Bardet-Biedl症候群
(Bardet-Biedl Syndrome)

Gene Reviews著者: RaeLynn Forsyth, MD and Meral Gunay-Aygun, MD.
日本語訳者: 佐藤康守(たい矯正歯科)、櫻井晃洋(札幌医科大学医学部遺伝医学)

GeneReviews最終更新日: 2023.3.23.  日本語訳最終更新日: 2023.3.26.

原文: Bardet-Biedl Syndrome


要約

この概説は、臨床医に対して、Bardet-Biedl症候群の原因、ならびに遺伝カウンセリング関連の諸事項に関する認識を高めてもらうことを目的としたものである。
本概説の目標は以下の諸点である。

目標1.Bardet-Biedl症候群の臨床的特徴について述べること。

目標2.Bardet-Biedl症候群の遺伝的原因に関するレビューを行うこと。

目標3.Bardet-Biedl症候群発端者の遺伝的原因の特定が可能な場合には、これを達成するための評価戦略を提供すること。

目標4.Bardet-Biedl症候群の臨床的管理に関するレビューを行うこと。

目標5.Bardet-Biedl症候群罹患者の血族に対して行う遺伝カウンセリングに関する情報を提供すること。



1.Bardet-Biedl症候群の臨床的特徴

Bardet-Biedl症候群(BBS)は、網膜の錐体杆体ジストロフィー、肥満とそれに伴う合併症、軸後性多指趾、高次脳機能障害、低ゴナドトロピン性性腺機能低下ないし尿路性器奇形、腎奇形ないし腎実質疾患を主たる特徴とする、不動繊毛に起因して多系統に影響が及ぶ繊毛病である。

BBS罹患者には、眼の奇形(斜視,乱視,白内障)、頭蓋顔面のわずかな形態異常、難聴、嗅覚脱失、口腔/歯の異常(叢生,無歯症,高口蓋)、消化器・肝疾患、短指趾/合指趾、筋骨格の異常、皮膚の異常に加え、軽度の筋緊張亢進、運動失調/協調運動障害/平衡障害、発達遅滞、癲癇発作、スピーチの異常、行動/精神医学的異常をはじめとする神経発達の異常などが現れることがある(表1)。

BBSでは、運動性繊毛の構造や機能は基本的に正常である。それでも、罹患者では新生児呼吸窮迫、喘息、中耳炎、胸腹腔の偏側性異常といった運動性繊毛関連症候の発生頻度が高い[Shoemarkら2015]。
BBSの表現度の幅は広く、家系間・家系内で大きなばらつきがみられる。

表1:Bardet-Biedl症候群の症候

  症候 出現頻度1 コメント
大症候 網膜の錐体杆体ジストロフィー 94%
  • 網膜ジストロフィーの症状がきっかけとなって、通常、生後10歳未満の段階で医療機関を受診する。
  • これ以外の眼の異常(例えば斜視や白内障)がみられることもあり、これらもBBSの小症候と考えられている。
中心性肥満 89%
  • 出生時体重はふつう正常。
  • 肥満関連症候(内分泌/代謝異常や非アルコール性脂肪性肝疾患)も多くみられ、BBSの小症候と考えられている。
軸後性多指趾 79% 多指趾を伴わず短指趾や合指趾が単独でみられることも時にあり、これらもBBSの小症候と考えられている。
高次脳機能障害 66% 視覚障害も加えて集計すると、出現頻度はもっと低い可能性がある(「大症候」の「高次脳機能障害」の項を参照)。
性腺機能低下,尿路性器異常 59% 不妊が多くみられるものの、男女とも実際に子をもうけた例がみられる。
腎疾患 52% これが罹病や死亡の大きな原因になっている。
小症候2 神経学的異常
  • 発達遅滞(81%)
  • 癲癇(9.6%)3
  • 行動/精神医学的異常(35%)4
  • 運動失調/協調運動障害が粗大運動・微細運動の遅延につながることがある。
  • スピーチの異常が多くみられる。
嗅覚機能障害 47%-100%5 嗅覚脱失や嗅覚減退を含む。
口腔/歯の異常 50%近く6  
心血管をはじめとする胸腹腔異常 1.6%-29%7 内臓逆位や非定位などの、偏側性の異常を含む。
消化器異常
  • Hirschsprung病(2.8%)3
  • 炎症性腸疾患(1.1%)3
  • セリアック病(1.5%)3
  • ・肝疾患(30%)
ここで言う「肝疾患」とは、画像上での肝の異常、ないしALT値の異常のこと。
内分泌/代謝異常 メタボリックシンドローム(54.3%)8 国際糖尿病連盟(IDF)の基準9に則って判定したメタボリックシンドロームの頻度。
潜在性甲状腺機能低下(19.4%)8  
2型糖尿病(15.8%)8  
多嚢胞性卵巣症候群(14.7%)8  
  1. 特に断りのない限り、出現頻度の値は、Niederlovaら[2019]が行ったBBS罹患者899人の遺伝型-表現型相関に関するメタ解析のデータを基にしたものである。
  2. 大症候のコメントの部分で述べたものは再掲していない。
  3. Bardet-Biedl症候群臨床レジストリ(Clinical Registry Investigating Bardet-Biedl Syndrome;CRIBBS)の未公表データ。
  4. Bennouna-Greeneら[2011]
  5. Tadenevら[2011],Braunら[2014]
  6. Forsythe & Beales [2013]
  7. Olsonら[2019]
  8. Mujahidら[2018]
  9. メタボリックシンドロームに関する国際糖尿病連盟(IDF)の基準:中心性肥満(性別・民族ごとに定められた腹囲の値を基に判定)に加えて、以下のものを2つ以上有すること。

