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ファンコニ貧血
(Fanconi Anemia)

[Synonym: Fanconi Pancytopenia]

Gene Review著者: Blanche P Alter, MD, MPH, FAAP and Gary Kupfer, MD
日本語訳者: 福島久代(札幌医科大学大学院修士課程遺伝カウンセリングコース),櫻井晃洋(札幌医科大学 医学部遺伝医学)

Gene Review 最終更新日: 2013.2.7. 日本語訳最終更新日: 2016.7.21

原文 Fanconi Anemia


要約

疾患の特徴 

ファンコニ貧血(FA)は、身体的異常、骨髄機能不全、腫瘍リスクの上昇が特徴の疾患である。罹患者の60−75%に以下に示す身体的 異常のうち一つまたは複数が認められる;低身長、皮膚の異常色素沈着、親指、前腕、骨格、眼、腎臓と泌尿器、耳(聴力の低下をもたらす)、心臓、消化管、中枢神経系における奇形 、性腺機能低下症、発達障害。
生後10年の間に、血小板と白血球の減少から始まる進行性の汎血球減少を伴う骨髄機能不全が見られることが特徴である。40から50歳までには骨髄機能不全の推定罹病率は90%に達し、血液腫瘍(主に急性骨髄性白血病)の罹病率は10−30%、血液以外の腫瘍(特に頭頸部、皮膚、消化管、生殖器における固形腫瘍)の罹病率は25−30%に達する。

診断・検査 

FAの診断は、ジエポキシブタン(DEB)やマイトマイシンC(MMC)などのDNA架橋形成性の薬剤の存在下で培養した細胞を用い、染色体異常(切断、再構成、 ラジアル構成、転座)を検出することによって行う。分子遺伝学的検査は、FAの原因になりうる相補性グループ(A, B, C, D1 [BRCA2], D2, E, F, G, I, J [BRIP1], L, M, N [PALB2], O [RAD51C], P [SLX4])として少なくとも15の遺伝子が存在することから複雑である。 最後の2遺伝子は、生物学的には解明されていないことと、変異の保有者が少ないことから病的意義は疑わしいと考えられている。病気に関連する相補性グループが解明されれば、分子遺伝学的検査は、直接、該当する遺伝子を検査することによって実施できる。  

臨床的マネジメント 

症状の治療
アンドロジェン(例えば、oxymetholone)の経口投与によってFA患者の約50%において血球数(赤血球、白血球、血小板)の改善が認められ、G-CSFの皮下投与により好中球の数の改善がみられる場合もある、血球の症状の治療の方法は、造血幹細胞移植(hematopoietic stem cell transplantation, HSCT)しかないが、HSCT施行後も固形腫瘍の発生リスクの高さの問題は残っており、さらにリスクが上昇することもある。こうした治療はすべて危険性を伴うものである。

サーベイランス
身体と思春期における発達のモニタリング;骨髄機能不全の検査(血球数の計測、少なくとも年1回の骨髄生検における形態、細胞型、染色体の検査);アンドロゲン治療を受けている患者においては肝臓の 生化学検査と肝臓の超音波検査;固形腫瘍のモニタリング(中咽頭と婦人科 癌)

避けるべき環境・薬剤:
造血幹細胞移植の候補者における赤血球または血小板の輸血;HSCTが考慮されている場合にドナー候補の血縁者;濾過(白血球が除去)されていないか放射線照射を受けていない血液製剤;発 癌性がありうる毒性物質;サーベイランスのためだけのレントゲン検査(臨床的意義 の無いもの)。

リスクのある血縁者の評価:
早期の診断として、発端者のすべての同胞におけるDEB/MMCテスト、身体的異常、骨髄機能不全、関連 癌の治療とモニタリングを行う。

遺伝カウンセリング 

FAの異常は、X連鎖遺伝性であるFANCBの病的変異を除いて、常染色体劣性遺伝である。

常染色体劣性FA:
患者の同胞は25%の確率で変異アレルを二つ受け継ぎ 罹患する可能性があり、50%の確率で片方の変異アレルを受け継いで保因者となり、 25%は正常遺伝子を2つ受け継いで保因者とはならない。常染色体劣性FAの保因者(ヘテロ接合体)は無症状である。

X連鎖FA:
保因者の女性が妊娠ごとに変異アレルを 子に伝える可能性は50%である。変異アレルを受け継いだ男性は 罹患し、女性は保因者となるが通常は 罹患しない。

常染色体劣性とX連鎖の両方において:
家系における病的変異が同定されている場合、リスクのある親族の保因者診断と高リスクの妊娠における出生前診断が可能である。


診断

臨床診断

診断における 推奨は2008年のコンセンサス会議で了承された[Eiler et al 2008]。
FAは以下の場合に疑われる。

  • 低身長、皮膚の色素沈着異常(カフェオレ斑または低色素症)を含む身体的異常;親指、前腕、骨格系、眼、腎臓、泌尿器系、心臓、胃腸、口腔内、中枢神経系の奇形;難聴;性腺機能低下;発達遅延。これらの所見は様々であり、おおよそ25−40%のFA患者は身体的異常を有しない。したがって、身体的異常がないことはFA診断の除外事由にはならない。
  • 進行性の骨髄機能不全、明らかな血小板減少症、白血球減少症、貧血は 7から8歳で症状が現れることが特徴的で、しばしば血小板と白血球の両方の減少ではじまる。骨髄は当初正常に形成されるが、時間とともに低形成となる。
  • 成人発症再生不良性貧血、大赤血球症とヘモグロビンFレベルの上昇を伴う。
  • 骨髄異形成症候群(MDS)または急性骨髄性白血病(AML)。時として、MDSとAMLが最初の兆候となりうる。
  • 他のリスク要因がない若い世代では固形腫瘍は特徴的ではない。腫瘍には、扁平上皮癌、頭頸部癌、卵巣、膣、子宮の癌、肝 癌が含まれる(経口アンドロゲン投与に関与するものが多いが必ずではない)。固形腫瘍は先天性疾患や骨髄機能低下がない患者では最初の症状となることもある。
  • 化学療法や放射線療法における過度の毒性

診断

臨床的診断

診断における 推奨は2008年のコンセンサス会議で了承された[Eiler et al 2008]。
FAは以下の場合に疑われる。

  • 低身長、皮膚の色素沈着異常(カフェオレ斑または低色素症)を含む身体的異常;親指、前腕、骨格系、眼、腎臓、泌尿器系、心臓、胃腸、口腔内、中枢神経系の奇形;難聴;性腺機能低下;発達遅延。これらの所見は様々であり、おおよそ25−40%のFA患者は身体的異常を有しない。したがって、身体的異常がないことはFA診断の除外事由にはならない。
  • 進行性の骨髄機能不全、明らかな血小板減少症、白血球減少症、貧血は 7から8歳で症状が現れることが特徴的で、しばしば血小板と白血球の両方の減少ではじまる。骨髄は当初正常に形成されるが、時間とともに低形成となる。
  • 成人発症再生不良性貧血、大赤血球症とヘモグロビンFレベルの上昇を伴う。
  • 骨髄異形成症候群(MDS)または急性骨髄性白血病(AML)。時として、MDSとAMLが最初の兆候となりうる。
  • 他のリスク要因がない若い世代では固形腫瘍は特徴的ではない。腫瘍には、扁平上皮癌、頭頸部癌、卵巣、膣、子宮の癌、肝 癌が含まれる(経口アンドロゲン投与に関与するものが多いが必ずではない)。固形腫瘍は先天性疾患や骨髄機能低下がない患者では最初の症状となることもある。
  • 化学療法や放射線療法における過度の毒性

検査

染色体切断解析

FAの診断は、二官能性DNA架橋剤であるジエポキシブタン( DEB)存在下での染色体破断または再構成の増加[Auerbach 1993]によって、またはマイトマイシンC(MMC)存在下において、染色体がラジアル構造に連結したラジアル構造とよばれる特徴的な形態の出現をみる細胞生物学的試験によって[Cervenka et al 1981]なされる。対照の染色体におけるバックグラウンドレベルの染色体異常の頻度はMMCでより不安定である、したがって、施設によって、D EBを使用するところと、MMCを使用する方針のところとがある。

末梢血は、架橋剤の存在または非存在下でT細胞 分裂促進因子 である フィトヘマグルチニン(phytohemagglutinin)と共培養する。分裂中期の50細胞をとって染色体破壊またはラジアル構造を 計測する。結果はFA陽性の対照細胞と正常細胞と比較する。

  • 染色体異常誘発性の薬剤 を添加しない培養をもって突然変異 率を計測することもある。
  • 結果は、平均の染色体切断数/細胞かまたは1,2,3,…>8か所の切断を持つ細胞数c であらわされる。
  • ラジアル構造を持つ細胞の数を計測する。

FA患者は、DEBまたはMMCに対して以下の反応性を示す。

  • 染色体切断率の増加(他の染色体切断症候群と同様にFAでも見られる、鑑別診断参照)
  • 染色体切断とラジアル構造の増加によってFAと他の染色体切断症候群との区別ができる。

DEB/MMC感受性の増大は、先天異常の有無、病気の重症度に関わらず、あらゆる表現型において現れる。

:染色体切断の検査結果は、しばしばモザイクの存在によって複雑なものとなる、モザイクとは、リンパ球中に2つの表現型を有する場合に定義され、一方はDEB/MMCへの感受性が増大しており、他方はDEB/MMCへ反応しておこる染色体切断の頻度が通常レベルであるものである。こうした正常な表現型を持つ細胞は遺伝子交換、 逆行性変異、相補的欠失・挿入によって正常な表現型のリンパ球の選択的優位性をもたらす[Lo Ten Foe et al 1997, Waisfisz et al 1999, Gross et al 2002]。

リンパ球性モザイク は当初DEB/MMC感受性を示した患者においても起こりうる。このような患者はDEB/MMCテストにおいて偽陰性を示す。DEB/MMCテストではノーマルであるが臨床的にFAが高い確率で疑われる患者においては、他の細胞系列、例えば皮膚 線維芽細胞を用いたDEB/MMCテストを行う。染色体切断やラジアル構造を示した細胞数の記録によってリンパ球モザイクの存在を示しうることがある。

