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ジュベール症候群
(Joubert Syndrome)

[Includes: AHI1-Related Joubert Syndrome, CORS2-Related Joubert Syndrome, JBTS1-Related Joubert Syndrome, TMEM67-Related Joubert Syndrome, NPHP1-Related Joubert Syndrome, CEP290-Related Joubert Syndrome]

Gene Review著者: Melissa Parisi, MD, PhD, Ian Glass, MD
日本語訳者: 末國久美子、川目裕 
(お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科ライフサイエンス専攻遺伝カウンセリング領域 )
Gene Review 最終更新日: 2007.3.8.日本語訳最終更新日: 2011.8.18.

原文 Joubert Syndrome


要約

疾患の特徴 

Joubert症候群は、特徴的な小脳と脳幹の形態異常、筋緊張低下、発達遅延、そして間欠的な過呼吸・無呼吸、非典型的な眼球運動の両方又はいずれかを有する。Joubert症候群の小児の多くは、体幹性運動失調を起こす。通常、粗大運動の獲得は遅れる。認知能力は、重度の精神遅滞から正常範囲まで多様である。一般的に呼吸異常は、年齢とともに改善する。表現型スペクトラムについては未解決な部分があり、家系内・家系間の多様性もみられる。その他の所見としては、網膜ジストロフィー、腎疾患、眼コロボーマ、後頭部の脳瘤、肝線維症、多指症、口腔過誤腫、内分泌異常がみられる場合もある。Joubert症候群患者の約10%は、後頭蓋窩に脳脊髄液の貯留を認め、それはDandy-Walker奇形に類似する場合がある。

診断・検査 

Joubert症候群の診断は、特徴的な臨床症状及び、小脳虫部の低形成と、中脳と橋の結合部(峡部)の軸状断に認められる脳幹の異常の結果示されるMRI画像で認められる“Molar tooth sign”に基づく。得られた画像は大臼歯の断面に似ている。4つの原因遺伝子(NPHP1CEP290AHI1TMEM67(MKS3))の変異は、それぞれJoubert症候群の10%を説明するにすぎない。その他の原因遺伝子はまだ知られていない。4つの遺伝子の全てにおいて、分子遺伝学的検査は臨床的に利用可能である。

臨床的マネジメント 

呼吸異常を伴うJoubert症候群の乳児と幼児の治療は、カフェインなどの呼吸刺激剤の投与、酸素投与、呼吸機械的補助;気管切開である。筋緊張低下と認知障害への対応には、言語聴覚士による口腔運動機能障害の治療;作業療法、理学療法、教育支援のための早期介入プログラム;定期的な神経心理学的検査と発達テスト。

小児期に重度の嚥下障害を伴う場合には、胃瘻の造設も考慮に入れる。水頭症が認められる場合には、脳神経外科のコンサルテーションが求められる;脳瘤は時に手術による閉鎖が必要。

眼科的所見の管理には,眼瞼下垂、斜視、弱視などの必要に応じて手術;屈折障害に対する補正レンズ;そして眼球動作失行への治療.視覚障害としての治療が、先天盲あるいは進行性網膜ジストロフィーに推奨される。

嚢胞性腎疾患あるいはネフロン癆の結果として現れる末期腎疾患の合併症には、しばしば透析や腎移植が必要である。肝不全や肝線維症には、門脈シャント術や同所性肝移植のような手術による介入が必要な場合がある。多指症には手術が必要な場合がある。成長、視力、肝臓と腎臓の1年に一度の機能評価が推奨される。

遺伝カウンセリング 

 Joubert症候群は、常染色体劣性遺伝形式である。受精時に同胞が罹患する確率は25%であり、50%は未発症の保因者となり、25%は未発症者の保因者となる。リスクのある同胞が未発症であると分かった場合、保因者となる確率は2/3である。リスクのある家族への保因者診断は、発端者で変異が確定されている場合に可能となる。AHI1CEP290TMEM67NPHP1の変異による出生前診断は、発端者あるいは保因者である両親に、これらの遺伝子変異が認められた場合に可能となる。胎児MRI検査を併用、あるいは併用しない超音波検査を利用した出生前診断も成功している。


