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プロテウス症候群
(Proteus Syndrome)

Gene Reviews著者:  Leslie G Biesecker, MD and Julie C Sapp, ScM, CGC.
日本語訳者: 吉村祐実(翻訳ボランティア),和泉賢一(札幌医科大学医学部遺伝医学、文部科学省NGSDプロジェクト)

Gene Reviews 最終更新日: 2012.8.9.日本語訳最終更新日: 2017.8.18.

原文 Proteus Syndrome


要約

疾患の特徴 

プロテウス症候群は全ての胚葉の組織の進行性,体節性または斑状の過成長を特徴とし,骨,皮膚および脂肪ならびに中枢神経系を冒すことが最も多い.プロテウス症候群 患者のほとんどは,出生時にごく僅かに症状が認められる,または全く症状が認められない.幼児期に症状が急速に進行する,または症状が始まり,小児期に容赦なく進行し,重度の過成長が見られ,外観の変形を引き起こす.本疾患は,多様な腫瘍や肺合併症および深部静脈血栓および肺塞栓症といった素因とも関連がある.

診断・検査 

プロテウス症候群は3つの一般的特性および特異的な症状チェックリストを含む臨床基準に基づき診断される.診断基準を満たす患者の90%超にAKT1の体細胞変異モザイクが特定されている.

臨床的マネジメント 

症状の治療:
主な問題は過成長の管理である.治療方法は骨の線形の成長を遅らせるか停止させるための多様な整形外科の手法を含めた方法がある(側弯症などの骨格の変形の矯正,深部静脈血栓症,肺塞栓症のモニタリングおよび治療,実質性肺疾患,拘束性肺疾患のモニタリングおよび治療,皮膚症状の管理,特に,大脳様の結合組織の母斑,発育遅延に対する発育上の治療または特別な教育).

二次合併症の予防:
 全ての器官または組織が冒される可能性があり,二次合併症は多岐にわたる.
経過観察:各患者の症状に合わせてモニタリングをすべきである.治療歴および理学的検査による腫瘍の発生のルーチンのモニタリング; 定期的な画像診断は適応とされない.

遺伝カウンセリング 

これらの著者が把握している臨床的に確認されたプロテウス症候群の患者は全てc.49G>A (p.Glu17Lys).の特異的かつ新たな変異に対する体細胞モザイクを原因とする単一のケースである.非モザイク,すなわちAKT1 c.49G>A の生殖細胞変異は,初期発生において致死的であると仮定される.罹患者の子に対するリスクは不明である.しかし,子をなした罹患者は非常に少ない.したがって,罹患児の両親に対するリスクおよび生殖する罹患者に対するリスクは,一般的集団と比べて増加しない.プロテウス症候群は遺伝しないため,出生前検査は適用とならない.


診断

プロテウス症候群 (PS) は典型的徴候を伴う患者の臨床的所見に基づき診断可能である.分子的遺伝学的検査はこれらの患者の確定診断に有用であり,臨床的所見が明瞭ではない,または軽度の所見を有する患者の診断を確定するのに有用である.

臨床的診断

主な所見は以下のとおりである.

歪曲,進行性の過成長,PSの特徴的な所見はほとんどの過成長症候群とかなり識別される.典型的に,PSの骨格の過成長は生後6ヵ月〜18ヵ月までは認められず(出生前に骨格過成長があれば、PSとは異なるようである),遅くて12歳頃発症する.それに対し,ほとんどの他の過成長症候群は均整のとれた過成長である(全身の骨格形成の保存).PSにおける重要な所見として,骨格構造の歪みがある.これは非常に重度であり,PSに冒された骨は単独では形が認識できない.過成長では小児期に急速に進行し,脚長差20cmという報告例がある.90度を超える脊椎側弯症は珍しくない.すべての骨が罹患しうる.

大脳様の結合織母斑(CCTN)はほとんどのPS患者で見られ,密接な特徴的症状である.CCTNは結合組織性母斑の特異な型であり最も多く認められ,多い方から順に足底,手,腋窩,耳および涙点などに発症する.真のCCTNは固く,脳の溝に似た,はっきりとしたパターンをもつため,「大脳様」という語彙が使われる.これらを過成長の他の特徴(明らかな足底や手掌の皺)と混同してはいけない.

