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コルネリア デ ランゲ症候群
(
Cornelia de Lange Syndrome)
[BDLS, Brachmann-de Lange Syndrome, CdLS, de Lange Syndrome. Includes: NIPBL-Related Cornelia de Lange Syndrome, SMC1A-Related Cornelia de Lange Syndrome]

Gene Review著者: Matthew A Deardorff, MD, PhD, Dinah M Clark, MS, Ian D Krantz, MD
日本語訳者: 牧優子、升野光雄、山内泰子、黒木良和
(川崎医療福祉大学大学院医療福祉学研究科遺伝カウンセリングコース)
 Gene Review 最終更新日: 2006.8.14. 日本語訳最終更新日: 2011.9.23.

原文 Cornelia de Lange Syndrome


要約

疾患の特徴 

コルネリア デ ランゲ症候群(CdLS)は、特有の顔の特徴、成長遅延(出生前発症;人生を通じて5パーセンタイル未満)、多毛症と微細な指節骨異常から乏指症にわたる上肢減数異常によって特徴づけられる。頭蓋顔面の特徴は、眉毛癒合、アーチ型の眉、長い睫毛、小さく上向きの鼻孔、小さな歯、歯間空隙の拡大と小頭症を含む。IQは、30未満〜102の範囲にあり、平均は53である。多くの患者は、自閉的で自己破壊的な傾向を示す。しばしば見られる所見として、心臓中隔欠損症、胃腸機能障害、難聴、近視と停留精巣または性器の低形成を含む。

診断・検査 

CdLSの診断は、臨床的に頭蓋顔面の特徴、成長障害、知的障害、四肢異常と多毛症の存在に基づく。NIPBLSMC1A(以前はSMC1L1)は、CdLSと関係していることが現在知られている唯一の遺伝子である。NIPBLの変異は、CdLS患者の50%で確認され、分子遺伝学的検査は臨床的に利用できる。SMC1Aの変異は、CdLSと臨床診断された患者の少数に確認され、分子遺伝学的検査は、臨床的に利用できる。

臨床的マネジメント 

症状の治療:CdLSの管理には、胃食道逆流の治療とそれが重度であれば噴門形成術による修復並びに腸回転異常の外科的修復を行うことが含まれる。発育不全があるときは、補充調整乳および/または胃瘻造設によるチューブ造設は栄養的なニーズを満たす。利用または可動性を損なう四肢欠損には手術が行われる。理学療法、作業療法と言語療法は発達を最適化する。手話と絵カード交換式コミュニケーションシステムは、コミュニケーションを促進する。鼻涙管閉塞は積極的に治療され、そして停留精巣が存在すれば精巣固定術が行われる。

 

遺伝カウンセリング 

CdLSは、常染色体優性またはX連鎖性遺伝である。患者の大多数は、新生突然変異であり、NIPBL関連のCdLSと診断された患者の1%足らずでは、片親が罹患している。発端者の同胞へのリスクは、両親の遺伝的状況に依存する。NIPBL関連のCdLSをもつ患者の各々の子供には、変異を受け継ぐ50%の可能性がある。両親が臨床的に罹患していない時、発端者の同胞へのリスクは生殖細胞系列モザイクの可能性のため、1.5%であると推定されている。SMC1A関連のCdLSをもつ発端者の同胞へのリスクは、発端者の母親の保因者状況に依存する。出生前診断は、NIPBLの疾患原因アレルが確認された家族に臨床的に利用できる。SMC1Aの変異が確認された家族のための出生前診断は、特別注文の出生前検査を提供している研究所を通して行える場合がある。


診断

臨床診断

コルネリア デ ランゲ症候群(CdLS)の診断は臨床に基づいて行われる。

CdLSの最も重要な臨床徴候は次の通りである。

頭蓋顔面の外観(>95%)

