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MCT8変異による甲状腺ホルモン輸送障害
(
MCT8 (SLC16A2)-Specific Thyroid Hormone Cell Transporter Deficiency))
[Allan-Herndon-Dudley Syndrome]

Gene Review著者:Dong Melissa A Dempsey, MS, Alexandra M Dumitrescu, MD, PhD, Samuel Refetoff, MD
日本語訳者:柿沼宏明(重症心身障害児施設「千葉市桜木園」)
Gene Review 最終更新日: 2010.3.9. 日本語訳最終更新日:2010.4.13

原文 MCT8 (SLC16A2)-Specific Thyroid Hormone Cell Transporter Deficiency


要約

疾患の特徴 

MCT8 (SLC16A2)変異による甲状腺ホルモン輸送障害は重度の認知障害、乳児期の筋緊張低下、筋肉量の低下と全身の筋力低下、進行性痙性四肢麻痺、関節拘縮、そして特徴的な発作性または運動誘発性ジスキネジアを伴うジストニー、そして/またはアテトーゼ運動を特徴とする。けいれん発作は症例の25%に出現する。男性患者の多くは決して独座や独歩することはなく、あるいは時を経てこれらの運動能力を失う;多くは決して言葉を話さないか、重度の構音障害を持つ。生後2、3年に撮られた脳MRIは 著明な髄鞘化遅延を示す。男性患者で観察された精神運動所見はヘテロ接合体女性には出現しないが、しばしば甲状腺検査異常は同じ傾向を示す。

診断・検査 

今日までに検査された全ての男性患者は、血清3,3’,5-トリヨードサイロニン(T3 )濃度の高値と、血清3,3’,5’-トリヨードサイロニン(リバースT3またはrT3)濃度の低値を含む病態特異的な甲状腺検査結果を示した。血清テトラヨードサイロニン(サイロキシンまたはT4)濃度はしばしば低下するが、正常範囲内にあるかもしれない;血清TSH濃度は正常か、軽度上昇する。この疾患と関連すると分かっている唯一の遺伝子のMCT8分子遺伝学的検査は、臨床検査室で利用可能である。

臨床的マネジメント 

対症療法:必要があれば理学療法、作業療法、および言語療法。ジストニーに対して抗コリン作動薬、L-ドーパ、カルバマゼピン、またはリオレサール。流涎を減少させるためにグリコピロレートまたはスコポラミン。けいれん発作があれば、これをコントロールするために標準的な抗てんかん薬、カロリー摂取を維持するために永続的な栄養チューブの留置。

二次的合併症予防:関節拘縮を予防するための装具や必要があれば整形外科的手術。誤嚥を予防するための摂食制限。

経過観察:側弯や関節の問題をモニターするための日常的な整形外科的評価;進行継続する発達評価。

その他子どもに有益な効果が得られない間、補充量による甲状腺ホルモン治療。

遺伝カウンセリング 

MCT8 変異による甲状腺ホルモン輸送障害はX連鎖形式で遺伝する。保因者女性は、それぞれの妊娠に50%の危険率でMCT8 変異を遺伝させる。変異を遺伝した男子は発病する;変異を遺伝した女子は保因者になり、軽微な甲状腺検査異常は示すかもしれないが、通常は発病しない。男性患者は子どもを持たない。もし家系で病因変異が判明していれば、リスクのある親族の保因者診断とリスクの高い妊娠の出生前診断は可能である。


診断

臨床診断

MCT8変異による甲状腺ホルモン輸送障害患者の100%に記載されている唯一の特徴は筋緊張低下と重度の精神遅滞である。したがって、次の項目の少なくとも2つを伴う男性では診断を疑うべきである。

  • 筋緊張低下/ジストニーおよび生後1ヵ月以内の哺乳困難
  • 体幹の筋緊張低下
  • 筋の低形成/無力様体型
  • 頚定不良
  • ジストニー/アテトーゼ運動を伴う痙性不全対麻痺 (上肢遠位部が主に冒され伸展姿勢を伴う)
  • 発作性ジスキネジー
  • 構音障害または言葉を話さない
  • 重度の精神運動遅滞と認知障害