線状疣贅状表皮母斑(Linear verrucous epidermal nevus(LVEN))は,すじ状,色素性の粗い母斑で,ブラシュコ線の後に現れることが多い.これらは身体のどこにでも現れる.

脂質脂肪調節不全, 

最も多いのは「脂肪腫性の」過成長であるが,PSの患者にしばしばみられる.逆に,PS患者の体の他の部位で脂肪萎縮症が見られることもある.注:高齢のPS患者は典型的な卵形で被包性の脂肪腫を発症することがない.「脂肪腫」という語彙は技術的に正しくないが,広く使用されている.

他の所見として血管の奇形 (最も多いのは,毛細管およびリンパ管), 他の組織の過成長 (最も多いのは脾臓,肝臓,胸腺,腸),腫瘍 (最も多いのは卵巣嚢胞腺腫および髄膜腫),嚢胞性肺変性症および顔面異形症を特徴とする.

  • 次の一般基準のすべてを満たす患者に,本疾患の診断が確定される:
    • 病変のモザイク分布
    • 散発性の発症
    • 進行性

および

  • 特異的基準:カテゴリーA〜Cのいずれか:
    • カテゴリーA から1つ
      または
    • カテゴリーBから2つ
      または
    • カテゴリーCから3つ

プロテウス症候群の確定診断のための特異的基準のカテゴリー

カテゴリーA

  • 大脳様の結合性組織の母斑(Cerebriform connective tissue nevus)

注: Cerebriform connective tissue nevi は脳の表面でみられるような深い溝および渦を特徴とする皮膚病変である.

カテゴリーB

  • 線状表皮母斑.
  • 非対称,不均衡な過成長 (次の項目の1つ以上):

注: 「非対称,不均衡な過成長」と「左右対称で均衡のとれた過成長,または風船様の過成長」とは慎重に区別しなければならない.

    • 四肢
    • 頭蓋骨過形成
    • 外耳道過形成
    • 巨大脊椎異形成
    • 内臓:脾臓/胸腺      
    • 10代以前の特異的腫瘍
    • 両側性卵巣嚢胞腺腫
    • 耳下腺の単形性腺腫

カテゴリー C

  • 脂肪組織の調節不全(以下のうちのいずれか):
    • 脂肪腫性過成長
    • 局所的脂肪低形成
  • 血管の奇形 (以下のうち1つ):
    • 毛細血管の奇形
    • 静脈の奇形
    • リンパ節の奇形
    • 肺嚢胞
  • 顔貌表現型 (以下のすべて):
    • 長頭症
    • 面長
    • 軽微な垂れ目および/または軽微な眼瞼下垂
    • 低い鼻梁
    • 幅広で前傾した外鼻孔
    • 安静時に開いている口

注目すべきは,PSに関する多くの臨床診断の混乱が存在することである[Turner et al 2004].PSは一種類しかないことは明らかであるが,線形母斑,脂肪組織の過成長および血管奇形などの皮膚の症状および皮下の症状に関連する身体の分節性過成長を呈する珍しい疾患である.鑑別診断を参照.

これらの実態の曖昧性を取り除くことは困難であったが,現在では広く受け入れられている:上記の臨床診断基準は,管理および臨床研究のためのカテゴリーに患者を割り当てるために有用であることが証明されている.

プロテウス症候群の臨床的診断基準を満たしている人の90%以上がAKT1 のモザイク体細胞変異を有する.臨床基準を満たしていない人はAKT1に変異が認められない.このことは臨床的診断基準の的中率と有用性を強く裏付けている.

分子遺伝学的検査

遺伝子. AKT1はプロテウス症候群の原因となる変異を引き起こすことが知られている唯一の遺伝子である.

表1.
プロテウス症候群で使用される分子遺伝学的検査の要約

遺伝子 1 検査方法  検出される変異2 検査方法による検出率3
AKT1  標的変異解析  c.49G>A (p.Glu17Lys)   >90% (33/34)4
  1. 表A. Genes および Databases for chromosome locus および proteinを参照
  2. アレル変異の情報に関する分子遺伝学的検査を参照
  3. 適用される遺伝子に存在する変異を検出するために使用する検査方法の検出率
  4. 臨床的に確認されたPS患者において,c.49G>A AKT1変異の体細胞モザイクは,特定された唯一の変異である[Lindhurst et al 2011].