診断

臨床診断

Joubert症候群の診断基準は、正式には定められていない。臨床では、次のような所見がJoubert症候群の臨床診断を支持する。「古典的」Joubert症候群の診断は、以下の所見を有する場合である。

及び/又は

  • 異常な眼球運動 (典型的には眼球運動失行、スムーズな追視の困難、注視や追視の際のけいれん様の動き) [Saraiva & Baraitser 1992; Steinlin et al 1997; Maria, Quisling et al 1999; Tusa & Hove 1999; Bennett et al 2003

図1A 正常の小脳虫部と脳幹の軸位 のMRI 画像(白い矢印で輪郭を描いた)
図1B Joubert症候群の子どもの小脳と脳幹の軸位のMRI の画像。矢印は、Molar tooth signの3つの鍵となる特徴を示している。

分子遺伝学的検査

GeneReviewsは,分子遺伝学的検査について,その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り,臨床的に実施可能であるとする. GeneTestsは研究機関から提出された情報を検証しないし,研究機関の承認状態もしくは実施結果を保証しない.情報を検証するためには,医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない.―編集者注.

遺伝子 

Joubert症候群の原因遺伝子は4つ同定されている。

他の遺伝子座 さらなる2つの遺伝子座の遺伝子は、未だ特定されていない。

臨床応用

臨床検査

注:(1)典型的な腎疾患は、10歳代まで起こらないため、若年でのJoubert症候群の診断時には腎疾患の有無を確認することができない可能性もある。(2) 同じ欠失は、若年性ネフロン癆(一部のCogan眼球運動失行症)に認められる頻度の高い変異である。(遺伝的に関連のある疾患を参照)

表1

検査方法 検出された変異 変異検出頻度1
FISHあるいは欠失解析 NPHP1の欠失 ~1-2%2
シーケンス解析 AHI1 sequence variations ~11%3
シーケンス解析 CEP290 sequence variations ~10%4
シーケンス解析 TMEM67 ~10%5
  1. 遺伝子/遺伝子座位、表現型、人種、及び/又は検査方法により分類された、変異を伴う罹患者の割合。
  2. おそらく腎疾患を伴う場合には、さらに高率になる
  3. Parisi et al 2006
  4. Sayer et al 2006; Valente, Silhavey et al 2006
  5. NPHP1に変異のないJoubert症候群の22人中3人にTMEM67MKS3遺伝子変異が認められた [Baala et al 2007]。

検査結果の解釈

シーケンスの結果解析の解釈において考慮するべき問題点は、こちらを参照のこと。

付録;シーケンスの結果解析の解説

検出された変異のタイプ

  • 文献に報告された病的変異
  • 文献に報告されてはいないが、病的変異と予測される
  • 臨床的優位性が予測できない未知の変異2
  • 病的ではないだろうと予測されるが、文献に報告されていない変異
  • 文献に報告された病的ではない変異
  • 変異が検出されない時の可能性
  • 検査をした遺伝子に変異を有さない(例えば他の遺伝子や他の座に変異がある)
  • シーケンス解析では検出できない変異を有する(例えば大欠失やスプライス異常)
  • 検査をした遺伝子の領域に変異を有する(イントロンや調節領域)が、検査機関の手法ではカバーしていない
  1. 配列変異の推奨を標準化するためのACMGの推奨より引用
  2. 家族研究はこの変異が表現型を伴って分離しているかどうかを決定するのに使用されるかもしれない

遺伝的に関連のある(アレリックな)疾患

NPHP1

NPHP1の分子遺伝学的異常を有し、若年性ネフロン癆に加えて網膜ジストロフィーを合併する場合には、Senior-L?ken症候群と呼ばれる。

AHI1  AHI1遺伝子に変異を認める多くの罹患者は、網膜ジストロフィーを有し、数は少ないが若年性ネフロン癆に合致する腎不全も報告されており、それはSenior-L?ken症候群を示唆する [Parisi et al 2006]。

CEP290  Senior-L?ken症候群が、唯一CEP290の変異によるJoubert症候群以外の表現型である(鑑別疾患を参照) [Sayer et al 2006]。

TMEM67  TMEM67遺伝子の変異は、パキスタン人とオマーン人のMeckel-Gruber症候群の家系に同定されている [Smith et al 2006]。

