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ジュベール症候群
(
Joubert Syndrome)
[Includes: AHI1-Related Joubert Syndrome, CORS2-Related Joubert Syndrome, JBTS1-Related Joubert Syndrome, TMEM67-Related Joubert Syndrome, NPHP1-Related Joubert Syndrome, CEP290-Related Joubert Syndrome]

Gene Review著者: Melissa Parisi, MD, PhD, Ian Glass, MD
日本語訳者: 末國久美子、川目裕 (
お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科ライフサイエンス専攻遺伝カウンセリング領域 )
Gene Review 最終更新日: 2007.3.8.日本語訳最終更新日: 2011.8.18.

原文 Joubert Syndrome


要約

疾患の特徴 

Joubert症候群は、特徴的な小脳と脳幹の形態異常、筋緊張低下、発達遅延、そして間欠的な過呼吸・無呼吸、非典型的な眼球運動の両方又はいずれかを有する。Joubert症候群の小児の多くは、体幹性運動失調を起こす。通常、粗大運動の獲得は遅れる。認知能力は、重度の精神遅滞から正常範囲まで多様である。一般的に呼吸異常は、年齢とともに改善する。表現型スペクトラムについては未解決な部分があり、家系内・家系間の多様性もみられる。その他の所見としては、網膜ジストロフィー、腎疾患、眼コロボーマ、後頭部の脳瘤、肝線維症、多指症、口腔過誤腫、内分泌異常がみられる場合もある。Joubert症候群患者の約10%は、後頭蓋窩に脳脊髄液の貯留を認め、それはDandy-Walker奇形に類似する場合がある。

診断・検査 

Joubert症候群の診断は、特徴的な臨床症状及び、小脳虫部の低形成と、中脳と橋の結合部(峡部)の軸状断に認められる脳幹の異常の結果示されるMRI画像で認められる“Molar tooth sign”に基づく。得られた画像は大臼歯の断面に似ている。4つの原因遺伝子(NPHP1CEP290AHI1TMEM67(MKS3))の変異は、それぞれJoubert症候群の10%を説明するにすぎない。その他の原因遺伝子はまだ知られていない。4つの遺伝子の全てにおいて、分子遺伝学的検査は臨床的に利用可能である。

臨床的マネジメント 

呼吸異常を伴うJoubert症候群の乳児と幼児の治療は、カフェインなどの呼吸刺激剤の投与、酸素投与、呼吸機械的補助;気管切開である。筋緊張低下と認知障害への対応には、言語聴覚士による口腔運動機能障害の治療;作業療法、理学療法、教育支援のための早期介入プログラム;定期的な神経心理学的検査と発達テスト。

小児期に重度の嚥下障害を伴う場合には、胃瘻の造設も考慮に入れる。水頭症が認められる場合には、脳神経外科のコンサルテーションが求められる;脳瘤は時に手術による閉鎖が必要。

眼科的所見の管理には,眼瞼下垂、斜視、弱視などの必要に応じて手術;屈折障害に対する補正レンズ;そして眼球動作失行への治療.視覚障害としての治療が、先天盲あるいは進行性網膜ジストロフィーに推奨される。

嚢胞性腎疾患あるいはネフロン癆の結果として現れる末期腎疾患の合併症には、しばしば透析や腎移植が必要である。肝不全や肝線維症には、門脈シャント術や同所性肝移植のような手術による介入が必要な場合がある。多指症には手術が必要な場合がある。成長、視力、肝臓と腎臓の1年に一度の機能評価が推奨される。

遺伝カウンセリング 

 Joubert症候群は、常染色体劣性遺伝形式である。受精時に同胞が罹患する確率は25%であり、50%は未発症の保因者となり、25%は未発症者の保因者となる。リスクのある同胞が未発症であると分かった場合、保因者となる確率は2/3である。リスクのある家族への保因者診断は、発端者で変異が確定されている場合に可能となる。AHI1CEP290TMEM67NPHP1の変異による出生前診断は、発端者あるいは保因者である両親に、これらの遺伝子変異が認められた場合に可能となる。胎児MRI検査を併用、あるいは併用しない超音波検査を利用した出生前診断も成功している。


診断

臨床診断

Joubert症候群の診断基準は、正式には定められていない。臨床では、次のような所見がJoubert症候群の臨床診断を支持する。「古典的」Joubert症候群の診断は、以下の所見を有する場合である。

  • Molor tooth signは、小脳虫部の低形成と中脳と橋の結合部(峡部)の軸状断に認められる脳幹の異常の結果示されるMRIの画像 [Maria et al 1997; Maria, Quisling et al 1999; Quisling et al 1999]である。Molor tooth signは、深い脚間窩;隆起した直線上の厚い中脳脚;そして虫部(小脳の中央部)の低形成より構成される [Maria, Quisling et al 1999]。 (図1A と図1B)。Molor tooth signはJoubert症候群に必須の所見である。
  • 以下の臨床所見
    • 乳児期の筋緊張低下、後に運動失調となる
    • 発達遅滞/精神遅滞
    • 異常な呼吸パターン(交互に起こる多呼吸及び/又は無呼吸)

及び/又は

  • 異常な眼球運動 (典型的には眼球運動失行、スムーズな追視の困難、注視や追視の際のけいれん様の動き) [Saraiva & Baraitser 1992; Steinlin et al 1997; Maria, Quisling et al 1999; Tusa & Hove 1999; Bennett et al 2003

図1A 正常の小脳虫部と脳幹の軸位 のMRI 画像(白い矢印で輪郭を描いた)
図1B Joubert症候群の子どもの小脳と脳幹の軸位のMRI の画像。矢印は、Molar tooth signの3つの鍵となる特徴を示している。

分子遺伝学的検査

GeneReviewsは,分子遺伝学的検査について,その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り,臨床的に実施可能であるとする. GeneTestsは研究機関から提出された情報を検証しないし,研究機関の承認状態もしくは実施結果を保証しない.情報を検証するためには,医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない.―編集者注.