FAのヘテロ接合体はDEB/MMCテストにおいて値が正常範囲になるため検出できない。

他の細胞遺伝学的検査

骨髄細胞の異常所見がみられる。

細胞遺伝学的異常は、症状が盛衰するか、または、異形成症候群(MDS)と白血病 に進展する[Alter et al 2000]。3q26-q29のコピー数増加はMDSと急性骨髄性白血病に進行するリスクに関連することが報告されている[Tonnies et al 2003, Cioc et al 2010]。

FANCD2タンパク質モノユビキチン化のイムノブロット解析

ファンコニ貧血タンパク質A, B, C, E, F, G, I, L, MはFANCD2タンパク質下流のモノユビキチン化に必要な複合体を形成する。FANCD2タンパク質のモノユビキチン化は、MMCまたはDEB抵抗性によって測定されるように、FA経路の完全な機能のため に必須である。FANCD2タンパク質のモノユビキチン化は、これまで調べた中では他の骨髄機能不全症候群や染色体切断症候群では障害されない ため[Shimamura et al 2002]、イムノブロッティングによるFANCD2タンパク質のモノユビキチン化の測定はFAの迅速な診断に有用である。モザイクを有する患者や、FAのFA-D1(BRCA2), FA-J,(BACH1/BRIP1), FAN-N(PALB2)サブタイプはこの方法では検出できない(これらはFANCD2の下流に位置するため)ので、特に注意するべきである。

細胞周期停止

MMCはG2期での細胞周期の停止を誘発する。フローサイトメトリーによるG2期停止の観測は診断に用いられている[Pulsipher et al 1998]。このテストでは、おもに皮膚 線維芽細胞にMMC添加し、G2期の細胞の割合をフローサイトメトリーで測定する。大多数の細胞がG2期である場合にFAが疑われる。

相補的グループの決定

体細胞融合研究により、少なくとも 15のFA相補性グループ が発見された(A, B, C, D1(BRCA2), D2, E, F, G, I, J(BRIP/BACH1), L, M, N(PALB2), O(RAD51C), P(SLX4)。FA相補性グループは、患者の細胞において、 15のFA関連遺伝子のうちどの遺伝子の cDNAを発現させたときにDEB/MMC感受性の表現型が是正されるか確認することによって判明する[Pulsipher et al 1998]。この検査法は現在利用可能である[Chandra et al 2005]。

FAに関連する研究室レベルでの所見:

  • しばしば胎児ヘモグロビンレベルの上昇を伴う巨大化赤血球。このような変化は、予後に影響を及ぼさないが貧血の初期症状になりうる。
  • 血清エリスロポエチン濃度が正常または通常上昇する。

分子遺伝学的解析

遺伝子

15のFA相補的グループのすべてにおいて変異がみられる責任遺伝子が明らかにされている。

  • FANCA [Apostolou et al 1996, Fanconi Anaemia/Breast Cancer Consortium 1996, Lo Ten Foe et al 1996]
  • FANCB [Meetei et al 2004]
  • FANCC [Strathdee et al 1992]
  • BRCA2 (FANCD1) はヘテロ接合体では遺伝性乳 癌卵巣 癌に関連することが示されている。[Howlett et al 2002]
  • FANCD2 [Timmers et al 2001]
  • FANCE [de Winter et al 2000]
  • FANCF [de Winter et al 2000]
  • FANCG (XRCC9) [de Winter et al 2000]
  • FANCI [Dorsman et al 2007, Sims et al 2007, Smogorzewska et al 2007]
  • BRIP1(FANCJ or BACH1) [Levitus et al 2005, Levran et al 2005, Litman et al 2005]
  • FANCL [Meetei et al 2003a]
  • FANCM [Meetei et al 2005]
  • PALB2 (FANCN) [Reid et al 2007, Xia et al 2007]
  • RAD51C (FANCO) [Vaz et al 2010]
  • SLX4 (FANCP) [Kim et al 2011, Stoepker et al 2011]

臨床検査

  • ユダヤ人アシュケナジーに共通のFANCC病的変異(c .456+4A>C,以前はIVS4;4A>Tとして知られていた)部位のターゲット解析
  • FAに関連するすべての遺伝子のシークエンス解析。解析する遺伝子の数が多いこと、各遺伝子における病的変異の候補が多いこと、大きな挿入、欠失が起こる遺伝子があること、FA関連遺伝子の多くはサイズが大きいこと、などのためにシークエンス解析は複雑である、

相補グループが確定していたらそれに相当する遺伝子において病的変異を決定することができる。

  • 一つかそれ以上のエクソンまたは遺伝子レベルでの欠失を証明するためには欠失/重複解析を行う。

Table1

ファンコニ貧血の検査で用いられる分子遺伝学的検査の概要

相補性グループ

遺伝子1

FAのうち当該遺伝子変異の占める割合2

検査法

検出されたバリアント3

FA-A

FANCA

60-70%

シークエンス解析4

塩基配列変異

欠失/重複解析5

エクソンまたは全遺伝子欠失

FA-B

FANCB

~2%

シークエンス解析4

塩基配列変異

欠失/重複解析5

エクソンまたは全遺伝子欠失

FA-C

FANCC

~14%

病的変異のターゲット解析

c.456+4A>T, 67delG6

シークエンス解析4

ターゲット解析の対象も含まれる塩基配列変異

欠失/重複解析5

エクソンまたは全遺伝子欠失

FA-D1

BRCA2

~3%

シークエンス解析4

塩基配列変異

FA-D2

FANCD2

~3%

FA-E

FANCE

~3%

FA-F

FANCF

~2%

FA-G

FANCG

~10%

FA-I

FANCI

~1%

FA-J

BRIP1

~2%

FA-L

FANCL

~0.2%

FA-M7

FANCM

~0.2%

FA-N

PALB2

~0.7%

欠失/重複解析5

エクソンまたは全遺伝子欠失

FA-O8

RAD51C

~0.2%

シークエンス解析4

塩基配列変異

FA-P9

SLX4

~0.2%

  1. 表A参照
  2. Shimamura and Alter (2010)
  3. 変異体の分子遺伝学の項目参照
  4. シークエンス解析で検出されるバリアントには小さな欠失/挿入やミスセンス変異、ナンセンス変異、スプライスサイト変異が含まれ、エクソンまたは遺伝子単位での欠失/重複は検出されない。
  5. ゲノムDNAのコード領域と隣接イントロン領域のシークエンス解析では検出されない、エクソンまたは遺伝子単位での欠失/重複を検出する方法としては様々なものがあり、定量PCR,ロングPCR、MLPA法、当該領域を含む染色体マイクロアレイ(CMA)法などがある。
  6. 病的変異のパネルは研究室ごとに異なる。
  7. FA-M:FANCM病的変異の保持者における相補性グループの正式な決定はいまだに議論の余地がある、なぜなら一家系/培養細胞系列しか同定されておらず、培養細胞ではFANCAFANCMの二つの変異を持つことが明らかにされたためである。実験的条件下の結果ではあるが、FANCMのノックダウンはFAの表現型を示した[Singh et al 2009]。
  8. FA-O:RAD51C病的変異の保持者における相補性グループの決定にはまだ議論の余地がある。一家系しか見つかっていないからである[Vaz et al 2010]。
  9. FA-P:SLX4病的変異の保持者における相補性グループの決定にはまだ議論の余地がある。ほんの一握りの家系しか見つかっておらず、SLX4は生物学上は既知のFAタンパク質の範疇に入らないことが明らかにされたからである[Kim et al 2011, Stoepker et al 2011]。

検査手順

発端者における診断の確定

  • 血液において細胞遺伝学的解析を行い、ジエポキシブタン(DEB)またはマイトマイシンC(MMC)存在下で染色体切断、再構成、ラジアル構造、の増加を検査する。
  • 血液での検査が 正常でモザイクが疑われる場合、皮膚の 線維芽細胞において DEB または MMC 存在下で細胞遺伝学的解析を行う。
  • 細胞遺伝学的解析によってFAの診断が確定したら、(C LIA認証施設において)相補性テストを行って変異遺伝子を同定し、塩基配列解析を行う。

    注:事前に相補性テストをせずに全遺伝子のシークエンス解析を進めるセンターもあるが、従来法を用いると現時点の米国では法外な料金がかかる。

  • FANCCにおける病的変異のターゲット解析または特定の遺伝子のシークエンス解析は、アシュケナジーユダヤ人のc.456+4A>T変異のような創始者効果がみられる民族集団においては実施される。

常染色体劣性をしめすFAの家系における保因者診断には家系内の病的変異の解明が必要である。

:常染色体劣性疾患の保因者はヘテロ接合体で、発症リスクはない。

X連鎖を示すFA(FANCB病的変異)における保因者診断家系内の病的変異の解明が必要である。

:(1)保因者は変異をヘテロで持つ女性である。(2)女性の保因者の証明には、一般的に、(a)家系内の病的変異の解明か、(b) 罹患者の男性のテストが実施できないときにはシークエンス解析による分子遺伝学的解析を優先させる。

リスクのある妊娠における出生前または着床前診断には家系内の病的変異の解明が必要である。


臨床的特徴

臨床症状

FAの主要な臨床症状は身体的異常、血球減少を症状とする進行性の骨髄機能不全、発 癌リスクである。しかしながら、身体異常や骨髄機能不全を伴わない患者もいる。

身体異常
一般的に身体的異常は死亡率には影響しない。何らかの身体的異常 を認める確率は約75%である。男女比は1.2:1(期待値1.00に対してp<0.001)。最も一般的に報告される症状と頻度は下記のとおり。