大症候

錐体杆体ジストロフィー
通常、初期には夜盲を伴って黄斑病変が現れ、その後、進行性の周辺視力低下、色識別能の低下、全体的な視力低下が生じる[Weihbrechtら2017]。こうした症候がきっかけとなって医療機関を受診することになり、通常10歳未満の段階でBBSの診断に至る。
網膜電図(ERG)については、5歳を超えた段階で明確な所見がみられるようになる可能性が高い。
罹患者は、10歳代から20歳代のうちに法的盲に至ることが多い。
網膜疾患は、BBSにおいて最も一貫してみられる症候で、研究によっては出現頻度を100%とするものもみられる[Dennistonら2014]。

中心性肥満(体幹型肥満)
中心性肥満が1歳未満の段階で生じるが、出生時体重はふつう正常である。肥満に関連して生じることの多いその他の症候も、BBSの小症候とみなされる。平均BMIを35.7±8.0kg/m2とする報告がみられる[Mujahidら2018]。

軸後性多指趾
軸後性多指趾というのは、通常、手の尺側、足の腓側に現れる過剰指趾をいう。LZTFL1BBS17)の病的バリアントを有する例については、中央列多指趾の報告もみられる[Schaeferら2014]。

高次脳機能障害
顕著な知的障害を報告した初期の複数の論文では、視覚障害のことは言及されていない。
Kerrら[2016]は、分子レベルでの確認が済んでおり、かつ視力が20/400以上の24人を対象に、認知・適応・行動関連の機能を評価している。その結果、視野や視力は、言語理解指標をはじめ、いかなる認知関連指標とも有意の相関を示さなかった。知的障害の診断基準を満たす例は20%-25%に過ぎなかったが、調査対象となった罹患者の平均知能レベルは、平均値の-1.5SDであった。罹患者には言語流暢性の障害(22%-44%)、知覚推理の障害(53%)、注意力の障害(69%)、機能的自立の障害(74%)もみられた。また、自閉症スペクトラム障害関連症候が77%にみられた。

性腺機能低下と尿路性器奇形
二次性徴の始まりの遅延を伴う性腺機能低下が、思春期になって初めて明らかになる場合がある。
男性では、小陰茎と小精巣がみられることがある。停留精巣がBBS男性の9%にみられる。内分泌の評価を行ったある研究では、男性の19.5%に性腺機能低下がみられた[Mujahidら2018]。
女性については、子宮低形成あるいは重複子宮、ファロピー管ないし卵巣の低形成、膣中隔、膣の部分閉鎖あるいは完全閉鎖、膣口ないし外尿道口の欠如、水膣症あるいは子宮膣留水症、尿生殖洞遺残、膀胱膣瘻などの形態異常がみられることがある[Deveaultら2011]。
不妊が多くみられるものの、男女とも実子をもうけることができた例が知られている。

腎疾患
腎臓に関するBBS表現型はきわめて多様で、具体的には、構造異常、水腎症、膀胱尿管逆流、尿濃縮力障害(多尿・多飲の形で現れる)を伴うことの多い進行性腎実質疾患などがみられる[Putouxら2012]。
構造的腎疾患としては、馬蹄腎、異所性腎、重複腎、腎無発生などの発生異常、あるいは、片側のみの単一嚢胞から両側にわたる複数の嚢胞に至るまで幅を有する嚢胞性異形成腎疾患がみられることがある。
神経因性膀胱や膀胱出口部閉塞などの泌尿器系の合併症が、成人の5%-10%で報告されている[Forsytheら2017]。

慢性腎疾患(CKD)が、BBS罹患者における罹病や死亡の1つの大きな要因になっている。最近のある研究によると、子どもの31%、成人の42%にCKDがみられ、子どもの6%、成人の8%については、末期腎疾患のため透析や腎移植を要する状態に至るという[Forsytheら2017]。
進行した(ステージ4-5の)慢性腎疾患を有するBBS罹患児の大多数は、腎疾患の最初の診断が満1歳に達する前に行われており、5歳までにほぼ全例が診断されていた[Forsytheら2017]。
高血圧(これはBBS罹患者の約3分の1にみられる)や2型糖尿病(T2DM)といった共存疾患が、CKDの進行に影響を及ぼす可能性がある。

腎移植により良好な長期的転帰が得られたとの報告がみられる[Hawsら2016]。

小症候

神経発達の異常
BBS罹患者については、四肢すべてに軽度の筋緊張亢進を伴った運動失調・協調運動障害がみられることが報告されている。ただし、MRIでみられる脳の変化との関係については、さらに明確にする必要がある。
Bardet-Biedl症候群臨床レジストリ(CRIBBS)のデータベースでは、罹患者に発作/てんかん(国際抗てんかん連盟[International League Against Epilepsy]の基準に則ったもの)がみられたと報告されているが、その大多数は成人に達するまでに改善している[未発表データ]。
受容言語・表出言語の遅れ、構音障害、開鼻声/息漏れ声をはじめとするスピーチの異常も報告されているが、これは、聴力の問題、口腔/歯の異常、背後にある神経学的問題といったものが関与する多因子性のものである可能性が高い。
強迫性の行動、不安、気分障害といった行動・精神医学的異常が報告されており、これもまた多因子性のものである可能性が高い。
以上に述べたような理由で、BBS罹患児は、あらゆる領域(粗大運動,微細運動,スピーチ/言語)にまたがって発達の遅れがみられるものの、大多数の罹患児は、最終的には主要な発達指標(例えば、歩くこと、話すこと)を達成する。

