GRJ top > 遺伝子疾患情報リスト
grjbar

神経線維腫症1型
(Neurofibromatosis 1)

[NF1, Von Recklinghausen Disease, Von Recklinghausen's Neurofibromatosis]

Gene Review著者: J M Friedman, MD, PhD
日本語訳者: 江田肖(瀬戸病院 遺伝診療科),大畑尚子(沖縄県立中部病院 総合周産期母子医療センター)  
Gene Review 最終更新日: 2012.5.3 日本語訳最終更新日: 2014.3.18

原文 Neurofibromatosis 1


要約

疾患の特徴 

神経線維腫症1型 (NF1)は多発性のカフェ・オレ斑,腋下や鼠径部の雀卵斑様色素斑,多発性・散在性の皮膚神経線維腫および虹彩Lisch結節により特徴づけられる。学習障害は罹患者の少なくとも50%に認められる。頻度は低いが、より重篤な病変としては蔓状神経線維腫,視神経や脳神経の神経膠腫,悪性末梢神経鞘腫瘍,側彎症,脛骨異形成症や血管病変などがある。.

診断・検査 

NF1の診断は通常臨床所見に基づく。罹患者のほとんどはNF1遺伝子のヘテロ変異が発症原因となる。NF1遺伝子の分子遺伝学的検査は 診断に必要とされることが少ない。

臨床的マネジメント 

対症療法眼や中枢神経系,末梢神経系,心血管系,脊椎,長管骨の症状を有する患者に、治療に適切な専門家を紹介する。美容上の問題となったり、生活に支障を生じたりする散在性の皮膚や皮下神経線維腫は外科的に切除する。蔓状神経線維腫の外科的治療は満足な結果を得られないことが多い。悪性末梢神経鞘腫瘍は可能であれば外科的に完全切除する。NF1に伴う視神経膠腫は無症状で臨床的に安定しているため、治療を必要とすることが少ない。変形の著しい側彎は時に外科的治療を要するが,変形が軽度の場合は通常保存的治療で足りる。

サーベイランス年に一回本症の経験が豊富な医師による身体診察,小児では年に一回の眼科診察(成人では頻度は少なくてよい),小児の発達評価,定期的な血圧測定,臨床的に頭蓋内腫瘍やほかの体内腫瘍が疑われる場合MRIによるフォローアップ。

遺伝カウンセリング 

NF1は常染色体優性遺伝の形式をとる。罹患者の半数はNF1遺伝子の新生突然変異である。罹患者の子は50%の確率でNF1遺伝子変異を受け継ぐが,同一家系内においても臨床像はきわめて多彩である 。出生前診断は家系内の病的変異が同定されていれば可能である。 .


診断

臨床診断

NIHのNF1診断基準が臨床的に有用である。罹患者がごく年少の場合を除き、NF1の臨床診断は通常明確で、以下の所見に2つ以上該当すればNF1と診断される。

  • 思春期以前では最大径5mm以上,思春期以降では最大径15mm以上のカフェ・オレ斑が6個以上
  • いずれかのタイプの神経線維腫が2個以上,あるいは蔓状神経線維腫が1個
  • 腋下や鼠径部の雀卵斑様色素斑
  • 視神経膠腫
  • 2個以上のLisch結節(虹彩過誤腫)
  • 蝶形骨異形成や脛骨の偽関節形成などの特徴的骨病変
  • 一度近親者(両親,同胞,子)に上記の診断基準を満たすNF1罹患者がいる。

成人 NIHの診断基準は成人NF1罹患者において特異度も感度も高い。

小児

  • 弧発例のNF1罹患者では1歳までにNIHの診断基準を満たすのは約半数しかないが,臨床所見は年齢とともに明らかになるため、8歳までにはほぼ全例がNIH診断基準を満たす。
  • 罹患した親からNF1を受け継いだ子の場合は,診断のために家族歴のほかに1所見を要するだけなので,通常1歳以前に診断することができる。その多くは、95%以上の罹患者に乳児期より出現する多発性カフェ・オレ斑によって診断される。
  • 多発性のカフェ・オレ斑を有する幼児は,両親には細心な診察や眼科的検査でも異常を認めなくても,NF1に罹患していることが強く疑われ,NF1罹患者と同様に経過観察をすべきである。
  • 前項のような小児患者はほとんど、4歳までにNIH診断基準による臨床診断ができる。

分子遺伝学的検査

GeneReviewsは,分子遺伝学的検査について,その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り,臨床的に実施可能であるとする. GeneTestsは研究機関から提出された情報を検証しないし,研究機関の承認状態もしくは実施結果を保証しない.情報を検証するためには,医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない.―編集者注.

遺伝子 ほとんどはNF1遺伝子のヘテロ機能喪失変異が原因である。

臨床検査

  • 多段階変異検出プロトコール はNIH診断基準を満たした患者から95%以上の確率でNF1遺伝子の病的変異を検出できる。この方法では,RT-PCR, ダイレクトシークエンス解析,マイクロサテライトマーカー解析,MLPA, 間期FISH法により、mRNAとゲノムDNAの両方を解析する。スプライシング変異の頻度が高いことや,NF1罹患者における変異部位は多彩でそれぞれの頻度が低いことから,ゲノムDNA解析のみでは検出率は低い。
  • シークエンス解析 は90%のNF1遺伝子内変異を検出できる。場合によって、ゲノムDNAおよびcDNAのエクソンシークエンス解析でも、高い検出率が得られる。
  • 欠失/重複解析 臨床所見から遺伝子の大規模な欠失(large deletion phenotype)が疑われる場合、NF1遺伝子全欠失解析を行う。NF1遺伝子全欠失は,罹患者の4%〜5%にみられる。NF1遺伝子全欠失はFISHやMLPA,NF1遺伝子領域内にある複数のSNPsやその他の多型マーカー、あるいは染色体マイクロアレイ解析により同定できる。
  • 連鎖解析 を行う場合に、家族の人数と協力が重要な要素であり,また1)家系内罹患者における正確な臨床診断,2)正確に家族の遺伝学的関係の把握が不可欠である。解析を行うには少なくとも2人の罹患者からのサンプルが必要である。NF1遺伝子座では4300以上の遺伝子内SNPsがデータベースに登録されているため,解析に必要な明確な罹患者数および非罹患者数がいれば、どの家系においても、有益かつ正確な連鎖解析を行うことが可能である。

表1 NF1で用いられる分子遺伝学的検査

遺伝子

検査法

検出されるNF1遺伝子変異

検査方法による変異検出率1

NF1

シークエンス解析

シークエンス変異

〜90%

欠失/重複解析

単一または複数のエクソンの欠失、全遺伝子欠失

〜5%

細胞遺伝学的検査

大規模な再構成

<1%

連鎖解析

非適用

非適用

  1. 対象とする遺伝子に変異を検出できる確率
  2. シークエンス解析で検出できる遺伝子変異は、遺伝子内小規模な欠失/挿入、ミスセンス変異、ナンセンス変異およびスプライス部位変異がある
  3. シークエンス解析が検出できないゲノムDNA翻訳領域やイントロン隣接領域における欠失/重複は、定量PCR、ロングレンジPCR、MLPAまたはNF1遺伝子断片を含む染色体マイクロアレイ(CMA) が用いられる。

