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発作性運動誘発性ジスキネジア
(
Familial Paroxysmal Kinesigenic Dyskinesia)
[Synonyms: Paroxysmal Kinesigenic Choreoathetosis, Paroxysmal Kinesigenic Dyskinesia]

Gene Review著者: Sian Spacey, MD, FRCPC; Paul Adams, PhD
日本語訳者: 邦武克彦(信州大学医学部医学科),関島良樹(信州大学医学部附属病院遺伝子診療部) 
Gene Review 最終更新日: 2011.3.31. 日本語訳最終更新日: 2011.6.26

原文 Familial Parasysmal Kinesigenic Dyskinesia


要約

疾患の特徴 

発作性運動誘発性ジスキネジア(以下家族性PKD)は,座った状態から立ち上がったり,驚愕したり,運動の速度が変化したりなどの突然の動作によって引き起こされる,片側性あるいは両側性の不随運動発作が特徴である.発作は,ジストニア,舞踏病アテトーシス,バリスムの組み合わせから成り,時には前兆もあるが,意識を失うことはない.発作は,一日に100回と頻繁な場合や,一月に1回と稀な場合もある.発作の持続時間はたいてい数秒から5分であるが,数時間続くケースもある.家族性PKDと乳児痙攣との関連に関する報告はあるが,成人発症の痙攣との関連に関する報告はない.発作の重症度や不随意運動のタイプや部位は多様である.発症年齢は,一般的に小児期〜青年期だが,4か月から57歳にまで及ぶ.家族性PKDは男性患者が多い.

診断・検査 

家族性PKDの診断は,急な動作によって誘発されるジストニア,舞踏病,バリスム,アテトーシスなどの発作が一日に何度も起き,フェニトインやカルバマゼピンによって発作をとめたり,頻度を減少させたりすることができるという臨床的所見に基づいてなされる.PKDに関連する遺伝子は同定されていないが,いくつかの家系で染色体16qとの連鎖が確認されている.連鎖解析は,研究目的にのみ利用可能である.

臨床的マネジメント 

症フェニトインやカルバマゼピンなどの抗痙攣薬によって発作を予防または頻度を減らすことが可能であり,通常,てんかんに対して用いるよりも少量で効果が得られる.その他の抗痙攣薬としてはオキシカルバマゼピン,エトサクシミド,ラモトリジンが有効である.

遺伝カウンセリング 

家族性PKDは,常染色体優性遺伝である.家族性PKD患者の90%以上がPKDの親をもつ.新生突然変異の割合は不明である.患者の子供は,50%の確率で遺伝子変異をうけつぐ.家族性PKDは不完全浸透なので,臨床的に発症していない親であっても変異遺伝子を有していて,発端者の同胞が変異をうけつぐ可能性が50%であるという状況はあり得る.出生前診断は利用できない.


診断

臨床診断

以下の所見は,家族性PKDの臨床診断を支持する.(Bruno他 2004年)

  • 急な動作(例えば,患者に急に立ってもらったり,廊下を活発に歩き回ってもらったりする)によるジストニア,舞踏病,バリスム,アテトーシスの発作.
  • 秒単位から分単位の発作持続時間.
  • 多い場合には一日に100回程度の発作頻度.
  • 発作中に意識を失うことはない.
  • フェニトインやカルバマゼピンなどの抗痙攣薬によって発作頻度が減少したり,消失したりする.注:発作を抑えるのに少量のフェニトイン(100mg)やカルバマゼピン(250mg)で十分であるならば,家族性PKDである可能性はさらに高まる.
  • 非発作時は神経学的に異常を認めない.
  • 発作時および非発作時の脳波は正常である.
  • MRIは正常である.
  • 常染色体遺伝に合致する家族歴.

分子遺伝学的検査

遺伝子 家族性PKD関連遺伝子は同定されていないが,遺伝子座は最近16番染色体のセントロメア近傍の6.2センチモルガンの領域にまでしぼられた(Wang他 2010年).ある研究では,PKD遺伝子座近傍の157個の遺伝子について変異を検索したが,16番染色体p11.2-q12.1に連鎖する7家系の罹患者に共通する変異は同定できなかった.(Kikuchi他 2007年).