検査結果の解釈

モザイク率が低い場合,検査の感受性および解析に選択された組織標本に依存して,遺伝子変異の検出率は上下する.

検査方法

発端者の確定診断 臨床所見が不明瞭または軽度である患者において,分子遺伝学的検査は臨床基準に合う患者および診断を確立するのに有用である.

これまでに報告されている全てのAKT1 c.49G>A 変異が体細胞性モザイクで,1か所以上の組織の検査が必要である.確実な診断は一般に罹患組織の生検を実施,典型的には皮膚の病変部位のパンチ生検を実施してDNAを解析する必要がある.

罹患者のごく少数 (最近の報告[Lindhurst et al 2011]では,31例中2例しか1つ以上の組織にAKT1 c.49G>A 変異を認めない)しか、末梢血標本にも変異が存在しないことを認識するのは重要である.したがって末梢血標本で変異が特定されない場合でもPSの診断を除外することは難しい.

PSは遺伝しないので,出生前診断は適応とされない.


臨床的特徴

臨床像

プロテウス症候群 (PS) の重篤度は様々である.ほとんどの罹患者は出生時に症状がみられることはほとんどないか全くない.例外として,少数(おそらく5%未満)に最初,PSの症状としてCNS移動障害(CNS migration defect)および遅発型の知的障害と関連性の高い片側巨脳症が認められる.この症状が現れるのは出生前である. 他の罹患者の多くは認知症状が非常に微細であるため,見過ごされることがある.これらの症状はわずかに非対称性である,またはかすかな線状母斑が現れるなどである.
最も多いのは,本疾患症状が初めて現れるのは生後6〜18ヵ月で,非対称性の過成長が発現する;最も多い症状は,足と手であるが,身体のどこにでも生じる.
PS患者の予後は過成長の場所と程度,嚢胞性肺疾患, 片側巨脳症および肺塞栓症などの重大な合併症の有無に基づく.本疾患は極めて変化に富む.予後を確立するのに論文検索は有用でない.報告されている症例は,より重度の症例の確認バイアスを示す傾向にあり,その多くは "プロテウス症候群" の臨床基準に合致しない.

寿命を算出するのは困難であるが,PSの患児の多くは成人患者より長生きするのは明らかである.適切な治療を受けていれば,軽度のPS患者の予後は良好である.

過成長. 

PSにおける過成長は驚くほど重症度が高く進行が速い.部分的な過形成を伴うほとんどの疾患は先天性で均整がとれている.つまり,他の過形成を伴う疾患は,出生時に肢,手または指に症状を呈している.言い換えると,例えば,身体の片側が対側より30%肥大し,肥大した側の部位が生後1年,生後3年の時点で比較すると,対側より約30%過成長している.(特異的疾患のディスカッションについては鑑別診断を参照) .対照的に,PSの過成長は,骨格のほとんどの部分は(片側脳巨大症を除く), 出生時には認められず,おそらく1歳以上で15%、3歳以上で30%、6歳以上は100%過成長して認められる(仮定上の例).一旦,医師がこの現象を真のPS患者で観察すれば,その違いは明らかである.

同様に,過成長がPSによるものかどうかは,単純X線撮影写真によって明確に識別される.PSに冒された骨のうち,特に肢の管状骨,椎体,頭蓋骨は年月とともに,骨と認識できなくなり,歪みを伴う奇異な不規則な石灰化した過成長が見られる.そのような進行性で不規則な骨の変化はPS以外の過成長では珍しい.

急速で重篤な過成長は整形外科的治療では難しい.

皮膚所見.

CCTN病変が幼児で認められることは稀で,通常は小児期に発現し,青年期を通じて進行する.この病変が成人期に進行するのは稀である [Beachkofsky et al 2010].青年期後期には,CCTN病変の溝は清潔にするのが困難なほどの深さになり,悪臭を伴う.