検査結果の解釈 シークエンス解析結果の解釈は下記、アレル変異の異質性に関する情報は本症「分子遺伝学」項目を参照すること。

検査戦略

発端者における確定診断のための検査

  • 確定診断のための検査は,NIH診断基準を満たさないがNF1が疑われる患者に対して適応される。小児早期以降はほとんど必要としない。
  • NF1の分子遺伝学的検査が臨床的に必要とされることは少ないが,重篤な腫瘍(例:視神経膠腫)を発症した幼児において,NF1の確定診断が健康管理に有用となる場合がある
  • NIH診断基準を満たした場合、多段階変異検出プロトコールはNF1遺伝子における病的変異の95%以上を同定できる。

リスクのある妊娠に対する出生前診断や着床前診断(PGD)を実施するにあたっては,事前にその家系における遺伝子病的変異を同定する必要がある。

遺伝学的関連(アレル)疾患

下記の個人や家系において、NIHの診断基準からNF1とは診断されないが ,NF1遺伝子の明らかな病的変異が同定されている。

  • エクソン17の3塩基欠失(c.2970-2972 delAAT)を認めた軽症例。この場合に、神経線維腫は稀で,明確な臨床症状としては多発性カフェ・オレ斑のみかもしれない
  • 家族性脊髄神経線維腫。多発脊髄神経線維腫を生じるがNF1の皮膚所見がほとんどみられない。この名称に関わらず、この状態は孤発例がありうる。
  • (神経線維腫ではなく)多発脊髄神経節神経腫と多発性皮下腫瘍を生じた症例
  • 視神経膠腫を生じたが他のNF1の所見を伴わない男性例
  • 脳頭蓋皮膚脂肪腫症(encephalocraniocutaneous lipomatosis)を生じた小児例

NF1遺伝子変異とこのような非典型的な表現型との関連は不明である。


臨床像

自然経過

NF1の臨床像はきわめて多彩である。多発性のカフェ・オレ斑はほぼ全例に出現し,間擦部の雀卵斑様色素斑は約90%に出現する。成人NF1罹患者では通常,多数の良性の皮膚神経線維腫が認められる。

NF1罹患者の約半数が有する蔓状神経線維腫は,体内に生じ無症状であることが多い。蔓状神経線維腫のほとんどはゆっくりと進行するが、急激に増大することもある(特に幼児期)。蔓状神経線維腫が現れた場合には,外見を損ない、身体の機能障害をきたし,時には生命を脅かすことがある。

NF1の眼症状としては視神経膠腫やLisch結節(無害な虹彩過誤腫)があり,前者は失明の原因ともなりうる。視神経膠腫を有するNF1罹患者の多くが6歳以前に視力低下や眼球突出で発症するが,小児期後半もしくは成人期まで症状を呈さないこともある。NF1による視神経膠腫の多くが長年安定しているか、もしくは非常にゆっくりと進行する。なかには自然に縮小するものもある。

側彎症,脊椎異形成,偽関節症や骨過成長のような重篤な骨病変よりも、骨量減少症や骨粗鬆症の頻度が高い。

ほかに医学的な問題となる症状としては,血管病変,高血圧,頭蓋内腫瘍,悪性末梢神経鞘腫瘍などがある。NF1罹患者の少なくとも半数には学習障害がある。頭痛が頻繁に現れ、けいれんや水頭症も時々見られる。

NF1罹患者の多くは皮膚病変とLisch結節を生じるだけであるが,加齢とともにより重大な病変が増えてくる。NF1の種々の病変は以下のようにその発症時期に特徴を有している。

  • 脛骨の彎曲のような骨病変は生下時にすでに認められる。
  • カフェ・オレ斑はしばしば出生時に認められ,数年のうちにその数が増えてくる。
  • びまん性の顔面や頚部の蔓状神経線維腫は1歳以降に出現し,身体のその他の部位に思春期以降に発生することはほとんどない。
  • 深部結節性蔓状神経線維腫は幼児期にはあまり見られず,成人でもしばしば無症状である。
  • 視神経膠腫は6歳までに発症する。
  • 脊椎の異常を伴わない軽症型側彎症は典型的には思春期に発症するのに対し,急速進行性(異形成性)の側彎症はほとんど6歳から10歳の間に発症する。
  • 悪性末梢神経鞘腫瘍(神経線維肉腫)は思春期から成人期に発症する。

神経線維腫は身体のどの部位も侵しうる。散在性の皮膚もしくは皮下神経線維腫は小児期後半以前には少ない。成人NF1罹患者に見られる神経線維腫の数はごく少数の場合から数百,数千個にいたるまでばらつきがある。新しい皮膚もしくは皮下神経線維腫は生涯にわたって出現しつづけるが,出現の速度は年によって大きなばらつきがある。多くの女性罹患者では妊娠中,神経線維腫の数や大きさの急速な増大を経験する。

一部のNF1罹患者は多発性神経根腫瘍によるびまん性多発神経障害を発症し,悪性末梢神経鞘腫瘍のリスクが高い。

多くのNF1罹患者の知能は正常であるが,50-75%に学習障害が認められる。学習 に関する問題が数多く報告されているが,視覚空間動作障害や注意障害が最も多い。NF1に伴う学習障害は成人になっても続く。

NF1患児はしばしば社会適応に障害を 有し,他の子どもに比べて性格や行動,生活の質の違いが見られる。

NF1罹患者は平均的に頭囲が大きいが,灰白質容量とIQには関連がない。

高血圧の頻度が高く,いずれの年齢にも生じうる。多くの例では高血圧は「本態性」であるが,NF1に特徴的な血管病変が腎動脈狭窄や大動脈縮窄,あるいはその他の高血圧に関連する血管病変を引き起こしていることもある。腎動脈性のものは小児罹患者の高血圧でしばしば発見される。

心血管や脳血管に生じた血管病変は重篤で,時には生命にかかわる結果をもたらす。

  • NF1で典型的に認められる脳血管障害では内頚動脈,中大脳動脈,前大脳動脈の狭窄や閉塞をきたす。
  • 狭窄領域周辺では小さな拡張血管が形成され,大脳動脈造影で一吹きの煙のような像(モヤモヤ)を呈する。脳腫瘍に対する放射線照射を受けたNF1小児罹患者は、モヤモヤを生じる可能性が3倍になる。
  • 血管拡張や頭蓋内動脈瘤は一般人口集団よりも高頻度に認められる。