その他の所見は体重増加不良、拘縮を伴う四肢強剛、勢いのある深部腱反射、クローヌス、およびけいれん発作を含む。

脳MRIの所見はないか、あるいは4歳以降では認められないかもしれないが、著明な髄鞘化遅延を示す [Holdenら2005Kakinumaら2005Sijensら2008]。注意:この疾患の正常MRIの初期報告は年長の患者からのものである。髄鞘化の特異的な異常を記載した別の文献は印刷中である[Gikaら2009]。

検査

図1.シカゴ大学で研究された6家系の甲状腺ホルモン機能検査

  • 7 例の男性患者(M, 赤い四角)
  • 11例の保因者女性(F, 緑の丸)
  • 15例の患者でない家族メンバー(N, 青い7三角)
    影の領域はそれぞれの検査で正常範囲を表す。Shaded areas represent the normal range for each test. 縦棒は2標準偏差である
    * P <0.05
    ** P<0.01
    *** P<0.001

    引用Dumitrescu AM, Rafetoff S (2009) Cell transport defects. In: Wondisford FE, Radovick S (eds) Clinical Management of Thyroid Disease. Elsevier Saunders, Philadelphia. Chap 22, pp 317-23. Republished with permission.

Affected males. See Figure 1

男性罹患者 図1を参照
MCT8 変異による甲状腺ホルモン輸送障害の男性は、以下を含む病態特異的な甲状腺検査結果を示す。

  • 血清3,3’,5-トリヨードサイロニン(T3 )濃度の高値と血清3,3’,5’-トリヨードサイロニン(リバースT3またはrT3)濃度の低値。
  • 注意:MCT8 変異を持つ80例の患者の全てが血清T3 濃度は高値で、測定していれば血清rT3 濃度は低値を示した。注意:これは血清の総ホルモン濃度と遊離ホルモン濃度の両方に当てはまる。
  • 血清テトラヨードサイロニン(サイロキシンまたはT4)濃度は、しばしば低下するが、正常範囲内であるかもしれない。
  • 血清TSH濃度は、正常か軽度上昇する(図1)[RefetoffとDumitrescu 2007, DumitrescuとRefetoff 2009]。

女性保因者
女性保因者の甲状腺ホルモン濃度は男性患者と非罹患家族メンバーとの中間値を示す。(図1)[RefetoffとDumitrescu 2007DumitrescuとRefetoff 2009]。

分子遺伝学的検査

遺伝子. MCT8 (SLC16A2)はMCT8変異による甲状腺ホルモン輸送障害に関連することが知られている唯一の遺伝子である。

臨床的検査 

すべての翻訳領域とその両側近傍のイントロン配列の塩基配列決定 遺伝子の塩基配列決定法は典型的な甲状腺検査結果を示す患者の多くで変異を発見することが期待できる;しかしながら、正確な変異発見率は不明である。

表1ではこの疾患の分子遺伝学的検査を要約する。

表1.MCT8変異による甲状腺ホルモン輸送障害に用いられた分子遺伝学的検査

遺伝子シンボル

検査方法

発見された変異

検査方法による変異発見率 1

検査の利用可能

男性罹患者

女性保因者 2

SLC16A2 (MCT8)

塩基配列決定法

塩基配列変異

不明

不明

臨床的
graphic element

エクソンまたは遺伝子全体の欠失

不明 3

0% 4

欠失/重複決定法 5

エクソンまたは遺伝子全体の欠失

不明

不明

  1. この遺伝子に存在する変異を発見するのに用いた検査方法の能力
  2. 家系内に検査を受けた男性患者がいない場合
  3. PCR増幅がない場合または(塩基配列決定に先立って)期待された増幅産物より小さいバンドが見つかった場合は、男性患者のX染色体上でエクソンまたは遺伝子全体の欠失が推定示唆される:確認には欠失/重複解析による検査を加える必要がある。
  4. ゲノムDNAの塩基配列決定法では女性保因者のX染色体上のSLC16A2 遺伝子の一部エクソンや全体の遺伝子の欠失を発見できない。
  5. ゲノムDNAの塩基配列決定では容易に発見できない欠失/重複を見つける検査;量的PCR、長い領域のPCR、multiplex ligation-dependent probe amplification (MLPA)、または標的array GH (gene/segment-specific)を含む様々な方法が用いられるかもしれない。全ゲノムの欠失/重複を発見する完全なarray GH解析法もまたこのgene/segmentを含むかもしれない。array GHを参照.

