOX10EDNRBに病的バリアントを有していたことを報告し、W指数1.95超という基準が必ずしもすべての民族に共通して適用可能なものとは言えないことを示唆している。

診断の確定

Waardenburgコンソーシアム[Farrerら1992]の提唱するところによると、発端者におけるWS1の臨床診断は、大基準2つ、もしくは大基準1つと小基準2つ(「本疾患を示唆する所見」の項を参照)を満たすことをもって確定する。
臨床所見だけでは確定にまで至らないという場合は、分子遺伝学的検査(表1参照)でPAX3の病的バリアント(pathogenicもしくはlikely pathogenicのバリアント)のヘテロ接合を同定することで確認がなされる。
注:(1)アメリカ臨床遺伝ゲノム学会(ACMG)/分子病理学会(AMG)のバリアントの解釈に関するガイドラインによると、「pathogenic」のバリアントと「likely pathogenic」のバリアントとは臨床の場では同義であり、ともに診断に供しうるものであると同時に、臨床的な意思決定に使用しうるものとされている[Richardsら2015]。本セクションで「病的バリアント」と言うとき、それは、あらゆるlikely pathogenicまでを包含するものと理解されたい。
(2)PAX3に意義不明のバリアントのヘテロ接合が同定された場合、それは本疾患の診断を確定させるものでも否定するものでもない。

分子遺伝学的検査としては、表現型に従って、遺伝子標的型検査(単一遺伝子検査,マルチ遺伝子パネル)、ならびに網羅的ゲノム検査(エクソームシーケンシング,ゲノムシーケンシング)を用いることが考えられる。

遺伝子標的型検査の場合、臨床医の側で関与している遺伝子の目星をつけておく必要があるが、ゲノム検査の場合、その必要はない。
本疾患を示唆する所見」にある特徴的所見を複数有する例については、遺伝子標的型検査(「方法1」参照)で診断がつく可能性が高く、一方、表現型の上からはその他数多くある難聴を伴う遺伝性疾患と鑑別しにくいような場合は、ゲノム検査(「方法2」参照)で診断がつく可能性が高い。

方法1

単一遺伝子検査

最初に、遺伝子内の小欠失/挿入やミスセンス・ナンセンス・スプライス部位バリアントを検出するためのPAX3の配列解析を行う。
注:使用する配列解析の手法によっては、単一エクソン、複数エクソン、遺伝子全体の欠失/重複といったものが検出されないことがある。用いた配列解析の手法でバリアントが全く検出されなかった場合、次のステップとして、エクソン単位あるいは遺伝子全体の欠失や重複を検出するための遺伝子標的型欠失/重複解析を行う。

マルチ遺伝子パネル

現況の表現型と直接関係のない遺伝子の意義不明バリアントや病的バリアントの検出を抑えつつ、疾患の遺伝的原因を解明するという目的を達成する上では、PAXその他の関連遺伝子(「鑑別診断」の項を参照)を含むマルチ遺伝子パネル検査も考慮に値する。

注:(1)パネルに含められる遺伝子の内容、ならびに個々の遺伝子について行う検査の診断上の感度については、検査機関によってばらつきがみられ、また、経時的に変更されていく可能性がある。
(2)マルチ遺伝子パネルによっては、このGeneReviewで取り上げている状況と無関係な遺伝子が含まれることがある。
(3)検査機関によっては、パネルの内容が、その機関の定めた定型のパネルであったり、表現型ごとに定めたものの中で臨床医の指定した遺伝子を含む定型のエクソーム解析であったりすることがある。
(4)ある1つのパネルに対して適用される手法には、配列解析、欠失/重複解析、ないしその他の非配列ベースの検査などがある。
マルチ遺伝子パネル検査の基礎的情報についてはここをクリック。遺伝子検査をオーダーする臨床医に対する、より詳細な情報についてはここをクリック。

