Gene Reviews著者: Alexandra M Dumitrescu, MD, PhD, Jiao Fu, MD, Melissa A Dempsey, MS, and Samuel Refetoff, MD.
日本語訳者: 和泉 賢一 (札幌医科大学医学部遺伝医学,NGSDプロジェクト)
Gene Reviews 最終更新日: 2013.4.11 日本語訳最終更新日: 2017.12.29
原文 MCT8-Specific Thyroid Hormone Cell-Membrane Transporter Deficiency
疾患の特徴
MCT8 (SLC16A2)変異による甲状腺ホルモン輸送障害は重度の認知障害、乳児期の筋緊張低下、筋肉量の低下と全身の筋力低下、進行性痙性四肢麻痺、関節拘縮、そして特徴的な発作性または運動誘発性ジスキネジアを伴うジストニー、そして/またはアテトーゼ運動を特徴とする。けいれん発作は症例の25%に出現する。男性患者の多くは決して独座や独歩することはなく、あるいは時を経てこれらの運動能力を失う;多くは決して言葉を話さないか、重度の構音障害を持つ。生後2、3年に撮られた脳MRIは 著明な髄鞘化遅延を示す。男性患者で観察された精神運動所見はヘテロ接合体女性には出現しないが、しばしば甲状腺検査異常は同じ傾向を示す。
診断・検査
今日までに検査された全ての男性患者は、血清3,3',5-トリヨードサイロニン(T3 )濃度の高値と、血清3,3',5'-トリヨードサイロニン(リバースT3またはrT3)濃度の低値を含む病態特異的な甲状腺検査結果を示した。血清テトラヨードサイロニン(サイロキシンまたはT4)濃度はしばしば低下するが、正常範囲内にあるかもしれない;血清TSH濃度は正常か、軽度上昇する。この疾患と関連すると分かっている唯一の遺伝子はSLC16A2(MCT8として知られている)である。
臨床的マネジメント
症状に対する治療:
必要があれば理学療法、作業療法、および言語療法。ジストニーに対して抗コリン作動薬、L-ドーパ、カルバマゼピン、またはリオレサール。流涎を減少させるためにグリコピロレートまたはスコポラミン。けいれん発作があれば、これをコントロールするために標準的な抗てんかん薬、カロリー摂取を維持するために永続的な栄養チューブの留置。
二次的合併症予防:
関節拘縮を予防するための装具や必要があれば整形外科的手術。誤嚥を予防するための摂食制限。
経過観察:
側弯や関節の問題をモニターするための日常的な整形外科的評価;進行継続する発達評価。
避けるべき薬物/環境:
L-T3またはL-T3単独投与は高血清T3レベルを悪化させ、結果として高代謝状態になる。
その他:
甲状腺ホルモン治療は、補充(置換)量の点では、子供時代は利益がない。高容量のL-T4とdeiodinase 1を抑制するPTUの高容量の複合療法は、体重と心拍数の点で利益があり高代謝状態を改善するようである。同じように、4人の罹患者した子供への甲状腺ホルモン複合diiodothyropropionic acidの投与は全身状態を改善させた。しかし、両治療は神経学的改善は認めなかった。
遺伝カウンセリング
MCT8 変異による甲状腺ホルモン輸送障害はX連鎖形式で遺伝する。保因者女性は、それぞれの妊娠に50%の確率でSLC16A2病的変異が妊娠ごとに遺伝する。変異を遺伝した男子は発病する;変異を遺伝した女子は保因者になり、軽微な甲状腺検査異常は示すかもしれないが、通常は発病しない。男性患者は子どもを持たない。もし家系で病因変異が判明していれば、リスクのある親族の保因者診断とリスクの高い妊娠の出生前診断は可能である。
臨床診断
MCT8変異による甲状腺ホルモン細胞膜輸送障害患者の100%に記載されている唯一の特徴は筋緊張低下と重度の精神遅滞である。したがって、次の項目の少なくとも2つを伴う男性では診断を疑うべきである。
その他の所見は体重増加不良、拘縮を伴う四肢強剛、勢いのある深部腱反射、クローヌス、およびけいれん発作を含む。
脳MRIの所見はないか、あるいは4歳以降では認められないかもしれないが、著明な髄鞘化遅延を示す [Holden et al 2005、 Kakinuma et al 2005、Sijens et al 2008、Gika et al 2010、Tsurusaki et al 2011、Tonduti et al 2013]。注意:この疾患の正常MRIの初期報告は年長の患者からのものである。
検査
図1.シカゴ大学で調べたMCT特異的甲状腺ホルモン細胞膜輸送障害6家系の甲状腺ホルモン機能検査
影の領域はそれぞれの検査で正常範囲を表す。縦棒は2標準偏差である
P <0.05
** P<0.01
*** P<0.001
引用Dumitrescu AM, Rafetoff S (2009). Republished with permission of Elsevier Saunders.