遺伝子座位 

  • EKD1:家族性PKDと16番染色体p11.2-q12.1との連鎖が,日本人の8家系,アフリカ系アメリカ人の1家系,多様な民族的背景をもつ11家系において確認されている.この遺伝子座はEKD1とよばれている(Tomita他 1999年,Bennett他 2000年,Swoboda他 2000年).
  • その他:家族性PKDの全ての家族が,16q11.2-q12.1遺伝子座に連鎖するわけではないので,他の遺伝子座の存在が疑われている(Spacey他 2002年,Zhou他 2008年).

研究目的の検査  

  • 連鎖解析は研究目的にのみ利用できる.

表1.  発作性運動誘発性ジスキネジアに対する分子遺伝学的検査のまとめ

検査方法

検出変異

変異検出の頻度1

検査の利用

連鎖解析

該当せず

該当せず

研究目的

検査の実施に関してはGeneTests Laboratory Directoryを参照のこと.GeneReviewsは,分子遺伝学的検査について,その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り,臨床的に実施可能としている.GeneTestsは研究機関から提出された情報の検証や,研究機関の承認状態もしくは実施結果の保証は行わない.情報を検証するためには,医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない.

1.当該遺伝子に存在する変異を検出する検査方法の精度

遺伝学的に関連のある疾患

家族性PKDの原因遺伝子は同定されていないので,PKDと同一の遺伝子が異なる表現型をもつかどうかは知られていない.

乳児痙攣・舞踏アテトーシス症候群(ICCA症候群):ICCAは3〜12か月にみられる無熱性痙攣と多様な発作性舞踏アテトーシスによって特徴づけられる.家族性のICCAは浸透率80%の常染色体優性遺伝病である.この疾患は,16p12-q12との連鎖がフランス北西部の4家系(Szepetowski他 1997年)および中国系の1家系(Lee他 1998年)で確認された.ICCAと家族性PKDの遺伝子座には重なりがあるのでこの2つの疾患は同一遺伝子に関係しているかもしれない.いくつかの家系では,乳児痙攣からジスキネジアまで多様な表現型が家系内に出現している(Swoboda他 2000年).原因遺伝子が同定されれば,このような問題が明らかになるだろう(Kato他 2006年).


臨床像

自然経過

家族性PKDは,急な動作,驚愕,運動速度変化などによって引き起こされる片側性あるいは両側性の不随運動が特徴である(Demirkiran & Jankovic 1995年,Houser他 1999年,Tomita他 1999年).発作はジストニア,舞踏アテトーシス,バリスムの組み合わせで構成される.多くの患者は,発作に先行する「前兆」のような感覚(患部の肢における硬直,緊張,感覚異常・ムズムズする感じ)を経験する(Bhatia 1999年,Bhatia 2001年).発作は,意識消失を伴わない.

発作頻度は,一日に100回に及ぶこともあれば,一月に1回と少ないこともある(Demirkiran & Jankovic 1995年).ほとんどの発作の持続時間は数秒から5分の間であるが(Houser他 1999年,Tomita他 1999年),まれに数時間続くこともある(Demikiran & Jankovic 1995年).多くの場合,発作の頻度は年齢を重ねるごとに減少していく(Bhatia 1999年,Tomita 1999年,Bhatia 2001年).

家族性PKDと乳児痙攣との関連に関する報告はあるが(Hattori他 2000年,Swoboda他 2000年),成人発症の痙攣との関連に関する報告はない(Spacey他 2002年).

家族性PKDの表現型は,家系間および家系内で多様性に富む.不随意運動のタイプや部位,および症状の重症度は多彩である.例えば,家族の中の一人が半身の軽いジストニア発作であるのに対し,別の一人は重度の両側性の舞踏病発作を呈する場合がある(Spacey他 2002年).

発症年齢は一般的に小児期〜青年期だが,4か月から57歳までと幅がある(Demirkiran & Jankovic 1995年,Li他 2005年).

家族性PKDは,女性よりも男性で発症しやすい(性差は最大で4:1)(Bhatia 1999年).