頭蓋顔面の形態異常
BBS罹患者では、短頭症、大頭症、横幅の狭い額、短く狭く斜下した眼瞼裂、深い眼球/両眼開離、大きな耳、長く平坦な人中、低い鼻梁、平坦な頰骨、下顎後退といった顔面の形態異常がみられる。こうした症候はごく軽微であることもあり、また、BBS罹患者集団に一貫してみられるといったものでもない[Forsythe & Beales 2013]。現在のところ、頭蓋顔面にみられる個々の形態異常の発生頻度に関する系統立ったレビューは行われていない。

嗅覚脱失/嗅覚減退
嗅覚脱失/嗅覚減退の発生頻度は過少評価されている可能性が高い。嗅毛の障害が嗅覚脱失/嗅覚減退の原因と考えられているが、BBS罹患者の脳のMRIで嗅球の形態異常がみられた例も存在する[Braunら2016]。

口腔/歯の異常
原発性の異常としては、無歯症あるいは小歯症、歯の叢生、短根とタウロドント、臼歯部交叉咬合、エナメル質形成不全、高口蓋などがある。
BBSでみられるその他の臨床症候(例えば、視覚障害、肥満、高次脳機能障害、腎疾患、口呼吸、口唇閉鎖不全、嗅覚脱失)が原因となって二次性に口腔に現れる可能性のある合併症としては、口腔衛生不良、歯周疾患、齲蝕、薬物性歯肉増殖症、口腔乾燥症、味覚異常、言語障害などがある[Pannyら2017]。

心血管系その他の胸腹腔の異常
CRIBBSのデータベースの中の罹患者について行った後ろ向き研究で、わずかな割合(1.6%)の罹患者に胸腹腔の異常、すなわち、偏側性の異常が明らかとなった[Olsonら2019]。この値は、一般集団での発生率の170倍にあたるが、それでも、原発性繊毛運動不全症をはじめとする運動性繊毛疾患よりは低い。
偏側性の異常は、完全内臓逆位から内臓錯位のさまざまな症候(すなわち、正中線腹部臓器、無脾症、多脾症)に至るまで、ばらつきを示すことがある。
CRIBBSのデータベース中の偏側性異常を伴う罹患者においては、房室中隔欠損や血管異常(両上大静脈遺残,下大静脈欠損,半奇静脈連結)をはじめとする偏側性異常関連の先天性心疾患も併せて報告されているものの、発生頻度の数字は、29%という非特定心奇形の発生頻度を報告したNiederlovaら[2019]によるメタアナリシスをはじめとする、歴史的に報告されてきた値と比べるとはるかに低い。
BBS罹患者で稀に拡張型心筋症が報告されているものの、その拡張型心筋症に他の遺伝的原因が関与している可能性を排除する確認作業はなされていない[Yadavら2013]。

消化器の異常
CRIBBSのデータベース中の罹患者のごく一部に、Hirschsprung病や消化管の解剖学的奇形(二裂喉頭蓋,喉頭横隔膜症,食道ウェッブ,腸閉鎖症,鎖肛)が確認されている[未発表データ]。
BBS罹患者では、炎症性腸疾患やセリアック病も一般集団より多くみられている。
肝疾患としては、嚢状拡張を伴う胆管異常や、一部、肥満に伴う続発性の要素もあると思われる門脈周囲性線維化、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)といったものがある[Branfield Dayら2016]。

内分泌/代謝の異常
高脂血症(通常は高中性脂肪血症)、インスリン抵抗性、2型糖尿病を伴うことのある空腹時血糖値の上昇などの肥満併存疾患が多くみられる。また、女性では、多嚢胞性卵巣症候群も多くみられる。
2型糖尿病は、食餌だけでコントロールできる場合もあるが、多くはインスリンをはじめ何らかの投薬を必要とする。
潜在性甲状腺機能低下の報告がみられるものの、臨床的意義はよくわかっていない[Mujahidら2018]。

他の症候(臨床診断基準に含まれていないもの)

皮膚の異常
ある研究によると、罹患者全員に、脂漏性皮膚炎(19.3%)、毛孔性苔癬(80.6%)、肥満関連の皮膚変化(皮膚線条,化膿性汗腺炎,黒色表皮腫)などの皮膚疾患がみられたという[Hawsら2019]。

無症状(subclinical)の感音性難聴
成人の無症状の感音性難聴は、聴力検査で初めて明らかになる。小児期には、反復性中耳炎に起因する伝音性難聴がみられることもある。難聴は、BBS罹患者の17%-21%で報告されている[Forsythe & Beales 2013]。

筋骨格の異常
CRIBBSのデータベース中の罹患者では、脊柱側彎(16%;ふつうは手術を要しないレベル)、脚長差(9.6%)、内反足(1.8%;その多くが手術を要する)、Blount病(0.9%)、関節弛緩(27.6%)が一般集団より高率にみられた[CRIBBSデータベース,未発表データ]。