  • 低体重出生(5%)
  • 低身長(40%)
  • 皮膚(40%)色素沈着、カフェオレ斑、白斑
  • 骨格
    • 上肢、両側性または片側性(35%)
      • 親指(35%)欠失または形成不全、二分、重複、未発達、attached by a thread糸状のものによる定着、3指節拇指、長大、ずんぐり形
      • 橈骨(7%)欠損または低形成(親指の異常を伴う場合のみ)、脈が弱いか欠失
      • 手(5%)平たい母指球、第1中手骨欠損、斜指症、多指症
      • 尺骨(1%)形成異常、短指
    • 下肢(5%)
      • 足。合趾症、足指の異常、カニ足
      • 脚部。先天性の臀部脱臼
    • 頸部(1%)シュプレンガー奇形、Klippei-Fiel奇形、短頚、低い髪の生え際、 翼状頚
    • 脊椎(2%)二分脊椎、脊柱側弯症、半椎、肋骨異常、尾骨形成不全
  • 頭蓋顔面部
    • 頭部(20%)小頭症
    • 顔面部(2%)三角形状、小鳥様顔貌、形成不全、小顎症、 顔面中央部低形成
  • 眼部(20%)

小眼球、白内障、乱視、斜視、内眼角贅皮 、 眼間狭小、 眼間隔離、眼瞼下垂

  • 泌尿器系(20%)

腎臓:馬蹄 腎、異所性または骨盤内腎、形態異常、低形成または過形成、欠失、水腎症または水尿管症

  • 性腺
    • 男性(25%)尿道下裂、小陰茎、停留睾丸、無睾丸
    • 女性(2%)双角子宮、位置異常、小子宮

    注:男性では、低精子症又は無精子症のために生殖能は低下する(完全に失うわけでは無い)。女性では、造血幹細胞移植を受けるか受けないかにかかわらず妊娠は可能である。

  • 発達遅延(10%)知的障害、発達遅延
  • 耳(10%)難聴(二次伝導から中耳の骨形成異常による)、形状異常(低形成、閉鎖、耳道低形成(外耳道など)、耳介異常
  • 心肺(6%)先天性心 疾患:動脈管開存症、心房 中隔欠損、心室 中隔欠損、大動脈縮窄、総動脈管縮窄、内臓逆位
  • 胃腸(5%)食道、十二指腸、空腸閉鎖、肛門閉鎖、気道食道瘻孔、輪状膵、消化管回転異 常
  • 中枢神経系(3%)小さい脳下垂体、下垂体茎 離断症候群、脳梁 欠損、小脳形成不全、水頭症、 脳室拡大

    注:頻度のパーセンテージは1927年から2009年の間に報告された文献に記載の2000例から計算されたもので、多くの文献では身体的記述がなされていないため、おおよその数字である。

骨髄機能不全

FAにおける血液学的な合併症は生後10年までにおこることが特徴的であるが、様々である。汎血球減少症は新生児期に発症する (Landmann et al 2004, Shimamura and Alter 2010)。

  • 血小板減少と白血球減少は貧血に 先行する。
  • 汎血球減少症は一般に進行性である。
  • 好中球減少は感染のリスク上昇に関連する。
  • Sweet症候群( 好中球皮膚浸潤)はFAと骨髄異形成症候群(MDS)の患者 の一部にみられる。(Baron  et al 1989)
  • 重症骨髄機能不全(死につながるか造血幹細胞移植 適応のものと定義される)は10歳時をピークに 年5%のリスクがある 。競合的リスク解析に置いては50歳までにこの症状を最初の症状として発症する累積危険度は 55%である。(Rosenberg et al 2003, Alter et al 2010);非競合的リスクモデルでは、血液学的な症状(重症ではない者も含めて)を発症する累積危険度は50歳までに90%である。

癌感受性

FAの文献報告では、9%が白血病を発症(主に急性骨髄性白血病(AML))するとされ、7%が骨髄異型性症候群(MDS)を発症する(Alter 2003a)。AMLの相対的リスクは4つの異なるコホート研究間で約500倍上昇するとされている。(rosenberg et al 2003, Rosenberg et al 2008, Alter et al 2010, Tamary et al 2010)

頭頸部、食道、陰部の 癌は扁平上皮癌である。ある一つのコホート研究におけるFA患者の扁平上皮癌にヒトパピローマウイルスDNAが高頻度で見られるというとういう所見は(Kutler et al 2003) 他のコホート研究では確かめられていない(van Zeeburg et al 2008)。4つのコホート研究においては固形 癌の相対 リスクは約40倍であり、競合的リスク解析における 累積リスクは50歳までに30%である。

骨髄機能不全の治療としてアンドロゲン治療を受けたFA患者では肝臓 癌リスクが上昇する;しかし、肝臓 癌を発症した45人中2人はアンドロゲン治療を受けていなかった。

FA患者では、化学療法や放射線治療のようなDNA損傷に対して感受性を示すため、悪性腫瘍の治療は困難である。

遺伝型と表現型の相関

FANCA

FANCAの病的変異保持者の間でnullバリアント(タンパク産生がゼロ)をホモで持つと、異常ではあるがFANCAタンパク質を産生する患者と比較して貧血の発症が早く、白血病の頻度が高くなる。(Faivre et al 2000)

FANCC

  • FANCC のc.456+4A>T(IVS4+4A>Tとしても知られる)バリアントはFANCCの病的変異の中でもっとも頻度が高く、アシュケナジーユダヤ人に特徴的である。このバリアントとp.Arg548Terとp.Leu554Proバリアントは、del22GのようなFANCCの他のバリアントと比較して早期の血液学的症状と先天 異常が多い。
  • 病的変異のp.Asp23IlefsTer23とp.Gln13Terでは他の重症なバリアントよりも先天異常の頻度が低く、後期に骨髄機能不全を発症する(yamashima et al 1996, Gillio et al 1997)
  • 既知のバリアントにおける重症度に影響するその他の因子として、FANCC c.456+4A>Tバリアントではアシュケナジーユダヤ人よりも日本人で表現型が軽症になる傾向がみられる。

BRCA2

BRCA2FANCD1としても知られる)遺伝子の両アレルにおける病的変異は早期の白血病(Wangleret al 2004)と固形腫瘍(Hirsch et al 2004)との関連が見られる。BRCA2のIVS7バリアント保持者は全員が3歳までに急性骨髄性白血病(AML)を発症 していた;BRCA2のほかの病的変異のバリアント保持者でAMLを発症する患者は6歳までに発症 していた(Alter, 2006)。すべての悪性腫瘍の累積 発症リスクは、AML、髄芽細胞腫、ウィルムス腫瘍を含めて6歳までに97%である。(Alter, 2007)

FANCG

FANCGの病的変異は他の病的変異に比べて、より重症の血球減少症、白血病の危険性が高い;一般的にnullバリアントはタンパクの構造変化を伴うバリアントと比較して重症度が高くなる。

有病率

FAの有病率は、保因者頻度が1:300であることと、常染色体劣性遺伝モデルから360000出生中1と推定される(Swift, 1971)。
特定の民族集団(アシュケナジーユダヤ人、スペイン人ジプシー、南アフリカ黒人)では保因者の頻度は約1:100である。(Kutler and Auerbach 2004, Callen et al 2005, Mrogan et al 2005)


遺伝学的に関連する疾患

遺伝性乳 癌卵巣 癌はBRCA2FANCD1)の病的変異のヘテロ保持者と関連する。

BRIP1(FANCLとしても知られる)とPALB2FANCNとしても知られる)の病的変異 は乳 癌易罹患性との 関連が 認められる。(Seal et al 2006, Rahman et al 2007)


鑑別診断

本稿で扱われる疾患に対する遺伝学的検査の実施可能性に関する最新情報は,GeneTests Laboratory Directoryを参照のこと.―編集者注.

FAは再生不良性貧血および血液腫瘍をもたらす遺伝要因の中では最も頻度が高いものである。
Bloomシンドロームや毛細血管拡張性運動失調症(ataxia telangiectasia)のような染色体切断症候群患者由来の細胞も高頻度の染色体切断をおこすが、DEBに反応して染色体切断が起こるのはFA患者由来の細胞のみである。

ナイメーヘン症候群(Nijmegen breakage syndrome, NBS)は低身長、認知機能障害を伴う進行性の小頭症、女性では成熟前の卵巣障害、 副鼻腔肺感染、特にリンパ球の発 癌リスク上昇などを伴う疾患であるが、MMCに反応して染色体切断が増加することで診断される(Nakanishi et al 2002, Gennery et al 2004)。常染色体劣性遺伝である。NBS患者ではほぼ100%の割合でNBS1遺伝子に病的変異が認められるため、NBSとFAはNBS1遺伝子におけるDNA塩基配列解析で鑑別される。

セッケル症候群(Seckel syndrome)は、発育障害、知的障害を伴う小頭症、「小鳥様の」特徴的な顔貌を特徴とする疾患であるが、DNA架橋剤(DEB, MMC)による染色体切断を示す。セッケル症候群患者の中には血球減少症、AMLをきたす患者も存在する。セッケル症候群は少なくとも3つの遺伝子における病的変異によって引き起こされるが、そのうち一つ(ATR)しか解明されていない (O'Driscoll et al 2003) 。

神経線維腫症1型(カフェオレ斑から疑われる)、TAR症候群(橈骨欠損と血小板減少症)、非FA関連VACTERL 連合(放射線による障害が原因と考えられている(Faivre et al 2005))などの疾患は、DEBまたはMMCテストによってFAと鑑別できる。


臨床的マネジメント

マネジメントは身体障害、骨髄障害、白血病、固形腫瘍のサーベイランスと治療に重点を置いて行う。

初期診断後の評価

FAと診断された患者の病気の重症度を確定するためには、必要に応じて下記の検査が推奨される。

身体的障害

  • 腎臓と泌尿器の超音波検査
  • 聴力検査
  • 発達診断(特に幼児と学齢期の児童に重要である)
  • 眼科、耳鼻科、内分泌科、手の整形外科、婦人科(女性には)、消化器科、泌尿器科の受診
  • 臨床遺伝専門医による診察と遺伝カウンセリング

骨髄機能不全

  • 全血球カウント、胎児ヘモグロビン測定、骨髄穿刺液による細胞学的検査と細胞形態、細胞遺伝学的検査。
  • 造血幹細胞を考慮した、患者とその同胞のHLAタイピング
  • 血液型検査
  • 血液生化学的検査(肝臓、腎臓、鉄分の状態の検査)