臨床像

自然歴

Joubert症候群は、筋緊張低下、発達遅滞、そして呼吸障害、非典型的な眼運動の両方またはいずれかを認める [Saraiva & Baraitser 1992; Steinlin et al 1997; Maria, Bolthauser et al 1999; Bennett et al 2003]。しかしながら、Joubert症候群の表現型は一様ではなく、罹患者の臨床所見が多様である。また、報告された罹患者の多くはmolar tooth signの記述がなされる前の報告であるため、未解決な部分がある。

Joubert症候群には表現型の多様性が、家系内・家系間の両者に認められる。そもそもJoubertらにより報告された(1969)4人の罹患同胞のある家系において、小脳の所見にかなり多様性が認められている。2人には小脳虫部前下方の無形成を認め、3人目は小脳虫部の完全無形成を認め、4人目には小脳虫部の完全無形成に加え後頭部髄膜脳瘤を認めた。Joubert症候群の一卵性双生児には表現型の不一致が認められた。MRIによるmolar tooth signの所見は両者ともに認めたが、解剖学的・神経学的所見及び発達の所見は大きく異なっていた [Raynes et al 1999]。

報告されている約2:1という男女比は [Saraiva & Baraitser 1992]、他の調査では確認されない [Steinlin et al 1997]。

Joubert症候群の臨床所見の多くは、乳児期に明らかとなる [Joubert et al 1969, Boltshauser & Isler 1977]。Joubert症候群の小児は体幹性運動失調と、筋緊張低下の組み合わせによって、粗大運動の獲得が遅れる。周期的な舌の動きも多く、そのことで舌肥大になる場合がある。無呼吸により死亡する乳児もいるが、間欠的な無呼吸は次第に年齢とともに改善し、完全に消失する [Maria, Quisling et al 1999]。

Joubert症候群には臨床的な多様性がある。合併する臓器によって、Joubert症候群の異なる型と考えられ、”Joubert症候群関連疾患”と呼ばれる(鑑別疾患にまとめた)。これら関連疾患がJoubert症候群のサブタイプとして存在するのか、あるいは違った症候群なのか議論されている。いずれにせよ、解決には原因遺伝子の特定を待つ必要がある。

中枢神経系の所見

その他の中枢神経系の先天形態異常 Molar tooth signに加えて、次のような特徴も認める。

その他に以下のような所見が認められる場合もある。

眼科的な所見 色素性網膜症を主症状とする網膜の疾患は、古典的な網膜色素変性症と区別できない可能性がある;それは、新生児期に先天盲を発症し、Leber先天黒内症に類似する網膜電図(ERG)の減弱、あるいは消失と同様に重症である。しかしながら、網膜疾患は進行せずまた、必ずしも乳児期あるいは早期小児期に存在するわけではない [Steinlin et al 1997]。

Joubert症候群の罹患児の多くは、出生時に水平方向の眼球振とうがあり、年齢とともに改善する。捻転様、振子様の眼振もまた認められる。

眼運動失行症が、しばしば乳児期からでなく小児期より認められるとされるのは、おそらくこの所見の認識不足によるものであろう [Steinlin et al 1997]。眼運動失行症を伴う小児の多くは、追視を開始することができないので、代わりに頭を突き出す [Hodgkins et al 2004]。出生時の明らかな眼球運動異常にもかかわらず、視覚機能の成熟によって、視力は年齢とともに改善する [M Parisi and A Weiss, personal observation]。

眼瞼下垂、斜視、及び/又は弱視の可能性もある。

第三脳神経(動眼神経)麻痺の可能性もある [Hodgkins et al 2004]。

眼球のコロボーマで最も頻度が高いのは、網脈絡膜コロボーマであると言われている [Saraiva & Baraitser 1992]。

腎疾患 腎疾患は、出生時には稀であるが、小児期、成人期に発症する場合がある [Steinlin et al 1997]。腎臓の症状には、以下が含まれる。

これら2つの腎病変は過去には別なものと考えられてきたが、近年、Dekaban-Arima症候群の罹患者の嚢胞異形成腎として認められた組織的変化を、ネフロン癆として解釈しなおした報告がある [Kumada et al 2004]。このことは、罹患者の年齢や疾患のステージなどの要因により異なる、特徴的な腎の所見がネフロン癆の連続性の一部であると推測される。