方法2

網羅的ゲノム検査

網羅的ゲノム検査の場合、どの遺伝子の関与が疑われるか臨床医の側で目星をつけておく必要はない。エクソームシーケンシングが広く用いられているが、ゲノムシーケンシングを用いることも可能である。
網羅的ゲノム検査の基礎的情報についてはここをクリック。ゲノム検査をオーダーする臨床医に対する、より詳細な情報についてはここをクリック。

表1:Waardenburg症候群Ⅰ型で用いられる分子遺伝学的検査

遺伝子1 方法 その手法で病的バリアント2が検出される発端者の割合
PAX3 配列解析3 90%超4
遺伝子標的型欠失/重複解析5 6%近く6
不明 非適応 4%未満7
  1. 染色体上の座位ならびにタンパク質に関しては、表A「Waardenburg症候群Ⅰ型の遺伝子とデータベース」を参照。
  2. 本遺伝子において検出されているバリアントに関する情報については、「分子遺伝学」の項を参照。
  3. 配列解析を行うことで、benign、likely benign、意義不明、likely pathogenic、pathogenicといったバリアントが検出される。バリアントの種類としては、遺伝子内の欠失や挿入が検出される。ミスセンス・ナンセンス・スプライス部位バリアントなどがあるが、通常、エクソン単位ないし遺伝子全体の欠失や重複については検出されない。配列解析の結果の解釈に際して留意すべき事項についてはこちらをクリック。
  4. Pingaultら[2010],Milunsky[2011,未公表データ],Wildhardtら[2013]
  5. 遺伝子標的型欠失/重複解析では、遺伝子内の欠失や重複が検出される。具体的手法としては、定量的PCR、ロングレンジPCR、MLPA法、あるいは単一エクソンの欠失/重複の検出を目的に設計された遺伝子標的型マイクロアレイなど、さまざまなものがある。
  6. Milunskyら[2007]
  7. 注:重複については、これまでに報告例はない。
  8. Waardenburg症候群Ⅰ型(WS1)の臨床診断を受けたものの中で、MITFの病的バリアントのヘテロ接合が同定されたものが1例[Liら2020]、同じくWS1で、EDNRBの両アレルに病的バリアントが同定されたものが1例[Morimotoら2018]存在する。

臨床的特徴

臨床像

Waardenburg症候群Ⅰ型(WS1)の表現型は、同一家系内にあってもばらつきがみられる。Liuら[1995]は、WS1罹患者60人、ならびに文献で報告された罹患者210人について、WS1でみられる臨床所見の出現割合の概略を報告している(表2参照)。Newton[2002]は、Waardenburg症候群の臨床所見に関する総括を行っており、Tamayoら[2008]は、コロンビアにおけるWaardenburg症候群のスクリーニングプログラムについて述べている。彼らはその中で、各臨床症候の出現割合について詳述しているが、いずれもLiuら[1995]の報告に近い数字を報告している。ただ、Tamayoらの報告については、95人の罹患者全員が難聴を有しており、試料がコロンビアで施設に入所している集団であることから、確認バイアスの存在が明らかである。

表2:Waardenburg症候群Ⅰ型:代表的臨床症候の出現頻度

臨床所見 罹患者に占める割合
感音性難聴 47%-58%
虹彩異色 15%-31%
低形成性青色虹彩 15%-18%
White forelock 43%-48%
早発性白髪 23%-38%
皮膚白斑 22%-36%
高い鼻根 52%-100%
眉毛内側の広がり 63%-73%

Liuら[1995]、Pardonoら[2003]、Tamayoら[2008]の報告に基づいて作成

難聴
WS1にみられる難聴は、先天性で、ふつうは非進行性、片側性・両側性の両方がみられ、感音性である。WS1で最も多くみられるタイプは、両側性の極度難聴(>100dB)である。
難聴の罹患側については、家系間でも家系内でもばらつきが存在する。
難聴を伴うWS1罹患者では、側頭骨の種々の異常が同定されている[Maddenら2003]。側頭骨の異常としては、前庭水管や前庭上部の拡大、内耳孔の狭窄、蝸牛軸の低形成がある。