症状の治療

治療の指針は2008年の会議で合意されたものである(Eiler et al 2008)。

アンドロゲン投与

アンドロゲン投与によってFA患者の約50%で血液機能の改善がみられる。効果はまず赤血球においておこり、投与後の1,2か月の間に網状赤血球の増加とヘモグロビンの増加がみられる。白血球と血小板数への影響は変動的である。血小板の反応は一般的に不完全で治療後数か月するまで観察されない。このような反応は一過 性で、治療の効果は一般的に赤血球で最もみられる。治療への抵抗性が次第に(一般的には年単位で)観察されるようになる。標準的に推奨されるアンドロゲンはオキシメトロンで、一日に体重1sあたり2-5mgを経口投与する。血球数を注意深くモニターすることによってアンドロゲン投与量を必要最低限まで 減量する。アンドロゲンの副作用は、肝機能の酵素活性上昇にみられるような肝臓毒性、胆汁うっ滞、肝ペリオーシス(血液貯留嚢胞による血管病変)、肝腫瘍などがある (shimamura and Alter 2010) 。

血球増殖因子

顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)は一般に皮下に投与し、好中球数の改善がみられることがある。注:血球増殖因子の投与開始前に骨髄穿刺による生検を行い、治療中は定期的にモニターする必要がある。血球増殖因子の投与は注意して行い、クローナルな骨髄の細胞遺伝学的異常の場合は使用しない。

造血幹細胞移植(HSCT

再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、急性白血病を含むFAの血液学的な症状の治癒のためにはHSCTが唯一の治療法である。ドナーの幹細胞は、骨髄、末梢血(G-CSFによるドナーの造血機能刺激後に)、臍帯血から採取する。HSCTはMDSや白血病の発症前、つまり造血機能の補充のために何度も輸血を繰り返す以前に行うのが理想である(MacMillan and Wagner 2010)。HSCTはFA患者へのHSCTに習熟した病院で行うべきである。

FA患者は通常BMTの調整に用いられる化学療法や放射線療法に非常に感受性が高いので、減剤が行われることが特徴的である。歴史的にFA患者における移植の失敗の原因の主要なものは移植元の不良であったが、フルダリビンによって大きく改善が見られた。加えて、病気の予防法と治療法によって代替ドナーの利用が増加し、同胞間での移植と血縁関係のないドナーからの移植との間での治療効果の違いは少なくなってきている。

造血機能の症状がHSCTによって治療できた患者では、固形腫瘍、特に舌の扁平上皮癌のリスクが増大する。ある研究では、リスクは4倍上昇し、初発年齢はFA患者で移植を受けなかった人よりも16歳若年齢化した (Rosenberg et al 2005) 。

癌の治療

悪性腫瘍の治療は、FA患者では化学療法や放射線療法への感受性が高くなるために困難である。可能であれば、FA治療の経験のある病院で治療を受けることが推奨される。

二次的な合併症の予防

女性における婦人科癌のリスク低減のため(効果は証明されている)と口腔 癌のリスク低減の可能性があるため(未証明)、9歳以上の女性、男性にヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種が推奨されている。

サーベイランス

身体的障害

成長と思春期における発達を注意深くモニターし、早期に内分泌医の診察を受けることが推奨される。

骨髄機能不全

一般的な推奨は様々である。

  • 安定しているときには2,3か月ごと、必要に応じてさらに頻繁に、定期的な血球数のカウントを行う
  • 形態学的、細胞学的(生検による)、細胞遺伝学的(悪性のクローン発生に備えて)な評価のため、少なくとも年に一度の骨髄穿刺/生検を行う。

血液と骨髄の指標のモニターは2008年の合同会議で合意されている(Eiler et al 2008)。

アンドロゲン投与

アンドロゲン投与を受ける患者では

  • 肝機能のモニター
  • 12か月ごとに肝臓の超音波検査を行い、腫瘍を含めたアンドロゲン関連変化を検査する。

癌のサーベイランス

ほとんどの固形腫瘍は生後10から20年の間に起こる。悪性腫瘍が予測されるいかなる症状にも迅速、積極的対応が求められる。早期に発見し、外科的切除を行うことが治療の根本である。
サーベイランスのレジメンには以下のものが含まれる

  • 16歳以上では、どちらから始めてもよいが、毎年の婦人科検診と細胞塗抹標本の検査
  • 10歳から、またはHSCT後の最初の年からの、 鼻咽頭喉頭鏡 を含めた歯科、中咽頭の頻繁な検査
  • 毎年の食道内視鏡検査を考慮すべきであるが、ガイドラインはなく、ほとんどの病院では麻酔を必要とする。

避けるべき薬剤/環境

輸血

造血幹細胞移植を考えている場合、赤血球または血小板の輸血は避けるべきである。
感作の可能性を低減するためにHSCTを考えている場合に家族が輸血のドナーとなることは避けるべきである。
すべての血液製剤はろ過(白血球の除去)と放射線照射を行うべきである。

癌の予防

FA患者では白血病と他の悪性腫瘍のリスクが増大するため、患者は発 癌に関与すると考えられる要因、喫煙、受動喫煙、アルコールなどを避けることが推奨される。

FA患者では放射線への感受性が増大するため、サーベイランスのための放射線検査は臨床的指標がない場合は避けるべきである。しかしながら、手首、臀部、脊髄における異常のように年齢に伴って生じる骨の異常をモニターするために最低限の骨格のサーベイランスは考慮するべきである。

リスクのある親類における評価

罹患者の同胞にはみな、DEB/MMCテスト分子遺伝学的検査(家系における病的変異が同定されている場合)を行い、早期の診断と物理的異常、骨髄機能不全、関連する 癌のモニターに努めるべきである。
リスクのある親類の検査に関しては遺伝カウンセリングの項を参照。

妊娠のマネジメント

造血幹細胞移植の有無にかかわらず、FA患者の女性は妊娠可能である(Alter et al, 1991, Dalle et al 2004)。妊娠の際は産科医と血液専門医によるハイリスク妊娠としての管理が必要である。

研究中の治療法

遺伝子治療は理論的には可能であり、研究段階である。理論的には、FAは 正常型(野生型)のアレルを獲得することによって 細胞の成長が期待されるので、遺伝子治療の理想的なターゲットである。しかしながら、造血細胞への遺伝子治療では他の組織における固形腫瘍のリスクは低減されない。FANCC 病原性変異を持つ患者への遺伝子治療の初期のトライアルでは、造血細胞におけるレトロウ イルスによるFANCC遺伝子の一過 性の導入の記述がある。(Liu et al 1999).
これまでの臨床試験では幹細胞における永久的な遺伝子の補正は達成されていないため、現在、新規のベクターと導入方法の研究に焦点が当てられている。
広範囲の病気や症状における臨床研究に関する情報はClinicalTrials.govでアクセスできる。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

FA関連遺伝子の異常は、X連鎖性のFANCB遺伝子を除いて、常染色体劣性遺伝である。

家系内メンバーのリスク−常染色体劣性FA

発端者の両親

  • 常染色体劣性のFAの子を持つ両親は、FAの原因となる変異アレルの絶対保因者となる。
  • 保因者では症状は出ない

発端者の同胞

  • 常染色体劣性のFAの同胞は、それぞれ、25%の確率で両方の病的変異アレルを受け継いで発症し、50%の確率で片方の変異アレルを受け継いで保因者となり、25%の確率で正常アレルを二つ受け継いで保因者とはならない。
  • 未発症者でDEB/MMCテストで正常な同胞は2/3の確率で保因者である。
  • 変異アレルをヘテロで持つ(保因者)は発症しない。FAのヘテロ接合体における腫瘍リスクの増大に関しては検討段階である(FANCD1/BRCA2は例外で、ヘテロ接合体では乳 癌、卵巣 癌その他の 癌のリスクが増大する)。遺伝性乳 癌卵巣 癌症候群(HBOC)の項目を参照。

発端者の子供

常染色体劣性のFA患者の子 は絶対保因者である。

発端者のその他の血縁者

発端者の両親の同胞はそれぞれが50%の確率で保因者である。

家系内メンバーのリスク―X連鎖FA

発端者の両親

  • 男性のX連鎖FA患者の父親は罹患者でも病的変異の保因者でもない。
  • 一人以上の罹患者を持つ家系では、罹患した男性の母親は絶対保因者である。
  • 家系の調査によって発端者が唯一の罹患者である場合、母親が保因者であるか、罹患者の男性が新生突然変異の病的変異を持ち、母親は保因者ではない場合がある。
  • 一人以上の罹患した男児を持ち、白血球由来DNAで病的変異が見つからない女性は、生殖細胞系列のモザイクである。

発端者の同胞

  • 同胞の保因者となるリスクは母親の状態による。
  • 発端者の母親が病的変異を持っている場合、各妊娠における病的変異を受け継ぐ確率は50%である。病的変異を受け継いだ男児は罹患者となり、病的変異を受け継いだ女児は保因者となり、通常発症しない。
  • 家系内の唯一の男性罹患者の母親において白血球由来DNAから病的変異が検出されない場合、同胞のリスクは少ないが、生殖細胞系列モザイクの可能性により、一般人口よりは高くなる。

発端者の子供

男性はすべての女性の子供には病的変異を受け継ぎ、男性の子供には受け継がない。しかしながら、現時点で男性FA-B患者は生殖年齢まで生きることができなく、さらに、多くのFA患者男性は不妊である。

発端者の他の血縁者

発端者の母方のおばは保因者のリスクがあり、おばの子供は性別によって保因者となるか罹患するリスクがある。

保因者診断

FAの保因者はDEB/MMCテストでは診断できない。
保因者診断は家系内の病的変異が同定された後に可能になる。

遺伝カウンセリングに関連した問題

早期発見と治療目的のリスクのある親族の診断のための情報は、マネジメントとリスクのある親族の診断の項目を参照

発端者の同胞

FA患者の25-40%は身体異常を伴わないため、早期の診断と身体的異常、骨髄機能不全、関連癌の適切なモニターのためには罹患者のすべての同胞にDEB/MMCテストを行うことが推奨される。

家族計画

  • 遺伝的なリスクを決定し、出生前検査の実施可能性を議論するのに最適なタイミングは、妊娠前である。
  • 罹患しているかリスクのある若い家族メンバーには遺伝カウンセリング(子供への遺伝の可能性と生殖に関するオプションに関する議論を含めて)を推奨する。