肺動脈弁狭窄は一般人口に比べNF1罹患者での頻度が高い。NF1の成人罹患者は、 肺 高血圧症を呈することがあり、これは実質性肺疾患に合併する場合が多いが、その他のNF1の遅発性の病変に合併することもある。

NF1小児罹患者において,(良性神経線維腫以外で)最も多い腫瘍は視神経膠腫と脳腫瘍である。

  • 白血病,特に若年性の慢性骨髄球性白血病や骨髄異形成症候群は,多くはないものの一般集団よりは頻度が高い。
  • 小児期に視神経膠腫を発症した小児の少なくとも20%に,別の中枢神経系膠腫が発生する。
  • 視神経膠腫に対して放射線療法が行われた場合,照射領域の視神経以外の膠腫と悪性末梢神経鞘腫の発症頻度は上昇する。
  • 脳幹や小脳の星状細胞腫を発症したNF1罹患者は,非罹患者よりゆっくり進行する可能性があり、縮小したとの症例報告もある。

悪性末梢神経鞘腫瘍はNF1に伴う最も頻度の高い悪性腫瘍で,罹患者の約10%に発生する。悪性末梢神経鞘腫瘍はNF1罹患者において、一般集団より若年で発症し生命予後不良という傾向がある。良性の皮下神経線維腫や体内の蔓状神経線維腫を有するNF1罹患者は,これらの腫瘍を有しない罹患者に比べ、悪性末梢神経鞘腫瘍を発症するリスクが高い。

ほかにも消化管間質腫瘍など様々な腫瘍がNF1罹患者に見られる。

NF1罹患女性は,50歳以前で5倍,生涯で3.5倍乳がんのリスクが高い。

全身の骨量減少あるいは骨粗鬆症は一般集団より高頻度にみられる。この骨変化の原因は明らかでないが,NF1罹患者では予想値より血清25-ヒドロキシビタミンD濃度が低く,副甲状腺ホルモンレベルが高いことや,骨吸収が亢進していると報告されていた。14名の骨病変のないNF1罹患者から採取した骨組織を分析したところ、骨梁 の減少、カルシウム量の低下、骨様細胞、造骨細胞や破骨細胞の増加が認められた。

NF1罹患者の身長は平均以下で,頭囲は平均以上である。しかし身長が-3SD以下であったり頭囲が+4SD以上であったりすることはほとんどない。一方,NF1遺伝子の完全欠失が原因となっている罹患者では臨床像が異なり,特に2-6歳にかけて過剰発育を呈する。一部の小児罹患者の臨床像はWeaver症候群に似ている。

二次性徴は通常正常であるが,思春期早発をきたすことがあり,特に視神経交叉に腫瘍を生じた場合に多い。二次性徴の遅れもよく見られる。

分節型あるいは部分型NFはNF1の所見が身体の一部に限局し、且つ両親が罹患していない場合に診断される。その非典型的な病変分布は偶然に生じた場合もあれば,NF1遺伝子の体細胞変異モザイクが原因となる場合もある。しかし、これまでに報告されたNF1遺伝子変異モザイク症例のほとんどは分節型ではない軽症型神経線維腫症である。分節型NF1罹患者の子が典型的なNF1であった例が報告されている。一卵性双生児の2症例はNF1遺伝子変異による体細胞モザイクは接合後の非常に早い段階で起きたことを証明した。

Noonan症候群の表現型は約12%のNF1罹患者に見られる。臨床所見としては眼間開離,瞼裂斜下,耳介低位,翼状頚,肺動脈弁狭窄がある。このような所見を呈するNF1罹患者の親族にNoonan症候群の所見が伴うことも伴わないこともある。NF1-Noonan表現型の理由はさまざまで,異なる2つの比較的高頻度な常染色体優性遺伝性疾患が合併した家系もあれば,NF1亜型として遺伝している家系もある。NF1-Noonan症例のほとんどは生殖細胞系列にNF1遺伝子変異を有するのに対し、Noonan症候群罹患者の約半数が有するPTPN11遺伝子変異を有した症例は非常にまれである。

LEOPARD症候群の多くはPTPN11変異を有し,その症状がNoonan症候群と似ているが,多発性色素斑,感音性難聴,肥大型心筋症や心電図変化を合併することで区別される。LEOPARD症候群とNF1のいくつかの症状を有し,NF1遺伝子変異を有した症例報告がある。

寿命 NF1罹患者寿命の中間値は一般集団よりおよそ8年短い。悪性腫瘍(特に悪性末梢神経鞘腫瘍)や血管病変が最も重要な早期の死因となっている。

神経画像診断 脳梁拡張が一部のNF1患児に見られ、学習障害と関連している 。脳MRI検査でNF1患児の約50%に認められる高信号病変,いわゆるunidentified bright objects (UBOs)の臨床的意義ははっきりしない。このT2強調画像で高信号として認められる所見は視神経経路,基底核,脳幹,小脳,大脳皮質にみられ,通常占拠性の症状は引き起こさない。典型的なUBOsはT1強調画像やCTでは捉えられない。UBOsは拡散強調画像では異常なミエリン構造を示す像を呈し,これは病理学的には海綿状髄鞘障害の領域に相当している。これらは年齢とともに消失し,成人のNF1罹患者では低頻度である。UBOsの存在はNF1小児罹患者のけいれんとは関連しない。UBOsの存在,数,量や局在、消失がNF1小児罹患者の学習障害と関連しているという研究もあるが,研究者間で意見の一致には至っていない。

遺伝子型と表現型の相関

NF1の臨床像がきわめて多彩で,血縁のない罹患者間は言うまでもなく、同一家系内の罹患者や,さらに同じ罹患者でも時期によって病像が大きく異なる。NF1遺伝子変異と表現型の相関について、現在知られているのは下記の3つのみである。

  • NF1遺伝子の全欠失を有する患者では、皮膚の神経線維腫は早期に多数出現し,認知障害もより高頻度でより重度である。時に大きな手や足といった過剰発育や顔面の変形が認められる。
  • エクソン17の3塩基欠失(c.2970-2972 delAAT)はNF1に典型的な色素沈着病変と関連しているが,皮膚や表面の蔓状神経線維腫との関連がない。
  • NF1遺伝子座や隣接ゲノム領域 を含む遺伝子重複を有する患者は、(NF1遺伝子微小欠失や機能喪失変異による)NF1臨床像を呈しないが、知的障害やけいれんを有する可能性がある。NF1微小重複の表現型は非常に多彩で、遺伝子変異を有するにもかかわらず、表現型が正常な例もある。それは重複領域にNF1遺伝子以外に ほかの遺伝子が存在するためと 考えられている。しかし、 表現型の異常はNF1 の三倍体が原因となっているのか、その領域の他の遺伝子によるものなのか を知るのは不可能である。

 