  • 古典的CdLS 頭蓋顔面の特徴は容易に確認され、診断に最も役立つ所見がいくつかある
    • 小頭症、短頭。平均頭囲(後頭前頭を結ぶ周囲径:OFC)は2パーセンタイル未満
    • 98%に眉毛癒合、アーチ型の眉[Jackson et al 1993]
    • 長く、濃い睫毛
    • 低位で後方に回転したおよび/または厚い耳輪の毛深い耳
    • 平坦かもしくは幅広い鼻梁、上向きの鼻孔を伴う上向きの鼻尖と鼻翼の張り出し
    • 長く平坦な人中、中心線の「しずく」様外観を伴う上口唇の薄い唇紅縁(人中の最下部 で、上口唇の弧の下に上口唇の先端部が下がっている)、下向きの口角
    • 30%に口蓋裂を伴う高くアーチ型の口蓋[Sataloff et al 1990]
    • 小さな歯、歯間空隙の拡大
    • 80%に小顎症[Jackson et al 1993]、42%に下顎骨棘[Braddock et al 1993]
    • 短頸
  • 軽症CdLS 顔面の特徴は多く持ち合わせているが、認知と四肢の関与がさほど重度ではない、より軽症の表現型が一貫して記述されている。軽症例の診断基準が提示されている[Ireland et al 1993, Jackson et al 1993, Selicorni et al 1993, Van Allen et al 1993, Allanson et al 1997]。

メモ:このより軽症の表現型は、CdLSの古典型または重症型と比べて臨床的には注意を引かないが、実際にはCdLS患者の大部分かもしれない[Greenberg & Robinson 1989, Jackson et al   1993, Moeschler & Graham 1993, Selicorni et al 1993, Van Allen et al 1993, Allanson et al 1997]。

成長障害(>95%) 成長障害は、大部分のCdLS新生児で出生前に起こり(それは第3三半期まで気づかれないかもしれないが)、そして身長と体重は人生を通じ5パーセンタイル未満である[Bruner & Hsia 1990, Kliewer et al 1993, Kline et al 1993a, Kousseff et al 1993, Boog et al 1999]。CdLS患者用の成長チャートが開発されている(www.cdlsusa.org)。

さらに、発育不全には、胃食道逆流と他の栄養補給の問題に起因する体質的な成長遅延が付加されるかもしれない。

知的障害(>95%)

  • 古典的CdLS 重度から最重度の広汎性発達遅滞
  • 軽症CdLS より高い機能と、より高いIQ(何人かは正常範囲)をもつ軽度の罹患者が認めら れる。CdLSの全体的なIQの範囲は、30未満〜102であり平均IQは53である[Kline et al 1993b, Saal et al 1993]。

四肢の異常(>95%)上肢が主に含まれ、下肢は比較的少ない。四肢の異常は対称的な場合と、非対称的な場合とがある。

  • 古典的CdLS

上肢異常は、前腕の完全な欠損を伴う重度の減数異常から、主に尺骨の構造に影響を及ぼしている様々な型の乏指症(欠損した指)、尺骨構造に影響を及ぼしているより軽度の障害、小肢症(小さな手)、母指の近位位置異常と第5指彎指症にわたる。橈尺骨癒合はよくみられ、肘の屈曲拘縮をきたすこともある。

下肢では、上肢より影響が少ない。足はしばしば小さく、第2-3趾の合趾症は80%以上の患者でみられる[Jackson et al 1993]。

  • 軽症CdLS

母指の近位位置異常をきたす第1中手骨短縮のX線写真所見は、診断に役立つだろう。

多毛症(>80%) 濃い頭髪は側頭部へ広がり、時に顔、耳、背中と腕にも広がる。

検査

細胞遺伝学的検査

染色体分析でCdLS患者において、稀に再構成が確認されている。CdLS関連遺伝子(NIPBL)が座位する、染色体5p13の欠失の2事例が報告されている[Taylor & Josifek 1981, Hulinsky et al 2005]。両者とも細胞遺伝学的に検出され、周産期に死亡した乳児に見いだされた。

早期姉妹染色分体解離(PSCS)率の増加がCdLS患者の標準的な細胞遺伝学的試料において見られた[Kaur et al 2005]。(真核生物細胞では、複製されたDNA分子は、S相における合成から後期の間に分離するまで、物理的につながったままである。この現象(姉妹染色分体結合と呼ばれている)は、DNA複製と有糸分裂の一時の分離のために、そして複製されたゲノムの等しい分離のために不可欠である。中期染色体の姉妹染色分体は、後期の間に分離するまで物理的につながれている。PSCSは、中期の全てもしくはほとんど全ての染色体において、識別可能なセントロメアをもつ分離され広げられた染色分体が見られる現象である。それは、特定の中期のほとんどすべての有糸分裂染色体のセントロメアだけでなく姉妹染色分体全体に及んでいる。)