増悪因子:発作は座った状態から立ち上がるような急な動作によって引き起こされる(Demirkiran & Jankovic 1995年,Houser他 1999年,Tomita他 1999年).しかし,家族性PKDの古典的な症状を呈する患者では,感冒,過換気,精神的緊張も発作の引き金になることが報告されている(Spacey他 2002年).

神経放射線学的検査:7人のPKD患者を対象に施行した安静時のfMRIにより,PKD患者では対照に比較して両側の被殻における低頻度発火の振幅の変動が有意に増大していることが示された.このことはPKD患者における皮質―線条体―淡蒼球―視床のループの異常の存在を示唆する(Zhou他 2010年b).

7人のPKD患者を対象に施行したMRI拡散テンソル画像により,PKD患者では対照に比較して右視床の分画異方性が有意に高い事が示された.また,P KD患者では,対照群と比べて左視床の平均拡散率が低いことも示されており,PKD患者の視床に超微細構造的な異常が存在することを支持している(Zhou他 2010年a).

浸透率 

UBE3AやIDの欠失は父由来の変異が無症状となる刷り込み(すなわち遺伝)パターンに則る.

遺伝子型と表現型との関連

家族性PKDの原因遺伝子は分かっていないので,遺伝子型と表現型の間の関連は見出されていない.

浸透率

家族性PKDの浸透率は男女ともに80〜90%といわれている(Tomita他 1999年,Spacey他 2002年).

表現促進現象

表現促進現象は認められない.

病名

家族性PKDは発作性ジスキネジアに分類される.このカテゴリーに分類される全ての疾患は,ジストニア,舞踏病,バリスムが様々な持続時間で間欠的に起こることで特徴づけられる.発作性ジスキネジアの分類に用いられる病名は,過去60年以上にわたって変遷してきた.

最近の分類:発作性ジスキネシアの分類は,発作の持続時間と発作が運動によって誘発されるかに基づく.DemirkiranとJankovic(1995年)は,46人の発作性の運動異常症を有する患者を検討し,以下のような分類体系を考案した.

  • 発作性運動誘発性ジスキネジア(PKD)は,ジスキネジアの発作が主として急な動作に誘発され,典型的には発作の持続時間が5分以下のものと定義する.
  • 発作性非運動誘発性ジスキネジア(PKND)は,ジスキネジアの発作が運動や動作ではなく,ストレス,疲労,月経,暑さによって誘発され,典型的には発作の持続時間が分単位から時間単位のものと定義する.

最近の研究(Bruno他 2007年)では,PNKD遺伝子変異を有するPNKDを同定するために,分類方法に修正を加えることが提案されている.

    • ジストニア,舞踏病,あるいはこれらの組み合わせを伴う運動過多性の不随運動発作で,典型的な発作の持続時間は10分から1時間であるが4時間まで伸びる可能性がある.
    • 非発作時の神経診察所見が正常で,二次的な要因を除外できる.
    • 発症が,乳児期または小児初期である.
    • カフェインやアルコール摂取で発作が誘発される.
    • 上記4点をすべて満たす運動異常症の家族歴がある.
  • Paroxysmal exertion-induced dyskinesia(現在は,paroxysmal exercise-induced dyskinesiaと呼ばれている)(PED)では,5〜15分の身体活動(歩行や走行など)に誘発されるジスキネジアの発作を伴い,典型的な発作の持続時間は15〜30分である.
  • Paroxysmal hypnogenic dyskinesiaは,主として睡眠中に起こるジスキネジアの発作が特徴である.本症は現在は,常染色体優性夜間前頭葉てんかん(ADNFLE),即ちてんかんの一種と考えられている.

歴史的な分類/病名:「家族性発作性舞踏アテトーシス」は,MountとRebackによって1940年に初めて疾患単位として分類された.彼らは,舞踏病の発作が一日に3回で5分間から数時間発作が持続する患者について報告し,その増悪要因は,コーヒー・お茶・アルコール・喫煙・疲労であった(Mount & Reback 1940年).