Watson症候群(多発性のカフェ・オレ斑,肺動脈弁狭窄,軽度知能低下)や家族性脊髄神経線維腫症のように明瞭に家系内伝播が認められるNF1亜型があることは, NF1の多彩な臨床像はアレル異質性によるものであることを 示している。さらにNF1家系の臨床像に関する統計学的研究によりNF1変異アレルは表現型のごく一部にしか関与していなく、NF1正常アレル の発現が表現型の多様性に関与している可能性 が示唆されている。また、ほかの座位にある修飾遺伝子はNF1表現型の多くに影響を与えることも示されている。

NF1の極めて広い臨床像は,偶発的に発生するイベント も表現型を決定するのに重要であることを示唆している。この推測を支持する証拠として,NF1罹患者に生じた以下のような種々の腫瘍でNF1遺伝子座にセカンドヒット(正常アレルの体細胞変異)やヘテロ接合性の欠失が認められることが挙げられる。

  • 神経線維腫
  • 悪性末梢神経鞘腫瘍
  • 褐色細胞腫
  • 星状細胞腫
  • 消化管間質腫瘍
  • NF1罹患者の骨髄悪性腫瘍
  • 悪性黒色腫
  • 下顎巨細胞性肉芽腫
  • カフェ・オレ斑からのメラノサイトの成長
  • グロムス腫瘍
  • 脛骨偽関節部組織

 

NF1の広い臨床像については遺伝子,非遺伝子,確率的な要素が関与していると考えられる。この複雑さとNF1遺伝子変異の多様さのゆえに、遺伝子型と表現型の相関を明らかにすることは非常に困難である。

浸透率

NF1の小児期以降の浸透率はほぼ100%である。

促進現象

一部の遺伝子変異モザイクの親を持つ小児例を除けば、促進現象を示す証拠はない。

病名

NF1でも中枢神経病変を生じるが,NF2と区別するために「末梢神経線維腫症」と呼ばれていた。

特に何の限定もなく「神経線維腫症」という名称がNF1をさすことがあるが,他の著者がNF2やNF1関連の稀な亜型を含む用語として「神経線維腫症」を用いることがあるので,これは混乱をまねく。

頻度

NF1は常染色体優性遺伝性疾患の中で最も頻度の高い疾患のひとつであり,その罹患率はおおよそ3,000出生に1人である。

罹患者の約半数は新生変異である。NF1遺伝子の変異発生率(約1/10,000)はヒトの知られている遺伝子の中では最も高い。その高い変異率の発生理由はまだ明らかでない。


臨床像

自然経過

NF1の臨床像はきわめて多彩である。多発性のカフェ・オレ斑はほぼ全例に出現し,間擦部の雀卵斑様色素斑は約90%に出現する。成人NF1罹患者では通常,多数の良性の皮膚神経線維腫が認められる。

NF1罹患者の約半数が有する蔓状神経線維腫は,体内に生じ無症状であることが多い。蔓状神経線維腫のほとんどはゆっくりと進行するが、急激に増大することもある(特に幼児期)。蔓状神経線維腫が現れた場合には,外見を損ない、身体の機能障害をきたし,時には生命を脅かすことがある。

NF1の眼症状としては視神経膠腫やLisch結節(無害な虹彩過誤腫)があり,前者は失明の原因ともなりうる。視神経膠腫を有するNF1罹患者の多くが6歳以前に視力低下や眼球突出で発症するが,小児期後半もしくは成人期まで症状を呈さないこともある。NF1による視神経膠腫の多くが長年安定しているか、もしくは非常にゆっくりと進行する。なかには自然に縮小するものもある。

側彎症,脊椎異形成,偽関節症や骨過成長のような重篤な骨病変よりも、骨量減少症や骨粗鬆症の頻度が高い。

ほかに医学的な問題となる症状としては,血管病変,高血圧,頭蓋内腫瘍,悪性末梢神経鞘腫瘍などがある。NF1罹患者の少なくとも半数には学習障害がある。頭痛が頻繁に現れ、けいれんや水頭症も時々見られる。

NF1罹患者の多くは皮膚病変とLisch結節を生じるだけであるが,加齢とともにより重大な病変が増えてくる。NF1の種々の病変は以下のようにその発症時期に特徴を有している。

  • 脛骨の彎曲のような骨病変は生下時にすでに認められる。
  • カフェ・オレ斑はしばしば出生時に認められ,数年のうちにその数が増えてくる。
  • びまん性の顔面や頚部の蔓状神経線維腫は1歳以降に出現し,身体のその他の部位に思春期以降に発生することはほとんどない。
  • 深部結節性蔓状神経線維腫は幼児期にはあまり見られず,成人でもしばしば無症状である。
  • 視神経膠腫は6歳までに発症する。
  • 脊椎の異常を伴わない軽症型側彎症は典型的には思春期に発症するのに対し,急速進行性(異形成性)の側彎症はほとんど6歳から10歳の間に発症する。
  • 悪性末梢神経鞘腫瘍(神経線維肉腫)は思春期から成人期に発症する。

神経線維腫は身体のどの部位も侵しうる。散在性の皮膚もしくは皮下神経線維腫は小児期後半以前には少ない。成人NF1罹患者に見られる神経線維腫の数はごく少数の場合から数百,数千個にいたるまでばらつきがある。新しい皮膚もしくは皮下神経線維腫は生涯にわたって出現しつづけるが,出現の速度は年によって大きなばらつきがある。多くの女性罹患者では妊娠中,神経線維腫の数や大きさの急速な増大を経験する。

一部のNF1罹患者は多発性神経根腫瘍によるびまん性多発神経障害を発症し,悪性末梢神経鞘腫瘍のリスクが高い。

多くのNF1罹患者の知能は正常であるが,50-75%に学習障害が認められる。学習 に関する問題が数多く報告されているが,視覚空間動作障害や注意障害が最も多い。NF1に伴う学習障害は成人になっても続く。

NF1患児はしばしば社会適応に障害を 有し,他の子どもに比べて性格や行動,生活の質の違いが見られる。

NF1罹患者は平均的に頭囲が大きいが,灰白質容量とIQには関連がない。

高血圧の頻度が高く,いずれの年齢にも生じうる。多くの例では高血圧は「本態性」であるが,NF1に特徴的な血管病変が腎動脈狭窄や大動脈縮窄,あるいはその他の高血圧に関連する血管病変を引き起こしていることもある。腎動脈性のものは小児罹患者の高血圧でしばしば発見される。

心血管や脳血管に生じた血管病変は重篤で,時には生命にかかわる結果をもたらす。

  • NF1で典型的に認められる脳血管障害では内頚動脈,中大脳動脈,前大脳動脈の狭窄や閉塞をきたす。
  • 狭窄領域周辺では小さな拡張血管が形成され,大脳動脈造影で一吹きの煙のような像(モヤモヤ)を呈する。脳腫瘍に対する放射線照射を受けたNF1小児罹患者は、モヤモヤを生じる可能性が3倍になる。
  • 血管拡張や頭蓋内動脈瘤は一般人口集団よりも高頻度に認められる。