DNAバンキング 

DNAバンキングは、将来使用する可能性を見越してDNA(通常は白血球から抽出した)を保存しておくことである。検査方法や遺伝子、変異、疾患に対する理解が将来的に改善されることが予想されるので、DNAバンキングを考慮すべきである。

出生前診断

分子遺伝学的診断

家系における病的変異が同定されている場合は、個別の遺伝子またはパネル検査を提供している施設において出生前診断を受けることが可能である。

染色体切断

FAのリスクが大きい妊娠においては、妊娠12週前後における絨毛膜絨毛(CVS)採取または妊娠15から18週における羊水検査によって得られる胎児細胞を用いてDEB/MMCによる染色体切断の増加を見る細胞遺伝学的検査を行うことによって出生前診断も可能であるが;家系における病的変異が同定されている場合は、分子遺伝学的検査を行う。
注)妊娠週数は、最後の生理の一日目を1日とする生理周期によって決めるかまたは超音波による計測で決められる。

胎児の超音波診断

FAに伴う胎児の異常を診断するために超音波検査が可能である。しかしながら、超音波検査はFAの診断ではない。FAに特徴的な先天性異常の多くは超音波検査では検出できないもので、FA以外の疾患による異常が検出される場合もある。

着床前遺伝子診断

着床前診断によりリスクのある胚の中でFA非罹患胚を診断したり、罹患した同胞におけるHLAの合致を同定することができた(Verlinsky st al 2001, Bielora

i et al 2004, Grewal et al 2004)。


関連情報

GeneReviewsスタッフは患者とその家族の利益のため、疾病ごとのあるいはサポート組織として以下に示すものをセレクトした。
GeneReviewsは他の組織が提供する情報に責任を持つものではない

  • Fanconi Anemia Cell Repository
    Department of Medical and Molecular Genetics
    3181 Southwest Sam Jackson Park Road L103
  • Oregon Health & Science University
    Portland OR 97201
    Phone: 503-494-6888
  • Fanconi Anemia Research Fund, Inc. (FARF)
    1801 Williamette Street
    Suite 200
  • Eugene OR 97401
    Phone: 888-326-2664 (Toll-free Family Support Line); 541-687-4658
    Fax: 541-687-0548
    Email: info@fanconi.org
    www.fanconi.org
  • International Fanconi Anemia Registry (IFAR)
    The Rockefeller University
    1230 York Avenue
    New York NY 10065
    Phone: 212-327-8862
    Fax: 212-327-8262
    Email: auerbac@rockefeller.edu
  • International Fanconi Anemia Registry (IFAR)
  • NCI Inherited Bone Marrow Failure Syndromes (IBMFS) Cohort Registry
    National Cancer Institute

    Phone: 800-518-8474
    Email: lisaleathwood@westat.com
    www.marrowfailure.cancer.gov
  • Prospective Registry of MultiPlex Testing (PROMPT)
    PROMPT は、マルチプレクッスの遺伝学的検査を受け発 癌の危険性に関連しうる遺伝子変異が発見された家系のオンライン研究レジストリである。
    PROMPT

分子遺伝学

GeneReviews ではMolecular Genetics と OMIM tablesの情報とは一部異なる可能性がる。最新の情報はOMIM tablesを参照

Table A

Complementation Group

Gene

Chromosome Locus

Protein

Locus Specific

HGMD

FA-A

FANCA

16q24?.3

Fanconi anemia group A protein

Fanconi Anemia Mutation Database (FANCA)

FANCA

FA-B

FANCB

Xp22?.2

Fanconi anemia group B protein

FANCB @ LOVD
Fanconi Anaemia Mutation Database (FANCB)

FANCB

FA-C

FANCC

9q22?.32

Fanconi anemia group C protein

Fanconi Anemia Mutation Database (FANCC)

FANCC

FA-D1

BRCA2

13q13?.1

Breast cancer type 2 susceptibility protein

BRCA2 homepage - LOVD
Fanconi Anaemia Mutation Database (FANCD1 - BRCA2)
Breast Cancer Information Core (BRCA2)
BRCA2 @ ZAC-GGM
Database of BRCA1 and BRCA2 sequence variants that have been clinically reclassified using a quantitative integrated evaluation

BRCA2

FA-D2

FANCD2

3p25?.3

Fanconi anemia group D2 protein

Fanconi Anaemia Mutation Database (FANCD2)

FANCD2

FA-E

FANCE

6p21?.31

Fanconi anemia group E protein

Fanconi Anaemia Mutation Database (FANCE)

FANCE

FA-F

FANCF

11p14?.3

Fanconi anemia group F protein

Fanconi Anaemia Mutation Database (FANCF)

FANCF

FA-G

FANCG

9p13?.3

Fanconi anemia group G protein

Fanconi Anaemia Mutation Database (FANCG)

FANCG

FA-I

FANCI

15q26?.1

Fanconi anemia group I protein

Fanconi Anemia Mutation Database (FANCI)

FANCI

FA-J

BRIP1

17q23?.2

Fanconi anemia group J protein

BRIP1 @ LOVD
Fanconi Anaemia Mutation Database (FANCJ - BRIP1)

BRIP1

FA-L

FANCL

2p16?.1

E3 ubiquitin-protein ligase FANCL

Fanconi Anaemia Mutation Database (FANCL)

FANCL

FA-M

FANCM

14q21?.2

Fanconi anemia group M protein

Fanconi Anaemia Mutation Database (FANCM)

FANCM

FA-N

PALB2

16p12?.2

Partner and localizer of BRCA2

Fanconi Anaemia Mutation Database (FANCN - PALB2)
Fanconi anemia database (FANCN)
PALB2 database

PALB2

FA-O

RAD51C

17q22

DNA repair protein RAD51 homolog 3

RAD51C @ LOVD

RAD51C

FA-P

SLX4

16p13?.3

Structure-specific endonuclease subunit SLX4

SLX4 @ LOVD

SLX4

Table B

OMIM Entries for Fanconi Anemia (View All in OMIM)

227645

FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP C; FANCC

227646

FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP D2; FANCD2

227650

FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP A; FANCA

300514

FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP B; FANCB

300515

FANCB GENE; FANCB

600185

BRCA2 GENE; BRCA2

600901

FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP E; FANCE

602774

RAD51, S. CEREVISIAE, HOMOLOG OF, C; RAD51C

602956

FANCG GENE; FANCG

603467

FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP F; FANCF

605724

FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP D1; FANCD1

605882

BRCA1-INTERACTING PROTEIN 1; BRIP1

607139

FANCA GENE; FANCA

608111

FANCL GENE; FANCL

609053

FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP I; FANCI

609054

FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP J; FANCJ

609644

FANCM GENE; FANCM

610355

PARTNER AND LOCALIZER OF BRCA2; PALB2

610832

FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP N; FANCN

611360

FANCI GENE; FANCI

613278

SLX4, S. CEREVISIAE, HOMOLOG OF; SLX4

613390

FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP O; FANCO

613897

FANCF GENE; FANCF

613899

FANCC GENE; FANCC

613951

FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP P; FANCP

613976

FANCE GENE; FANCE

613984

FANCD2 GENE; FANCD2

614082

FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP G; FANCG

614083

FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP L; FANCL

614087

FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP M; FANCM

OMIM Entries for Fanconi Anemia (View All in OMIM)

227645

FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP C; FANCC

227646

FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP D2; FANCD2

227650

FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP A; FANCA

300514

FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP B; FANCB

300515

FANCB GENE; FANCB

600185

BRCA2 GENE; BRCA2

600901

FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP E; FANCE

602774

RAD51, S. CEREVISIAE, HOMOLOG OF, C; RAD51C

602956

FANCG GENE; FANCG

603467

FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP F; FANCF

605724

FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP D1; FANCD1

605882

BRCA1-INTERACTING PROTEIN 1; BRIP1

607139

FANCA GENE; FANCA

608111

FANCL GENE; FANCL

609053

FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP I; FANCI

609054

FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP J; FANCJ

609644

FANCM GENE; FANCM

610355

PARTNER AND LOCALIZER OF BRCA2; PALB2

610832

FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP N; FANCN

611360

FANCI GENE; FANCI

613278

SLX4, S. CEREVISIAE, HOMOLOG OF; SLX4

613390

FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP O; FANCO

613897

FANCF GENE; FANCF

613899

FANCC GENE; FANCC

613951

FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP P; FANCP

613976

FANCE GENE; FANCE

613984

FANCD2 GENE; FANCD2

614082

FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP G; FANCG

614083

FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP L; FANCL

614087

FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP M; FANCM

:この項とFigure 1におけるタンパク質の相互作用とシグナル伝達の詳細な説明では、各タンパク質の長い名前をイタリック体ではなく、略号(fanconi anemia group A protein をFANCA;breast cancer type2 susceptibility protein をBRCA2)で表記した。

遺伝子名とタンパク質名はTable Aを参照。

fig1

Figure 1

ファンコニ貧血経路の現在のモデル。8つのFAタンパク質(FANCA, FANCB, FANCC, FANCE, FANCF, FANCG, FANCL, FANCM)と、FAAP100とFAAP24とが一緒に、E3ユビキチンリガーゼ活性を持つ核タンパク質複合体(FAコア複合体)を形成する。FANCLはFAコア複合体の触媒サブユニットで、PHD/RINGドメインを通じて、E2ユビキチン結合酵素UBE2Tに直接作用する。UBE2Tはリシン91残基の自動的なモノユビキチン化によって不活性化される。FAコア複合体、BLM、RPA、トポイソメラーゼVはBRAFTと呼ばれるスーパー複合体を形成する。FANCIFANCD2はID複合体と呼ばれる他の複合体を形成する。ヌクレアーゼFAN1はFANCD2と相互作用すると考えられている。DNA損傷に応答して、またはS期において、FANCD2とFANCIは、UBE2T-と ID 複合体依存的に特定のリシン残基(FANCD2ではリシン 561 (K561) が、FANCI)ではリシン523 (K523) が)モノユビキチン化される。DNA損傷誘導型のFANCD2のモノユビキチン化にはATR、RPA,HCLK2も必要である。モノユビキチン化されたFANCD2FANCIはnuclear foci に移行し、BRCA1, FANCD1/BRCA2, FANCN/PALB2, RAD51, FANCJ/BRIP1と他のタンパク質とともに局在化している。BRCAはDNA損傷応答型のFANCD2 のfoci形成に必須である。FAコア複合体もまたnuclear fociを形成する。これらの要素すべてがDNA架橋剤への抵抗性に必要である。PCNAのリシン164 (K164)残基のモノユビキチン化にはとしてRAD6 が、E3としてRAD18 が必要であるが、 FA コア複合体は必須ではない。PCNAのモノユビキチン化によって、 translasion synthesis (TLS) DNA ポリメラーゼが停止した複製フォーク部位に取り込まれる。USP1は補因子であるUAF1とともにPCNAとFANCD2、おそらくはFANCIも脱ユビキチン化する。