遺伝子 

Joubert症候群の原因遺伝子は4つ同定されている。

  • NPHP1 [Parisi et al 2004, Castori et al 2005]
  • AHI1 [Dixon-Salazar et al 2004, Ferland et al 2004, Parisi et al 2006, Utsch et al 2006]
  • CEP290NPHP6) [Sayer et al 2006; Valente, Silhavey et al 2006]
  • TMEM67MKS3) [Baala et al 2007]

他の遺伝子座 さらなる2つの遺伝子座の遺伝子は、未だ特定されていない。

  • JBTS1 (遺伝子座の名称) オマーンの近親婚のある2組のアラブ人家系では、9q34に連鎖を示した [Saar et al 1999]。この遺伝子座に連鎖を示さないという報告もあるが [Blair et al 2002, Bennett et al 2003]、いくつかの家系において、この領域にマップした [Valente et al 2005]と報告されている。
  • CORS2JBTS2)(遺伝子座の名称) 近親婚のあるイタリア人の拡大家系 [Valente et al 2003]、いくつかのアラブ人の家系 [Keeler et al 2003]、その他2家系 [Valente et al 2005](ポルトガルとトルコ)で、染色体11番の動原体周辺に連鎖を示した。

臨床応用

  • 確認となる診断検査
  • 保因者診断
  • 出生前診断

臨床検査

  • NPHP1 NPHP1のホモ接合での欠失はJoubert症候群の数人に認められた。この変異の検出率は知られていないが、1〜2%となると見積もられている [Parisi et al 2004, Castori et al 2005, Parisi et al 2006]。しかしながら、Joubert症候群と若年性ネフロン癆及び/又は腎不全を合併するグループでは、変異検出率はより高くなる可能性がある。

注:(1)典型的な腎疾患は、10歳代まで起こらないため、若年でのJoubert症候群の診断時には腎疾患の有無を確認することができない可能性もある。(2) 同じ欠失は、若年性ネフロン癆(一部のCogan眼球運動失行症)に認められる頻度の高い変異である。(遺伝的に関連のある疾患を参照)

  • AHI1変異の割合はまだ明らかではない。しかしJoubert症候群117人のうち13人(11%)がAHI遺伝子変異を有するという報告がある [Parisi et al 2006]。
  • CEP290 Joubert症候群の96人中7人(7%)に、特定可能なCEP290遺伝子変異を認めた [Sayer et al 2006]という報告がある。今までは近親婚の家系の次世代において、他の4つの Joubert症候群の遺伝子座が除外された近親婚の家系の、18人中5人は原因となるCEP290遺伝子変異を認める [Valente, Silhavey et al 2006]。しかし、大規模なJoubert症候群のコホート研究がなされていないので、CEP290遺伝子変異の正確な頻度に関しては不明である。
  • TMEM67MKS3 Baalaら(2007)は、NPHP1遺伝子に欠失を持たない22人中3人に、MKS3としても知られているTMEM67に疾患の原因となる変異を同定した。TMEM67はJoubert症候群の6番目の座位であり、JBTS6と言われる。

表1

検査方法

検出された変異

変異検出頻度1

FISHあるいは欠失解析

NPHP1の欠失

〜1-2%2

シーケンス解析

AHI1 sequence variations

〜11%3

シーケンス解析

CEP290 sequence variations

〜10%4

シーケンス解析

TMEM67

〜10%5

  1. 遺伝子/遺伝子座位、表現型、人種、及び/又は検査方法により分類された、変異を伴う罹患者の割合。
  2. おそらく腎疾患を伴う場合には、さらに高率になる
  3. Parisi et al 2006
  4. Sayer et al 2006; Valente, Silhavey et al 2006
  5. NPHP1に変異のないJoubert症候群の22人中3人にTMEM67MKS3遺伝子変異が認められた [Baala et al 2007]。

検査結果の解釈

シーケンスの結果解析の解釈において考慮するべき問題点は、こちらを参照のこと。

付録;シーケンスの結果解析の解説

検出された変異のタイプ

  • 文献に報告された病的変異
  • 文献に報告されてはいないが、病的変異と予測される
  • 臨床的優位性が予測できない未知の変異2
  • 病的ではないだろうと予測されるが、文献に報告されていない変異
  • 文献に報告された病的ではない変異
  • 変異が検出されない時の可能性
  • 検査をした遺伝子に変異を有さない(例えば他の遺伝子や他の座に変異がある)
  • シーケンス解析では検出できない変異を有する(例えば大欠失やスプライス異常)
  • 検査をした遺伝子の領域に変異を有する(イントロンや調節領域)が、検査機関の手法ではカバーしていない
  1. 配列変異の推奨を標準化するためのACMGの推奨より引用
  2. 家族研究はこの変異が表現型を伴って分離しているかどうかを決定するのに使用されるかもしれない

遺伝的に関連のある(アレリックな)疾患

NPHP1

  • 若年性ネフロン癆(ネフロン癆1型) NPHP1遺伝子のホモ接合性の〜290kbの欠失は、若年性ネフロン癆の約30%の分子遺伝学的原因である [Hoefele et al 2005, Saunier et al 2005]。若年性ネフロン癆は、後に髄質の嚢胞腎の出現を伴う尿細管の萎縮と、進行性の間質性線維症を特徴とする(鑑別疾患を参照)。若年性ネフロン癆とNPHP1の欠失を有する本疾患の罹患者の一部では、頭蓋の画像上、molar tooth signを認める。Joubert症候群のその他の所見(例えば筋緊張低下、発達遅滞、眼球運動異常)が無く、この特徴を有する人の数は、明らかではないが、少ないと見込まれる。

NPHP1の分子遺伝学的異常を有し、若年性ネフロン癆に加えて網膜ジストロフィーを合併する場合には、Senior-L?ken症候群と呼ばれる。

  • Cogan症候群 この常染色体劣性遺伝形式を示す先天性眼性運動失行は、けいれん様を伴う水平方向の随意眼球運動の障害を特徴とする。Molar tooth sign を伴う小脳虫部の低形成を認める場合があり  [Whitsel et al 1995, Sargent et al 1997]、時にネフロン癆も発現する。NPHP1のホモ接合性の欠失は、幾人かの本疾患の罹患者に認められるが、Joubert症候群と若年性ネフロン癆の関係は不明である [Saunier et al 1997, Betz et al 2000]。