Kertesz(1967年)は,急な動作によって誘発される不随意運動発作を呈する疾患を,発作性運動誘発性舞踏アテトーシス呼ぶことを提唱した.

RichardとBarnett(1968年)は,急な動作によって引き起こされない持続時間の長い発作を呈する疾患を発作性ジストニア舞踏アテトーシスと呼ぶことを提唱した.

Lance(1997年)は,主として発作持続時間や発作が運動誘発性かどうかに基づき,発作性ジスキネジアを3つのグループに分類した.

  • 発作性ジストニア舞踏アテトーシス(PDC)は,発作の持続時間が長く(2分から4時間),急な動作や長時間の運動によって誘発されない.
  • 発作性運動誘発性舞踏アテトーシス(PKC)は,発作の持続時間が短く(数秒から5分間),急な動作によって誘発される.
  • 中間型は,急な動作というよりもむしろ持続的な運動によって誘発される5〜30分間の発作を呈する.

頻度 

PKDは稀な疾患であり,頻度は150000人に1人と推定される.常染色体優性遺伝形式(家族性)のPKDの方が,孤発性(家系内で一人のみが発症)よりも頻度が高い.


鑑別診断

本稿で扱われる疾患に対する遺伝学的検査の実施可能性に関する最新情報は,GeneTests Laboratory Directoryを参照のこと.―編集者注.

発作性ジスキネジアは,孤発性に発症する場合もあるが,様々な遺伝性疾患の一症状として発症する場合もある.

孤発例

孤発性のPKDの原因としては,多発性硬化症(Roos他 1991年),腫瘍,モヤモヤ病などの血管障害(Demirkiran & Jankovic 1995年,Gonzalez-Alegre他 2003年)による大脳基底核の病変の報告がある.大脳基底核以外の病変でも, PKDと類似した症状を引き起こした報告がある.例えば,脳挫傷と出血を伴う右前頭部の貫通性外傷の患者がPKD様の症状を呈したことが報告されている.(Richardson他 1987年).橋中心髄鞘崩壊症により,PKDと同様の症状を呈した報告もある(Baba他 2003年).神経放射線学的検査(MRIが望ましい)は,これらの病因を除外するのに重要である.

てんかんの部分発作により発作性ジストニアを呈することがある.このような病態では脳波検査が不可欠である.

リウマチ熱に伴ってみられるジスキネジア(シデナム舞踏病)では,抗ストレプトリシンO(ASO)高値と正常な脳脊髄液所見が特徴である.

妊娠舞踏病は,妊娠初期に舞踏病発作で発症し,通常分娩後に治癒する.

発作性舞踏病は,全身性エリテマトーデス,糖尿病,副甲状腺機能低下症,偽性副甲状腺機能低下症,甲状腺中毒症においてもみられる.これらの病因が疑われたら,関連する血液検査がなされるべきである(Clark他 1995年,Yen他 1998年,Puri & Chaudhry 2004年,Mahmud他 2005年,Thomas他 2010年).

常染色体劣性遺伝例

ウィルソン病は銅の代謝異常症で,肝障害,神経症状,精神症状が様々な組み合わせで出現する.発症年齢は3歳〜50歳以上である.神経症状としては,運動異常(振戦,協調運動障害,巧緻性の障害,舞踏病,舞踏アテトーシス)や固縮性ジストニア(仮面様顔貌,筋固縮,歩行障害,仮性球麻痺)を呈する.銅キレート剤や亜鉛による治療により,無症候患者における肝障害,神経症状,精神症状の発現を予防することが可能で,多くの症候性の患者においても症状を軽減することができる.血清中の銅とセルロプラスミン濃度の低下や,尿中への銅の排泄増加という所見は臨床診断において有用である.ATP7B遺伝子の分子遺伝学的検査は臨床的に利用可能である.

常染色体優性遺伝例

ほとんどの遺伝性発作性ジスキネジアが鑑別として考慮されるべきである.