Bardet-Biedl症候群の鑑別診断

BBSは、症候群性の網膜変性をきたす原因として、Usher症候群に次ぐ頻度をもつ疾患である[Stoneら2017]。Usher症候群のほうは、感音性難聴がみられることも大きな特徴である。
Bardet-Biedl症候群とその他の繊毛病との間には、臨床的にも分子的にも多くの共通点がある。BBSを引き起こす遺伝子の中のいくつかについては、病的バリアントの違いで、全く別の繊毛病症候群を引き起こすものがある(表2)。

表2:Bardet-Biedl症候群との鑑別診断を検討すべき疾患

遺伝子1 疾患名 遺伝形式 鑑別対象疾患の臨床症候
BBSと重なる症候 BBSと異なる症候
ALMS1 Alström症候群(AS) AR
  • 錐体杆体ジストロフィー(ASのほうが早期に出現する)
  • 中心性肥満,インスリン抵抗性/2型糖尿病,非アルコール性脂肪性肝疾患
  • 慢性進行性腎疾患
  • ・性腺機能低下
ASでは、
  • 認知機能は正常;心筋症が多い(60%近く);症候群性進行性感音性難聴;肺線維症と肺高血圧
  • 多指趾はみられない。
MKKS McKusick-Kaufman症候群(MKS) AR
  • 軸後性多指趾
  • 尿路性器奇形
MKSでは、
  • 先天性心疾患がより多い(14%近く);子宮膣留水症が主要症候;腎嚢胞/異形成腎は少ない(4%-6%)。
  • 網膜疾患、肥満、発達障害はみられない。
15近くの遺伝子2 Meckel症候群 AR
  • 軸後性多指趾
  • 多発性嚢胞腎疾患
  • 尿路性器奇形
  • ・肝線維症
Meckel症候群では、
  • 後頭部脳瘤その他の中枢神経系奇形が主要症候;口腔顔面裂が多くみられる。
  • 周産期致死性
AHI1
CC2D2A
CEP290
CPLANE1
MKS1
NPHP1

TMEM67
(36以上の遺伝子)
Joubert症候群 AR
XL3
  • 網膜変性
  • 多指趾
  • ・腎疾患と肝疾患
JSでは、
  • 脳のMRIでのmolar tooth sign、筋緊張低下、発達遅滞が3主徴;呼吸の異常が多くみられるが年齢とともに改善する;眼球運動異常や眼瞼下垂が多くみられる。
  • 中心性肥満、性腺機能低下、尿路性器奇形は少ない。
CEP290
IQCB1
NPHP1
NPHP4
SDCCAG8
TRAF3IP1
WDR19
Senior-Løken症候群 (SLS)
(OMIM PS266900)
AR
  • 網膜変性
  • 腎疾患
SLSでは、肥満、多指趾、性腺機能低下、尿路性器奇形はみられない。
CEP290
CRB1
GUCY2D
RDH12
RPE65
(25近くの遺伝子)
Leber先天黒内障/早期発症型重度網膜ジストロフィー
(LCA/EOSRD)
AR
AD
網膜変性とその関連症候(例えば、視力低下) LCA/EOSRDでは、他の器官の障害はみられない。

AD=常染色体顕性;AR=常染色体潜性;XL=X連鎖性

  1. 病的バリアントが、同時にBBSの原因にもなっている遺伝子を太字で示した。
  2. この表現型に関連する遺伝子については、「OMIM Phenotypic Series」の「Meckel症候群」を参照。
  3. 3.2遺伝子性遺伝の報告もみられる。

2.Bardet-Biedl症候群の原因

Bardet-Biedl症候群(BBS)は、少なくとも26の遺伝子の両アレル性の機能喪失型病的バリアントによって生じる常染色体潜性遺伝性疾患である。
いくつかの遺伝型-表現型相関が存在する(表3)[Niederlovaら2019]。