分子遺伝学的検査

遺伝子 Nipped-B-like (NIPBL)SMC1A (以前はSMC1L1)は、現在CdLSとの関連が知られている唯一の遺伝子である[Krantz et al 2004, Tonkin et al 2004, Musio et al 2006]。

 

他の遺伝子座 CdLS患者の50%には NIPBL変異を認められず、遺伝的異質性の可能性が示唆された[Borck et al 2004]。

メモ: CdLS様の疾患を伴う患者において染色体切断点の解析に基づいた初期の研究で、座位として3q26が示唆されたが[Falek et al 1966, Ireland et al 1991, Ireland et al 1995]、CdLSの10家系の家族性症例の研究においては、この領域との連鎖は一貫してみられなかった[Krantz et al 2001]。

臨床用途 

  • 確定診断としての検査(特により軽症な非定型の症例において)
  • 出生前診断

臨床検査 

  • FISH法 

染色体5p13の微細欠失はこれまでに報告がなく、28人のNIPBL変異陰性の発端者においても観察されなかった[Gillis et al 2004]。

  • 変異スキャニング/シークエンス解析

NIPBL3つの研究における179人のCdLS患者において、変異スキャニングでNIPBLのフレームシフト変異、ナンセンス変異、スプライス部位変異とミスセンス変異を約50%の患者において認めた[Borck et al 2004, Gillis et al 2004, Tonkin et al 2004]。CdLSの臨床診断の確実性は、これらの報告において相違があった[Krantz, unpublished observation]。Musio et al [2006]は、NIPBL変異を発端者の44%(24/54)において確認した。

 

SMC1Aシークエンス解析を用いて、Musio et al [2006]は発端者の4%(2/54)にSMC1A変異を確認した。★

  • 1家系で3人の罹患男性と1人の絶対保因者の女性(すなわち、4人の血縁者)において、cDNAの2493-2495の3塩基欠失が認められた。
  • cDNAシークエンスの1478番目の塩基にA>Cの塩基置換が、新生変異として1事例において確認された。

*この議論において、SMC1A変異を伴う家系内の4人の血縁者は1人の発端者と考えられている。

表1.コルネリア デ ランゲ症候群に用いられる分子遺伝学的検査の要約

遺伝子記号

検査方法

検出される変異

変異の検出頻度 1

検査の実施可能性

NIPBL

変異スキャニング/ シークエンス解析

NIPBLの欠失

不明

臨床
Image testing.jpg

NIPBL 変異

〜50%

SMC1A

SMC1Aシークエンスバリアント 3

2/54 2

臨床
Image testing.jpg

検査の実施可能性は、GeneTests Laboratory Directoryで利用可能なことを示す。GeneReviewsは、分子遺伝学的検査について、その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り、臨床的に実施可能としている。GeneTestsは研究機関から提出された情報の検証や、研究機関の承認状態もしくは実施結果の保証は行わない。情報を検証するためには、医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない。

  1. 示された遺伝子に存在する変異を検出するために用いられる検査方法の能力
  2. 変異の検出頻度は、シークエンス解析のデータに基づいている[Musio et al 2006]。なぜなら、臨床研究室で用いられる検査方法である、変異スキャニングの変異検出率として現在利用可能なデータがないからである。
  3. シークエンス解析による変異検出の例としては、小さな遺伝子内での欠失/挿入、ミスセンス変異、ナンセンス変異とスプライス部位の変異が含まれうる。

検査結果の解釈

現在の50%の変異検出率を考えれば、変異を同定できないことは、特に軽症例での診断を除外することにはならないだろう。

検査計画

CdLSのための細胞遺伝学的検査の収率は、既報告の2例の5p13の欠失だけで、非常に低い [Taylor & Josifek 1981, Hulinsky et al 2005]。しかしながら、細胞遺伝学的検査は、臨床的にCdLSと重なるいくつかの染色体異常のような他の潜在的な病因の除外に役立つだろう[DeScipio et al 2005]。

染色体分析が正常なら、分子遺伝学的検査を行い、NIPBL変異について調べることで(a)軽症や非定型症例での診断を確定することができ、(b)将来の妊娠においての出生前検査のために、家系特有の変異を確定することができるだろう。

メモ: GeneTests Laboratory Directoryに記載された研究室から利用可能な検査の臨床用途を含むことがGeneReviewsのポリシーであるが、これを含めることは著者、編集者、評価者によるそうした使用の推奨を必ずしも反映はしていない。