  • Paroxysmal exercise-induced dyskinesia (PED)は,持続時間が5〜30分のジストニア,舞踏病,アテトーシスの発作が特徴である.発作は,持続的な運動(例えば歩行や走行)を5〜15分間行うことで引き起こされる.通常,運動に用いられた身体部位と同じ部位に発作がみられる(Bhatia他 1997年).
    • てんかんを伴うPEDは,1型グルコーストランスポーター欠損症(1番染色体上でグルコーストランスポーターであるGLUT1をコードするSLC2A1遺伝子の変異で引き起こされる)で認められる(Schneider他 2009年,Suls他 2008年).遺伝形式は常染色体優性遺伝であるが,多くは新生突然変異である.
    • PEDの一家系において,16番染色体のセントロメア近傍への連鎖が認められている.(Munchau他 2000年).
    • PEDを伴う常染色体劣性ローランドてんかんと書痙の遺伝子座が16p12-11.2にマップされている.
  • Paroxysmal hypnogenic dyskinesia (PHD)は現在,常染色体優性夜間前頭葉てんかん(ADNFLE),であると考えられている.PHD/ADNFLEの発作は非常に多彩であるが,ジストニア・舞踏病・バリスムの要素を含む.発作は通常ノンレム睡眠中に出現し,多くの場合発作により覚醒し,その後に睡眠に移行する.患者は発作が起きたことを朝に思い出すことができる.増悪因子は,過度の運動,ストレス,月経である.CHRNA4遺伝子(Rozycka他 2003年)とCHRNB2遺伝子(Duga他 2002年)の変異が,PHD/ADNFLEのいくつかの家系で同定されている.
  • Paroxysmal choreathetosis/spasticity(CSE)は,四肢のジストニア,構音障害,口周囲や下肢の異常感覚,複視を特徴とする運動異常症であり,しばしば頭痛を伴う.(Auburger他 1995年).他疾患との鑑別上重要な特徴は,非発作時にも認められる痙縮である.CSEは常染色体優性遺伝が疑われており,発症は5歳未満である.CSEは1p34-p31に連鎖している(Aubuger他 1995年).

他に鑑別として考慮すべき遺伝性ジスキネジアには以下のものがある.

  • 良性遺伝性舞踏病は稀な常染色体優性遺伝の疾患で,知能低下を伴わない小児期発症の非進行性の舞踏病が特徴である.本症の患者の寿命は正常であるが,重症患者は舞踏病によって日常生活が障害される.
  • ハンチントン病(HD)は運動障害,認知症,精神症状を呈する進行性の常染色体優性遺伝性疾患である.平均的な発症年齢は35〜44歳であり,発症後の平均生存期間は15〜18年である.HDの診断は,家族歴,特徴的な臨床所見,遺伝学的検査(HTT遺伝子のCAG三塩基繰り返し配列が36回以上に伸長している)によってなされる(Warby他 2007年).
  • X-linked paroxysmal dyskinesia and severe global retardationは,重度の全般性発達遅滞,特異なパターンの甲状腺ホルモン異常,服やオムツを替えるような刺激によって誘発される発作性ジスキネジアを呈し,甲状腺ホルモントランスポーターをコードするMCT8遺伝子の変異を有する血縁関係のない二人の少年で報告された.甲状腺の機能異常は,以前にPKDの原因として同定されたことがある(Yen他 1998年,Puri & Chaudhry 2004年). MCT8 SLC16A2-Specific Thyroid Hormone Cell Transporter Deficiencyの項を参照.

臨床的マネジメント

最初の診断時における評価

家族性PKDと診断された患者の病変の広がりを決定する目的で以下の検査が推奨される.
   ・MRIを用いて,PKDの二次的要因を除外する.
   ・脳波を用いて,ジスキネジアの原因としてのてんかん発作を除外する.

臨床症状に対する治療

フェニトインやカルバマゼピンなどの抗痙攣薬によって発作を予防または頻度を減らすことが可能であり,通常,てんかんに対して用いるよりも少量で効果が得られる(Demirkiran & Jankovic 1995年,McGrath・Dure 2003年).

他に有効性が証明されている抗痙攣薬には,オキシカルバゼピン(Tsao 2004年),エトサクシミド(Guerrini他 2002年)・ラモトリジン(Pereira他 2000年)・ガバペンチン(Chudnow他 1997年)がある.