子遺伝学的病理

FAには13個の遺伝子が関与しており、13の表現型による相補的グループが証明されている。FA-Mグループは、唯一の培養細胞系列がFANCAとFANCMのダブルミュータントであり、FANCMが本当にFA関連遺伝子であるか不透明であることから、複雑な状況である。FA関連遺伝子にコードされるタンパク質は、DNA架橋剤への細胞の抵抗性を調節する経路である「FA経路」、または「FA-BRCA経路」と呼ばれる共通の経路において機能していると考えられている。(Taniguchi and D'Andrea 2006)。この経路の破壊によってFAで見られる細胞学的または臨床的な症状が起こる(Garcia-Higuera et al 2001)。

8つのFAタンパク質 (FANCA, FANCB, FANCC, FANCE, FANCF, FANCG, FANCL, FANCM)と、FAAP100(Ciccia 2007)とFAAP24(Ling et al 2007)とは核複合体(FA複合体)を形成する。この複合体はマルチサブユニットからなるユビキチンリガーゼであり;2つのFA タンパク質(FANCD2とFANCI)のモノユビキチン化はFA複合体依存的である(Garcia-Higuera et al 2001, Smogorzewska et al 2007)。DNA損傷への応答または細胞周期のS期においてFA複合体が2つのFA タンパク質(FANCD2とFANCI)のモノユビキチン化を促進する。モノユビキチン化されたFANCD2とFANCIはBRCA1, BRCA2, PALB2, RAD51を含む核内の1点に移動する。FANCIはFANCD2と配列において類似性を示し、ともにタンパク質複合体(ID複合体)を形成する(Smogorzewska et al 2007)。FANCD2とFANCIのモノユビキチン化は相互依存性である(Smogorzewska et al 2007)。FAN1ヌクレアーゼはモノユビキチン化されたFANCD2に結合して酵素活性を持つことが示されている(Huang and D'Andrea 2010)。In vitroでDNA架橋修復を再現するセルフリーの系が使われている。

FAコア複合体の構成要素の一つであるFANCLは、ユビキチンリガーゼ活性を持つ、PHD(植物ホメオドメイン)フィンガードメイン(RINGフィンガーのバリアント)を持つ(meetei et al 2003a)。FANCLは自身のもつPHD/RINGフィンガードメインを通じてユビキチン結合酵素(E2)で、FANCD2のモノユビキチン化にも必要である、UBE2Tと相関している(Machida et al 2006)。リコンビナントFANCL, E2 UBE2T, FANCI, FANCEはin vitroでモノユビキチン化反応を再現する。

FAコア複合体の他の構成要素であるFANCMはHEFとしても知られる古細菌DNAヘリカーゼ/ヌクレアーゼと相同性を持つ。FANCMはヘリカーゼモチーフを有し、ヌクレアーゼモチーフを変性させ、DNAによって活性化されるATPase活性とDNAトランスロケール活性を示す(Meetei et al 2005)。FANCM関連タンパク質であるFAAP24は1本鎖DNAとDNA分岐構造に優先的に結合する(Ciccia et al 2007)。そのため、FANCMのDNAトランスロケース活性はFAコア複合体をDNAから離し、DNA損傷部位を認識させるうえで重要な役割を果たす、またはFAAP24がFAコア複合体を異常な、分岐したDNA構造を標的とするうえで役割を持つことが予想されてきた。この複合体は、RPA(Huang et al 2010)やBLMヘリカーゼ(Deans and West 2009)を含む、複製に関連したチェックポイント応答に必要であると考えられている。複数のFA複合体がそうであるように、この複合体はATRを通して調節されている。

さらに、FAコア複合体は、BLM、 RPA、トポイソメラーゼVaとともに、BRAFTと呼ばれるさらに大きな複合体を形成し(Meetei et al 2003b)、これはブルーム症候群に関連している。FANCMは、FAコア複合体とBLM複合体の両方において存在する。

DNA損傷活性化型シグナリングキナーゼであるATR、一本鎖DNA結合タンパク質複合体であるRPA、ATR関連タンパク質であるHCLK2は、DNA損傷誘導モノユビキチン化とFANCD2のfoci形成に必須である(Andreassen et al 2004, Collins et al 2007)。
BRCA1(Garcia-Higuera et al 2001, Vandenberg et al 2003)とヒストンH2AX(Bogliolo et al 2007)はDNA損傷誘導のFANCD2のfoci形成に必須であるが、FANCD2のモノユビキチン化には必要ではない。これらの因子はFA経路の上流の活性化因子と考えられている。
ATRはFANCAを直接リン酸化し、FANCD2をCHK1を通して間接的にリン酸化する(Zhi et al 2009)。上述のように、ATRはFANCM7のアセンブリとICL誘導チェックポイントにおけるRPAのリクルートに必要である(Collins et al 2008)。

BRCA2(以前はFANCD1として知られていた)は 癌抑制遺伝子で乳 癌の発 癌に関与する(Howlettt et al 2002)。BRCA2タンパク質の安定性と局在化はPALB2 (partner and localizer of BRCA2) によって制御される(Xia et al 2006)。もう一つの乳 癌の発 癌関連遺伝子であるPALB2(Rahman et al 2007)はFA相補性グループのFA-Nの責任遺伝子で、時にFANCNとも呼ばれる(Reid et al 2007, Xia et al 2007)。もう一つの乳 癌の発 癌関連遺伝子である(Seal et al 2006)BRIP1(もともとBACH1, BRCA1-associated C-terminal helicase 1と呼ばれていた)もまたFA関連遺伝子であり、FA-J相補性グループを基本とする(Levitus et al 2005, Levran et al 2005, Litman et al 2005)。BRCA2PALB2BRIP1はFANCD2タンパク質のモノユビキチン化やFANCD2の核内foci形成には必須ではないが、細胞のMMCまたはDEBへの抵抗性には必要である。BRCA2は、FANCGとFANCD2を含む複数のFAタンパク質サブ複合体において発見されており(Wilson et al 2010)、FANCD2はモノユビキチン化の下流で働くという単純な考え方があてはまらないことを示唆している。CHK1によるFANCD2のリン酸化はBRCA2との反応に必須であることが示されている(Zhi et al 2009)。FANCJとFANCD2はfoci形成において機能的に相互作用していることが示されている(Zhang et al 2010)。

USP1はモノユビキチン化されたFANCD2からユビキチンを取り除くユビキチン除去酵素で、活性化補助因子UAF1とともにFAパスウェイを負に制御する(Nijman et al 2005, Cohn et al 2007)。USP1はまたモノユビキチン化されたPCNA(proliferating cell nuclear antigen)からユビキチンを除去する働きを持つ(Huang et al 2006)。FANCD2とPCNAとは結合することが示されていることから、これは偶然の一致ではないと考えられる(Howlet et al 2009)。ユビキチン除去はFA機能において重要な役割を果たしている(Ostergaard et al 2007)。ノックアウトマウスにおいて血球減少が報告されている(Parmar et al 2010)。

nuclear fociにおいてFANCD2はFANCI, BRCA1, BRCA2, PALB2, RAD51, BLM, RPA, ATR, FANCC, FANCEとともに局在化している(Garcia-Higuera et al 2001, Pace et al 2002, Taniguchi et al 2002a, Andreassen et al 2004, Wang et al 2004, Matsushita et al 2005, Xia et al 2006, Smogorzewska et al 2007)。FANCD2はまたBRIP1(Litman et al 2005)、NBS1(Nakanishi et al 2002)とも一部、ともに局在化している。これらのすべての因子はDNA架橋剤への細胞の抵抗性に必須であり、DNA架橋剤による損傷の修復にともに働いていると考えられているが、その正確なメカニズムは解明されていない。近年、RAD51Cの病的変異がFA類似疾患の一家系において見つかっており、乳 癌と卵巣 癌の発 癌にも関与していることが示された(Meindl et al 2010, Vaz et al 2010)。

FAタンパク質の中で、BRCA2は真核生物におけるバクテリアRecAのホモログであるRAD51の活性を調整することで相同組み換えの制御に関わるという役割が明らかにされている(Davies et al 2001, Moynahan et al 2001)。PALB2はBRCA2の安定性を制御し、核内構造 (クロマチンと核内マトリクス) への局在に関わることによって、相同組み換えに必要である(Xia et al 2006)。FAコア複合体である、FANCD2 、FANCI(Smogorzewska et al 2007)、FANCJ(Litman et al 2005)もまた相同組み換えに必須であることが報告されているが、複数の内容の報告がある。

FANCD2タンパク質も、放射線誘導S期チェックポイントの制御の過程でataxia-telangiectasia kinase (血管拡張性失調症キナーゼ) ATMによってリン酸化される(Taniguchi et al 2002b, Ho et al 2006)。このリン酸化の過程は、電離放射線への抵抗性には必須であるが、DNA架橋剤抵抗性には必要ではないことから、FANCD2の持つ機能の2面性が示唆される。FANCD2は、架橋剤によって活性化されると、ATRの下流のCHK1によって331番目のセリンがリン酸化される(Zhi et al 2009)。