肺動脈弁狭窄は一般人口に比べNF1罹患者での頻度が高い。NF1の成人罹患者は、 肺 高血圧症を呈することがあり、これは実質性肺疾患に合併する場合が多いが、その他のNF1の遅発性の病変に合併することもある。

NF1小児罹患者において,(良性神経線維腫以外で)最も多い腫瘍は視神経膠腫と脳腫瘍である。

  • 白血病,特に若年性の慢性骨髄球性白血病や骨髄異形成症候群は,多くはないものの一般集団よりは頻度が高い。
  • 小児期に視神経膠腫を発症した小児の少なくとも20%に,別の中枢神経系膠腫が発生する。
  • 視神経膠腫に対して放射線療法が行われた場合,照射領域の視神経以外の膠腫と悪性末梢神経鞘腫の発症頻度は上昇する。
  • 脳幹や小脳の星状細胞腫を発症したNF1罹患者は,非罹患者よりゆっくり進行する可能性があり、縮小したとの症例報告もある。

悪性末梢神経鞘腫瘍はNF1に伴う最も頻度の高い悪性腫瘍で,罹患者の約10%に発生する。悪性末梢神経鞘腫瘍はNF1罹患者において、一般集団より若年で発症し生命予後不良という傾向がある。良性の皮下神経線維腫や体内の蔓状神経線維腫を有するNF1罹患者は,これらの腫瘍を有しない罹患者に比べ、悪性末梢神経鞘腫瘍を発症するリスクが高い。

ほかにも消化管間質腫瘍など様々な腫瘍がNF1罹患者に見られる。

NF1罹患女性は,50歳以前で5倍,生涯で3.5倍乳がんのリスクが高い。

全身の骨量減少あるいは骨粗鬆症は一般集団より高頻度にみられる。この骨変化の原因は明らかでないが,NF1罹患者では予想値より血清25-ヒドロキシビタミンD濃度が低く,副甲状腺ホルモンレベルが高いことや,骨吸収が亢進していると報告されていた。14名の骨病変のないNF1罹患者から採取した骨組織を分析したところ、骨梁 の減少、カルシウム量の低下、骨様細胞、造骨細胞や破骨細胞の増加が認められた。

NF1罹患者の身長は平均以下で,頭囲は平均以上である。しかし身長が-3SD以下であったり頭囲が+4SD以上であったりすることはほとんどない。一方,NF1遺伝子の完全欠失が原因となっている罹患者では臨床像が異なり,特に2-6歳にかけて過剰発育を呈する。一部の小児罹患者の臨床像はWeaver症候群に似ている。

二次性徴は通常正常であるが,思春期早発をきたすことがあり,特に視神経交叉に腫瘍を生じた場合に多い。二次性徴の遅れもよく見られる。

分節型あるいは部分型NFはNF1の所見が身体の一部に限局し、且つ両親が罹患していない場合に診断される。その非典型的な病変分布は偶然に生じた場合もあれば,NF1遺伝子の体細胞変異モザイクが原因となる場合もある。しかし、これまでに報告されたNF1遺伝子変異モザイク症例のほとんどは分節型ではない軽症型神経線維腫症である。分節型NF1罹患者の子が典型的なNF1であった例が報告されている。一卵性双生児の2症例はNF1遺伝子変異による体細胞モザイクは接合後の非常に早い段階で起きたことを証明した。

Noonan症候群の表現型は約12%のNF1罹患者に見られる。臨床所見としては眼間開離,瞼裂斜下,耳介低位,翼状頚,肺動脈弁狭窄がある。このような所見を呈するNF1罹患者の親族にNoonan症候群の所見が伴うことも伴わないこともある。NF1-Noonan表現型の理由はさまざまで,異なる2つの比較的高頻度な常染色体優性遺伝性疾患が合併した家系もあれば,NF1亜型として遺伝している家系もある。NF1-Noonan症例のほとんどは生殖細胞系列にNF1遺伝子変異を有するのに対し、Noonan症候群罹患者の約半数が有するPTPN11遺伝子変異を有した症例は非常にまれである。

LEOPARD症候群の多くはPTPN11変異を有し,その症状がNoonan症候群と似ているが,多発性色素斑,感音性難聴,肥大型心筋症や心電図変化を合併することで区別される。LEOPARD症候群とNF1のいくつかの症状を有し,NF1遺伝子変異を有した症例報告がある。

寿命 NF1罹患者寿命の中間値は一般集団よりおよそ8年短い。悪性腫瘍(特に悪性末梢神経鞘腫瘍)や血管病変が最も重要な早期の死因となっている。

神経画像診断 脳梁拡張が一部のNF1患児に見られ、学習障害と関連している 。脳MRI検査でNF1患児の約50%に認められる高信号病変,いわゆるunidentified bright objects (UBOs)の臨床的意義ははっきりしない。このT2強調画像で高信号として認められる所見は視神経経路,基底核,脳幹,小脳,大脳皮質にみられ,通常占拠性の症状は引き起こさない。典型的なUBOsはT1強調画像やCTでは捉えられない。UBOsは拡散強調画像では異常なミエリン構造を示す像を呈し,これは病理学的には海綿状髄鞘障害の領域に相当している。これらは年齢とともに消失し,成人のNF1罹患者では低頻度である。UBOsの存在はNF1小児罹患者のけいれんとは関連しない。UBOsの存在,数,量や局在、消失がNF1小児罹患者の学習障害と関連しているという研究もあるが,研究者間で意見の一致には至っていない

遺伝子型と表現型の相関

NF1の臨床像がきわめて多彩で,血縁のない罹患者間は言うまでもなく、同一家系内の罹患者や,さらに同じ罹患者でも時期によって病像が大きく異なる。NF1遺伝子変異と表現型の相関について、現在知られているのは下記の3つのみである。

  • NF1遺伝子の全欠失を有する患者では、皮膚の神経線維腫は早期に多数出現し,認知障害もより高頻度でより重度である。時に大きな手や足といった過剰発育や顔面の変形が認められる。
  • エクソン17の3塩基欠失(c.2970-2972 delAAT)はNF1に典型的な色素沈着病変と関連しているが,皮膚や表面の蔓状神経線維腫との関連がない。
  • NF1遺伝子座や隣接ゲノム領域 を含む遺伝子重複を有する患者は、(NF1遺伝子微小欠失や機能喪失変異による)NF1臨床像を呈しないが、知的障害やけいれんを有する可能性がある。NF1微小重複の表現型は非常に多彩で、遺伝子変異を有するにもかかわらず、表現型が正常な例もある。それは重複領域にNF1遺伝子以外に ほかの遺伝子が存在するためと 考えられている。しかし、 表現型の異常はNF1 の三倍体が原因となっているのか、その領域の他の遺伝子によるものなのか を知るのは不可能である。