AHI1  AHI1遺伝子に変異を認める多くの罹患者は、網膜ジストロフィーを有し、数は少ないが若年性ネフロン癆に合致する腎不全も報告されており、それはSenior-L?ken症候群を示唆する [Parisi et al 2006]。

CEP290  Senior-L?ken症候群が、唯一CEP290の変異によるJoubert症候群以外の表現型である(鑑別疾患を参照) [Sayer et al 2006]。

TMEM67  TMEM67遺伝子の変異は、パキスタン人とオマーン人のMeckel-Gruber症候群の家系に同定されている [Smith et al 2006]。

臨床像

自然歴

Joubert症候群は、筋緊張低下、発達遅滞、そして呼吸障害、非典型的な眼運動の両方またはいずれかを認める [Saraiva & Baraitser 1992; Steinlin et al 1997; Maria, Bolthauser et al 1999; Bennett et al 2003]。しかしながら、Joubert症候群の表現型は一様ではなく、罹患者の臨床所見が多様である。また、報告された罹患者の多くはmolar tooth signの記述がなされる前の報告であるため、未解決な部分がある。

Joubert症候群には表現型の多様性が、家系内・家系間の両者に認められる。そもそもJoubertらにより報告された(1969)4人の罹患同胞のある家系において、小脳の所見にかなり多様性が認められている。2人には小脳虫部前下方の無形成を認め、3人目は小脳虫部の完全無形成を認め、4人目には小脳虫部の完全無形成に加え後頭部髄膜脳瘤を認めた。Joubert症候群の一卵性双生児には表現型の不一致が認められた。MRIによるmolar tooth signの所見は両者ともに認めたが、解剖学的・神経学的所見及び発達の所見は大きく異なっていた [Raynes et al 1999]。

報告されている約2:1という男女比は [Saraiva & Baraitser 1992]、他の調査では確認されない [Steinlin et al 1997]。

Joubert症候群の臨床所見の多くは、乳児期に明らかとなる [Joubert et al 1969, Boltshauser & Isler 1977]。Joubert症候群の小児は体幹性運動失調と、筋緊張低下の組み合わせによって、粗大運動の獲得が遅れる。周期的な舌の動きも多く、そのことで舌肥大になる場合がある。無呼吸により死亡する乳児もいるが、間欠的な無呼吸は次第に年齢とともに改善し、完全に消失する [Maria, Quisling et al 1999]。

Joubert症候群には臨床的な多様性がある。合併する臓器によって、Joubert症候群の異なる型と考えられ、”Joubert症候群関連疾患”と呼ばれる(鑑別疾患にまとめた)。これら関連疾患がJoubert症候群のサブタイプとして存在するのか、あるいは違った症候群なのか議論されている。いずれにせよ、解決には原因遺伝子の特定を待つ必要がある。

中枢神経系の所見

  • 認知能力は多様で、重度の精神遅滞から正常範囲に及ぶ;数は少ないが大学へ進学した者もいる。精神遅滞が存在する場合、一般には中程度である [M Parisi, I Glass, personal observations]。
  • 言語失行は、よく見られる所見であり、言葉の理解と言語能力の間に認められる相違の原因となる [Hodgkins et al 2004, Braddock et al 2006]。
  • 脳波異常及び/又はてんかんは、一部の罹患者に認める。しかしながら、正確な頻度は不明である [Saraiva & Baraitser 1992]。
  • 自閉症は、Joubert症候群の多くの子どもに認める [Holroyd et al 1991, Ozonoff et al 1999];しかし、より最近の調査によると、これらの行動障害は古典的な自閉症ではない [Takahashi et al 2005]。
  • 問題行動 衝動性やかんしゃくといった行動問題は、一部の小児や青年に認められる [Deonna & Ziegler 1993, Hodgkins et al 2004, Farmer et al 2006]。

その他の中枢神経系の先天形態異常 Molar tooth signに加えて、次のような特徴も認める。

  • 第四脳室あるいは、後頭蓋窩の脳脊髄液の貯留異常は、Dandy-Walker奇形に類似する(〜10%の罹患者) [Maria et al 2001]
  • 後頭部の脳瘤あるいは髄膜瘤 [Genel et al 2004]
  • Dandy-Walker症候群の典型的な所見は無いが、シャントを必要とする水頭症 [Genel et al 2004]
  • 脳梁欠損 [Valente et al 2005]
  • 神経上皮嚢胞 [Marsh et al 2004]
  • 多少脳回は、Joubert症候群のひとつのサブタイプに認められる稀な所見であり [Gleeson et al 2004]、AHI1遺伝子に変異のある罹患者に認められる [Dixon-Salazar et al 2004]
  • ヘテロトピア(神経遊走機能異常) [Saraiva & Baraitser 1992]

その他に以下のような所見が認められる場合もある。

眼科的な所見 色素性網膜症を主症状とする網膜の疾患は、古典的な網膜色素変性症と区別できない可能性がある;それは、新生児期に先天盲を発症し、Leber先天黒内症に類似する網膜電図(ERG)の減弱、あるいは消失と同様に重症である。しかしながら、網膜疾患は進行せずまた、必ずしも乳児期あるいは早期小児期に存在するわけではない [Steinlin et al 1997]。

Joubert症候群の罹患児の多くは、出生時に水平方向の眼球振とうがあり、年齢とともに改善する。捻転様、振子様の眼振もまた認められる。

眼運動失行症が、しばしば乳児期からでなく小児期より認められるとされるのは、おそらくこの所見の認識不足によるものであろう [Steinlin et al 1997]。眼運動失行症を伴う小児の多くは、追視を開始することができないので、代わりに頭を突き出す [Hodgkins et al 2004]。出生時の明らかな眼球運動異常にもかかわらず、視覚機能の成熟によって、視力は年齢とともに改善する [M Parisi and A Weiss, personal observation]。