遺伝学的に関連する疾患

NIPBL もしくはSMC1Aの変異と関連することが知られている他の表現型はない。


臨床像

自然歴

軽症型と古典型のCdLS罹患者が直面する医学的問題は類似している。しかし、古典的CdLS患者の重度の認知障害は、医学的な合併症の識別をより困難にするかもしれない。CdLSは正式には70年以上前に特徴づけられ、臨床的に非常に詳細に記述されたが[Ptacek et al 1963, Motl & Opitz 1971, Jackson et al 1993]、CdLSの自然歴についてはほとんど何も書かれてきていない。寿命は、以下に記す合併症がない罹患者においては短くないようである。

大多数の家族性症例は、表現度が家族内で比較的一貫していることを示唆している。

古典的コルネリア デ ランゲ症候群

成長 CdLSのほとんどの新生児で出生前に成長障害が生じる。均整のとれた低身長をきたす対称性の成長の遅れは、生後6ヵ月までにはより有意になる。平均身長と体重は、人生を通じて5パーセンタイル未満である[Bruner & Hsia 1990, Kliewer et al 1993, Kline et al 1993a, Kousseff et al 1993, Boog et al 1999]。

知的障害 古典的CdLS患者の大部分は、重度から最重度の知的障害があり、IQは30から86(平均53)にわたることが報告されている。しかし、CdLSの子供たちとより軽度の知的障害の大人の最近の報告は、知能のより幅広い範囲を示唆している[Barr et al 1971, Kline et al 1993b, Moeschler & Graham 1993]。

神経精神医学 多くの患者は自己破壊的な傾向を含む自閉的行動を示す。そして彼らは社会的相互作用と身体的な接触を避けるかもしくは拒絶する場合がある。

行動問題は、意思疎通の困難さからの欲求不満にしばしば直接関連している。

子供たちのおよそ25%は、痙攣発作を経験したことがある。

一部の両親は、体温調節障害と痛覚の低下を述べている[Jackson et al 1993]。

四肢合併症 上肢の重度の異常は、CdLS患者のわずか25%で見られる[Jackson et al 1993]。

胃腸 胃食道逆流(GER)は、ほとんど普遍的な問題となる。発生率は、26〜83%にわたる[Bull et al 1993, Sommer 1993]。修復のためのニッセン噴門形成術がしばしば必要である[Jackson et al 1993]。体重増加は外科的および/または医学処置で改善するかもしれないが、身長の伸びは有意に影響を受けない[Bull et al 1993]。食道炎、誤嚥、化学性肺炎と易刺激性といったGERの他の合併症は、新生児期のGERの診断と処置によって避けることができる。

幽門狭窄症は新生児期の持続性の嘔吐で最もよくある原因で、4%で確認された。

他の胃腸の異常としては、腸回転異常(2%)と先天性横隔膜ヘルニア(CDH)(1%)がある[Fryns 1987, Cunniff et al 1993, Jelsema et al 1993, Pankau & Janig 1993, Marino et al 2002]。CDHは出生前と出生後にも診断されるが、特に周産期に死亡する児において過小評価されているかもしれない。

耳鼻咽喉科 感音性難聴は、CdLSの子供たちの80%にみられ、40%は最重度である[Sataloff et al 1990]。

眼科 罹患者の50%もが、近視(60%)と眼振(37%)を含む他の眼の問題だけでなく様々な程度の眼瞼下垂を示す[Levin et al 1990]。他の眼科の異常は、緑内障、鼻涙管狭窄、小角膜、乱視、視神経萎縮、視神経欠損、斜視と眼球突出を含む[Nicholson & Goldberg 1966, Milot & Demay 1972, Folk et al 1981, Levin et al 1990]。

腎尿路生殖器 停留精巣はCdLS男性の73%で、低形成の(小さい)性器は57%でみられる。腎臓異常(主に膀胱尿管逆流)は、12%で報告されている[Jackson et al 1993]。

心血管 CdLS患者のおよそ25%は、先天性心疾患に罹患している[Jackson et al 1993, Mehta & Ambalavanan 1997, Tsukahara et al 1998]。最もよくある異常は、以下を含む(頻度の高いものから順に):心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、肺動脈狭窄、ファロー四徴症、左心低形成症候群と三尖大動脈弁(訳者注:二尖大動脈弁の誤植では?)。