毛髪の色
典型的なwhite forelockが、WS1でみられる髪の色素異常として最も一般的なものである。これは出生時からみられることもあれば、その後に現れることもあり、典型的にはティーン世代で出現する。White forelockは、その後、経時的に正常色になる。White forelockは、通常、正中線上に現れるが、それ以外の場所に出現することもある。WS1が疑われる罹患者でwhite forelockがみられない罹患者を診る場合は、毛染めをしていないか尋ねることが必要である。赤や黒のforelockの報告もみられる。WS1罹患者の大多数に、white forelockか30歳未満における早発性白髪のどちらかがみられる[Farrerら1992]。

眉毛や睫毛に低色素が出現することもある。

眼所見
WS1罹患者には、眼のさまざまな色素所見もみられる。最も多くみられるのは、全部性ないし部分性の虹彩異色、あるいは低形成性ないし鮮輝性の青色虹彩である。虹彩や脈絡膜の低色素(瀰漫性より扇形が多い)が報告されている[Shieldsら2013]。視力については一般集団との差はみられない。

皮膚の色素変化
WS1では、顔、体幹、四肢に先天性の皮膚白斑が多くみられる。こうした低色素領域の周囲には、しばしば高色素の縁どりがあり、white forelock部にこうしたものがみられることもある。

時にみられる所見
時にみられる所見として複数の家系で確認されているものは以下の通りである(例が少なすぎて本疾患における出現頻度を示すことは困難である)。

耳の病理
PAX3の病的バリアントを伴うWS1の1罹患者について、耳の病理が報告されている[Merchantら2001]。その内容は、メラニン細胞の遊走ないし機能の障害により、蝸牛管血管条の発達障害が生じ、感音性難聴に至るとするものである。

遺伝型-表現型相関

PAX3
PAX3における遺伝型と表現型の相関については、Waardenburg症候群Ⅲ型の原因となるp.Asn47Hisの病的バリアント[Hothら1993]、ならびに、頭蓋顔面-聾-手症候群(craniofacial-deafness-hand syndrome)で報告されているp.Asn47Lysの病的バリアント[Asherら1996]を除き、まだよくわかっていない。DeStefanoら[1998]は、WS1で生じる色素異常について、ペアードドメインのミスセンスバリアントや欠失といったものよりも、ホメオドメインの欠失につながる病的バリアントのほうに多くみられると報告している。WS1にみられる難聴については、遺伝型-表現型相関は見出されていない。

PAX3の部分欠失ないし全欠失
PAX3の全欠失・部分欠失に伴って現れる症状は、重症度の点で、PAX3内の微小な病的バリアントでみられる臨床的スペクトラムと、はっきりした差はないように思われる[Milunskyら2007]。

PAX3MITFの二重ヘテロ接合WS1Waardenburg症候群Ⅱ型[WS2]の表現型の合併)
Yangら[2013]は、片親がPAX3の病的バリアントのヘテロ接合を有するWS1、もう片親がMITFの病的バリアントのヘテロ接合を有するWS2(「鑑別診断」の項を参照)という1家系を報告している。その間に生まれた1人の子は、両方のバリアントをヘテロで有しており、両親より明らかに強い色素所見(white forelock、白い眉毛/睫毛、皮膚の白斑)を示したという。

浸透率

浸透率はほぼ100%と考えられる。

発生頻度

人口ベースでの分子解析がなされていない現状にあっては、WS1の発生頻度の数字を示すことは困難であるが、一応、出現頻度は20,000人に1人から40,000人に1人とされている。これは先天性難聴児の3%に相当する数字である[Tamayoら2008]。


遺伝学的に関連のある疾患(同一アレル疾患)