Joubert症候群を、2つに分類することが提案されていた。網膜ジストロフィーを伴うタイプと伴わないタイプである。この分類では、腎障害は網膜ジストロフィーを伴うタイプ(B型)にのみ存在する [King et al 1984, Saraiva & Baraitser 1992]。その後の観察結果は、この図式に常に一致するわけではない [Steinlin et al 1997, Chance et al 1999]。しかしながら、Joubrt症候群の原因遺伝子として知られる3つの遺伝子は、腎嚢胞性疾患と網膜ジストロフィーの両者に関連があるということから、網膜疾患と腎障害は、しばしば同時に起こるというエビデンスを示唆している [Parisi et al 2006, Sayer et al 2006]。

肝線維症 肝線維症は、Joubert症候群の一部の罹患者に起こり、通常、進行性であるが、出生時に症状を呈することは稀である。肝線維症は、しばしば網脈絡膜のコロボーマに合併し、時に腎疾患を合併する。コロボーマと精神遅滞(精神発達遅滞)、失調、小脳虫部形成不全と肝線維症の組み合わせは、COACH症候群と称されてきた [Satran et al 1999, Gleeson et al 2004]。著者らの経験では、COACH症候群の多くの子どももまた、Joubert症候群の古典的な所見とmolar tooth sighを認める  [M Parisi and W Dobyns, personal observations](鑑別疾患を参照)。

多指症 多指症は、片側あるいは両側に認められ、しばしば軸後性多指症である。足の軸前性多指症もまた頻繁に報告がある [Saraiva & Baraitser 1992]。中央列多指症はJoubert症候群の罹患者の一部に報告があり、そのうちの多くは口-顔-指症候群(oral-facial-digital syndrome)VI型の所見を有する [Gleeson et al 2004](鑑別疾患を参照)。

その他 Joubert症候群男性の一部は、小陰茎症があった;他の小児では、成長ホルモン分泌不全あるいは汎下垂体機能低下症を有していた [M Parisi, personal observations]。これらの所見の重要性は、未だ明らかではない。

舌の分葉と口腔の小帯を口-顔-指症VI型/Varadi-Papp症候群様の症状を有する者に認めることがある。その場合、咀嚼、嚥下、呼吸に関する問題が生じる可能性がある。

両側頭部の狭窄を伴う長い顔、高いアーチ状の眉、眼瞼下垂、上向きの鼻孔を有する高い鼻梁、三角形の口、下顎の突出、耳介の低位などの典型的な顔貌の特徴が、時に報告されている [Maria, Bolthauser et al 1999]。これらの所見は乳児期に識別することは困難であり、かなり非特異的である。しかしながら多くの観察者は”Joubert顔貌”として報告している [Braddock et al 2003]。

遺伝子型と臨床型の関連

遺伝子型と臨床型の関連は予備的な段階である。

NPHP1 これまでは、NPHP1遺伝子に欠失がある全ての罹患者は、若年性ネフロン癆と矛盾しない腎障害を呈している [Parisi et al 2004, Castori et al 2005];1例のみ網膜ジストロフィーが報告されている [Castori et al 2005]。Molar tooth signは、これらの人に特有の所見であり、厚い中脳脚と軽度の虫部低形成を伴う。

AHI1 ひとつの研究では、疾患原因となるAHI1遺伝子変異を有する12家系中11家系が、網膜ジストロフィーのエビデンスを有していた [Parisi et al 2006]。AHI1遺伝子変異を有する3家系のみが、ネフロン癆に一致する腎疾患と報告されている [Parisi et al 2006, Utsch et al 2006]。そのうち1つの調査では、発症は20代であった [Parisi et al 2006]。その他のグループは、AHI1遺伝子変異を有する10家系のコホート研究で腎疾患を同定しなかったが、複数の若年発症の先天盲は何人かの罹患者に認められた [Valente, Brancati et al 2006]。

 限られたデータから、原因遺伝子であるAHI1に変異のあるJoubert症候群罹患者に認められる多少脳回症が、Jouberut症候群の特異なタイプかどうかの結論を導くことはできない。 [Parisi et al 2006]。その理由としてAHI1遺伝子変異が特定された人の大部分は、多小脳回症を認めない。