眼瞼下垂、斜視、及び/又は弱視の可能性もある。

第三脳神経(動眼神経)麻痺の可能性もある [Hodgkins et al 2004]。

眼球のコロボーマで最も頻度が高いのは、網脈絡膜コロボーマであると言われている [Saraiva & Baraitser 1992]。

腎疾患 腎疾患は、出生時には稀であるが、小児期、成人期に発症する場合がある [Steinlin et al 1997]。腎臓の症状には、以下が含まれる。

  • 嚢胞性異形成 胎児分葉を伴う未熟な腎臓において、多数の様々な大きさの嚢胞として、腎臓の超音波所見により認められる [Saraiva & Baraitser 1992, Steinlin et al 1997, Satran et al 1999]。この所見は、出生前、あるいは出生時に認められることもあるDekaban-Arima症候群のひとつとしてとみなされてきた(鑑別疾患を参照)。
  • 若年性ネフロン癆 若年性ネフロン癆は、慢性の尿細管間質ネフロパチーの一種である [Saunier et al 2005]。若年性ネフロン癆は生後10年あるいは20年の内に、しばしば多飲多渇症、多尿症、尿濃縮障害、成長障害、及び/又は貧血を伴う。末期腎疾患(ESRD)への進行は、平均13歳までにおこる [Hildebrandt et al 1998]。超音波で確認が可能な腎臓の変化は、疾患の後期に、エコー輝度が高く、ときに皮髄境界部に嚢胞のある小さな瘢痕のある腎臓として認められる。

これら2つの腎病変は過去には別なものと考えられてきたが、近年、Dekaban-Arima症候群の罹患者の嚢胞異形成腎として認められた組織的変化を、ネフロン癆として解釈しなおした報告がある [Kumada et al 2004]。このことは、罹患者の年齢や疾患のステージなどの要因により異なる、特徴的な腎の所見がネフロン癆の連続性の一部であると推測される。

Joubert症候群を、2つに分類することが提案されていた。網膜ジストロフィーを伴うタイプと伴わないタイプである。この分類では、腎障害は網膜ジストロフィーを伴うタイプ(B型)にのみ存在する [King et al 1984, Saraiva & Baraitser 1992]。その後の観察結果は、この図式に常に一致するわけではない [Steinlin et al 1997, Chance et al 1999]。しかしながら、Joubrt症候群の原因遺伝子として知られる3つの遺伝子は、腎嚢胞性疾患と網膜ジストロフィーの両者に関連があるということから、網膜疾患と腎障害は、しばしば同時に起こるというエビデンスを示唆している [Parisi et al 2006, Sayer et al 2006]。

肝線維症 肝線維症は、Joubert症候群の一部の罹患者に起こり、通常、進行性であるが、出生時に症状を呈することは稀である。肝線維症は、しばしば網脈絡膜のコロボーマに合併し、時に腎疾患を合併する。コロボーマと精神遅滞(精神発達遅滞)、失調、小脳虫部形成不全と肝線維症の組み合わせは、COACH症候群と称されてきた [Satran et al 1999, Gleeson et al 2004]。著者らの経験では、COACH症候群の多くの子どももまた、Joubert症候群の古典的な所見とmolar tooth sighを認める  [M Parisi and W Dobyns, personal observations](鑑別疾患を参照)。

多指症 多指症は、片側あるいは両側に認められ、しばしば軸後性多指症である。足の軸前性多指症もまた頻繁に報告がある [Saraiva & Baraitser 1992]。中央列多指症はJoubert症候群の罹患者の一部に報告があり、そのうちの多くは口-顔-指症候群(oral-facial-digital syndrome)VI型の所見を有する [Gleeson et al 2004](鑑別疾患を参照)。

その他 Joubert症候群男性の一部は、小陰茎症があった;他の小児では、成長ホルモン分泌不全あるいは汎下垂体機能低下症を有していた [M Parisi, personal observations]。これらの所見の重要性は、未だ明らかではない。

舌の分葉と口腔の小帯を口−顔-指症VI型/Varadi-Papp症候群様の症状を有する者に認めることがある。その場合、咀嚼、嚥下、呼吸に関する問題が生じる可能性がある。

両側頭部の狭窄を伴う長い顔、高いアーチ状の眉、眼瞼下垂、上向きの鼻孔を有する高い鼻梁、三角形の口、下顎の突出、耳介の低位などの典型的な顔貌の特徴が、時に報告されている [Maria, Bolthauser et al 1999]。これらの所見は乳児期に識別することは困難であり、かなり非特異的である。しかしながら多くの観察者は”Joubert顔貌”として報告している [Braddock et al 2003]。

遺伝子型と臨床型の関連

遺伝子型と臨床型の関連は予備的な段階である。

NPHP1 これまでは、NPHP1遺伝子に欠失がある全ての罹患者は、若年性ネフロン癆と矛盾しない腎障害を呈している [Parisi et al 2004, Castori et al 2005];1例のみ網膜ジストロフィーが報告されている [Castori et al 2005]。Molar tooth signは、これらの人に特有の所見であり、厚い中脳脚と軽度の虫部低形成を伴う。

AHI1 ひとつの研究では、疾患原因となるAHI1遺伝子変異を有する12家系中11家系が、網膜ジストロフィーのエビデンスを有していた [Parisi et al 2006]。AHI1遺伝子変異を有する3家系のみが、ネフロン癆に一致する腎疾患と報告されている [Parisi et al 2006, Utsch et al 2006]。そのうち1つの調査では、発症は20代であった [Parisi et al 2006]。その他のグループは、AHI1遺伝子変異を有する10家系のコホート研究で腎疾患を同定しなかったが、複数の若年発症の先天盲は何人かの罹患者に認められた [Valente, Brancati et al 2006]。

 限られたデータから、原因遺伝子であるAHI1に変異のあるJoubert症候群罹患者に認められる多少脳回症が、Jouberut症候群の特異なタイプかどうかの結論を導くことはできない。 [Parisi et al 2006]。その理由としてAHI1遺伝子変異が特定された人の大部分は、多小脳回症を認めない。

CEP290 CEP290遺伝子変異を伴う頭部画像を実施した全ての家系は、小脳虫部の形成不全、及び/又はMTS(Molar tooth sign)を示した。原因遺伝子としてCEP290遺伝子変異を有する家系の大部分で、網膜ジストロフィーを発症し、先天盲を発症する者もあった [Sayer et al 2006; Valente, Silhavey et al 2006]。ネフロン癆と合致する腎疾患を有する罹患者もまた、CEP290遺伝子変異を有する多くの家系に認められ [Sayer et al 2006]、網膜ジストロフィーとの組み合わせは、Senior-L?ken症候群を示す。その他の表現型は、非特異的な腎臓の皮質嚢胞、眼組織のコロボーマ(眼のコロボーマ)と、脳瘤である [Sayer et al 2006; Valente, Silhavey et al 2006]。