検査結果の解釈

  • 塩基配列決定法の結果の解釈で考慮すべき問題に対して、ここをクリックせよ
  • X連鎖疾患の検査結果の解釈に関連する追加の問題に対して、表1の脚注3と4を参照

検査手順

発端者の診断の確定/確立.MCT8 変異による甲状腺ホルモン輸送障害の診断は、精神運動発達遅滞と特徴的な甲状腺検査結果を示す男性で確立できる。MCT8遺伝子に変異が発見されれば、この診断は確定される。今日までに、MCT8 遺伝子変異を持ちながら正常または特徴のない甲状腺検査結果が報告された者はいない;したがって、MCT8遺伝子全体の塩基配列を決定する前に(T3とrT3の濃度測定を含む)甲状腺検査をおこなうことを推奨する。
リスクのある女性親族の保因者検査は、(a)家系の病因変異の先の発見後でも、または(b)もし男性患者が甲状腺ホルモン検査を利用できない場合でも、塩基配列決定法によっておこなうことができる。もし変異が発見されなかったら、欠失/重複異常を発見できる他の方法を用いることができる。
注意:女性保因者はこのX連鎖疾患のヘテロ接合体であって、通常この疾患に関連した臨床症状が出現することはない。
リスクのある妊娠での出生前診断と着床前遺伝子診断(PGD)は家系の病因変異を先に発見する必要がある

遺伝学的に関連する疾患

MCT8 遺伝子変異は非症候性X連鎖精神遅滞の原因として疑われてきた。(すなわち、甲状腺ホルモン異常を伴わない);しかしながら、予備的な甲状腺検査を受けていない401例の精神遅滞の男性同胞を検査した研究では、ただのひとつの家系でMCT8 遺伝子変異が発見された。その後、甲状腺検査で、その患者が典型的な甲状腺検査結果を示したことが明らかになった [Frintsら2008]。


臨床像

自然経過

新生児期.MCT8変異による甲状腺ホルモン輸送障害の乳児は、出生時の身長、体重と頭囲は正常である。筋緊張低下と哺乳困難は、生後1週か、または1ヵ月以内に出現しうる。

成長.身長増加は典型的に正常であるが、およそ20%の男性が低身長である[SchwartzとStevenson 2007]。体重増加は身長増加に比べ遅れる;小頭症は年齢が進むと明らかになる。

頭蓋顔面.出生前と乳児期の筋緊張低下が原因かもしれない共通の顔貌所見は、眼瞼下垂、開口とテント状上口唇を含む。耳の長さは成人患者のおよそ半分で97パーセンタイルを超える。カップ状耳、鼻と耳の肥厚化、上向き耳朶や顔面の皺の減少もまた報告されている。

神経筋.体幹の筋緊張低下は成人期まで持続する。四肢の進行性過緊張によって痙性四肢麻痺と関節拘縮が出現する。総体的に筋量は減少し、これは全身の筋力低下と関連する。男性患者は「しなやかな頸」と記載され、成人になっても頚定不良である。
男性患者が、ジストニーおよび/またはアテトーゼ、および特徴的な発作性または運動誘発性ジスキネジーとして記載される無目的な運動を経験することはよくある[Brockmann et al 2005, Fuchs et al 2009]。これらは、着替えや子どもを持ち上げることを含む体性感覚刺激によって惹起されうる。運動発作の間、体幹は進展し口は開く;四肢の伸展や屈曲は1から2分間の長さで持続する。

けいれん発作は乳児期か小児期早期の間に発病する患者のおよそ25%に出現する[Schwartz & Stevenson 2007]。

勢いある反射、足クローヌス、および伸展性足底反応(バビンスキー徴候)はよくみられる。報告はあるが、回転性眼振と非共同性眼球運動はあまりみられない[Dumitrescu et al 2004]。