CEP290 CEP290遺伝子変異を伴う頭部画像を実施した全ての家系は、小脳虫部の形成不全、及び/又はMTS(Molar tooth sign)を示した。原因遺伝子としてCEP290遺伝子変異を有する家系の大部分で、網膜ジストロフィーを発症し、先天盲を発症する者もあった [Sayer et al 2006; Valente, Silhavey et al 2006]。ネフロン癆と合致する腎疾患を有する罹患者もまた、CEP290遺伝子変異を有する多くの家系に認められ [Sayer et al 2006]、網膜ジストロフィーとの組み合わせは、Senior-L?ken症候群を示す。その他の表現型は、非特異的な腎臓の皮質嚢胞、眼組織のコロボーマ(眼のコロボーマ)と、脳瘤である [Sayer et al 2006; Valente, Silhavey et al 2006]。

TMEM67  TMEM67遺伝子に変異がありJoubert症候群の臨床診断のついた3人は、小脳虫部の低形成、及び/又はMTS(molar tooth sign)を有するが、そのうち2人にはMeckel症候群の古典的な特徴所見(脳瘤、腎嚢胞、多指症、肺線維症)を欠いた。その他の1人は、嚢胞腎と肝疾患を有した [Baala et al 2007]。さらに相関関係を示すためには、この遺伝子の変異を有するJoubert症候群の罹患者を特定することが待たれる。

命名法

“Joubert症候群”という名称は、MRIの画像上molar tooth signの所見を有する診断基準(臨床診断を参照)を満たす症例に与えられる。これはまた、”古典的Joubert症候群”とも言われる。

“Joubert症候群及び関連疾患”(JSRD)という名称は、Molar tooth signとJoubert症候群の臨床的な所見を共有するが、それはまた異なる症候群を示す他の症状も有する。罹患者のグループがmolar tooth signを示す、少なくとも8つの疾患が特定された [Satran et al 1999, Gleeson et al 2004; the molar tooth signを合併する疾患 及び 表2、鑑別疾患を参照]。これらはJoubert症候群のサブタイプなのか、あるいは異なる症候群かどうかという議論がある。

“Joubert症候群及び関連疾患”あるいは”小脳-眼-腎症候群”(cerebello-oculo-renal症候群;CORS)という名称を適切に使用するためには、これらの疾患の原因遺伝子の特定が待たれる。

頻度 

Joubert症候群の罹患率は、罹患家系の小集団により1:258,000と見積もられてきた [Flannery & Hudson 1994]。しかしながら、この割合はmolar tooth signの診断における役割が認識される前に計算されたものなので、疾患の正しい罹患率を過小評価している可能性がある。1:100,000という罹患率は遺伝カウンセリングの目的で妥当な見積もりである [D Flannery and M Parisi, personal discussions]。

創始者効果は、フランス系カナダ人に認められている。Joubertらによって最初に報告された家系(1969)では、1600年代にフランスからケベック州へ移住した創始者にさかのぼる [Badhwar et al 2000]。その他の創始者効果も推定される。


鑑別診断

本稿で扱われる疾患に対する遺伝学的検査の実施可能性に関する最新情報は,GeneTests Laboratory Directoryを参照のこと.―編集者注.

molar tooth signを伴う疾患:Joubert症候群及び関連疾患(JSRD)

次に示す常染色体劣性疾患はmolar tooth sign の記述に先立ち報告されたが、より最新の研究では、これらの疾患を有するより多くの人がmolar tooth signを示すことが明らかとなった [Pellegrino et al 1997, Chance et al 1999, Satran et al 1999, Gleeson et al 2004]。表2にまとめたmolar tooth signを伴う症候群の分類は、複雑で、依然変化している。

表2 Joubert症候群と関連する脳-口-腎疾患群の臨床的な特徴

特徴 Classic Joubert Dekaban-
Arima
Joubert-
LCA-Like
COACH
神経症状
小脳虫部の低形成及び失調 + + + +
MRIのMorar tooth sign + (+) + (+)
発達遅滞/精神遅滞 + + + +
一過性の多呼吸±無呼吸 + + + (+)
Dandy -Walkder様奇形 (+) ? ? ?
脳瘤 (+) (+) (+) (+)
眼科的特徴        
網膜ジストロフィー (+) + + +
深刻な視覚障害/LCA + + (+)
視覚運動失調 + (+) (+) (+)
コロボーマ ? ? +
腎臓
嚢胞性異形成 +
ネフロン癆 (+) (+)
その他        
特徴的な顔貌 (+) ? (+) ?
肝線維症-肝硬変 (+) +
多指症 (+) ? (+) ?
舌過誤腫/口腔分葉
早期死亡 (+) + (+) (+)
遺伝子 NPHP1
AHI1
CEP290
TMEM67
AHI1
CEP290
TMEM67