TMEM67  TMEM67遺伝子に変異がありJoubert症候群の臨床診断のついた3人は、小脳虫部の低形成、及び/又はMTS(molar tooth sign)を有するが、そのうち2人にはMeckel症候群の古典的な特徴所見(脳瘤、腎嚢胞、多指症、肺線維症)を欠いた。その他の1人は、嚢胞腎と肝疾患を有した [Baala et al 2007]。さらに相関関係を示すためには、この遺伝子の変異を有するJoubert症候群の罹患者を特定することが待たれる。

命名法

“Joubert症候群”という名称は、MRIの画像上molar tooth signの所見を有する診断基準(臨床診断を参照)を満たす症例に与えられる。これはまた、”古典的Joubert症候群”とも言われる。

“Joubert症候群及び関連疾患”(JSRD)という名称は、Molar tooth signとJoubert症候群の臨床的な所見を共有するが、それはまた異なる症候群を示す他の症状も有する。罹患者のグループがmolar tooth signを示す、少なくとも8つの疾患が特定された [Satran et al 1999, Gleeson et al 2004; the molar tooth signを合併する疾患 及び 表2、鑑別疾患を参照]。これらはJoubert症候群のサブタイプなのか、あるいは異なる症候群かどうかという議論がある。

“Joubert症候群及び関連疾患”あるいは”小脳-眼-腎症候群”(cerebello-oculo-renal症候群;CORS)という名称を適切に使用するためには、これらの疾患の原因遺伝子の特定が待たれる。

頻度 

Joubert症候群の罹患率は、罹患家系の小集団により1:258,000と見積もられてきた [Flannery & Hudson 1994]。しかしながら、この割合はmolar tooth signの診断における役割が認識される前に計算されたものなので、疾患の正しい罹患率を過小評価している可能性がある。1:100,000という罹患率は遺伝カウンセリングの目的で妥当な見積もりである [D Flannery and M Parisi, personal discussions]。

創始者効果は、フランス系カナダ人に認められている。Joubertらによって最初に報告された家系(1969)では、1600年代にフランスからケベック州へ移住した創始者にさかのぼる [Badhwar et al 2000]。その他の創始者効果も推定される。


鑑別診断

本稿で扱われる疾患に対する遺伝学的検査の実施可能性に関する最新情報は,GeneTests Laboratory Directoryを参照のこと.―編集者注.

molar tooth signを伴う疾患:Joubert症候群及び関連疾患(JSRD)

次に示す常染色体劣性疾患はmolar tooth sign の記述に先立ち報告されたが、より最新の研究では、これらの疾患を有するより多くの人がmolar tooth signを示すことが明らかとなった [Pellegrino et al 1997, Chance et al 1999, Satran et al 1999, Gleeson et al 2004]。表2にまとめたmolar tooth signを伴う症候群の分類は、複雑で、依然変化している。

  • Dekaban-Arima症候群(網膜症、異形成嚢胞腎) [Dekaban 1969]
  • 重篤な網膜形成不全Leber先天黒内障と類似する先天盲を伴う重篤な網膜形成不全
  • COACH症候群(小脳虫部の低形成、精神遅滞、失調、コロボーマ、肝線維症) [Verloes & Lambotte 1989, Gentile et al 1996]
  • Senior-L?ken syndrome (SLS; 網膜症と若年発症のネフロン癆)  [L?ken et al 1961, Senior et al 1961]
  • Varadi-Papp syndrome(OFD VI型)は、小脳虫部の低形成、口腔小帯、舌の過誤腫、正中線の口唇列が挙げられ、同様に異なる特徴のY字型中手骨を伴う中央列多指症が挙げられる [Munke et al 1990]。腎臓と心臓の合併症も報告されている。molar tooth signは少なくとも1人の人に認められた [Gleeson et al 2004]。
  • ネフロン癆は、少なくとも6つの遺伝子の変異により起こり、NPHP1も含まれる(Allelic Disordersを参照)。乳児期発症型のネフロン癆(NPHP2)は、INVS遺伝子の変異と関連があり、inversinをコードする。NPHP2の表現型は、内臓逆位を伴うことがあり、典型的にはJoubert症候群より重篤である [Otto et al 2003]。NPHP3NPHP4の遺伝子変異は、若年性ネフロン癆の原因としては稀である [Hoefele et al 2005]。NPHP5JQCB1)遺伝子の変異は、網膜ジストロフィーの早期発症を伴うSenior-L?ken症候群にほとんど関連する。
  • Cogan 眼球運動失行症候群は、時にmolar tooth sigh及び又はネフロン癆を伴う先天性眼球運動失行である。NPHP1遺伝子変異が数例の症例で同定されている [Saunier et al 1997, Betz et al 2000]。

表2 Joubert症候群と関連する脳−口−腎疾患群の臨床的な特徴

特徴

Classic Joubert

Dekaban-
Arima

Joubert-
LCA-Like

COACH

神経症状

小脳虫部の低形成及び失調

+

+

+

+

MRIのMorar tooth sign

+

(+)

+

(+)

発達遅滞/精神遅滞

+

+

+

+

一過性の多呼吸±無呼吸

+

+

+

(+)

Dandy −Walkder様奇形

(+)

?

?

?

脳瘤

(+)

(+)

(+)

(+)

眼科的特徴

 

 

 

 

網膜ジストロフィー

(+)

+

+

+

深刻な視覚障害/LCA

+

+

(+)

視覚運動失調

+

(+)

(+)

(+)

コロボーマ

?

?

+

腎臓

嚢胞性異形成

+

ネフロン癆

(+)

(+)

その他

 

 

 

 

特徴的な顔貌

(+)

?

(+)

?

肝線維症-肝硬変

(+)

+

多指症

(+)

?

(+)

?