線状の表皮母斑および血管の奇形は,生後1か月で認められることが最も多く,一般に時を経るにつれて安定する[Twede et al 2005].

脂肪腫性組織の過成長/脂肪組織萎縮.

脂肪組織の過成長を最も多く呈するのは幼児の時期である.脂肪組織の過成長は,小児期および若年成人期を通じて新規の箇所で発現し続ける.
同様に,PS患者の多くは著しい局所的脂肪組織萎縮ならびに局所的な脂肪組織過成長および脂肪組織萎縮を呈する.

血管の奇形.

PS患者の多くは皮膚血管奇形および顕著な静脈パターンまたは静脈瘤様パターンを呈する;大きく複雑な血管の奇形が認められる患者もいる.血管奇形が存在しない部位に,PSの症状である骨格などの過成長が顕著な患者が存在する(他の過成長の状態とは異なる).

重要なこととして,PSでは動静脈(AVM)の奇形は稀である.

遺伝子型と臨床型の関連

プロテウス症候群は唯一の遺伝子AKT1のモザイク変異(p.Glu17Lys)によって引き起こされることが明らかになっている. 未公表のデータでは,本疾患の重篤度は細胞型および罹患組織の変異モザイクの程度と相関すると示唆されている.

浸透率

遺伝しないモザイク状態の遺伝疾患において,不完全浸透は評価できない.

命名

他の記述語としてエレファントマン病が使用される.この記述語は,プロテウス症候群を患っていたと考えられるMr. Joseph Carey Merrickに基づく[Cohen 1987]. この記述語を歴史的な目的以外で使用することは推奨されない.

罹患率

プロテウス症候群は非常に稀な疾患である. 罹患率を計算するのは難しいが約100例が著者に知られている[Biesecker, personal observation]. 非常に簡単に推定すると,PSの罹患率は1:1,000,000〜1:10,000,000人である.また,あまり明確な区別のない分節性の過成長の患者はPSの患者より多い.

プロテウス症候群は汎民族的である.


遺伝学的関連(アレル)疾患

ATK1遺伝子の体細胞の変異に関連するその他の表現型は,腫瘍(主に乳癌) のみで,その腫瘍の少数にAKT1 p.Glu17Lys体細胞変異が見られる.

生殖細胞系のAKT1 p.Glu17Lys変異は早期発生において致死性であると仮定される[Happle 1986]. 動物実験のデータによると,生殖細胞系AKT1 p.Glu17Lys変異を有する配偶子がヒト受精胚を誘導できる場合,生殖細胞系AKT1 p.Glu17Lys変異を有する胎芽は,初期胎生致死を起こすと示唆されている.


鑑別診断

診断および臨床的特徴で言及されているように, PSに関する確定診断で混乱が見られる.以下の疾患はPSとの間に共通した特徴を有するが,PSの自然歴 (つまり,通常は生後に発症) および症状(例えば,不均衡および進行性の骨の歪み, CCTN)の両方が,臨床診断において重要な違いとなる.

PTEN過誤腫症候群PTEN hamartoma tumor syndrome, (PHTS) )は,非対称性の過成長,大頭症,皮膚血管の奇形および腫瘍に罹患しやすい多様な疾患である.この興味深い独特な疾患はPSと容易に区別可能であるが,疾患の全体像は明らかになっていない.表現型のサブタイプは,Type II segmental Cowden 症候群[Happle 2007] または SOLAMEN 症候群 [Caux et al 2007]として記述されるが,これは,表現型が分節性となるPTENの生殖細胞系変異と2番目のPTEN変異による体細胞モザイクの結果である.

PHTSでは,PSの過成長とは臨床的・分子的に異なる線状母斑および血管の異常を伴う成長異常が認められる.PHTSは常染色体優性の遺伝形式であるがプロテウス症候群は遺伝しない.したがって,PTEN過誤腫症候群との遺伝的関連性はかなり低く,この2つの疾患の患者の明らかな違いについてさらに議論が必要である.