PAX3の生殖細胞系列病的バリアントによって生じるその他の表現型を、表3に要約して示した。

表3:PAX3の同一アレル疾患

疾患名 臨床的特徴/コメント
Waardenburg症候群Ⅲ型
(WS3)(OMIM 148820)
WS1の症候に加え、四肢の筋の低形成ないし拘縮、手根骨の癒合、合指趾といったものがみられる1
頭蓋顔面-聾-手症候群
(CDHS)(OMIM 122880)
CDHS罹患者にPAX3の病的バリアントのヘテロ接合が同定されている。CDHSは、平坦な側貌、眼間開離、スリット状の鼻孔を伴う鼻の低形成、感音性難聴、小さな上顎、鼻骨の無形成ないし低形成、手の尺側偏位を特徴とする。著者自身は、CDHSについて、遺伝的異質性がある可能性ありと考えている。
  1. 血族結婚のトルコ人家系で、両親ともにPAX3のp.Tyr90Hisの病的バリアントをヘテロで有するWS1で、その子どもがPAX3のp.Tyr90Hisの病的バリアントのホモ接合をもつWS3であった例が報告されている[Wollnikら2003]。

鑑別診断

Waardenburg症候群Ⅰ型(WS1)は、他の原因で起こる先天性非進行性感音性難聴との鑑別(「遺伝性難聴・聾概説」のGeneReviewを参照)、ならびにWaardenburg症候群の他の型との鑑別が必要である。

Waardenburg症候群Ⅱ型(WS2
WS1では内眼角の外側転位(内眼角開離)がみられ、この点でWS2と鑑別可能である。その家系の全員のW指数の平均値が1.95未満であれば、診断はWS2ということになる。WS2では、感音性難聴と虹彩異色が2つの特徴的所見である。両所見とも、WS1よりWS2のほうが出現頻度は高い。White forelock、皮膚白斑については、どちらもWS2よりWS1のほうが高い出現頻度を示す(表4参照)。
4Waardenburg症候群Ⅰ型とWaardenburg症候群Ⅱ型の臨床症候の比較


臨床所見
罹患者に占める割合
WS1 WS2
感音性難聴 47%-58% 77%-80%
虹彩異色 15%-31% 42%-54%
低形成性青色虹彩 15%-18% 3%-23%
White forelock 43%-48% 16%-23%
早発性白髪 23%-38% 14%-30%
皮膚白斑 22%-36% 5%-12%
高い鼻根 52%-100% 0%-14%
眉毛内側の広がり 63%-73% 7%-12%

Liuら[1995],Pardonoら[2003],Tamayoら[2008]の報告に基づいて作成。

表5:Waardenburg症候群Ⅰ型との鑑別診断に関連してくる遺伝子

遺伝子 疾患名 遺伝形式 臨床症候/コメント
KITLG
MITF
SNAI2
SOX10
WS2
(OMIM PS193500)
AD
AR
MITFの病的バリアントは、WS2の10%近くから20%を占める。SNAI2の病的バリアントは、WS2と症候が重なる2例で報告されている。SOX10の病的バリアントは、WS2の15%近くを占める(SOX10の病的バリアントを有する例で、側頭骨の異常1が報告されている2)。
EDN3
EDNRB
SOX10
WS4
(OMIM PS193500)
AD
AR
色素異常,難聴,Hirschsprung病3
KIT
SNAI2
まだら症
(OMIM 172800)
AD まだら症は、WSといくつかの色素症候を共有する。White forelockに加え、額の内側部、眉毛の色素脱失も多くみられる。腹部や四肢の色素脱失も多くみられる。色素脱失領域の周りに高色素の縁どりがみられるのが特徴である。虹彩異色や感音性難聴の報告は稀。
MITF Tietz症候群
(OMIM 103500)
AD アルビニズムと聾。

AD=常染色体顕性;AR=常染色体潜性

  1. 蝸牛奇形と前庭拡大を伴う両側性の半規管無形成ないし低形成
  2. Elmaleh-Bergèsら[2013]
  3. Janら[2008]

臨床的マネジメント

最初の診断に続いて行う評価

Waardenburg症候群Ⅰ型(WS1)と診断された罹患者については、疾患の範囲やニーズを把握するため、診断に至る過程ですでに実施済ということでなければ、以下の評価を行うことが推奨される。