Watson症候群(多発性のカフェ・オレ斑,肺動脈弁狭窄,軽度知能低下)や家族性脊髄神経線維腫症のように明瞭に家系内伝播が認められるNF1亜型があることは, NF1の多彩な臨床像はアレル異質性によるものであることを 示している。さらにNF1家系の臨床像に関する統計学的研究によりNF1変異アレルは表現型のごく一部にしか関与していなく、NF1正常アレル の発現が表現型の多様性に関与している可能性 が示唆されている。また、ほかの座位にある修飾遺伝子はNF1表現型の多くに影響を与えることも示されている。

NF1の極めて広い臨床像は,偶発的に発生するイベント も表現型を決定するのに重要であることを示唆している。この推測を支持する証拠として,NF1罹患者に生じた以下のような種々の腫瘍でNF1遺伝子座にセカンドヒット(正常アレルの体細胞変異)やヘテロ接合性の欠失が認められることが挙げられる。

  • 神経線維腫
  • 悪性末梢神経鞘腫瘍
  • 褐色細胞腫
  • 星状細胞腫
  • 消化管間質腫瘍
  • NF1罹患者の骨髄悪性腫瘍
  • 悪性黒色腫
  • 下顎巨細胞性肉芽腫
  • カフェ・オレ斑からのメラノサイトの成長
  • グロムス腫瘍
  • 脛骨偽関節部組織

NF1の広い臨床像については遺伝子,非遺伝子,確率的な要素が関与していると考えられる。この複雑さとNF1遺伝子変異の多様さのゆえに、遺伝子型と表現型の相関を明らかにすることは非常に困難である。

浸透率

NF1の小児期以降の浸透率はほぼ100%である。

促進現象

一部の遺伝子変異モザイクの親を持つ小児例を除けば、促進現象を示す証拠はない。

病名

NF1でも中枢神経病変を生じるが,NF2と区別するために「末梢神経線維腫症」と呼ばれていた。

特に何の限定もなく「神経線維腫症」という名称がNF1をさすことがあるが,他の著者がNF2やNF1関連の稀な亜型を含む用語として「神経線維腫症」を用いることがあるので,これは混乱をまねく。

頻度

NF1は常染色体優性遺伝性疾患の中で最も頻度の高い疾患のひとつであり,その罹患率はおおよそ3,000出生に1人である。

罹患者の約半数は新生変異である。NF1遺伝子の変異発生率(約1/10,000)はヒトの知られている遺伝子の中では最も高い。その高い変異率の発生理由はまだ明らかでない。

鑑別診断

本稿で扱われる疾患に対する遺伝学的検査の実施可能性に関する最新情報は,GeneTests Laboratory Directoryを参照のこと.―編集者注.

カフェ・オレ斑やほかのNF1でみられる徴候を示す先天異常疾患は100種以上知られているが,NF1との鑑別が困難なものはほとんどない。

NF1の類似疾患

  • Legius症候群はSPRED1遺伝子ヘテロ変異による,多発性カフェ・オレ斑,腋下雀卵斑様色素斑,大頭症,時にNoonan症候群に似た顔貌を呈する優性遺伝性疾患である。罹患者はNF1の診断基準に合致することがあるが,Lisch結節,神経線維腫,中枢神経系腫瘍は通常発生しない。
  • 遺伝性非ポリポーシス大腸がん(HNPCC)の原因遺伝子のホモ接合体変異。皮膚の症状はNF1に酷似している。このホモ接合体変異を有する罹患者では、ヘテロ接合体変異よりも若年でHNPCCの関連腫瘍を発症する。両親は近親婚あるいは、両親の片方や両方がHNPCCの臨床症状及び/もしくは家族歴を有することからNF1と区別される。典型的には,両親がNF1の所見を有していない。HNPCC原因遺伝子のホモ接合体変異を有する小児罹患者の白血球からNF1遺伝子変異を同定された報告があったが、サンプル採取の際、この患児は非典型的骨髄性白血病に罹患していた。
  • 神経線維腫症2型(NF2)(両側性前庭神経鞘腫,脳神経や末梢神経の神経鞘腫,皮膚の神経鞘腫,髄膜腫,若年性後嚢下白内障)NF2はNF1とは遺伝的にも臨床的にも異なる。
  • 神経鞘腫症(脳神経,脊髄,末梢神経の多発性神経鞘腫。 NF2と異なり前庭神経,視神経は侵されず,皮膚病変もない)
  • 多発性カフェ・オレ斑(常染色体優性遺伝で神経線維腫症に見られる他の所見を伴わない)
  • LEOPARD症候群(多発性黒子症,眼間開離,聾,先天性心疾患)
  • McCune-Albright症候群(辺縁不正で大きなカフェ・オレ斑,多発性 線維性骨異形成)
  • Noonan症候群(低身長,先天性心奇形,翼状頚,特異的顔貌)
  • 多発性内分泌腫瘍症2B型(粘膜神経腫、結膜 神経腫,褐色細胞腫,甲状腺髄様がん,消化管神経節腫瘍,厚い口唇を伴う特徴的な顔貌,マルファン様体型)
  • 多発性脂肪腫症(多発性皮膚脂肪腫)
  • Bannayan-Riley-Ruvalcaba症候群(多発性脂肪腫・血管腫,大頭症,亀頭の点状色素沈着)。これはPTEN過誤腫症候群に含まれる。
  • 若年性ヒアリン線維腫症(多発性皮下腫瘍,歯肉線維腫症)(遺伝性全身性ヒアリン症参照)
  • 先天性全身性線維腫症(皮膚,皮下,骨格筋,骨,内臓の多発腫瘍)
  • 多発性真皮内 母斑(多発性皮膚腫瘍)
  • Klippel-Trenaunay-Weber症候群(皮膚血管腫,静脈瘤,動脈静脈瘻,片側肥大)
  • Proteus症候群(種々の組織や結合 組織の過誤腫性過成長,結合組織の母斑,表皮母斑、骨増殖症)
  • 限局性色素脱失症(皮膚の限局性色素沈着と,色素沈着で境界される色素脱失。前髪の脱色)
  • 多発性眼窩神経線維腫、痛みを伴う末梢神経腫瘍、特異的顔貌、マルファン様体型

    注:本症に関する鑑別診断は、診断支援ソフト説明: Image SimulConsult.jpgを参照すること(事前登録または研究目的の使用が必要)。


臨床的マネジメント

初診時の評価

NF1と診断された患者の臨床像を把握するために、下記の評価項目が推奨されている。

  • NF1特異的所見に特に注意した病歴の聴取
  • 皮膚,骨格,心血管系,神経系に特に注意した身体診察
  • スリットランプによる虹彩の評価を含む眼科的検索
  • 小児の発達評価
  • 臨床的に明らかな徴候や症状がある場合にはそれに対する評価
  • 遺伝学的評価