男性罹患者 図1を参照
MCT8 変異による甲状腺ホルモン細胞膜輸送障害の男性は、以下を含む病態特異的な甲状腺検査結果を示す。
注:SLC16A2病的変異を持つ80例の患者の全てが血清T3 濃度は高値で、測定していれば血清rT3 濃度は低値を示した。注意:これは血清の総ホルモン濃度と遊離ホルモン濃度の両方に当てはまる。
女性保因者
女性保因者の甲状腺ホルモン濃度は男性患者と非罹患家族メンバーとの中間値を示す。(図1)[Refetoff & Dumitrescu 2007、Dumitrescu & Refetoff 2009]。 しかし、女性の甲状腺機能検査の結果は保因者を同定するのに使うのには信頼できない;保因者状態の決定は分子遺伝学的検査が必要である。
分子遺伝学的検査
遺伝子. SLC16A2はMCT8特異的甲状腺ホルモン輸送障害を引き起こすことが知られている唯一の遺伝子である。
臨床的検査
表1.MCT8特異的変異による甲状腺ホルモン細胞膜輸送障害に用いられた分子遺伝学的検査の要約
遺伝子1 | 検査方法 | 発見された アレル変異2 |
検査方法による変異発見率3 | |
---|---|---|---|---|
男性罹患者 | 女性保因者2 | |||
SLC16A2 | シークエンス解析 | シークエンス変異 | 不明4 | 不明5 |
欠失/多重解析6 | (多)エクソンもしくは全ゲノム欠失 | 不明7 | 不明 |
検査手順
発端者の診断の確定/確立.MCT8 変異による甲状腺ホルモン輸送障害は、精神運動発達遅滞と特徴的な甲状腺検査結果を示す男性で診断できる。
注:女性保因者はこのX連鎖疾患のヘテロ接合体であって、通常この疾患に関連した臨床症状が出現することはない。
リスクのある妊娠での出生前診断と着床前遺伝子診断(PGD)は家系の病因変異を先に発見する必要がある。
臨床像
新生児期.MCT8変異特異的甲状腺ホルモン細胞膜輸送障害の乳児は、出生時の身長、体重と頭囲は正常である。筋緊張低下と哺乳困難は、生後1週か、または1ヵ月以内に出現しうる。
成長.身長増加は典型的に正常であるが、およそ20%の男性が低身長である[Schwartz & Stevenson 2007]。体重増加は身長増加に比べ遅れる;小頭症は年齢が進むと明らかになる。
頭蓋顔面.出生前と乳児期の筋緊張低下が原因かもしれない共通の顔貌所見は、眼瞼下垂、開口とテント状上口唇を含む。耳の長さは成人患者のおよそ半分で97パーセンタイルを超える。カップ状耳、鼻と耳の肥厚化、上向き耳朶や顔面の皺の減少もまた報告されている。
神経筋.体幹の筋緊張低下は成人期まで持続する。四肢の進行性過緊張によって痙性四肢麻痺と関節拘縮が出現する。総体的に筋量は減少し、これは全身の筋力低下と関連する。男性患者は「しなやかな頸」と記載され、成人になっても頚定不良である。
男性患者が、ジストニーおよび/またはアテトーゼ、および特徴的な発作性または運動誘発性ジスキネジーとして記載される無目的な運動を経験することはよくある[Brockmann et al 2005, Fuchs et al 2009]。これらは、着替えや罹患児を持ち上げることを含む体性感覚刺激によって惹起されうる。運動発作の間、体幹は進展し口は開く;四肢の伸展や屈曲は1から2分間の長さで持続する。
けいれん発作は乳児期か小児期早期の間に発病する患者のおよそ25%に出現する[Schwartz & Stevenson 2007]。
勢いある反射、足クローヌス、および伸展性足底反応(バビンスキー徴候)はよくみられる。報告はあるが、回転性眼振と非共同性眼球運動はあまりみられない[Dumitrescu et al 2004]。
骨格.ロート胸と側弯はよくみられ、筋緊張の低下と筋量の低下の結果がもっとも考えうる。
行動.一般に、患者は注意深く、好意的で素直な方が多い。彼らは攻撃的ではないし、破壊的でもない。
発達.精神運動遅滞は男性患者の100%に見られる。男性患者の多くは決して座位や独歩することなく、あるいは時を経て、これらの運動能力を失う。さらに、男性患者の多くは決して言葉を話さないか、または重度の構音障害から二次的に不明瞭な音のみが出現するようになるかもしれない。