症状に対する治療

WS1に伴って生じる難聴への対応は、その重症度によりかわってくる(「遺伝性難聴・聾概説」のGeneReviewを参照)。Waardenburg症候群罹患者については、これまでに人工内耳手術の良好な成果が報告されている[Amirsalariら2012,de Sousa Andradeら2012,Koyamaら2016,Fanら2022]。

定期的追跡評価

WS1でみられる難聴は、ふつう非進行性である。したがって、たいていの場合、聴力検査を繰り返して行う必要はない。

リスクを有する血縁者の評価

リスクを有する血縁者については、難聴の早期発見を目的として評価を行うことが望ましい。
評価の内容としては、以下のようなものが考えられる。

リスクを有する血族に対して行う遺伝カウンセリングを目的とした検査関連の事項については、「遺伝カウンセリング」の項を参照されたい。

妊娠に関する管理

WS1に関連して神経管欠損症のリスクが高まる可能性があるため、子にWS1が生じるリスクが高い妊婦に対しては、葉酸の補給が推奨される[Fleming & Copp 1998]。ただ、妊娠中に投与する葉酸の量に関するヒトを対象とした研究はなされていない。

研究段階の治療

さまざまな疾患・状況に対して進行中の臨床試験に関する情報については、アメリカの「Clinical Trials.gov」、ならびにヨーロッパの「EU Clinical Trials Register」を参照されたい。
注:現時点で本疾患に関する臨床試験が行われているとは限らない。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝学的検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的、倫理的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

Waardenburg症候群Ⅰ型(WS1)は、常染色体顕性の遺伝形式をとる。

家族構成員のリスク

発端者の両親

注:親の白血球DNAを検査したとしても、体細胞モザイクの全例で病的バリアントが検出されるわけではなく、生殖細胞系列のみのモザイクの場合は、一切検出されることがない。

発端者の同胞 

発端者の同胞の有するリスクは、発端者の両親の臨床的/遺伝的状態によって変わってくる。

発端者の子

他の家族構成員

他の血縁者の有するリスクは、発端者の親の状況によって変わってくる。もし片親が罹患者であった、ないし、PAX3の病的バリアントを有していたという場合は、その血縁者はすべてリスクを有することになる。

関連する遺伝カウンセリング上の諸事項

早期診断・早期治療を目的として、リスクを有する血縁者に対して行われる検査についての情報は、「臨床的マネジメント」の中の「リスクを有する血縁者の評価」の項を参照のこと。

家族計画

DNAバンキング

検査の手法や、遺伝子・病原メカニズム・疾患等に対するわれわれの理解が、将来はより進歩していくことが予想される。そのため、分子診断の確定していない(すなわち、原因となった病原メカニズムが未解明の)発端者のDNAについては、保存しておくことを検討すべきである。

出生前検査ならびに着床前遺伝学的検査

家系内に存在するPAX3の病的バリアントが同定されている場合は、WS1に関する出生前検査や着床前遺伝学的検査を行うことが可能である。
そうした検査により、PAX3の病的バリアントが継承されているかどうかは判明するものの、将来現れる臨床症候の内容やその重症度まで知ることができるわけではない。

出生前検査の利用に関しては、医療者間でも、また家族内でも、さまざまな見方がある。
早期診断を目的とするのではなく、堕胎を目的としてこれを利用しようという場合は、特にそれが言える。現在、多くの医療機関では、出生前検査を親の決断に委ねられるべきものと考えているようであるが、こうした問題に関しては、もう少し議論を深める必要があろう。


関連情報

GeneReviewsスタッフは、この疾患を持つ患者および家族に役立つ以下の疾患特異的な支援団体/上部支援団体/登録を選択した。GeneReviewsは、他の組織によって提供される情報には責任をもたない。選択基準における情報についてはここをクリック。