遺伝子1
(BBS類型2)
BBS全体の中で占める割合3 特徴的臨床症候/コメント 同一アレル疾患4
BBIP1
(BBS18)
1%未満 互いに血縁関係のない2例の報告あり。
BBSの主要症候を有するが多指趾はなし5
なし。
BBS1 23.4%
  • 「症候群性」6の色彩が比較的弱く、腎奇形や多指趾の浸透率が低い。
  • ・ニューファンドランド集団でみられる創始者バリアント7。
BBS2 9.6%
  • 「症候群性」の色彩が比較的強く、腎奇形や多指趾は浸透率が高い。
  • ・肥満度が最も低い表現型。
非症候群性網膜色素変性症
BBS4 5.3%
  • 腎奇形の浸透率が低い。
  • ・早期発症型の病的肥満
なし。
BBS5 3.7% 「症候群性」の色彩が比較的強い。
BBS7 4.2% 「症候群性」の色彩が比較的強く、腎奇形の浸透率が高い。
BBS9 3.4% 腎奇形の浸透率が高い。
TTC8
(BBS8)
2.0% 「症候群性」の色彩が比較的弱く、腎奇形や多指趾の浸透率が低い。 非症候群性網膜色素変性症
ARL6
(BBS3)
5.1%
  • 「症候群性」の色彩が最も弱く、高次脳機能障害や腎奇形の浸透率が低い。
  • しばしば四肢すべてに多指趾が現れる。
  • ・ラ・レユニオン島集団でみられる創始者バリアント8。
BBS10 14.5%
  • 腎障害の程度が最も重度。
  • 顕著な肥満。
  • ・南アフリカ集団でみられる創始者バリアント9
なし。
BBS12 6.4% 顕著な肥満
MKKS
(BBS6)
6.3% 先天性心疾患や尿路性器奇形を有する率が高い。 McKusick-Kaufman症候群10
CFAP418
(かつての名はC8orf37)
(BBS21)
1.6% 多指趾の浸透率が高い。 ・非症候群性網膜色素変性症
・多指趾を伴う錐体杆体ジストロフィー(OMIM 614500)
CEP164 1%未満 原因不明の咳と気管支拡張から、原発性繊毛運動不全症が疑われた1例が報告されているが、リバースフェノタイピングの結果、BBSであることが明らかとなった11 単発性ネフロン癆
CEP290
(BBS14)
6.3% 他の繊毛病との顕著な臨床症候の重なりあり。
  • Joubert症候群
  • Leber先天黒内障
  • Meckel症候群
  • (OMIM 611134)
  • Senior-Løken症候群(OMIM 610189)
脚注10参照。
IFT27
(BBS19)
1%未満
  • BBSの主要症候をすべて有する2家系3人が報告されている。
  • 共通房室弁口を有する1人12
なし。
IFT74
(BBS20)13
1%未満
  • 互いに血縁関係のない2人の報告あり。
 両者とも網膜疾患、肥満、多指趾を有していたが、腎障害はみられなかった。
  • 知的障害を有する1人14
IFT172
(BBS20)13
1.0% 典型的なBBSの症候
  • 非症候群性網膜色素変性症
  • 多指趾を伴うことのある短肋骨胸郭異形成症
(OMIM 615630)
LZTFL1
(BBS17)
1%未満
  • 2家系3人の報告あり。
  • 中央列多指趾がユニークな症候15
なし。
MKS1
(BBS13)
1.0% 眼科検査にて骨小体様色素沈着と動脈狭細化が明らかになることあり16
  • Joubert症候群
  • Meckel症候群
 (OMIM 249000)
SCAPER 不明 BBSの症候を有する例が複数人存在する血族結婚の2家系の連鎖解析・機能解析により、病原性が裏づけられている17> 知的障害と網膜色素変性症
(OMIM 618195)
SCLT1 1%未満 2家系4人の報告あり。
  • 一方の家系の罹患者2人は、下垂体形成不全、成長ホルモン分泌不全が1人、肥満、網膜疾患、多指趾が1人であった。
  • 他方の家系の2人は、BBSの主要症候を有していた18
SCLT1の多様性が口-顔-指症候群Ⅸ型(OMIM 258865)の原因となっている可能性あり。
SDCCAG8
(BBS16)
4.3% イントロンのバリアントが報告されている11 Senior-Løken症候群10 (OMIM 613615)
TRIM32
(BBS11)
1%未満 ベドゥウィン族の血族結婚の1家系で同定されている19 肢帯筋ジストロフィー(OMIM 254110)
WDPCP
(BBS15)
1%未満 互いに血縁関係のないBBSの2人で報告されている(臨床データは不明)20 先天性心疾患-舌の過誤腫-多指趾症
(OMIM 217085)
  1. 遺伝子の配列はアルファベット順。
  2. BBS類型が遺伝子名と異なる場合に記載。
  3. BBS罹患者923人(Niederlovaら[2019]が遺伝型-表現型相関のメタアナリシスを行った899人、Shamseldinら[2020]が報告し、先のメタアナリシスには含まれていない17人、稀な遺伝子の関与を示すそれ以外の報告から7人)のデータから算出したもの。
  4. 取り扱ったGeneReviewがない場合のみOMIMの遺伝子説明へのリンクを付与した。
  5. Scheideckerら[2014],Shamseldinら[2020]。
  6. ここでは、「症候群性」という言葉を、Niederlovaら[2019]が用いた症候群スコアの意で用いた。症候群スコアというのは、ある1例の有している大症候の数を5(生殖器系を除いた大症候の数)で割ったもので、生殖器系だけは男女で生理的事情が異なるため、判定から除外したものである。
  7. Fanら[2004]
  8. Gouroncら[2020]
  9. Fieggenら[2016]
  10. これらの疾患は、表現型の点でBBSと重なりがみられるため、BBSとの鑑別診断を検討すべきものである(表2参照)。
  11. Shamseldinら[2020]
  12. Aldahmeshら[2014],Schaeferら[2019]
  13. 文献によると、IFT74IFT172の2つがBBS20に関与していることになっている。そのため、「BBS20」という呼称の使用は、今後、使用を取りやめることが推奨される。
  14. Lindstrandら[2016],Kleinendorstら[2020]
  15. Marionら[2012],Schaeferら[2014]
  16. Xingら[2014]
  17. Wormserら[2019]
  18. Morisadaら[2020],Shamseldinら[2020]
  19. Chiangら[2006]
  20. Kimら[2010],Shamseldinら[2020]