表2(つづき) Joubert症候群と関連する脳-口-腎疾患群の臨床的な特徴

特徴 Senior-L?ken OFD VI Varadi Juvenile Nephron-
ophthisis
Cogan OMA
神経症状
小脳虫部の低形成及び失調 (+) + (+) (+)
MRIのMorar tooth sign (+) (+) (+) (+)
発達遅滞/精神遅滞 (+) + (+) (+)
一過性の多呼吸±無呼吸 (+) (+) ? ?
Dandy -Walkder様奇形 ? ? (+) ?
脳瘤 (+) (+)
眼科的特徴
網膜ジストロフィー + (+) ?
深刻な視覚障害/LCA (+) ? ?
視覚運動失調 (+) (+) (+) +
コロボーマ ? ?
腎臓
嚢胞性異形成 (+)
ネフロン癆 + + (+)
その他
特徴的な顔貌 (+) (+) ? ?
肝線維症-肝硬変 ?
多指症 ? +1
舌過誤腫/口腔分葉 +
早期死亡 (+) (+) ? ?
遺伝子 NPHP1345
CEP290
NPHP1,
34
CEP290
NPHP1

出典Chance et al 1999, Satran et al 1999, Bennett et al 2003, Gleeson et al 2004, Parisi et al 2004
+ ある
(+) 時にある
-ない
? 不明
LCA-like = Leber congenital amaurosis-like
OMA = Oculomotor apraxia

  1. しばしば中間、Y字型中手骨を伴う

Bardet-Biedl症候群(BBS) Bardet-Biedl症候群(BBS)は、錐体-桿体網膜ジストロフィー、体幹肥満、軸後性多指症、認知障害、男性の低ゴナドトロピン性性機能低下症、女性の性器形態異常、そして腎形態異常、腎形成不全、水腎症、腎線維症、糸球体腎炎などの腎疾患を特徴とする。進行性の網膜の障害はしばしば失明の原因となり、腎の障害は有意に症状に影響する。一部の罹患者は肝線維症を有する。多くの罹患者は、協調運動不全を伴う失調があるが、小脳の関わりあるいは構造異常は非典型的である [Baskin et al 2002]。少なくとも11の遺伝子が報告されているが、その多くは一次繊毛の機能を有するNPHP1に類似する。遺伝形式は常染色体劣性遺伝形式である。

小脳虫部の低形成を伴うその他の症候群 Joubert症候群の鑑別疾患として考慮するその他の症候群は、小脳虫部の形成不全あるいは、MRIのmolar tooth signを伴わない小脳虫部の発育不全である [Bordarier & Aicardi 1990, Ramaekers et al 1997]。


臨床的マネジメント

初回の診断後における評価

 基本的評価としては、罹患乳児/小児において疾患の及ぶ範囲を確認することである。推奨事項は、Joubert Syndrome Foundation and Related Cerebellar Disordersのウェブサイトにも述べられている。

症状に対する治療

呼吸器

筋緊張低下と治療的介入

その他の中枢神経系の異常

眼科

腎疾患

肝線維症

多指症

その他

経過観察

Joubert症候群の乳児期あるいは小児期には、合併症の予後を予測する際立った特徴的所見は認められないが、合併症の進行の可能性があるため、多くの1年おきの検査(評価)が推奨される。(Joubert Syndrome Foundation and Related Cerebellar Disordersのウェブサイトを参照)

回避すべき薬物や環境

腎臓障害のある人は、NSAID(非ステロイド抗炎症薬)のような腎毒性のある薬剤は避けるべきである。

肝障害のある人は、肝毒性のある薬剤を避けるべきである。

研究中の治療法

情報を入手するために、さまざまな症状や疾患の臨床試験を行っているCrinicalTraials.govの検索。注意:この疾患への臨床試験はないかもしれない。

その他

遺伝外来 患者や家族に自然経過,治療,遺伝形式,患者家族の遺伝的発症リスクに関する情報を提供とするとともに,患者サイドに立った情報も提供する.Gene Test Clinic Directoryを参照のこと.