分子遺伝学

分子遺伝学とOMIMの表の情報はGeneReviewsの他の場所の情報とは異なるかもしれない。表は、より最新の情報を含むことがある。

表A:Waardenburg症候群Ⅰ型の遺伝子とデータベース

遺伝子 染色体上の座位 タンパク質 Locus-Specific
データベース
HGMD Clin Var
PAX3 2q36.1 ペアードボックスタンパク質 Pax-3 Deafness Variation Database PAX3
PAX3 gene database
PAX3 PAX3

データは、以下の標準資料から作成したものである。
遺伝子についてはHGNCから、染色体上の座位についてはOMIMから、タンパク質についてはUniProtから。
リンクが張られているデータベース(Locus-Specific,HGMD,ClinVar)の説明についてはこちらをクリック。

表B:Waardenburg症候群Ⅰ型関連のOMIMエントリー(閲覧はすべてOMIMへ)

193500 WAARDENBURG SYNDROME, TYPE 1; WS1
606597 PAIRED BOX GENE 3; PAX3

分子レベルでの病原

PAX3は、胚発生の初期に発現するDNA結合性転写因子をコードする9種類から成るヒトPAX遺伝子ファミリーの1つである。ペアードボックスタンパク質Pax-3は、メラニン細胞を含む筋や神経堤由来細胞に対する必須の調節因子の1つである。WS1でみられる複数のPAX3の病的バリアントを解析したところ、MITFもしくはTYRP1(チロシナーゼ関連タンパク質1をコードする遺伝子)のプロモーターに融合するレポーター遺伝子に対するPax-3の結合能や調節能にさまざまな幅の変化が現れることが明らかとなった[Corry & Underhill 2005]。このことから、Pax-3は、DNA認識モードの切り替えを通じて標的遺伝子に対する調節能力を有しており、そのDNA認識モードの切り替えが、特定の病的バリアントによって変化するものと考えられている。Corryら[2008]は、変異によってPax-3タンパク質の核内局在や移動性に変化が生じることが、機能異常の1つの決定要因になっていることを明らかにしている。さらに、Birraneら[2009]は、PAX3の一部の病的ミスセンスバリアントがPax-3ホメオドメインのフォールディングの不安定化につながっている可能性がある一方で、別の病的バリアントについては、DNAとの相互作用に影響を及ぼしている可能性があることを明らかにしている。Wuら[2015]は、ゼブラフィッシュの有糸分裂染色体へのPAX3の結合状態を調べ、Pax-3タンパク質の変異がドミナントネガティブ効果を有することを示唆している。

疾患発症のメカニズム

機能喪失型(ハプロ不全)である。

表6:PAX3の注目すべき病的バリアント

参照配列 DNAヌクレオチドの変化 予測されるタンパク質の変化 コメント[参考文献]
NM_181457.4
NP_852111.1
c.139A>C p.Asn47His 遺伝型-表現型相関」の項を参照。
c.141C>G p.Asn47Lys
c.268T>C p.Tyr90His 「遺伝子の上で関連のある疾患」の項を参照。

表中のバリアントは、著者の提供したものをそのまま載せたもので、GeneReviewsのスタッフが独立した立場でバリアントの分類を確認したものではない。
GeneReviewsは、Human Genome Variation Society(varnomen.hgvs.org)の標準命名規則に準じた表記を行っている。
命名法の説明に関しては、「Quick Reference」を参照されたい。

癌ならびに良性腫瘍

胞巣型横紋筋肉腫において、PAX3の体細胞バリアントが報告されている。PAX3FKHRと融合しうることがわかっており、この融合により機能獲得が生じ、胞巣型横紋筋肉腫に至る[Wangら2008]。このメカニズムで生じた胞巣型横紋筋肉腫の患者がWS1を有しているというわけではない。

 


更新履歴:

  1. Gene Reviews著者: Jeff Mark Milunsky, MD.
    日本語訳者: 佐藤康守(たい矯正歯科)、櫻井晃洋(札幌医科大学医学部遺伝医学)
    GeneReviews最終更新日: 2022.10.20.  日本語訳最終更新日: 2023.1.8.[in present]

原文: Waardenburg Syndrome Type 1

印刷用

grjbar