その他.乳児期の甲状腺機能低下症の典型的な所見(すなわち、新生児黄疸の遷延、粘液水腫様皮膚変化、巨舌、嗄声、臍ヘルニア、そして低身長)はみられない[Schwartz et al 2005]。
寿命.ある患者に、通常は反復性の感染症および/または嚥下性肺炎が原因となる早期死亡が出現している。少数例で、70歳を超える生存が報告されている。
ヘテロ接合体の女性患者.SLC16A2遺伝子を切断する新規転座と、不利なnonrandomのX染色体不活性化で、MCT8特異的甲状腺ホルモン細胞膜輸送障害の典型的な特徴を持つ女性が報告された[Frints et al 2008]。
上述の精神運動所見の多くはヘテロ接合体女性にはおこらないが、知的な遅れと精神遅滞は稀に報告がある[Dumitrescu et al 2004、 Schwartz et al 2005、 Herzovich et al 2007]。
しかし、SLC16A2病的変異とヘテロ接合体女性の認知障害の間の因果関係の有無については、まだ証明されていない[Schwartz et al 2005]
遺伝子型‐表現型の相関
少数のミスセンス変異(p.Ser194Phe、 p.Leu434Trp、 p.Leu492Pro、 p.Leu568Pro)と一アミノ酸欠失(p.phe501del)は、幾分の言語発達、読み/書き、および/または失調があるにもかかわらず援助なしで歩く能力を含む軽微な精神運動遅滞と関連する[Jansen et al 2008、 Visser et al 2009,2013]。独歩と言語発達がみられるのは、他の変異を持つ男性患者では珍しい。
浸透率
MCT8変異を持っていて、病気にならない男性は報告されていない。したがって、浸透率は100%と思われる。ヘテロ接合体女性は典型的には臨床的に正常である。
表現促進
促進現象は観察されていない。
病名
MCT8遺伝子と甲状腺ホルモン代謝の欠損の発見の後で、MCT8特異的変異による甲状腺ホルモン細胞膜輸送障害がこの病気の名前として与えられた。
SLC16A2異常を有する患者と以前に記載された症候群であるAllan-Herndon-Dudley syndrome (AHDS)の臨床的表現型の間に部分的な一致があることから、Schwartzら[2005]は、AHDSの6家系でSLC16A2遺伝子を解析した。SLC16A2遺伝子変異は6家系すべてで発見された。 それゆえ、AHDSは今ではSLC16A2病的変異によるMCT8特異的甲状腺ホルモン細胞膜輸送障害と同義語である。
頻度
MCT8変異による甲状腺ホルモン輸送障害の有病率は不明である。しかしながら、およそ10年間に100家系以上が発見され、この症候群が以前考えられていたよりも多いことが示唆されている。
MCT8 遺伝子変異は非症候性X連鎖精神遅滞の原因として疑われてきた。(すなわち、甲状腺ホルモン異常を伴わない);しかしながら、予備的な甲状腺検査を受けていない401例の精神遅滞の男性同胞を検査した研究では、ひとつの家系でしかSLC16A2遺伝子変異が発見されなかった。その後、甲状腺検査で、その患者が典型的な甲状腺検査結果を示したことが明らかになった [Frints et al 2008]。
多くの疾患がX連鎖遺伝形式で筋緊張低下と重度の知的障害を示す。下に記載された、いくつかの疾患も、痙性やけいれん発作、あるいはMCT8特異的甲状腺ホルモン細胞膜輸送障害の神経的表現型と重なる他の特徴を示す。
重要なことで、ひとつの研究では、年齢とともに珍しく髄鞘化が改善されたPelizaeus-Merzbacher病様疾患の重症53家系の11%でSLC16A2遺伝子病的変異が報告された[Vaurs-Barriere et al 2009]。
MCT8変異による甲状腺ホルモン細胞膜輸送障害と診断された患者の病気の程度や適切な治療法を確立するために、現在流通し、公表されているガイドラインは存在しない。
次の推奨は、現在の文献や著者の経験を基にしている。
最初の診断に続いて行なう評価
患者で病気の程度を確立するために、次の事柄が推奨されている。
病変に対する治療
次に記載する治療が適切である。