患者情報 本疾患の支援グループや複数疾患にまたがった支援グループについては「患者情報」を参照のこと.これらの機関は患者やその家族に情報,支援,他の患者との交流の場を提供するために設立された.

遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

Joubert症候群は、常染色体劣性遺伝形式である.

患者家族のリスク

発端者の両親

発端者の同胞 

発端者の子 

発端者の子は、確実保因者(obligate carrier)である。Joubert症候群の罹患者が妊娠、出産をしたという報告は無いとはいえ、現在この疾患において精神遅滞のスペクトラムが広いということが知られており、今後、子を得た罹患者の報告の可能性がある。

他の血縁者へのリスク

発端者の両親の同胞が保因者である確率は50%である。

保因者診断

発端者の疾患の原因となる遺伝子変異が特定された場合には、リスクのある家族の保因者診断は、臨床ベースで利用可能となる。

遺伝カウンセリングに関連した問題

家族計画 

遺伝的リスクの決定、保因者の状態の明確化、出生前診断の可能性を議論するための、最適な時期は妊娠前である。

DNAバンキング DNAバンキングは、将来、利用する目的でDNAを保存するもの(典型的には白血球から抽出されたもの)である。検査方法及び、我々の遺伝子・変異・疾患への知見は将来進む可能性があるので、罹患者のDNAを貯蔵しておくことは考慮されるべきである。DNAバンキングは、現在の利用可能な検査の感受性が100%に満たないという状況において特に重要である。このサービスを提供する研究所は、DNAバンキングのリストを参照。

出生前診断

分子遺伝学的検査 出生前診断は、AHI1CEP290TMEM67NPHP1のそれぞれの遺伝子に関連するJoubert症候群のリスクが高い妊娠に対して、15~18週に行われる羊水穿刺あるいは10~12週に行われる絨毛診断(CVS)によって行われる可能性もある。罹患家系の疾患の原因となる両アレルは、出生前診断の前に特定されている必要がある。

注意:妊娠期間は、正常な最終月経の初日あるいは、超音波検査の測定による日から計算した月経の週として表される。

出生前画像診断 第1三半期での 25%のリスクのJoubert症候群の診断を、超音波検査を利用して脳瘤のような脳の構造異常を特定しておこなわれた報告がある  [van Zalen-Sprock et al 1996, Wang et al 1999]。より典型的には、リスクのある胎児の出生前診断として、早くて第2三半期に、後頭蓋窩及び/又は腎臓と指の出生前超音波検査にておこなわれている [Ni Scanaill et al 1999, Aslan et al 2002, Doherty et al 2005]。

Joubert症候群のリスクのある胎児の正確な出生前診断は、11~12週から始まる一連の超音波画像(20週まで小脳の詳細な評価と胎児のその他の解剖学的所見)それに続く20~22週の胎児MRI画像により行われている [Doherty et al 2005]。胎児MRIは後頭蓋窩の異常の診断に有益 [Levine et al 2003, Adamsbaum et al 2005]であるが、Joubert症候群での感度は、システマティックに評価されていない。

すでにJoubert症候群の罹患児を有するカップルにとって、Joubert症候群の出生前診断を示す所見の存在(脳瘤、肝繊維腫、多指症、胎児画像診断での後頭蓋窩の異常など)は、極めて有意である;しかしながら、これらの所見が欠如しても、画像診断の感度が十分ではない、家系内に表現型の多様性があるという理由から、Joubert症候群の診断を否定することにならない。

着床前診断(PGD) 着床前診断は、疾患原因遺伝子が特定された家族に利用可能である。

更新履歴:

  1. Gene Review著者: Melissa Parisi, MD, PhD, Ian Glass, MD
    日本語訳者: 末國久美子、川目裕 
    (お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科ライフサイエンス専攻遺伝カウンセリング領域 )
    Gene Review 最終更新日: 2007.3.8.日本語訳最終更新日: 2011.8.18.

原文 Joubert Syndrome

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