重要なことに、いくつかの研究からFA-BRCA経路の欠陥が発 癌に関与することが示されている。

  • FA患者は白血病と固形腫瘍に感受性である(Alter 2003b)。
  • Fancd2, Fanca, Fanccノックアウトマウスは腫瘍を発生する(Houghtaling et al 2003, Wong et al 2003, Carreau et al 2004)。
  • FANCFのメチル化によるFA経路不活性化が一般人口(FA患者以外)のさまざまな部位の腫瘍(卵巣、乳房、肺 非小細胞癌、子宮、睾丸、頭頸部扁平上皮 癌)で発見されている(Olopade and Wei 2003, Taniguchi et al 2003, Marsit et al 2004, Narayan et al 2004, Wang et al 2006)。
  • 遺伝性と体細胞におけるFANCCFANCGの病的変異が若年発症の 膵癌で散見される(van Der Heijden et al 2003)。
  • BRCA1とBRCA2は、 癌抑制遺伝子で、遺伝性乳 癌卵巣 癌の責任遺伝子であることがよく知られている。
  • FA関連遺伝子BRIP1とPALB2の病的トランケート変異は乳 癌発 癌関連遺伝子である(Seal et al 2006, Erkko et al 2007, Rahman et al 2007, Tischkowitz et al 2007)。

これらの所見は 癌抑制におけるFA-BRCA経路の重要性を再認識させるものである。FA経路はDNA架橋剤(シスプラチンやMMC,メルファラン等の)への抵抗性に必要であることから、FA経路に欠陥のある腫瘍はこれらの広く使われている抗 癌剤に過度に感受性を持つと考えられる。したがって、FA-BRCA経路は化学療法増感剤として有用になりうる小分子阻害剤を開発するうえで魅力的なターゲットとなりうる(Chirnomas et al 2006)。

その他のFA経路に作用するものとして、クルクミンが含まれ、FA経路を阻害することが証明されており、腫瘍のシスプラチン感受性を増大させる(Chirnomas et al 2006)。
その他に最近話題のものはポリアデノシンジホスフェートリボースポリメラーゼ阻害剤であり、これは相同組み換え修復の別の経路をターゲットとし、架橋剤によりよい反応性をを可能にする(Martin et al 2010)。抗酸化剤はFAモデルマウスにおいて腫瘍の発生を遅らせることが示されている(Zhang et al 2008)。

FAの病理学は末端結合経路内の因子の負の制御に関する報告によってさらに向上が見込まれている(Adamo et al 2010)。FAの病態生理の多くは、NHEJによる不正確な修復に関する自由な働きによって引き起こされる可能性を示唆する。一方で、FAの相同組み換え修復への関与は、BRCA1、BRCA2、RAD51Cとのインタラクションによって確立されている。FANCD2もまたPCNAやpol Kとのインタラクションが見られるが、HRRを介して損傷をバイパスするにあたり、HRのバリアントである損傷乗り越え合成がFAタンパク質の最も直接的な機能であることを示唆している(Ho and Scharer 2010,  Song et al 2010)。

FAの分子生物学の総説は、以下のものがある。
D'Andrea & Grompe [2003], Venkitaraman [2004], Collins & Kupfer [2005], Kennedy & D'Andrea [2005], Niedernhofer et al [2005], Bagby & Alter [2006], Gurtan & D'Andrea [2006], Lyakhovich & Surralles [2006], Mathew [2006], Mirchandani & D'Andrea [2006], Taniguchi & D'Andrea [2006], Green & Kupfer [2009], and Thompson & Hinz [2009].

FANCA

遺伝子の構造

FANCAには2つのアイソフォームがある。配列 NM_000135.2 は43のエクソンをもち、長いアイソフォームである。詳細な情報はTable A参照。

病的変異アレル

FANCAの病的変異アレルは数多くあり、家系間で多様性が存在する。[Levran et al 1997, Morgan et al 1999, Wijker et al 1999]。わずかなパーセンテージの家系ではp.Phe1263del and p.Val372AlafsTer42のバリアントが共通して見られる;後者は北ヨーロッパに祖先をもつ罹患者において見られる。Table A参照。

Table 2

代表的なFANCAの病的変異

DNA Nucleotide Change

Predicted Protein Change

Reference Sequences

c.1115_1118del p.Val372AlafsTer42 NM_000135.2
NP_000126.2
c.3788_3790del p.Phe1263del

バリアントの分類における注:表に記述したバリアントは著者が挙げたもので、Genereviewsのスタッフは分類について確認していない。

命名法における注:GeneReviewsはHuman Genome Variation Society (www?.hgvs.org)
の標準命名法を使用している。簡単な説明はここ。

通常の遺伝子産物

長いほうのアイソフォームによってコードされるFANCAは1455アミノ酸(reference sequence NM_000126)を持つ。FANCAは2つの相互にオーバーラップする核局在シグナル(nuclear localization signals, NLS)配列と5つの機能するロイシンリッチな核移行シグナルnuclear export sequences (NESs)配列、ロイシンジッパー配列の一部を有する[Fanconi Anaemia/Breast Cancer Consortium 1996, Lo Ten Foe et al 1996, Ferrer et al 2005]。FANCAの核輸送はCRM1依存性に制御されている [Ferrer et al 2005]。FANCAはリン酸化タンパク質である。FANCAはHsp90のクライエントである[Oda et al 2007]。最近の報告によるとFANCAはセリン1449部位でATRキナーゼによってリン酸化される[Collins et al 2009]。

異常な遺伝子産物
分子遺伝学的病理の項を参照

FANCB

遺伝子の構造

FANCBは10個のエクソンを持ち、3つ目のエクソンから翻訳が開始される(reference sequence NM_001018113.1)。FAAP95はHsp90の別名である。遺伝子とタンパク質の詳細なサマリーはTable A 参照。

病的変異アレル 

TableA参照

通常の遺伝子産物

FANCBは853アミノ酸からなり、開始メチオニンの位置によって859アミノ酸の配列も存在する。FANCBはFAコア複合体の構成要素であり、2つの推定NLS配列を含む[Meetei et al 2004]。

異常な遺伝子産物

分子遺伝学的病理の項を参照

FANCC

遺伝子の構造

FANCCは15のエクソンを持つ(reference sequence NM_000136.2)。遺伝子とタンパク質の詳細なサマリーはTable A 参照。

病的変異アレル

数個のレアバリアント(p.Gln13Ter, p.Arg185Ter, and p.Leu554Pro)に加え、3つの共通した病的変異(c.456+4A>T, p.Arg548Ter, and c.67delG) [Whitney et al 1993]が証明されている。病的変異であるc.456+4A>Tが主にアシュケナジーユダヤ人において発見されており、最近、日本人のコホート研究でも発見された。p.Arg548Ter, c.67delG, p.Arg185Ter, p.Leu554Proの病的変異は北ヨーロッパ祖先の患者に見られ、p.Gln13Ter変異は南イタリア人に見られる。Table A.参照

Table 3

FANCCの代表的な病的変異
DNA Nucleotide Change
(Alias 1)
Predicted Protein Change Reference Sequences
c.456+4A>T
(IVS4+4A>T)
-- NM_000136?.2
NP_000127?.2
c.37C>T p.Gln13Ter
c.67delG
(322delG)
p.Asp23IlefsTer23
c.553C>T p.Arg185Ter
c.1642C>T p.Arg548Ter
c.1661T>C p.Leu554Pro

バリアントの分類における注:表に記述したバリアントは著者が挙げたもので、Genereviewsのスタッフは分類について確認していない。

命名法における注:GeneReviewsはHuman Genome Variation Society (www?.hgvs.org)
の標準命名法を使用している。簡単な説明はここ。

  1. バリアントの表記は現在の命名法に合致していない

通常の遺伝子産物

FANCCは558アミノ酸をもつ。FAコア複合体の構成要素であるが、核と細胞質の両方に局在する[Yamashita et al 1994]。FANCCのFAコア複合体以外の機能も報告されている[Fagerlie et al 2004]。報告によると、STAT1がFANCCに結合し、JAK-STATシグナルを調節し、細胞をインターフェロンガンマ毒性効果から守る働きをする[Pang et al 2000, Fagerlie et al 2004]。

異常な遺伝子産物

分子遺伝学的病理の項を参照

BRCA2

遺伝子の構造

BRCA2はFANCD1としても知られており、27エクソンを持つ(reference sequence NM_000059.3)。遺伝子とタンパク質の詳細なサマリーはTable A 参照。

病的変異アレル 

TableA参照

通常の遺伝子産物

乳 癌タイプ2感受性遺伝子breast cancer type 2 susceptibility protein (BRCA2)は3418アミノ酸を持つ。BRCA2は真核生物におけるバクテリアRecAのホモログであるRAD51リコンビナーゼの活性を調整することで相同組み換えを制御する(Davies et al 2001, Moynahan et al 2001)。BRCA2はまた停止した複製フォークの安定化とサイトカインの制御を含む他の機能を持つ[Daniels et al 2004]。BRCA2は、RAD51による各末端における核形成を促進することで2本鎖切断の末端の修復においてRAD51と共に働く。BRCA2はFANCG, FANCD2, PALB2を含む他のFAタンパク質と共に多様なサブ複合体中にあることが発見されている[Xia et al 2007, Wilson et al 2010]。

異常な遺伝子産物

分子遺伝学的病理の項を参照

FANCD2

遺伝子の構造

FANCD2は2つのアイソフォームがある。アイソフォームa (reference sequence NM_033084.3)は43個のエクソンを持つ。アイソフォームb(reference sequence NM_001018115.1)は44個のエクソンと短い別のC末端を生じる別の3'コード領域を持つ。機能するFANCD2タンパク質は、アイソフォームb(エクソン44個)にコードされる方であり、アイソフォームa(エクソン43個)にコードされるタンパク質は機能を持たない[Montes de Oca et al 2005]。遺伝子とタンパク質の詳細なサマリーはTable A 参照。

病的変異アレル 

TableA参照

通常の遺伝子産物

FANCD2は1451アミノ酸(アイソフォームb)でFANCIに配列類似性を示す。FANCD2とFANCIはタンパク質複合体(ID複合体)を形成する。FANCD2は、FAコア複合体、UBE2T-、FANCI依存的に561番目のリシン残基でモノユビキチン化されうる。モノユビキチンかされたFANCD2はクロマチン画分に移行し、FANCI, BRCA1, BRCA2, RAD51, FANCI 等と共にnuclear foci を形成する。FANCD2はDNA損傷に応答してATM [Taniguchi et al 2002b, Ho et al 2006]と、おそらくATR [Andreassen et al 2004, Pichierri & Rosselli 2004]によってリン酸化される。