骨格.ロート胸と側弯はよくみられ、筋緊張の低下と筋量の低下の結果がもっとも考えうる。

行動.一般に、患者は注意深く、好意的で従順である。彼らは攻撃的でなく、あるいは破壊的でもない。

発達.精神運動遅滞は男性患者の100%に見られる。男性患者の多くは決して座位や独歩することなく、あるいは時を経て、これらの運動能力を失う。さらに、男性患者の多くは決して言葉を話さないか、または重度の構音障害から二次的に不明瞭な音のみが出現するようになるかもしれない。

その他.乳児期の甲状腺機能低下症の典型的な所見(すなわち、新生児黄疸の遷延、粘液水腫の皮膚変化、巨舌、嗄声、臍ヘルニア、そして低身長)はみられない[Schwartz et al 2005]。

寿命.ある患者に、通常は反復性の感染症および/または嚥下性肺炎が原因となる早期死亡が出現している。少数例で、70歳を超える生存が報告されている。

ヘテロ接合体の女性患者.MCT8遺伝子を切断する新規転座と、不利なnonrandomのX染色体不活性化で、MCT8変異による甲状腺ホルモン輸送障害の典型的な特徴を持つ女性が報告された[Frints et al 2008]。上述の精神運動所見の多くはヘテロ接合体女性にはおこらないが、知的な遅れと精神遅滞は稀に報告がある[Dumitrescu et al 2004Schwartz et al 2005Herzovich et al 2007]。

遺伝子型と臨床型の関連

少数のミスセンス変異(p.Ser194Phep.Leu434Trpp.Leu568Pro)と一アミノ酸欠失(p.F501del)は、幾分の言語発達、読み/書き、および/または失調があるにもかかわらず援助なしで歩く能力を含む軽微な精神運動遅滞と関連する[Jansenら 2008Visserら 2009]。独歩と言語発達がみられるのは、他の変異を持つ男性患者では珍しい。

浸透率 

MCT8変異を持っていて、病気にならない男性は報告されていない。したがって、浸透率は100%と思われる。ヘテロ接合体女性は典型的には臨床的に正常である。

促進現象 

促進現象は観察されていない。

病名 

MCT8遺伝子の発見と甲状腺ホルモン代謝の欠損の後で、MCT8変異による甲状腺ホルモン輸送障害がこの病気の名前として与えられた。

MCT8異常を有する患者と以前に記載された症候群であるAllan-Herndon-Dudley syndrome (AHDS)の臨床的表現型の間に部分的な一致があることから、Schwartzら[2005]は、AHDSの6家系でMCT8遺伝子を解析した。MCT8遺伝子変異は6家系すべてで発見された。

頻度 

MCT8変異による甲状腺ホルモン輸送障害の有病率は不明である。しかしながら、およそ5年間に50家系以上が発見され、この症候群が以前暗示されたよりも多いことが示唆されている。


鑑別診断

多くの疾患がX連鎖遺伝形式で筋緊張低下と重度の精神遅滞を示す。下に記載された、いくつかの疾患も、痙性やけいれん発作、あるいはMCT8変異による甲状腺ホルモン輸送障害と一部重なる他の特徴を示しているので、考慮すべきである。

  • Pelizaeus-Merzbacher (PMD)と、他のPLP1関連疾患は幅広い表現型スペクトラムを示すが、乳児期や小児期早期には、眼振、筋緊張低下、重度の認知障害を症状としうる、やがて重度の痙性と失調を症状とする。MCT8遺伝子変異の男性と同様にPMDの男性も小児期早期に髄鞘化遅延を示す;しかしながら、彼らは、MCT8変異による甲状腺ホルモン輸送障害に特徴的な甲状腺検査異常を示さない。PLP1関連疾患はX連鎖形式で遺伝する、そしてPLP1関連疾患の男性の80%-90%はPLP1変異を持っている。検査は臨床的に利用可能である。

重要なことで、ひとつの研究では、年齢とともに珍しく髄鞘化が改善されたPelizaeus-Merzbacher病様疾患の重症型53家系の11%でMCT8遺伝子変異が報告された[Vaurs-Barriereら 2009]。