3.発端者におけるBardet-Biedl症候群の遺伝的原因の特定に向けた評価戦略

発端者においてBardet-Biedl症候群(BBS)の遺伝的原因を特定することについては、

病歴

表1に挙げた主要症候のいずれかを有する例については、BBSの診断を検討する必要がある。
構造的腎疾患、尿路性器奇形、多指趾を有する胎児/乳児については、BBSを疑う必要がある。それは、BBSのコホートにおいては、こうしたものだけがこの年齢ではっきりと確認しうる症候だからである。
中心性肥満は、しばしば1歳未満の段階でみられるようになる。そのため、これは初期においてBBSの診断を疑わせるもう1つの症候となりうる。
錐体杆体ジストロフィーの症候(羞明,視力低下,色識別能の喪失)や慢性腎疾患の症候(多尿,多飲)は、学齢期になって初めて現れることが多く、性腺機能低下の症候(思春期発達の欠如)に至ってはもっと遅く、思春期初期になって初めて明らかになる。
表1に示したその他の症候は、その他数多くの遺伝性疾患でも報告されているものであるが、こうしたものがみられるときも、より広い範囲の評価を急ぐべきである。

家族歴

親同士が血族結婚でないか、同胞に医学的問題をもつ人がいないかという点に注意しつつ、3世代にわたって家族歴をとる必要がある。同胞の有する関連所見については、直接診察するか、もしくは過去の診療録を見直した上で記録する。

分子遺伝学的検査

BBSは遺伝的異質性をもち、その臨床症候は他の繊毛病と重なる部分が多くみられるため、分子遺伝学的検査としては、遺伝子標的型検査(マルチ遺伝子パネル)と網羅的ゲノム検査(エクソームシーケンシング)のいずれかを用いることが推奨される。遺伝子標的型検査の場合は、BBS特異的パネルを用いるにしても、より広い範囲の繊毛病用パネルを用いるにしても、まず臨床医の側で、関与していると思われる遺伝子の目星をつけておくことが必要となる。一方、ゲノム検査の場合は、既知ではあるがパネルには含まれていない遺伝子の病的バリアントや、これまでBBSとの関連が知られていなかった新規の遺伝子の病的バリアントが明らかになる可能性がある。
単一遺伝子検査(ある1つの遺伝子の配列解析と、その後に行う遺伝子標的型欠失/重複解析)が有用になるようなことはほとんどないため、これを用いることはふつう推奨されない。

現況の表現型と直接関係のない遺伝子の意義不明バリアントや病的バリアントの検出を抑えつつ、BBSの遺伝的原因の特定に最もつながりやすいのは、表3に載せた遺伝子の一部もしくは全部を含むマルチ遺伝子パネルであるように思われる。
注:(1)パネルに含められる遺伝子の内容、ならびに個々の遺伝子について行う検査の診断上の感度については、検査機関によって異なり、また経時的に変更されていく可能性がある。
(2)マルチ遺伝子パネルによっては、このGeneReviewで取り上げている状況と無関係な遺伝子が含まれることがある。
(3)検査機関によっては、パネルの内容が、その機関の定めた定型のパネルであったり、表現型ごとに定めたものの中で臨床医の指定した遺伝子を含む定型のエクソーム解析であったりすることがある。
(4)ある1つのパネルに対して適用される手法には、配列解析、欠失/重複解析、ないしその他の非配列ベースの検査などがある。
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網羅的ゲノム検査の場合、臨床医の側で疑わしい遺伝子の目星をつけておく必要はない。エクソームシーケンシングが広く用いられているが、ゲノムシーケンシングを使用することも可能である。エクソームシーケンシングで診断がつかない場合、もし臨床的に使用可能なようであれば、配列解析では検出できないようなエクソン単位の欠失や重複を調べるためのエクソームアレイも検討の余地がある。
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4.Bardet-Biedl症候群の臨床的マネジメント