注:小児期の補充療法による甲状腺ホルモン治療は有益な効果はない。しかしながら、deiodinaseを抑制するPTUとT4の組み合わせ治療は一例の患者で観察されたように体重増加と心拍数への有益な効果があるかもしれない[Wemeau et al 2008, Visser et al 2013]。Therapies Under Investigationも参照。
二次病変の予防
適切な手段は次の事柄を含む
経過観察
適切な経過観察は次の事柄を含む
避けるべき薬剤/環境
食物の誤嚥は肺炎予防のために避けるべきである。
L-T4またはL-T3単独治療は血清T3レベル高値を悪化させ、結果として高代謝状態となる。
リスクのある親族への検査
遺伝カウンセリング目的のリスクのある親族の検査に関連する問題は遺伝カウンセリングを参照。
妊娠の管理
最近の報告では、2人の発症していないヘテロ接合体の妊娠女性(子供も罹患していない)が2半期にL-T4で治療されていた。このことが、有益か有害か、胎児にどんな影響があるかは不明であった。特筆すべきことに、多くの罹患していないヘテロ接合体の母親が、出生前になんの治療もしなくても、普通の罹患していない子供は生まれてきている。
研究中の治療
Diiodothyropropionic acid(DITPA)は細胞に輸送されるためにMCT8を必要としない甲状腺ホルモンアナログであるが、MCT8欠損のモデルマウスとMCT8特異的甲状腺ホルモン細胞膜輸送障害をもつ人の両者に治療として有効か評価された[DiCosmo et al 2009, Verge et al 2012]。DITPA療法は4人の罹患児に投与され、その後高代謝状態の改善が認められた。しかし、神経学的改善は、この治療では得られなかった。DITPA治療は妊娠中に行われることが考えられるが、しかし、この治療は今のところ使われておらず、効果があるかどうかは情報がない。
最近、別のアナログ製剤であるTETRAC(3,3',5,5'-tetraiodothyroacetic acid)がMct8欠損マウスで試された[Horn et al 2013]。TETRAC治療は脳のいくつかの分野におけるTH依存的神経分化を促進することができるが、視床下部のTRH抑制には効果的ではない。
個々の神経集団の中で、もしくはTHにより強化/弱化コントロールされる違う遺伝子の中で、TETRAC療法の効果は様々かもしれない。しかし、MCT8欠損マウスの末梢組織の甲状腺中毒症状態はTETRAC療法で著明な改善は認めなかった。
疾患や状態の広い範囲の臨床研究の情報にアクセスしたいならClinicalTraials.gov参照。
「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」
遺伝形式
MCT8(SLC16A2)変異による甲状腺ホルモン輸送体障害はX連鎖形式で遺伝する。
患者家族のリスク
男性発端者の両親
どちらにしても先行するシナリオ:発端者の母親の子どもの全てが変異を遺伝するリスクがある;発端者の母親の同胞は変異を遺伝するリスクはない。
発端者の同胞
発端者の同胞のリスクは両親の遺伝的事情に依存する:
男性発端者の子
男性患者は子どもを持たない。
女性発端者の子
女性患者は子どもを持たないであろう;報告された唯一の女性患者は低ゴナドトロピン性腺機能低下症であった[Frints et al 2008]。SLC16 A2遺伝子変異を持つ女性は、それぞれの子どもに病因変異を遺伝するのに50%のリスクがある:変異を遺伝した男児は発病する;変異を遺伝した女児は保因者になり、軽微な甲状腺検査異常を示すかもしれない。
発端者の他の家族
もし発端者の母親が病的変異を持つことが判明したら、母親の家系の女性親族は保因者のリスクが高くなるかもしれない(軽微な甲状腺検査異常を示すかもしれないが典型的な症状はない)、男性親族は発端者との遺伝的関連によって発病するリスクがあるかもしれない。表現型が正常の男性はおそらく変異を持っていないと思われる。
保因者診断
もし家系で病因変異が発見されているならば、リスクのある女性親族の保因者診断は可能である。遺伝カウンセリングに関連した問題.