舌過誤腫/口腔分葉

早期死亡

(+)

+

(+)

(+)

遺伝子

NPHP1
AHI1
CEP290
TMEM67

AHI1
CEP290

TMEM67

表2(つづき) Joubert症候群と関連する脳−口−腎疾患群の臨床的な特徴

特徴

Senior-L?ken

OFD VI Varadi

Juvenile Nephron-
ophthisis

Cogan OMA

神経症状

小脳虫部の低形成及び失調

(+)

+

(+)

(+)

MRIのMorar tooth sign

(+)

(+)

(+)

(+)

発達遅滞/精神遅滞

(+)

+

(+)

(+)

一過性の多呼吸±無呼吸

(+)

(+)

?

?

Dandy −Walkder様奇形

?

?

(+)

?

脳瘤

(+)

(+)

眼科的特徴

網膜ジストロフィー

+

(+)

?

深刻な視覚障害/LCA

(+)

?

?

視覚運動失調

(+)

(+)

(+)

+

コロボーマ

?

?

腎臓

嚢胞性異形成

(+)

ネフロン癆

+

+

(+)

その他

特徴的な顔貌

(+)

(+)

?

?

肝線維症-肝硬変

?

多指症

?

+1

舌過誤腫/口腔分葉

+

早期死亡

(+)

(+)

?

?

遺伝子

NPHP1345
CEP290

NPHP1,
34
CEP290

NPHP1

出典Chance et al 1999, Satran et al 1999, Bennett et al 2003, Gleeson et al 2004, Parisi et al 2004
+ ある
(+) 時にある
−ない
? 不明
LCA-like = Leber congenital amaurosis-like
OMA = Oculomotor apraxia

  1. しばしば中間、Y字型中手骨を伴う

Bardet-Biedl症候群(BBS) Bardet-Biedl症候群(BBS)は、錐体−桿体網膜ジストロフィー、体幹肥満、軸後性多指症、認知障害、男性の低ゴナドトロピン性性機能低下症、女性の性器形態異常、そして腎形態異常、腎形成不全、水腎症、腎線維症、糸球体腎炎などの腎疾患を特徴とする。進行性の網膜の障害はしばしば失明の原因となり、腎の障害は有意に症状に影響する。一部の罹患者は肝線維症を有する。多くの罹患者は、協調運動不全を伴う失調があるが、小脳の関わりあるいは構造異常は非典型的である [Baskin et al 2002]。少なくとも11の遺伝子が報告されているが、その多くは一次繊毛の機能を有するNPHP1に類似する。遺伝形式は常染色体劣性遺伝形式である。

小脳虫部の低形成を伴うその他の症候群 Joubert症候群の鑑別疾患として考慮するその他の症候群は、小脳虫部の形成不全あるいは、MRIのmolar tooth signを伴わない小脳虫部の発育不全である [Bordarier & Aicardi 1990, Ramaekers et al 1997]。

  • Dandy-Walker奇形 この後脳の奇形は、小脳虫部の低形成及び/又は、第四脳室の拡大した後方小脳の脳脊髄液の貯留を特徴とする(しばしば前方脳窩の”嚢胞”と間違われる)。時に認められる所見は、脳梁の欠損症あるいは形成不全、そして水頭症である [Patel & Barkovich 2002]。MRI の所見にてmolar tooth signとDandy-Walker奇形を識別できる [Maria et al 2001]。
  • X連鎖性小脳低形成 この疾患の男子は出生時の筋緊張低下と、中程度の精神遅滞を呈する;失調、大頭症、てんかんを発症することがある [Philip et al 2003]。斜視と性器発育不全は頻度が高い [Bergmann et al 2003]。保因者の女性は軽度な障害を有することがある。X連鎖性のOPHN1遺伝子変異はoligophrenin1をコードし、それは少なくともこの疾患の1つの型に関連がある。
  • 失調及び眼球運動失調1型(AOA1)及び失調及び眼球運動失調2型(AOA2) これら2つの常染色体劣性遺伝性疾患は、それぞれaparataxin(APTX)とsenataxin(SETX)をコードする遺伝子の変異により起こる。MRI 画像上に認められる小脳萎縮を伴う小児期発症の進行性小脳失調及び眼球運動失調の所見を含む。末梢神経障害は徐々に進行し、精神遅滞が現れることもある。AOA1の発症年齢は6歳から8歳である。;罹患者は低アルブミン血症もまた発症し、AOA2の発症年齢はAOA1 に比べると遅い(15歳から17歳)。;罹患者は血中α−フェトプロテイン濃度が高くなる [Le Ber et al 2005]。
  • 先天性糖鎖合成異常症(CDG)  [GeneReviewの先天性糖鎖異常症概説、先天性糖鎖異常症1型(CDG-Ia)を参照]。発達遅滞、筋緊張低下、失調症、斜視などの特徴をJoubert症候群と共有する。CDG-Ia型は加えて、乳児期の異常な皮下の脂肪分布、陥没乳頭といった特徴があり、進行性変性の経過をたどる [Jaeken & Hagberg 1991]。罹患者は、橋部位の異常にかかわらず小脳の低形成が認められることがあるが、呼吸障害、多指症、腎障害、molar tooth signを有するという報告はない。CDGは、糖タンパクのグルコシル化の異常という特徴がある。血清トランスフェリンの等電点電気泳動はCDGの多くの型に異常が認められ、そのためにCDGの診断に利用できる;血清トランスフェリンの等電点電気泳動はJouber症候群では正常である [Morava et al 2004]。
  • 3-C症候群(cranio-cerebello-cardiac症候群、Ritscher-Schinzel症候群) 部分的あるいは完全な小脳虫部の低形成を特徴とする。3−C症候群はしばしばDandey-Walker奇形に認められるものと同様の、第四脳室の嚢胞に関連がある。その他の所見は、房室中隔欠損のような先天性心疾患や、口蓋裂や眼のコロボーマなどの特徴的な頭蓋顔面の形態を有する [Kosaki et al 1997]。精神遅滞は一般的であるが幅がある。診断基準が提案されている [Leonardi et al 2001]。罹患同胞と血族婚の組み合わせの報告から、常染色体劣性遺伝の遺伝形式が推測される。6番染色体のサブテロメア領域の欠失もまた報告がある [Descipio et al 2005]。
  • 橋小脳の形成不全/萎縮 この疾患の不均一な集団は、常染色体劣性遺伝の形式を示し、あるいは、出生前・周産期の障害を示す。多くの罹患者は小脳虫部の形成不全があり、しかしJoubert症候群とは対照的に、橋の形成不全もあり、頭蓋のMRI画像でmolar tooth signを認めない [Barth 1993]。一部の罹患者は、脊髄性筋萎縮症患者に類似の進行性の運動変性を有し、またある罹患者にはジスキネシア(運動障害)がある。;大部分は重度の障害があり予後不良である。
  • Oral-facial-digital(OFD)症候群II型、III型(口顔指症候群) OFDのこれらの型にmolar tooth signが存在するかは未知である。
    • OFDII型(Mohr症候群)は、異常な小帯、正中線での顔面裂、多指症を合併する舌腫瘍を特徴とし、加えて小脳虫部の形成不全がある [Reardon et al 1989]。
    • OFDIII型は、精神遅滞と後軸性多指症を特徴とする [Sugarman et al 1971]