最初の診断に続いて行う評価

Bardet-Biedl症候群(BBS)と診断された罹患者については、疾患の範囲や継続的ニーズを把握するため、表4にまとめた評価を行うことが推奨される。

表4:Bardet-Biedl症候群罹患者に対して推奨される最初の評価と調査

系/懸念事項 最初の評価 追跡評価の頻度1
体格
  • 身長,体重,頭囲,腹囲の測定
  • 詳細な食餌歴の聴取:カロリー摂取量と食餌の成分
  • 1日あたりの身体活動量の評価
健康管理のための来院ごと。
眼/視覚 眼科医による診察
  • 乳幼児:斜視,眼振,視力低下に関する評価
  • 年長の小児と成人:白内障,視覚障害に関する評価;視野検査と網膜電図の実施
年に1度、もしくは眼科医の指示に従って。
口腔/歯の異常 通常の歯科的ケア 1歳から始め、6ヵ月ごと。
心血管,その他の胸腹腔の異常
  • 先天性心疾患や心筋症の評価を目的とした心エコー
  • 偏側性異常の評価を目的とした腹部全体の超音波検査
  • 最初の評価で異常がみられなかった場合は、心臓の症候/徴候が現れた際にのみ行う。
  • 解剖学的異常がみられた場合は、心臓病専門医の指示に従って、より高頻度のモニタリング。
呼吸器 以下の諸点のモニタリング
  • 閉塞性睡眠時無呼吸の症候(例えば、いびき)
  • 繊毛の機能障害を窺わせる反復性感染症
年に1度。
消化器
  • 解剖学的異常に関する評価
  • 感染性腸疾患やセリアック病の症候/徴候に関するモニタリング
  • 肝線維症や脂肪肝の評価を目的とした肝超音波検査
  • 肝臓の酵素や合成機能試験(プロトロンビン時間,部分トロンボプラスチン時間)を含む臨床検査
  • 異常なしの場合は年に1度。
  • 肝疾患を伴う例については、肝臓専門医の指示に従ってモニタリング。
  • 先天奇形や腎実質疾患の有無を確かめるための腎超音波検査2
  • 全血算,血清電解質・クレアチニン・尿素窒素・シスタチンCなどの臨床検査
  • 必要に応じ、24時間血圧モニタリングを含む血圧測定
  • 異常なしの場合は年に1度。
  • 腎疾患を伴う例については、腎臓専門医の指示に従ってモニタリング。
泌尿器 神経因性膀胱,膀胱出口部閉塞の症候に関する問診 年に1度。
メタボリックシンドローム
  • 脂質パネル(中性脂肪,高比重リポタンパク質,総コレステロール)
  • 空腹時血糖,ヘモグロビンA1c
  • 異常なしの場合は、4歳から始め年に1度。
  • メタボリックシンドロームを伴う例については、経験豊富な医療提供者のほうから、より高頻度のモニタリングが指示されることになる。
甲状腺機能低下 甲状腺機能のチェック 年に1度。
性腺機能低下
  • 女性については、子宮,卵管,卵巣,膣の評価を目的とした骨盤超音波検査
  • 思春期遅発の精査に必要な場合は、卵胞刺激ホルモン,黄体形成ホルモン,エストロゲン,テストステロンの値のチェック
必要に応じ、13歳から始め、年に1度の臨床検査による評価。
筋骨格 骨格のチェック 脊柱側彎,多指趾,関節疾患の症候/徴候がみられる場合は、必要に応じて。
発達
  • 発達ないし神経認知に関する評価
  • 神経学的異常(運動失調,筋緊張低下,癲癇発作)がみられる場合は、脳のMRIを検討3_。
  • 幼児期には通常の発達評価
  • 学齢期の罹患者については、個別教育プログラム/504プランを検討する。
精神医学/行動 異常行動や気分障害の症候/徴候がみられる場合は、神経精神医学的評価 必要に応じ。
遺伝カウンセリング 遺伝の専門医療職4の手で行う。 医学的、個人的な意思決定の用に資するべく、本人や家族に対し、BBSの本質、遺伝形式、そのもつ意味についての情報提供を行う。
家族への支援,情報資源 以下に関する評価
  • 地域、あるいはParent to Parentのようなオンラインの情報資源の利用
  • 親の支援に関するソーシャルワーカーの関与の必要性
 
  1. ここに載せた推奨頻度は、コントロールがなされて状況が安定している例の場合である。実際は、もっと高頻度の評価が必要になるような例も多い。罹患者は、ケアコーディネーションのため、1-2年に1度は臨床遺伝医の評価を受けるようにする。
  2. 出生前の超音波検査で腎嚢胞が見つかることもあるが、腎異常の検出された例の39%は、出生後は異常なしということがある[Maryら2019]。
  3. 脳のMRIで、後頭領域を中心としたびまん性の白質消失、皮質下領域(尾状核,被殻,視床)の灰白質減少、海馬の体積減少、海馬形成不全がみられることがある[Bakerら2011,Keppler-Noreuilら2011]。

4.臨床遺伝医、認定遺伝カウンセラー、認定上級遺伝看護師をいう。

症候に対する治療

医学的問題
BBSの、多系統の器官にわたり、時に進行性の病変に対して、これを予防する治療法は存在しない。BBS罹患者に対しては、管理や治療的介入の立案・調整に向けた多職種連携が必要となる。

錐体杆体ジストロフィー
初期教育の計画立案は、盲が確実に生じることを前提にしたものとすべきである。点字使用に関する教育、移動訓練、障害に適応した生活技能、コンピュータ技能(音声認識・書き起こしソフトなど)、そして、視力がまだ残っているうちに大活字の文書を用いるといったことがきわめて重要である。

肥満
体重増加を抑えるため、単純炭水化物を減らした健康的な低カロリー食を摂る、視覚障害者用に適応させたウォーキング、ハイキング、サイクリング、スイミングなどの有酸素運動を定期的に行うことが推奨される。運動や適切な食餌を促すため、ヘルパー/パートナー役の人を起用することも有益と思われる。
メタボリックシンドロームや、その他BBSに伴う肥満関連の合併症の治療については、一般の人と同様の治療を行う。ライフスタイルに関するこうした推奨は、すべての人にとって有益である。

嗅覚脱失/嗅覚減退
嗅覚がない、あるいは弱い人は、危険物質(例えば、腐った食物,煙,ガス)を検知する代替手段をもつ必要がある。

腎疾患,消化器・肝疾患,甲状腺機能低下,性腺機能低下
これらについては、一般の人と同様に、国が定めた各専門分野のガイドラインに従って治療を行う。

多指趾,歯の異常,先天性心疾患,尿路性器奇形,筋骨格異常
こうした解剖学的異常については、外科的改善が必要になることがある。

神経発達の問題

発達遅滞ないし高次脳機能障害に対する対応は、年齢や個々のニーズに基づいて個別に進める。

03
作業療法、理学療法、言語治療、乳児のメンタルヘルスサービス、特別支援教育、感覚障害支援といったものが受けられるよう、早期介入プログラムへの紹介が推奨される。これは、アメリカでは連邦政府が費用を負担して、罹患者個人の治療上のニーズに対する在宅サービスが受けられる制度で、すべての州で利用可能である。