家族計画
DNAバンキング
DNAバンクは主に白血球から調製したDNAを将来利用することを想定して保存しておくものである。検査技術や遺伝子、変異、あるいは疾患に対するわれわれの理解が将来さらに進歩すると考えられるので、DNA保存が考慮される。
出生前診断
家系内で病的変異が同定されていれば、リスクのある妊娠について、遺伝子/疾患検査もしくはカスタム化された出生前検査を提供している研究所で行えることがある。(注:米国の場合)
着床前診断(PGD)
病的変異が同定されている家系ではPGDが一つのオプションかもしれない。(注:米国の場合)
GeneReviewsスタッフは疾患特異的、アンブレラ的支持組織、登録会をこの疾患の罹患者と家族のために選択した。GeneReviewsは他の組織による情報については責任は負わない。選考の分類の情報については、本文参照。
分子遺伝学の情報やOMIMの表はGeneReviewsと異なっている可能性がある。表は最新の情報を含んでいる可能性がある。
表A
MCT-8特異的甲状腺ホルモン細胞膜輸送欠損:遺伝子とデータベース
遺伝子 | 染色体座 | 蛋白 | 特別なLocus | HGMD |
---|---|---|---|---|
SLC16A2 | Xq13?.2 | Monocarboxylate transporter 8 | SLC16A2 @ LOVD | SLC16A2 |
表 B
OMIM はMCT-8特異的甲状腺ホルモン細胞膜輸送欠損(OMIMですべて参照可)
300095 | SOLUTE CARRIER FAMILY 16 (MONOCARBOXYLIC ACID TRANSPORTER), MEMBER 2; SLC16A2 |
300523 | ALLAN-HERNDON-DUDLEY SYNDROME; AHDS> |
分子遺伝学的病因
Monocarboxylate transporter 8 (MCT8)、つまりSLC16A2の蛋白産生物は、神経のT3取り込みと、脳血液関門を通して甲状腺ホルモンの部分的通過を許している内皮で役割があると考えられている。MCT8欠損は核T3受容体に不十分にしかT3供給ができない結果となる。甲状腺ホルモンは脳の発達に重要な役割を果たしている。このように、T3の脳細胞への応答が減ると、MCT8特定甲状腺ホルモン細胞膜輸送障害の男性で神経発達に重篤な問題を引き起こす[Friesema et al 2006, Roberts et al 2008, Ceballos et al 2009]。
遺伝子構造 SLC16A2は6つのエクソンにコードされている。2つの翻訳開始場所がある(Normal gene product)。詳細な遺伝子の要約や蛋白情報は、表A、Geneを参照。
良性アレル変異 唯一の突然変異の報告があるアレル変異は、エクソン1のc.319T>C(p.Ser107Pro)である;2つの独立した研究で、この変異と血清甲状腺ホルモンレベルまたはSLC16A2mRNAレベルの間の関連がないことがわかった[Lago-Leston et al 2009, van der Deure et al 2000]。
病的アレル変異 70以上の変異がSLC16A2で同定されている。報告された変異は遺伝子のコードされた全領域にわたって分布している。全遺伝子や遺伝子内欠損、フレームシフト変異、ナンセンス変異、スプライス変異、ミスセンス変異を含む。機能的研究によってミスセンス変異の多くの病原性を確かめられてきた。特に興味深い変異は、c.1834delCで、自然なストップコドンをバイパスする結果となり、65アミノ酸のMCT8蛋白が長くなって、おそらく13の膜貫通型ドメインの増加がおこる[Maranduba et al 2006]。
Table 2 このGeneReviewで論議したSLC16A2 アリル変異
変異の分類 | DNA ヌクレオチド変化 (別名 1) |
蛋白アミノ酸変化 (別名 1) |
参考シークエンス |
---|---|---|---|
良性 | c.319T>C rs66474762 |
p.Ser107Pro | NM_006517.3 NP_006508.1 |
c.1095A>T rs12849161 2 |
p.(=) 3 (p.Pro365Pro) |
||
病原性 | c.581C>T | p.Ser194Phe | |
c.1301T>G | p.Leu434Trp | ||
c.1475T>C | p.Leu492Pro | ||
c.1501_1503del (1497_1499delCTT) |
p.Phe501del | ||
c.1703T>C | p.Leu568Pro | ||
c.1835delC (1834delC) |
p.Pro612GlnfsTer68 (Pro612fsTer679) |
自然遺伝子産物 SLC16A2は2つの翻訳開始場所があり、それらは613アミノ酸か539アミノ酸(NP_006508.2 )を作り出す。これらのMCT8蛋白の両方とも12の推定される膜貫通ドメインを含む。
異常遺伝子産物 MCT8特異的甲状腺ホルモン細胞膜輸送障害はMCT8蛋白の機能喪失という結果となる。最も病的な変異はMCT8輸送の活性低下か完全な不活化を引き起こす[Friesema et al 2006]。これは神経での甲状腺ホルモン取り込みを減らし、神経学的表現型をおそらく引き起こす。いまだに知られていない他の機構については否定できない。
原文 MCT8-Specific Thyroid Hormone Cell-Membrane Transporter Deficiency