NF1診断時にルーチンに 頭部MRI検査を行うことの有用性については議論がある。

  • 賛成する専門家はMRI検査が一部の患者の診断に役立ったり,あるいは臨床症状が出現する前に病変を検出できたり,頭蓋外の病変を評価できるため、有用であると主張している。
  • 一方これに異論を唱える専門家は,MRI検査がUBOsの診断に関して非特異的であり信用性が不十分であること,コストの問題,さらに無症状の患者にUBOsや視神経の肥厚などの頭蓋内病変を認めても臨床的マネジメントが変わらないことを指摘している。実際に,このような病変を検出することで、関連症状がなくても定期的にMRI検査を繰り返すことになり,患者やその家族にとって、コストや不安を増長する ことになる。

さらに,遺伝したものか突然変異で生じたものかを判断するためには,NF1関連症状に特に注意した家族歴聴取,身体診察,眼科的検索(スリットランプ検査を含む)を両親に対しても実施すべきである。この判断 は遺伝カウンセリング のためにも必要である。

症状に対する治療

眼や中枢神経,末梢神経系,脊髄,長管骨,心血管系の異常 を有するNF1患者には、治療のために適切な専門家を紹介すべきである。

美容上問題となったり不便を生じたりする散在性の皮膚あるいは皮下の神経線維腫(ベルトの位置や襟首など)は外科的に切除したり,もし小さければレーザーや電気メスにて切除することもある。多くのNF1罹患者にとって美容上の問題は最も悩ましいことであるため、こうした治療は重要である。

蔓状神経線維腫は巨大になることがあり,重篤な変形,過成長,正常構造の障害をきたす。体表に認められる蔓状神経線維腫の病変の広がりは身体診察だけでは判断できず,多くの体内の神経線維腫は大きいものであっても身体診察で見逃される。MRIは,蔓状神経線維腫の病変の大きさや広がりを評価し,その経時的変化を観察するための選択肢となる。

  • 蔓状神経線維腫は神経を巻き込んだり,切除された側の反対側に成長したりする傾向があるため、外科的治療では 満足できる結果を得られることが少ない。
  • 体表の蔓状神経線維腫の外科的切除は,腫瘍が比較的小さい 幼児期に実施すると,神経症状を起こさずに 実施可能かもしれない。
  • 放射線療法は,遺伝学的に悪性末梢神経鞘腫瘍が発生するリスクが高いため禁忌である。
  • カルボプラチンの化学療法を2サイクル受けた患者に、蔓状神経線維腫の体積が54%減少したとの報告がある。
  • チロシンキナーゼ阻害剤であるイマチニブの治療を受けた患者に、巨大な蔓状神経線維腫が画期的に縮小した症例報告もある。この治療法に関して、現在臨床試験中である。

疼痛や神経症状の発生,もともとあった蔓状神経線維腫の増大は悪性末梢神経鞘腫瘍を疑わせる所見であり,早急な評価が必要である。MRIやPETによる検査が良性と悪性の腫瘍を鑑別するのに役立つが,最終的な区別は病理学的診断によらなければならない。完全な外科的切除が可能であれば,それが治癒につながる唯一の治療法である。術後化学療法や放射線療法が併用されることもあるが,その有用性は確立されていない。

NF1罹患者でMRIにて発見される視神経膠腫の多くは無症状であるため、治療を必要としないことが多い。NF1罹患者の小児期に発生した進行性の視神経膠腫は化学療法が治療の選択肢である。視神経膠腫の外科的治療は美容上の目的で失明した目に行われることが多い。放射線療法は照射領域の悪性腫瘍やモヤモヤ血管の発生リスクがあることから通常避ける。

NF1罹患者に生じる脳幹や小脳の星細胞腫の自然経過は,治療方針の決定に際して考慮されるべきである。

NF1に伴う変形の強い小児の側彎症はしばしば外科的治療を要するが,これは複雑で難しい。異形成性のない側彎症は特発性側彎症と同様の治療が行われる。

サーベイランス

以下が推奨される。

  • 年に1回本症に詳しい医師による身体診察
  • 小児では年に1回の眼科的検査,成人の場合はより低頻度でよい
  • 質問紙による発達の評価(小児期)
  • 定期的血圧測定
  • 臨床的に明らかな症状がある場合にはそれに対する評価
  • 中枢神経系,骨格系,心血管系の異常がある場合には,適切な専門家によるモニタリング

NF1罹患者の健康管理に同様な推奨が最近発表された。

回避すべき薬物や環境

ほとんどのNF1罹患者に対しては特別な制限は必要ない。脛骨異形成や異形成性側彎症がある場合には制限が必要になるかもしれないが,それはNF1そのものによるわけではなく,骨病変の状況によって決まってくるものである。

NF1罹患者に対する放射線療法は照射域における悪性末梢神経鞘腫瘍のリスクを明らかに高める。

リスクのある親族への検査

リスクのある親族の検査について、遺伝カウンセリングの項を参照のこと。

周産期の健康管理

罹患女性の多くは正常な周産期を経過するが,重大な合併症も生じうる。

  • 多くのNF1罹患女性は妊娠中に神経線維腫の数や大きさの急速な増大を経験する。
  • 高血圧が妊娠中に初めて明らかになることもあるし,もしすでに存在しているのであれば急速に悪化することがある。
  • 骨盤腔や陰部の大きな神経線維腫は分娩の障害となり,NF1罹患女性では他の女性に比べて帝王切開が必要となることがより多い。

研究中の治療法

蔓状神経線維腫や脊髄神経線維腫に対する種々の薬物治療の臨床試験が進行中である。

顔面びまん性蔓状神経線維腫やカフェ・オレ斑に対する高周波治療が少数の臨床試験である程度の効果を示している。

悪性末梢神経鞘腫瘍に対するいくつかの治療法の臨床試験は,NF1患者が参加可能である。

視神経膠腫に対するいくつかの治療法の臨床試験はNF1患者が参加可能 である。

NF1患児の学習障害に対するシンバスタチン(simvastatin)製剤治療の臨床試験では 有効性が認められなかったが、ロバスタチン(lovastatin)製剤の有効性についての臨床試験は進行中である。

*注:米国Children’s Tumor Foundationより、NIH ClinicalTrials.govにNF1の臨床研究に関するより詳細なリストが記載されている。

その他

ホルモン剤による避妊はNF1罹患女性の神経線維腫の増殖を促進しない。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

NF1は常染色体優性遺伝の形式をとる。

患者家族のリスク

発端者の両親

  • 約50%のNF1罹患者には罹患した親がおり,残りの50%は新生突然変異の結果として変異遺伝子を有している。
  • 発端者の両親の臨床的評価が必要であり,これには既往歴の聴取と,特にNF1の皮膚やその他の臨床所見に注意を向けた身体診察が含まれる。さらに両親に対して,Lisch結節や他のNF1病変を検出するためにスリットランプによる観察を含む眼科的検査を行うべきである。