異常な遺伝子産物

分子遺伝学的病理の項を参照

FANCE

遺伝子の構造

FANCEは14個のエクソンをもつ(reference sequence NM_021922.2)。
遺伝子とタンパク質の詳細なサマリーはTable A 参照。

病的変異アレル 

TableA参照

通常の遺伝子産物

FANCEは536アミノ酸からなり、FAコア複合体の構成要素である。FANCEFANCD2と直接的に結合する。FANCEは2つの核局在化シグナル(NLS)をもつ。FANCEは5つの短いヘリカルモチーフの繰り返し配列(FANCリピート)を持つ[Nookala et al 2007]。リン酸化に依存的に、FAコア複合体とFANCD2との間で運搬タンパク質として機能するようである[Wang et al 2007]。

異常な遺伝子産物

分子遺伝学的病理の項を参照

FANCF

遺伝子の構造

FANCFは一つのエクソンを持つ(reference sequence NM_022725.2)。遺伝子とタンパク質の詳細なサマリーはTable A 参照。

病的変異アレル 

TableA参照

通常の遺伝子産物

FANCFは374アミノ酸からなり、FAコア複合体の構成要素である。FANCFはFAコア複合体のアセンブリに必須なフレキシブルなアダプタータンパク質として働く[Léveillé et al 2004]。結晶学的解析によってC末端のドメインはof the Cul1-Rbx1-Skp1-Fbox(Skp2)ユビキチンリガーゼ複合体のCand1調節因子に構造が類似したヘリカルリピート構造を持つことが示された[Kowal et al 2007]。

異常な遺伝子産物

分子遺伝学的病理の項を参照

FANCG

遺伝子の構造

FANCGは14個のエクソンを持つ(reference sequence NM_004629.1)。遺伝子とタンパク質の詳細なサマリーはTable A 参照。

病的変異アレル

FANCGの病的変異は多様であるが、特定の集団で共通する変異アレルが発見されている:c.307+1G>C (韓国人/日本人); c.925-2A>G (ブラジル人); c.1480+1G>C (フランス系カナダ人); p.Gly395TrpfsTer5 (北ヨーロッパ人); and p.Trp599ProfsTer49 (北ヨーロッパ人) [Demuth et al 2000, Nakanishi et al 2002]. Table A参照。

Table4

FANCGにおける代表的な病的変異
DNA Nucleotide Change
(Alias 1)
Predicted Protein Change Reference Sequences

c.307+1G>C
(IVS3+1G>C)

--

NM_004629?.1
NP_004620?.1

c.925-2A>G
(IVS8-2A>G)

--

c.1183-1192del
(1184-1194del)

p.Glu395TrpfsTer5

c.1480+1G>C
(IVS11+1G>C)

p.Trp599ProfsTer49

c.1794_1803del

通常の遺伝子産物

FANCGは622アミノ酸からなる。FAコア複合体の構成要素である。FANCGは7つのテトラトリコペプチド繰り返しモチーフ(TPRs)1を持つ[Blom et al 2004]。FANCGはリン酸化タンパク質であり、M期におそらくcdc2によってセリン383と387がリン酸化される。これらの2つのサイトは有糸分裂期にFANCGタンパク質をクロマチンから引きはがすのに重要な役割を持つ。FANCGのセリン7のリン酸化はMMC処理後に増加する[Qiao et al 2004]。FANCAFANCGはお互いを安定化する。最近の研究により、FANCG, FANCD1/BRCA2, FANCD2, XRCC3は同じタンパク質複合体に属していることが示されている。このことは、FANCGの多機能性、つまり、コア複合体の構成要素として、また相同組み換え修復の機能を持つことを示している [Wang et al 2007]。

異常な遺伝子産物

分子遺伝学的病理の項を参照

FANCI

遺伝子の構造

FANCIは37個のエクソンを持つ(reference sequence NM_018193.2)。遺伝子とタンパク質の詳細なサマリーはTable A 参照。

病的変異アレル

TableA参照

通常の遺伝子産物

FANCIは1268アミノ酸からなり、FANCD2と配列類似性を示す。FANCD2とFANCIはタンパク質複合体(ID複合体)を形成する。FANCIはFAコア複合体、UBE2T-とFANCD2依存性にリシン523でモノユビキチン化される。モノユビキチン化FANCIは、BRCA1、BRCA2、RAD51、FANCD2等とともにnuclear fociに移行し、局在する。FANCIはリン酸化タンパク質である。DNA損傷誘導によるヒトFANCIのp.Ser730, p.Thr952, p.Ser1121部位のリン酸化が検出されている[Smogorzewska et al 2007]。FANCIはFANCD2と類似した機能を持ちDNA修復foci、細胞是生存性、モノユビキチン化を含めたアッセイにおいて同じような性質を示す[Ishiai et al 2008]。

異常な遺伝子産物

分子遺伝学的病理の項を参照

BRIP1

遺伝子の構造

BRIP1 (BRCA1 interacting protein C-terminal helicase 1)は20のエクソンを持つ。この遺伝子はFANCJまたはBACH1とも呼ばれる。遺伝子とタンパク質の詳細なサマリーはTable A 参照。

病的変異アレル

Table A参照

通常の遺伝子産物

Fanconi anemia group J protein (BRIP1 or FANCJ)は1249アミノ酸からなり、DNA依存性ATPaseとBRCA1のBRCTドメインに直接結合する5'-to-3' DNA ヘヘリカーゼ(DEAH helicase)である[Cantor et al 2001]。FANCJには7つのヘリカーゼ特異的モチーフとC末端延長領域があり、減数分裂中の染色体における横軸のフィラメントの主要なコンポーネントの一つであるシナプトメア複合体1と39%の相同性を示す[Cantor et al 2001]。FANCJのヘリカーゼドメインはFA経路の機能に重要な役割を果たすことは明らかである[Wu & Brosh 2009]。FANCJはまたMLH1との結合を通してミスマッチ修復経路とも相互作用する[Cantor & Xie 2010]。

異常な遺伝子産物

分子遺伝学的病理の項を参照

FANCL

遺伝子の構造

FANCLは14個のエクソンを持つ(reference sequence NM_018062.2)。遺伝子とタンパク質の詳細なサマリーはTable A 参照。

病的変異アレル

TableA参照

通常の遺伝子産物

E3ユビキチンタンパク質リガーゼであるFANCLは375アミノ酸からなる。3つのWD40(トリプトファン-アスパラギン酸-40)リピートとPHDフィンガーモチーフ(RINGフィンガーモチーフのバリアント)を持ち、FAコア複合体の構成要素の一つであり[Meetei et al 2003a]、FANCD2とFANCIに対するユビキチンリガーゼとしてFAコア複合体の触媒サブユニットであると推定されている。FANCLはUBE2T(E2 ユビキチン結合酵素)と直接的に反応する[Machida et al 2006]。バキュロウイルス産生タンパク質がin vitroでモノユビキチン化活性を持つことが証明されている[Alpi et al 2008]。

異常な遺伝子産物

分子遺伝学的病理の項を参照

FANCM

遺伝子の構造

FANCMは23個のエクソンを持つ(reference sequence NM_020937.1)。遺伝子とタンパク質の詳細なサマリーはTable A 参照。

病的変異アレル

TableA参照

通常の遺伝子産物

Fanconi anemia group M protein (FANCM) は 2048 アミノ酸からなる。7つのヘリカーゼ特異的モチーフ、一つの変性エンドヌクレアーゼドメインをもつFAコア複合体の構成要素の一つであり。一本鎖DNAと2本鎖DNAによって活性化されるATPase活性、とDNAトランスロケース活性を持つ[Meetei et al 2005]。FANCMはDNA損傷に応答してリン酸化される。FANCM結合タンパク質であるFAAP24と共同で、FANCMはDNA損傷応答のチェックポイントに関与する[Huang et al 2010]。

異常な遺伝子産物

分子遺伝学的病理の項を参照

PALB2

遺伝子の構造

PALB2(FANCNとしても知られる)は13個のエクソンを持つ(reference sequence NM_024675.3)。遺伝子とタンパク質の詳細なサマリーはTable A 参照。

病的変異アレル

TableA参照

通常の遺伝子産物

partner and localizer of BRCA2 protein (PALB2) は 1186アミノ酸からなる。BRCA2タンパク質の局在と安定化を制御している。PALB2のN末端の短い領域はMAP1 ;microtubule-associated protein(微小管関連たんぱく質)の軽鎖3(LC3)のプレフォールディン断片と相同性を示す。PALB2はC末端にWD40リピート様の配列を持つ[Xia et al 2006]。PALB2はFA関連遺伝子であるとともに、乳 癌感受性でもある。FANCD1/BRCA2とともに機能し、相同組み換え修復経路において役割を持つ[Xia et al 2007]。

異常な遺伝子産物

分子遺伝学的病理の項を参照

RAD51C(FANCO)

遺伝子の構造

RAD51Cは9つのエクソンを持つ(reference sequence NM_058216)。遺伝子とタンパク質の詳細なサマリーはTable A 参照。

病的変異アレル

TableA参照

通常の遺伝子産物

RAD51Cは376アミノ酸からなるタンパク質で、相同組み換えに関わる複数のタンパク質複合体の構成要素である。RAD51バリアントはBRCA2と協調してDNA欠失部分の除去後におこる1本鎖末端に結合することが示されている[Somyajit et al 2010]。

異常な遺伝子産物

分子遺伝学的病理の項を参照

SLX4(FANCP)

遺伝子の構造

SLX4は15個のエクソンを持つ(reference sequence NM_032444)。遺伝子とタンパク質の詳細なサマリーはTable A 参照。

病的変異アレル

TableA参照

通常の遺伝子産物

SLX4は1834アミノ酸をもつタンパク質で、ホリデー構造のような相同組み換えの中間体を除去する際に機能すると考えられている。SLX4は、MUS81-EME1、XPF-ERCC1を含む他のエンドヌクレアーゼ複合体と相互に作用すると考えられている[Kim et al 2011, Stoepker et al 2011]。


原文 Fanconi Anemia

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