  • Meckel-Gruber症候群 この疾患は、後頭部の脳瘤、多指症、多脳胞腎を特徴とする。肝線維症、胆管増殖、などの肝の進行性障害と、胆管板形成異常は、比較的頻度が高く認められる。小脳虫部の低形成は一部の人に認められると報告されている。少なくとも3つの遺伝子座がマッピングされており [Morgan et al 2002]、そのうち2つは特定されている [Kyttala et al 2006]。これらの遺伝子のうちひとつの変異は、TMEM67であり、それはJoubert症候群の人にすでに特定されている(Molecular Genteic Testing とAllelic Disordersを参照)。遺伝形式は常染色体劣性遺伝形式である。

臨床的マネジメント

初回の診断後における評価

 基本的評価としては、罹患乳児/小児において疾患の及ぶ範囲を確認することである。推奨事項は、Joubert Syndrome Foundation and Related Cerebellar Disordersのウェブサイトにも述べられている。

  • 軸状断の高画質MRI(3mm幅)による、中脳から橋の後頭蓋窩を軸状断、加えて、矢状断、環状断により、molar tooth signの存在と他の小脳奇形あるいは脳瘤の存在を評価する。
  • 呼吸パターン(多呼吸、無呼吸)と眼運動異常に注目しての基本的な神経学的な評価。
  • 無呼吸の症状を評価するための睡眠ポリグラムによる睡眠歴。
  • 家族歴の記録による遺伝的な評価、成長と頭囲の評価、及び多指症、特徴的な顔貌、舌がん/分葉、小陰茎のような頻度の低い所見の評価。
  • 男性では小陰茎あるいは成長ホルモン分泌不全の兆候、他の下垂体異常の内分泌系の評価
  • 言語療法士による口腔機能の評価及び/又は嚥下造影検査。
  • 年齢に応じた尺度や検査による発達評価。
  • 小児眼科医による、視覚誘発電位(VEP)や網膜電位図(ERG)、眼運動試験などの特殊な検査を考慮しながら、コロボーマと網膜の変化の評価。
  • 腎嚢胞及び/又は腎線維症、肺線維症を評価するため、腹部超音波検査。
  • 血圧測定、血中尿素窒素(BUN)、血清クレアチニン濃度、全血球算定値(CBC)、朝一番の排尿から尿の濃縮能を測定する比重検査を含む腎機能の検査。
  • トランスアミラーゼ、アルブミン、ビリルビンも含む肝機能検査。

症状に対する治療

呼吸器

  • 異常な呼吸パターンの乳児及び小児は、もし異常が重度であるならば、無呼吸のモニタリングを考慮に入れるべきである。支持的治療として、特に新生児期には、カフェインのような刺激薬物の投与あるいは酸素などが含まれる。
  • 有意な呼吸異常を伴う乳児の外科的処置の麻酔においては、一部の症例において、一過性無呼吸の悪化を避けるため、オピオイドを含まない薬剤による部分麻酔で行う  [Vodopich & Gordon 2004]。
  • 稀に、人工呼吸及び/又は気管切開は重度の呼吸障害の小児に考慮される場合がある。

筋緊張低下と治療的介入

  • 言語療法士による口腔運動障害の適切な管理と治療。
  • 重度の嚥下障害を有する小児の摂食のための、胃瘻の設置。
  • 早期介入プログラムによる作業療法・理学療法。
  • 学校生活を最大限支援するため、学齢児童へ個別の教育アセスメントと支援。
  • 小児期の年齢に応じた神経心理学的検査と発達検査。

その他の中枢神経系の異常

  • 神経外科への紹介は、しばしば水頭症(急速な頭囲の拡大及び/又は大泉門の腫脹)のある罹患者へ適応される。
  • 水頭症がシャントを必要とすることは稀である。
  • 後頭蓋窩の嚢胞と液貯留は、介入を必要とすることは稀である。
  • 脳瘤は第一に閉鎖手術を必要とする場合がある。
  • てんかんは、神経科医の管理のもとでEEGにより評価され、標準的な抗てんかん薬(AEDs)で治療されるべきである。
  • 様々な抗精神薬がJoubert症候群の合併症としての問題行動に使用されている、すべての小児に一様な効果をもたらす単一の薬剤はない。

眼科

  • 眼瞼下垂、斜視、弱視の症状には手術が必要。
  • 屈折障害への補正レンズの使用。
  • この疾患に特化した研究成果はないが、眼球運動失行への視機能訓練の可能性。
  • 先天盲あるいは進行性網膜ジストロフィーがある場合、視覚障害への治療。

腎疾患

  • 泌尿器科への紹介が望ましい。
  • ネフロン癆は、10代あるいはそれ以上の年齢から、しばしば透析及び/又は腎移植を必要とする。
  • 高血圧、貧血、腎疾患末期(ESRD)のその他の合併症もまた特別な治療を必要とする場合がある。

肝線維症

  • 消化器病専門医への紹介が望ましい。
  • 肝障害及び/又は線維症の、適切な門脈シャントのような外科的介入の準備は消化器病専門医によって管理されるべきである。
  • 本症候群の罹患者は、時に同所性の肝移植が必要である。