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アメリカでは、地域の公立学区(訳注:ここで言う「学区」というのは、地理的な範囲を指す言葉ではなく、教育行政単位を指す言葉である)を通じて発達保育園に入ることが推奨される。入園前には、必要なサービスや治療の内容を決定するために必要な評価が行われ、その上で、運動、言語、社会性、認知等の機能の遅れをもとに認定された子どもに対し、個別教育計画(IEP)が策定される。通常は、早期介入プログラムがこうした移行を支援することになる。
発達保育園は通園が基本であるが、医学的に不安定で通園ができない子どもに対しては、在宅サービスの提供が行われる。

全年齢
各地域、州、(アメリカの)教育関係部局が適切な形で関与できるよう、そして良好な生活の質を最大限確保する支援を親に対してできるよう、発達小児科医とよく話をすることが推奨される。押さえておくべき事項がいくつかある。

社会性/行動に関する懸念事項

小児に対しては、応用行動分析(ABA)をはじめとする自閉症スペクトラム障害の治療で用いられる治療的介入の導入に向けた評価を行うとともに、実際にそれを施行することがある。ABA療法は、個々の子どもの行動上の強みと弱み、社会性に関する強みと弱み、適応性に関する強みと弱みに焦点を当てたもので、ふつう、行動分析に関する学会認定士との1対1の場で行われる。
ティーン世代後半になって、BBS罹患者が疾患の重大さを自覚するようになるにつれ、鬱や不安の懸念が多くみられるようになる。こうした問題については、発達小児科医が対応することになろう。


5.Bardet-Biedl症候群罹患者の血縁者に対する遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝学的検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的、倫理的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

Bardet-Biedl症候群は、通常、常染色体潜性の遺伝形式をとる。

注:(1)BBSの臨床症候が確認された罹患者がいる家系の中に、別々の複数のBBS関連遺伝子にバリアントがみられることが確認された家系があることから、BBSについては、少遺伝子遺伝(oligogenic inheritance)であろうとする考え方がある[Manaraら2019]。ただ、遺伝形式に関するそうした考え方に異を唱える研究も複数みられる[Abu-Safiehら2012]。コピー数バリアントやイントロンのバリアントが同定され、また、意義不明バリアントを有する例で現れる表現型の特徴がより正確に知られるようになったことで、BBSについては、従来型の常染色体潜性遺伝であることを示すデータが積み上がってきているように思われる[Lindstrandら2016,Shamseldinら2020]。
(2)BBSに関与するmodifier遺伝子のバリアントが存在するかどうかという点については、現在、議論のあるところである[Yıldız Bölükbaşıら2018]。

血縁者の有するリスク(常染色体潜性遺伝)

発端者の両親

発端者の同胞 

発端者の子

BBS罹患者の子は、BBS関連の病的バリアントの1つに関し、絶対ヘテロ接合者(保因者)となる。

他の家族構成員

発端者の両親の同胞は、BBS関連の病的バリアントの保因者であることに関し、50%のリスクを有する。

保因者の特定

リスクを有する血族に対して保因者の検査を行うためには、家系内に存在するBBS関連の病的バリアントを事前に同定しておくことが必要となる。

出生前診断ならびに着床前遺伝学的検査

家系内に存在するBBS関連の病的バリアントが同定済の場合は、高リスクの妊娠に備えた出生前診断や、着床前遺伝学的検査を行うことが可能である。
出生前診断の利用に関しては、医療者間でも、また家族内でも、さまざまな見方がある。
現在、多くの医療機関では、出生前検査を個人の決断に委ねられるべきものと考えているようであるが、こうした問題に関しては、もう少し議論を深める必要があろう。


関連情報

GeneReviewsスタッフは、この疾患を持つ患者および家族に役立つ以下の疾患特異的な支援団体/上部支援団体/登録を選択した。GeneReviewsは、他の組織によって提供される情報には責任をもたない。選択基準における情報についてはここをクリック。

www.bardetbiedl.org

43 Balton Way
Harwich Essex CO12 4UP
United Kingdom
Phone: 01604 492916
Email: info@bbsuk.org.uk
www.bbsuk.org.uk

7168 Columbia Gateway Drive
Suite 100
Columbia MD 21046
Phone: 800-683-5555 (toll-free); 800-683-5551 (toll-free TDD); 410-423-0600
Email: info@fightblindness.org
www.fightingblindness.org

12 Camden Row
Suite 108, Camden Business Centre
Dublin 8
Ireland
Phone: 353 1 472 0468
Email: avril.daly@retina-International.org
www.retina-international.org

EU rare diseases registry for Wolfram syndrome, Alström syndrome and Bardet-Biedl syndrome (see Farmer et al [2013])
ww.registry.euro-wabb.org

www.bbs-registry.org


更新履歴:

  1. Gene Reviews著者: RaeLynn Forsyth, MD and Meral Gunay-Aygun, MD.
    日本語訳者: 佐藤康守(たい矯正歯科)、櫻井晃洋(札幌医科大学医学部遺伝医学)
    GeneReviews最終更新日: 2023.3.23.  日本語訳最終更新日: 2023.3.26.[in present]

原文: Bardet-Biedl Syndrome

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