  • 異染性白質ジストロフィ(アリルサルファターゼA欠損症)、X連鎖副腎白質ジストロフィ、Krabbe病とCanavan病を含む白質ジストロフィの患者は筋緊張低下、筋委縮を示し、そして言葉を話さないか、歩かないで痙性を示す。しかしながら、MRI、神経伝導速度と誘発電位は通常これらの疾患では異常である。
  • MECP2重複症候群の男性は、乳児期筋緊張低下、重度の精神遅滞を示し、言語を話さず、進行性の痙性とけいれん発作を示す。しかしながら、およそ75%は呼吸器感染を反復する。MECP2重複検査は臨床的に利用可能である。

臨床的マネジメント

MCT8変異による甲状腺ホルモン輸送障害と診断された患者の病気の程度や適切な治療法を確立するために、現在流通し、公表されているガイドラインは存在しない。

最初の診断に続いて行なう評価

患者で病気の程度を確立するために、次の事柄が推奨されている。

  • 成長のパラメーター
  • 発達評価
  • 神経学的評価とけいれん発作の可能性を評価するための脳波
  • 側弯やロート胸の進行の可能性を評価するための整形外科的評価

病変に対する治療

次に記載する治療が適切である。

  • 必要であれば、理学療法、作業療法、そして言語療法
  • 薬物療法、たとえば、ジストニアに対する抗コリン作動薬、L-ドーパ、カルバマゼピン、リオレサール
  • 流涎を改善するためにグリコピロレートまたはスコポラミン
  • 存在すれば、けいれんを抑制するために標準的な抗けいれん薬
  • 栄養失調を防ぐために永続的な栄養チューブの留置

注意:小児期の補充量による甲状腺ホルモン治療は有益な効果はない。しかしながら、PTUとT4の組み合わせ治療は一例の患者で観察されたように体重増加と心拍数への有益な効果があるかもしれない。

二次病変の予防

適切な手段は次の事柄を含む

  • 関節拘縮を予防するための装具と必要あれば整形外科手術
  • 誤嚥を予防するための食事制限

経過観察

適切な経過観察は次の事柄を含む

  • 側弯や関節の問題をモニターするための定期の整形外科的評価
  • 進行継続する発達評価

リスクのある親族への検査

遺伝カウンセリング目的のリスクのある親族の検査に関連する問題は遺伝カウンセリングを参照せよ

研究中の治療

細胞への輸送でMCT8を必要としない甲状腺ホルモン類似物は評価中である。そのような類似物質のひとつは、Mct8変異マウスでの効果検査によって発見されている。

広範な疾患や病気の臨床研究の情報の入手にはClinicalTrials.govを検索せよ。

その他

遺伝クリニックは、遺伝学の専門家が職員で、患者と家族に自然歴、治療、遺伝形式に関する情報を提供している、そして他の家族メンバーには遺伝的リスクと利用可能な消費者中心の資源についての情報も同じように提供している。GeneTests Clinic Directoryを参照せよ。

疾患特異的、さらに/またはこの疾患の包括的支持組織の消費者資源を参照せよ。これらの組織は、情報や援助と、他の患者への接触を患者と家族に提供するために設立されている。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