    注:家族がNF1を認識していなかったり,親が臨床症状を呈する前に死亡していたりするために家族歴が陰性となる場合がある。

発端者の同胞 

  • 罹患者の同胞のリスクは両親の状況に左右される。
  • もし片親が罹患しているならば,同胞のリスクは50%である。
  • もし両親のいずれもが細心な既往歴聴取や身体診察,眼科的検査のあとでもNF1の診断基準を満たさないのであれば,同胞がNF1に罹患する可能性は低いが,生殖細胞モザイクの可能性があるので、一般人口集団のそれよりは高い。注:明らかに正常な親に2人のNF1患児が生まれた例でNF1遺伝子変異の生殖細胞モザイクが報告されている。

発端者の子 

  • 罹患者の子はそれぞれ50%の確率で変異遺伝子を受け継ぐ。
  • 浸透率は100%であり,変異NF1遺伝子を受け継いだ子はほぼ確実にNF1の症状を呈する。しかし,子の症状は罹患した親に比べ明らかに重症(軽症)でありうる。

他の家族 

  • 他の血縁者のリスクは罹患者の両親の状況に左右される。
  • もし片親が罹患しているのであれば,その親や他の子供もリスクを有していることになる。

遺伝カウンセリングに関連した問題

同一家系で複数の新生突然変異が存在する可能性 Upadhyayaらはひとつの家系で3種類の異なる変異が確認された症例を報告しており,同一家系内の罹患者は同じ変異を有するとの推測には注意が必要であるとしている。ほかにも、2つの異なる変異が同一家系内で報告されている例がある。

明らかな新生突然変異を認める家系について 発端者の両親が非罹患者である場合には,発端者の発症は新生突然変異によると考えられる。しかしながら,生物的父親や生物的母親が異なる場合(例:生殖補助医療による)あるいは,明かされていない養子縁組など,非医学的な要因が関係する可能性もある。

家族計画 

  • 遺伝的リスクの評価や出生前診断の可否についての遺伝カウンセリングは妊娠前に行われるのが望ましい。
  • 罹患しているもしくはリスクがある若い成人に対して遺伝カウンセリング(子のリスクや生殖の選択肢を含め)が行われることが望ましい。

DNAバンク DNAバンクは主に白血球から調製したDNAを将来の使用のために保存しておくものである。検査法や遺伝子,変異あるいは疾患に対するわれわれの理解が進歩するため,罹患者のDNAを保存することは考慮すべきかもしれない。
 
出生前診断

分子遺伝学的検査 リスクのある妊娠に対する出生前診断は羊水穿刺 (妊娠15−18週)または絨毛採取 (妊娠10−12週)から得た 胎児DNAを用いて行うことができる。検査を行うには家系内の遺伝子病的変異の同定あるいは連鎖解析が事前に実施されている 必要がある。
*妊娠 週数は最終月経の開始日あるいは超音波検査による測定に基づいて計算される。

超音波検査 非常に重症のNF1を出生前に超音波で診断した報告があるが,大多数のNF1について超音波検査は有用性がない。

NF1のように臨床的重症度や発症年齢が多様である疾患 に対する出生前診断は一般的ではない 。特に早期診断よりも中絶を目的として考慮される場合は,医療関係者と家族の間では出生前診断に対する見解の相違が生じやすい。多くの医療機関では最終的には両親の意思を尊重するとしているが,この問題については注意深い検討が求められる。

着床前診断 NF1に対する着床前診断の報告があり,家系内の遺伝子病的変異が同定されている場合には技術的には可能である。

訳注:一般にNF1に対して出生前診断の適応があるとは考えられていないし,着床前診断も行われていない


関連情報

希少難病者の会「復生あせび会」内にNF1の部会がある。


分子遺伝学

下記の記述は最新の情報を含まれているため、GeneReviewsに記載されているほかの情報と異なることがある

表A 神経線維腫1:遺伝子とデータベース

遺伝子記号

遺伝子座

タンパク質

座位特異性

HGMD

NF1

17q11.2

ニューロフィブロミン

NF1ホームページ―Mendelian genesを参照すること

NF1

表B  OMIMにおける神経線維腫1関連情報

162200

神経線維腫1型;NF1

613113

ニューロフィブロミン1;NF1

正常アレル変異 NF1遺伝子およびその翻訳産物はCawthonら(1990)およびWallaceら(1990)、
全cDNA配列はGutmann & Collins(1993)およびViskochilら(1993)によって同定された。この大きい遺伝子(〜350キロベース、60個のエクソン)は3つ以上の選択スプライシング転写物をコードしている。NF1遺伝子のような、1つのイントロンに3つ以上のほかの遺伝子のコード配列が含まれる遺伝子は 稀である。

病的アレル変異 NF1遺伝子に500種類以上の変異が確認されている。ほとんどの変異はある家系に特異的なものとされている。繰り返して確認された変異があるものの、いずれも家系研究で数パーセント以下の割合しかない。今まで、ナンセンス変異、アミノ酸置換、遺伝子欠失/挿入、またはスプライシングに影響するようなイントロンの変化、3’非翻訳領域の遺伝子置換、大規模な染色体再構成を含む、様々な遺伝子変異が検出された。NF1罹患者に見いだされたこれらの生殖系列細胞の遺伝子変異の 80%以上は 高度な遺伝子産物の不足を引き起こした。その多くはmRNAスプライシングの変化によるものだと考えられる。

正常遺伝子産物 タンパク質産物であるニューロフィブロミンはおおよそ327kdの分子量を有する。ニューロフィブロミンの役割について、まだ完全に解明されていないが、ras-GTPaseを活性化することで、細胞増殖の制御や腫瘍抑制因子としての働きがある。それ以外にも、ニューロフィブロミンはアデニリル シクラーゼ活性化の制御や細胞内 サイクリックAMPの産生などに関与している。

異常遺伝子産物 生殖細胞系列変異の多くは遺伝子産物不足を引き起こすことと、NF1全遺伝子欠失は典型的な(しばしば重症な)NF1臨床像をもたらすことから、本症は遺伝子機能喪失変異による結果と推測される。


更新履歴

  1. Gene Review著者: J M Friedman, MD, PhD
    日本語訳者: 大畑 尚子(沖縄県立中部病院 総合周産期母子医療センター)  
    Gene Review 最終更新日: 2009.6.2. 日本語訳最終更新日: : 2011.10.17
  2. Gene Review著者: J M Friedman, MD, PhD
    日本語訳者: 江田肖(瀬戸病院 遺伝診療科),大畑尚子(沖縄県立中部病院 総合周産期母子医療センター)  
    Gene Review 最終更新日: 2012.5.3 日本語訳最終更新日: 2014.3.18  (in present)

原文 Neurofibromatosis 1

印刷用

 

grjbar
GRJ top > 遺伝子疾患情報リスト