多指症

  • 外科的治療

その他

  • 口腔顔面裂は、標準的な外科的治療により治療する。
  • 舌腫瘍は正常な嚥下を障害し、あるいは呼吸障害となるため、外科的な切除が必要になることがある。
  • 閉塞性睡眠時無呼吸の症状及び/又は舌肥大のために、睡眠ポリグラムによる評価及び/又は耳鼻咽喉科医によるアデノイド切除、扁桃摘出術、外科的舌縮小が考慮される場合がある。
  • 月経周期の異常には内分泌科医への紹介が望ましい。

経過観察

Joubert症候群の乳児期あるいは小児期には、合併症の予後を予測する際立った特徴的所見は認められないが、合併症の進行の可能性があるため、多くの1年おきの検査(評価)が推奨される。(Joubert Syndrome Foundation and Related Cerebellar Disordersのウェブサイトを参照)

  • 小児科的評価と、成長および性成熟のモニタリング。
  • 眼科の評価、視力、追視能力、網膜ジストロフィーの進行(AHI1遺伝子あるいはCEP290遺伝子に変異を有する全て人は、網膜ジストロフィーのハイリスクである)。
  • 肝臓と腎臓の異常を評価する腹部超音波検査。
  • 肝機能検査。
  • 腎機能の検査:血圧測定、BUN、クレアチニン、CBC、朝一番の尿検査(Joubert症候群の罹患者のうち、NPHP1遺伝子の欠失をホモで有する人、CEP290遺伝子の変異をホモで有する人、AHI1遺伝子変異をホモで有する可能性のある人は、ネフロン癆が高リスクであるため、腎臓専門医による腎機能モニタリングが必要である)。

回避すべき薬物や環境

腎臓障害のある人は、NSAID(非ステロイド抗炎症薬)のような腎毒性のある薬剤は避けるべきである。

肝障害のある人は、肝毒性のある薬剤を避けるべきである。

研究中の治療法

情報を入手するために、さまざまな症状や疾患の臨床試験を行っているCrinicalTraials.govの検索。注意:この疾患への臨床試験はないかもしれない。

その他

遺伝外来 患者や家族に自然経過,治療,遺伝形式,患者家族の遺伝的発症リスクに関する情報を提供とするとともに,患者サイドに立った情報も提供する.Gene Test Clinic Directoryを参照のこと.

患者情報 本疾患の支援グループや複数疾患にまたがった支援グループについては「患者情報」を参照のこと.これらの機関は患者やその家族に情報,支援,他の患者との交流の場を提供するために設立された.

遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

Joubert症候群は、常染色体劣性遺伝形式である.

患者家族のリスク

発端者の両親

  • 発端者の両親は確実ヘテロ接合性(obligate heterozygote)であり、変異アレルを1つ有する保因者である。
  • ヘテロ接合性の場合には無症状である。

発端者の同胞 

  • 受精した時点で、罹患者の子どもは発症する確率が25%であり、症状が無い保因者となる確率が50%であり、発症せず保因者にもならない確率が25%である。
  • 未発症である同胞の、保因者となる確率は2/3である。
  • ヘテロ接合性の変異を有する人(保因者)は、症状が無い。

発端者の子 

発端者の子は、確実保因者(obligate carrier)である。Joubert症候群の罹患者が妊娠、出産をしたという報告は無いとはいえ、現在この疾患において精神遅滞のスペクトラムが広いということが知られており、今後、子を得た罹患者の報告の可能性がある。

他の血縁者へのリスク

発端者の両親の同胞が保因者である確率は50%である。

保因者診断

発端者の疾患の原因となる遺伝子変異が特定された場合には、リスクのある家族の保因者診断は、臨床ベースで利用可能となる。

遺伝カウンセリングに関連した問題

家族計画 

遺伝的リスクの決定、保因者の状態の明確化、出生前診断の可能性を議論するための、最適な時期は妊娠前である。

DNAバンキング DNAバンキングは、将来、利用する目的でDNAを保存するもの(典型的には白血球から抽出されたもの)である。検査方法及び、我々の遺伝子・変異・疾患への知見は将来進む可能性があるので、罹患者のDNAを貯蔵しておくことは考慮されるべきである。DNAバンキングは、現在の利用可能な検査の感受性が100%に満たないという状況において特に重要である。このサービスを提供する研究所は、DNAバンキングのリストを参照。

出生前診断

分子遺伝学的検査 出生前診断は、AHI1CEP290TMEM67NPHP1のそれぞれの遺伝子に関連するJoubert症候群のリスクが高い妊娠に対して、15〜18週に行われる羊水穿刺あるいは10〜12週に行われる絨毛診断(CVS)によって行われる可能性もある。罹患家系の疾患の原因となる両アレルは、出生前診断の前に特定されている必要がある。

注意:妊娠期間は、正常な最終月経の初日あるいは、超音波検査の測定による日から計算した月経の週として表される。

出生前画像診断 第1三半期での 25%のリスクのJoubert症候群の診断を、超音波検査を利用して脳瘤のような脳の構造異常を特定しておこなわれた報告がある  [van Zalen-Sprock et al 1996, Wang et al 1999]。より典型的には、リスクのある胎児の出生前診断として、早くて第2三半期に、後頭蓋窩及び/又は腎臓と指の出生前超音波検査にておこなわれている [Ni Scanaill et al 1999, Aslan et al 2002, Doherty et al 2005]。

Joubert症候群のリスクのある胎児の正確な出生前診断は、11〜12週から始まる一連の超音波画像(20週まで小脳の詳細な評価と胎児のその他の解剖学的所見)それに続く20〜22週の胎児MRI画像により行われている [Doherty et al 2005]。胎児MRIは後頭蓋窩の異常の診断に有益 [Levine et al 2003, Adamsbaum et al 2005]であるが、Joubert症候群での感度は、システマティックに評価されていない。

すでにJoubert症候群の罹患児を有するカップルにとって、Joubert症候群の出生前診断を示す所見の存在(脳瘤、肝繊維腫、多指症、胎児画像診断での後頭蓋窩の異常など)は、極めて有意である;しかしながら、これらの所見が欠如しても、画像診断の感度が十分ではない、家系内に表現型の多様性があるという理由から、Joubert症候群の診断を否定することにならない。

着床前診断(PGD) 着床前診断は、疾患原因遺伝子が特定された家族に利用可能である。

原文 Joubert Syndrome

印刷用

 

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