定期検査

PKDの患者は,毎年から2年ごとに,特に薬剤の必要性や用量についての評価を受ける受けることが推奨される.

妊娠管理

PKDに対して抗痙攣薬の投与を受けている妊娠中の女性は葉酸5mg/日の摂取が推奨される.抗痙攣薬には催奇形性のリスクがあるため,軽症のPKDの女性は妊娠中の抗痙攣薬の内服を中断することを希望するかもしれない.

研究中の治療法

種々の疾患に対する臨床試験についてはClinicalTrials.govを参照.
 注:本疾患に関する臨床試験は行われていないと思われる.

その他

遺伝クリニックは,患者や家族に自然経過,治療,遺伝形式,患者家族の遺伝的発症リスクに関する情報を提供とするとともに,患者サイドに立った情報も提供する.Gene Test Clinic Directoryを参照.

支援グループや複数疾患にまたがった支援グループについてはConsumer Resourcesを参照.これらの組織は患者やその家族に情報,支援,他の患者との交流の場を提供するために設立された.


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

家族性PKDの遺伝形式は常染色体優性である.

患者家族のリスク

発端者の親

  • 90%以上の家族性PKD患者は,患者である親をもつ.
  • 家族性PKDの発端者は,新生突然変異の結果として発症する場合もあるが,その割合は不明である.
  • 一見新生突然変異と思われる患者の両親に対しても,病歴聴取および神経学的診察を行うことが推奨される.

発端者の同胞 

  • 発端者の同胞のリスクは両親の遺伝学的状況に依存する.
  • 発端者の親も罹患している場合,同胞に変異が遺伝するリスクは50%である.
  • 家族性PKDは不完全浸透の疾患であるので,臨床的に罹患していない親でも遺伝子変異を有している可能性がある.その場合,発端者の同胞は遺伝子変異を50%の確率でうけつぐ.

発端者の子 家族性PKD患者の子は,50%の確率で遺伝子変異をうけつぐ.

他の血縁者 他の血縁者のリスクは罹患者の両親の遺伝学的状況に依存する.発端者の親が罹患している場合,その血縁者にはリスクがある.

遺伝カウンセリングに関連した問題

見かけ上新生突然変異を持つ家系への配慮 常染色体優性遺伝性疾患の発端者の両親がいずれも臨床的に罹患していない場合は,発端者が新生突然変異を有している,あるいは孤発性の別の疾患である可能性がある(鑑別診断の項を参照).しかし,父親や母親が異なる場合(生殖補助医療など)や,公開されていない養子縁組といった医学的でない原因も検討する必要がある.

家族計画 

  • 遺伝学的リスクの判定の最適な時期は,出産前である.
  • 罹患している若年成人やリスクのある若年成人に対して遺伝カウンセリング(子への潜在的リスクや生殖手段の選択肢)を提供することは妥当である.

DNAバンキング DNAバンキングはDNA(通常は白血球から抽出する)を将来の使用のために保存しておくことである.検査方法や我々の遺伝子,変異,疾患に対する理解が将来進歩する可能性があるので,罹患者のDNAを保存しておくことが考慮される.このサービスを行っている機関についてはDNA bankingの項を参照.

出生前診断

原因遺伝子が不明なので出生前診断は行われていない.

分子遺伝学

分子遺伝学やOMIMの表中の情報は,GeneReviewの他の項の記載と異なる場合がある:そのような場合はどちらかの表がより新しい情報を含んでいる可能性がある.

表A. 家族性発作性運動誘発性ジスキネジア:遺伝子およびデータベース

遺伝子座

遺伝子記号

染色体部位

蛋白名

EKD1

不明

16p11.2-q12.1

不明

EKD2

不明

16p13-q22.1

不明

表B.  家族性発作性運動誘発性ジスキネジアのOMIMへの登録(OMIM参照)

128200

EPISODIC KINESIGENIC DYSKINESIA1; EKD1

611031

EPISODIC KINESIGENIC DYSKINESIA2; EKD2


原文 Familial Parasysmal Kinesigenic Dyskinesia

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