MCT8(SLC16A2)変異による甲状腺ホルモン輸送体障害はX連鎖形式で遺伝する。

患者家族のリスク

発端者の両親

男性発端者の両親

  • 男性患者の父親は病気になること、または変異の保因者になることはない。
  • 一人を超える患者がいる家系では、男性患者の母親は真正保因者である。
  • もし家系図解析が、発端者がその家族メンバーで唯一の患者であることを明らかにしたら、可能な遺伝的説明は:
      • 発端者は新規変異を持っている。この場合、発端者の母親は遺伝子変異を持っていない。新規変異はMCT8変異による甲状腺ホルモン輸送障害で報告されている[著者, 個人的交信; Dumitrescuら 2004]。
      • 発端者の母親が新規変異を持っている。ふたつの型の新規変異が母親に存在するかもしれない。
        • 母親の妊娠時に存在した生殖細胞系変異。これは母親の体の全ての細胞に存在するので、白血球で見つけることができる;または
        • 母親の卵巣でのみ存在する変異(生殖細胞系モザイクと呼ぶ)、卵巣ではある生殖細胞に変異はあるが、ある生殖細胞には変異がない、そして母親の白血球DNAでは変異を見つけることはできない。生殖細胞系モザイクはMCT8変異による甲状腺ホルモン輸送障害では報告されていないが、多くのX連鎖疾患で観察されているので、リスクのある家族メンンバーでは遺伝カウンセリングにおいて考慮されるべきである。
        • どちらにしても先行するシナリオ:発端者の母親の子どもの全てが変異を遺伝するリスクがある;発端者の母親の同胞は変異を遺伝するリスクはない。
      • 母親は保因者で、病因変異を自身の母親から遺伝している、その母親は新規病因変異を持っている。または、自身の症状のない父親から変異を遺伝している、その父親は変異を生殖細胞系モザイクで持っている。

発端者の同胞

発端者の同胞のリスクは両親の遺伝的事情に依存する:

  • もし発端者の母親が病因変異を持っているならば、それぞれの妊娠でMCT8遺伝子変異を遺伝するリスクは50%である。変異を遺伝した男性は発病する;変異を遺伝した女性は保因者になり、通常は発病しないが、軽微な甲状腺検査異常を示すかもしれない。
  • もし母親にMCT8遺伝子の塩基配列異常が発見されないならば、発端者の同胞のリスクはかなり減少する、しかしながら一般人口のリスクよりは大きい。リスクは発端者の両親の一方に生殖細胞系モザイクがある確率と、MCT8の自然変異発生率に依存する。生殖細胞系モザイクの実例は報告されていないが、可能性は残る。

発端者の子

男性患者は子どもを持たない。

女性発端者の子

女性患者は子どもを持たないであろう;報告された唯一の女性患者は低ゴナドトロピン性腺機能低下症であった。MCT8遺伝子変異を持つ女性は、それぞれの子どもに病因変異を遺伝するのに50%のリスクがある:変異を遺伝した男児は発病する;変異を遺伝した女児は保因者になり、軽微な甲状腺検査異常を示すかもしれない。

発端者の他の家族

もし発端者の母親が病因変異を持つことが判明したら、母親の家系の女性親族は保因者のリスクが高くなるかもしれない(軽微な甲状腺検査異常を示すかもしれないが典型的な症状はない)、男性親族は発端者との遺伝的関連によって発病するリスクがあるかもしれない。表現型が正常の男性はおそらく変異を持っていないと思われる。

保因者診断

もし家系で病因変異が発見されているならば、リスクのある女性親族の保因者診断は可能である。

遺伝カウンセリングに関連した問題.

家族計画

  • 遺伝的リスクの決定、保因者事情の解明、および出生前検査の利用の可能性を話し合う最適時期は妊娠前である。
  • 患者やリスクのある若年成人に遺伝カウンセリング(子どもの潜在的なリスクの話し合いと生殖の選択を含む)を提供することは適切である。

DNAバンキング DNAバンクは主に白血球から調製したDNAを将来利用することを想定して保存しておくものである。検査技術や遺伝子、変異、あるいは疾患に対するわれわれの理解が将来さらに進歩すると考えられるので、DNA保存が考慮される。DNAバンクは特に分子遺伝学的検査の感度が100%でないような状況においてはことに重要である。

出生前診断

リスクのある妊娠について出生前診断が技術的に可能である。 DNAは胎生16−18週に採取した羊水中細胞や10−12週*に採取した絨毛から調製する。成人発症型疾患の出生前診断の希望に対しては注意深い遺伝カウンセリングを必要とする。出生前診断を行う以前に、罹患している家族において病因となる遺伝子変異が同定されている必要がある。

  1. 胎生週数は最終月経の開始日あるいは超音波検査による測定に基づいて計算される。
訳注:日本では本症に対する出生前診断は行われていない。

原文 MCT8 (SLC16A2)-Specific Thyroid Hormone Cell Transporter Deficiency

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