その他の特徴

  • 幼時期の遅くに消える傾向がある特徴のある低音域の泣き声は、CdLSの子供たちの75%で 記述され、より重症例と関係している[Jackson et al 1993]。
  • 血小板減少症は数人の子供たちで報告されている[Froster & Gortner 1993, Fryns & Vinken 1994]。そして、そのうちの2人はその後、汎血球減少症になっていった。
  • 大理石様皮膚は、60%で見られる。
  • 低形成の乳頭と臍は、50%で見られる。
  • 単一手掌屈曲線と異常な皮膚紋理パターンが報告されている[Smith 1966, Opitz 1985]。

死因 Beck & Fenger [1985]は、1917〜1982年に生まれた48人のCdLS患者で死亡率を調べ、累積生存率を比較すると、一般集団より死亡率の中等度増加を認めた。増加は、より若い年齢層の間でより有意である。彼らはまた、54歳と61歳で死亡した2人の患者を報告した。

Beck & Fenger [1985]Jackson et al [1993]は、誤嚥性肺炎(9)、頻回の無呼吸(3)、先天性心疾患(3)、軸捻と腸閉塞(2)、術後合併症(血小板減少症と頭蓋内出血)(1)と脊柱手術後の脳浮腫とヘルニア形成(1)の合計24の死亡例を報告した。重症気管支肺異形成、縦隔炎、尿毒症、気管支喘息、冠状動脈閉塞と肺塞栓が他の死因であった。

遺伝子型と表現型の関連

NIPBL変異は軽度から重度の表現型を伴う罹患者に見られており、コード配列全体で均等に分散している。

遺伝子型と表現型の研究は以下を提示する:

  ・ミスセンス変異をもつ患者では軽症となりえる。

   ・変異陽性の患者より変異陰性の患者では、より軽度の発達遅延と成長遅延を伴う[Gillis et al 2004]。

少数のSMC1A変異を伴う患者しか確認されていないため、遺伝子型と表現型の関連は不明である。

浸透率

体細胞のNIPBL変異をもちながら罹患していない人は報告されていない。よって浸透率は100%と思われる。

少数のSMC1A変異を伴う患者しか確認されていないため、浸透率は不明である。

表現促進

表現促進はみられない。

命名法

コルネリア デ ランゲ症候群(CdLS)は、1849年Vrolikによって最初に記述され、極端な乏指(趾)症として1例報告された[Oostra et al 1994]。 Brachmann [1916]は、対称性の単指症、前肘部みずかき形成、小人症、頸肋骨と多毛症の1症例を詳細に記述した。1930年代には、オランダの小児科医Cornelia de Langeが二人の類似した特徴をもった血縁でない少女について述べ、彼女が働いていた都市にちなんでその病気を"typus degenerativus amstelodamensis"と名付けた [de Lange 1933, de Knecht-van Eekelen & Hennekam 1994]。いくつかの文献ではその障害をBrachmann de Lange syndromeと呼んでいるが、その障害は、疾患の理解への貢献に敬意を表してCornelia de Lange syndromeとして広く呼ばれている。

有病率 

CdLSの有病率は、軽度の特徴を持つ者は気づかれない可能性があるため、推定することは困難である。公表された有病率の推定は、100,000 [Pearce & Pitt 1967]に1人から10,000に1人にもわたる[Opitz 1985]。


鑑別診断

本稿で扱われる疾患に対する遺伝学的検査の実施可能性に関する最新情報は,GeneTests Laboratory Directoryを参照のこと.―編集者注.

いくつかの状況は、CdLSの臨床像と重複する:

  • 3qの部分重複 CdLSと共通する特徴は、発達遅延、発育不全、低い前頭毛髪線、目立つ睫毛、低い鼻梁、上向きの鼻孔、(人中溝を保持した)長く目立つ人中、小顎症、肢根型四肢短縮と性器形成不全を含む。しかし、3qの部分重複を認める患者では、一般に正常の出生時体重、密な眉、眼間開離、眼瞼裂斜上、内眼角贅皮、幅広い鼻と正常の口唇がみられる[Fineman et al 1978, Fear & Briggs 1979, Anneren & Gustavson 1984, Tranebjaerg et al 1987]。
  • 染色体2q31欠失 HOXD遺伝子集積を含む欠失は、腎尿路生殖器異常や発達の異常と同様、CdLSで見られる四肢減数異常を来す[Del Campo et al 1999]。2q31欠失の患者は、CdLSの特徴的顔貌がみられない。
  • Fryns症候群は、粗な顔、横隔膜ヘルニア(85%)、口蓋裂(30%)と遠位四肢形成不全(75%)によって特徴づけられる[Fryns et al 1979]。多毛症、眼瞼裂狭小、平坦な鼻梁、上向きの鼻、小顎症、心臓異常、腎臓異常と性器異常は、CdLSとFryns症候群で共通している。Fryns症候群患者は、短い上口唇、巨口症、出生前の羊水過多、早産と正常の出生時体重を認める。Fryns症候群は、常染色体劣性遺伝である。先天性横隔膜ヘルニアの概観も参照。
  • 胎児性アルコール症候群(FAS) FASとCdLSに共通の特徴は、子宮内発育遅滞、発育不全、発達の異常、小頭症、新生児の顔の多毛、短い眼瞼裂、短く上向きの鼻、平坦な発育不十分な人中、薄い上口唇と心臓異常を含む。しかし、FASでは手足は小さくなく、そして言葉はCdLSより影響を受けない。妊娠中のアルコール摂取の既往は、FASをCdLSと区別することに役立つ。

臨床医への注:この疾患に関連した個別の患者に対する「simultaneous consult」については,SimulConsult(R)を参照.SimulConsult(R)は患者の所見を基に鑑別診断を提供する双方向型診断決定支援ソフトである(登録または施設からのアクセスが必要)。

  • 古典的なCdLS
  • 軽症CdLS

臨床的マネジメント

最初の診断時における評価

コルネリア デ ランゲ症候群(CdLS)と診断された患者の罹患率や死亡率の一因となる臨床症状を評価するための、現在公表されたガイドラインはない。以下の勧告は、文献と著者の経験に基づいている:

  • もし診断されていないか未治療であるなら、摂食不耐、致命的な反復性誤嚥と軸捻につながる腸回転異常と胃食道逆流に対する胃腸の評価(上部消化管造影法、内視鏡、ミルクスキャンおよび/またはpHプローブを含む)
  • CdLSに特有の成長チャート(www.cdlsusa.org)に成長指標を記入すること
  • CdLS成長曲線で発育不全が明らかになれば栄養士による評価
  • 橈尺骨癒合症を評価する上肢X線写真。橈尺骨癒合症が存在するならば、理学療法は骨折を引き起こすことを避けるために用心して行わなければならない。
  • コミュニケーション技術に重点を置く教育/治療介入を展開するための集学的発達評価
  • 聴力損失が存在するかどうか決定するための、聴性脳幹反応テストと耳音響放射テストによる聴覚学的評価
  • 視力評価、散瞳による眼底検査、眼圧の測定、並びに涙管の開通性と機能の評価を含む眼科的評価
  • 心臓異常を検査するための心エコー図。心房中隔欠損はよくみられ、聴診によって発見されない場合がある
  • すべての罹患者の神経学的評価と脳波
  • 構造的腎奇形を評価するための腎臓超音波検査法。指摘されれば、膀胱尿管逆流を評価するための膀胱尿管造影図(VCUG)
  • 尿道下裂および/または停留精巣をもつ男性の泌尿器学的評価
  • 貧血、紫斑、出血または再発する感染症の徴候があれば全血球計算

症状に対する治療

以下の処置は適切である:

  • 胃食道逆流が重度ならば噴門形成術を考慮したGERの積極的管理
  • 存在するならば腸回転異常の外科的修復
  • 発育不全があるなら、栄養的なニーズを満たすための補充調整乳および/または胃瘻造設によるチューブ造設
  • 四肢欠損が利用または可動性を損なうならば腕/手の外科的介入
  • 発達上の転帰を最適化する継続した理学療法、作業療法と言語療法。言語能力が欲求と要求を表すには不十分であるならば、コミュニケーションを促進する代わりのコミュニケーションの方法(すなわち、手話、絵カード交換式コミュニケーションシステム[PECS])
  • 聴力損失に対して標準的な処置
  • 鼻涙管閉塞に対するマッサージ治療といった積極的処置は管の奇形のため、しばしばうまくいかない。屈折異常、斜視、緑内障と眼瞼下垂に対する標準的な処置
  • 心臓異常のための標準的な介入
  • 痙攣発作の適切な治療
  • 膀胱尿管逆流のための予防的抗生物質投与とフォローアップ
  • 停留精巣が存在するならば精巣固定

二次病変の予防

以下は適切である:

  • CdLSの子供たちの小さな気道の管理経験のある小児麻酔科医のいる施設における、鎮静中および/または手術操作中の管理
  • 麻酔の間、CdLSの少数の子供たちで報告された[Papadimos & Marco 2003]悪性高熱症の危険性に対する注意(Malignant Hyperthermia Susceptibilityを参照)

経過観察

経過観察は以下を含む:

  • 成長のモニタリングを含む毎年の胃腸の評価
  • 発達の進行を評価し、治療的な介入と教育的な治療法の目標を定めるために、発達小児科医による毎年の評価
  • 眼科的および/または聴覚学的異常の定期的なフォローアップ
  • 既存の心臓もしくは腎臓奇形のルーチンモニタリング

リスクのある血縁者の検査

遺伝カウンセリングの目的で、リスクにある血縁者を検査することに関する問題については、遺伝カウンセリングを参照。

研究中の治療法

広い範囲の疾患と健康状態に対する臨床研究情報にアクセスするためにはClinicalTrial.govを検索のこと。 メモ:この疾患における臨床試験はないかもしれない。

その他

遺伝クリニックは、遺伝専門職からなり、入手できる利用者本位の資源情報だけでなく、自然歴、治療、遺伝形式とその他の家族構成員の遺伝的リスクに関する情報をも個人と家族に提供する。GeneTests Clinic Directory参照。

 

この疾患に対する疾患特異的か上部支援団体の利用者資源を参照。これらの団体は、個人や家族に情報、支援および他の罹患者との接触が提供できるように設立されている。

遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

コルネリア デ ランゲ症候群(CdLS)は、常染色体優性もしくはX連鎖遺伝の形式をとる。

家族構成員のリスクー常染色体優性遺伝

発端者の両親

  • CdLSと診断された患者のうち罹患した片親がいるのは1%未満である。
  • CdLS患者は、通常新たな遺伝子変異の結果として障害をもつ。新生突然変異により起こる症例の割合は、約99%である。
  • 新生突然変異を有すると思われる発端者の両親の評価のための勧告には、成長指標の記入を完備したCdLSの特徴についての診察と、発端者にNIPBL変異が確認された場合には分子遺伝学的検査を行うことが含まれる。

発端者の同胞 

  • 発端者の同胞のリスクは、発端者の両親の遺伝的状況に依存する。
  • もし発端者の片親が罹患しているのなら、同胞のリスクは50%となる。
  • 両親が臨床的に罹患していない場合、発端者の同胞のリスクは1.5%と推定される。それは生殖細胞系列モザイクの存在が考えられるからである[Jackson et al 1993]。
  • いずれの両親のDNAにおいてもNIPBLの疾患原因となる変異を検出することが出来ない場合、その原因は片親の生殖細胞系列モザイクか発端者での新生突然変異かのどちらかであろう。CdLSの病因としてNIPBL変異が同定される以前では、罹患していない両親が2人以上の罹患した子供をもつという報告に基づいて、生殖細胞系列モザイクの仮説が考えられてきた[Gillis et al 2004, Krantz et al 2004]。CdLSの原因としてのNIPBL変異の同定に伴い、いくつかの症例で生殖細胞系列モザイクが確認されている。

発端者の子 

  • CdLS患者の子供は、各々50%の確率で変異を受け継ぐ。
  • CdLSの家族内再発の大多数は、表現型の正常な片親における生殖細胞系列モザイクの結果であるが、軽度のCdLS罹患者がCdLSの子供をもつ稀なケースが報告されている。

発端者の他の家族

他の家族構成員のリスクは、発端者の両親の状況に依存する。片親が罹患しているなら、その家族構成員には罹患リスクがあるだろう。

家族構成員のリスクーX連鎖性遺伝

発端者の両親 

  • 罹患男性の父親は、罹患者でも、変異の保因者でもない。
  • 2人以上の罹患者を伴う家族においては、母親は保因者か生殖細胞系列モザイクである。
  • 罹患した娘(たち)を伴う家族においては、母親か父親のいずれかがSMC1A変異か生殖細胞系列モザイクを有することもありうる。
  • 罹患児が1人の場合は、その児に生じた新生変異かもしれない。
  • 家族の中で男性1人が唯一の罹患者の場合には、彼の母親の保因者状況のいくつかの可能性について考慮する必要がある:
    • 彼がSMC1A遺伝子の疾患原因となる新生変異をもっている。その場合、彼の母親は保因者ではない。
    • 彼の母親がSMC1A遺伝子の疾患原因となる新生変異をもっていて、(a)生殖細胞系列変異によるものか(すなわち、彼女の受胎の時点で存在し、それゆえ体のあらゆる細胞で存在している)、(b)生殖細胞系列モザイクであるか(すなわち、いくつかの生殖細胞でのみ存在している)のどちらかである。
  • 彼の母親は先祖から受け継がれた疾患原因となる変異をもつ。

発端者の同胞 

  • 発端者の同胞のリスクは、母の保因者状況に依存する。
  • もし、発端者の母が疾患原因となる変異をもっている場合、各々の妊娠において変異を伝える機会は50%である。変異を受け継ぐ男性同胞は、罹患するであろう。変異を受け継ぐ女性同胞は、保因者となり通常は罹患しないだろう。
  • もし家族内の唯一の罹患男性の母親のDNAにおいて疾患原因となる変異が同定されないならば、同胞のリスクは低いが、生殖細胞系列モザイクの可能性のため一般集団のリスクよりは大きい。

発端者の子 

  • CdLS患者の多くは生殖をしないが、軽症の罹患者は子供を持てるだろう。
  • X連鎖のCdLSを伴う男性は、彼らの娘全員に疾患原因となる変異を伝えるが、息子には伝えない。

発端者の他の家族構成員 

発端者の母方のおばは、保因者のリスクにあり、その子孫は、性別によって保因者か罹患するリスクにあるかもしれない。

保因者診断

リスクにある女性血縁者の保因者検査は、発端者の変異が確認されている場合に臨床上有用である。

 

遺伝カウンセリングに関連した問題

早期診断および治療の目的のためのリスクにある血縁者への検査情報については、「臨床的マネジメント」と「リスクのある血縁者の検査」を参照のこと。

家族計画 

遺伝的リスクの決定と出生前検査の有用性の討論のための最適な機会は妊娠前である。

DNAバンキング DNAバンクは主に白血球から調製したDNAを将来の使用のために保存しておくものである.検査法や遺伝子,変異あるいは疾患に対するわれわれの理解が進歩するかもしれないので,特に発症原因が確定できない発端者のDNAの保存は考慮に値する.

出生前診断

分子遺伝学的検査 NIPBL変異によるCdLSのリスクが増加している妊娠の出生前診断は、およそ妊娠15−18週に通常行われる羊水穿刺やおよそ妊娠10から12週に行われる絨毛生検(CVS)により得た胎児細胞から抽出されたDNAの分析により可能である。罹患した家族構成員の疾患原因のアレルは、出生前検査が行える前に確認されなければならない。

メモ:妊娠期間は、正常な最終月経期の初日からか、超音波による計測のどちらかにより算出された月経週数として表される。

SMC1Aを原因とするCdLSの出生前診断のための分子遺伝学的検査を提供している研究室は、GeneTests Laboratory Directoryに記載がみられない。しかしながら、出生前検査は、罹患した家族構成員に疾患原因となる変異が確認された家族において利用できるかもしれない。特別注文で出生前検査を提供している研究室についてはImage testing.jpgを参照のこと。

超音波検査 高解像度超音波検査では、成長をフォローし、そしてCdLSで罹患する四肢、心臓、横隔膜、口蓋、並びに他の臓器または構造の評価を行うことが、疾患原因となる変異の確認されていない家族に提供できるだろう。出生前の超音波所見の報告として:

母体血清スクリーニング CdLSの胎児を妊娠しているなら、母体血清PAPP-A (pregnancy-associated plasma protein A) の値は、第1三半期と第2三半期において低くなるだろう[Westergaard et al 1983, Aitken et al 1999, Arbuzova et al 2003]。

着床前遺伝学的診断(PGD)は、罹患した家族構成員の疾患原因となる変異が確認された家族では、研究や臨床の研究室で利用できるかもしれない。PGDを提供している研究室についてはImage testing.jpgを参照のこと。

メモ: GeneTests Laboratory Directoryに記載された研究室から利用可能な検査の臨床用途を含むことがGeneReviewsのポリシーであるが、これを含めることは著者、編集者、評価者によるそうした使用の推奨を必ずしも反映はしていない。


原文 Cornelia de Lange Syndrome

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