CLOVE(S)症候群. CLOVEは,先天性の脂肪腫性の過成長,血管奇形および表皮母斑の略語である.2007年に提示され, 以前にはPSの別の分類であると考えられていたが,現在は別の疾患であると提唱されている[Sapp et al 2007].本疾患は,本来,主に構造の保たれた出生前の非対称的な過成長を呈する.患者は脚やつま先が外広がりになることが多い

血管の奇形が最も多くみられるのはリンパ管‐静脈奇形と皮膚の小疱形成および湿潤である.過成長の脂肪性の性質は,正常な脂肪の筋膜面および線状の表皮母斑内の脂肪の過剰増殖を特徴とする.一部の患者では中枢神経に異常が認められる.PIK3CAに関連した分節的な過成長(PIK3CA-Related Segmental Overgrowth)を参照.

片側性過形成

孤発例または他の臨床症状の1つに関連すると考えるべきである(Cohen et al [2002]のレビューを参照). さらに特異的な片側性過形成では多発性脂肪腫を伴う[Biesecker et al 1998].この先天性で,主に進行性でない片側性過形成は,時にプロテウス症候群と混同される.

クリッペル・トレノーニイ(Klippel-Trenaunay)症候群は過成長および血管の奇形を呈する疾患である.しかし,この疾患において,過成長は普通同側性であり血管の奇形も認められ,典型的な血管の奇形は外側静脈の奇形であり骨の過成長が全体的にみられるが,「プロテウス症候群の患者では進行性に認められる歪曲する部位の骨の過成長」はまったく見られない [Cohen 2000].


臨床的マネジメント

初回診断後の評価

プロテウス症候群と診断された患者の疾患の程度を確認するのに以下の評価方法が推奨される[Tosi et al 2011]:

詳細かつ包括的な(全身,背骨および手の)整形外科的評価

過成長の範囲および重篤度のベースライン検査としての骨格の計測
著しい側弯症を有する患者に対するCTスキャン,可能であれば3次元再構築.通常,椎体が進行性に歪むため,この検査は手術の計画を立てる上で非常に有用である.

嚢胞性肺疾患の症状または徴候の見られる患者の胸部に関しては,呼吸器科での診察,肺機能検査および高分解能CTが非常に有用である.その他の画像診断も非常に役立つが,検査時の臨床症状および既往歴と合わせて診断するべきである.CT,MRI,超音波検査は、この疾患の評価に非常に役立つ.

症状の治療

複雑で多臓器にわたる疾患であるため,PS患者は,個人の具体的な必要性に合わせた多面的な臨床的アプローチが有益である.

プロテウス症候群の患者の多くにとって過成長は継続中の問題である.治療は複雑で,過成長の特性に高度に依存するので,患者によって治療法は大きく異なる.

管状骨の過成長に対して,骨端固定術を管理の中心としなければならない.著者がプロテウス症候群の患者にとって有害であると見出した処置は,正常な(短い方の)手足の骨拡張術法(イリザロフ法)である.この複雑な問題の詳細については,最近のレビューおよびカンファランスレポートを参照 [Tosi et al 2011].

PSの骨格の過成長によって著しい生体力学妥協および機能的妥協が生じる.このため,進行中および包括的なリハビリテーション医学ケア,例えば身体的療法,作業療法が多くの患者にとって重要である.さらに,PS患者の多くは,足の長さが異なる,または足底のCCTN病変のため,個人に合わせて設計された個人に合わせてデザインされた履物または装具が必要となる.

足底に大きなCCTN病変を有するPS患者は,定期的に皮膚科で治療を受ける必要があり,悪臭の管理に注意を払わなければならない(青年期後期の患者では溝が非常に深いため,清潔に保つのが難しい場合がある).また, 他の問題として褥瘡が挙げられる.また,足底の大きなCCTNは,合う靴がないといった問題および上記で述べた歩行に関する介入が必要となることが多々ある.

脂肪が過成長している部位の脂肪組織の管理は難しい.(脂肪腫とは対照的に)その部位の脂肪の過成長が被包に囲まれていないので組織が分離しておらず切除が難しく,手術で量を減らしても再増殖することが多いためである.一部の患者では,血管新生が盛んな脂肪腫性の過成長によって手術の結果、コントロールの難しい出血や、慢性的なリンパ漏出が起こることがあるので,著者らは一般に脂肪吸引をしながら外科的開胸アプローチを実施することを推奨する.

深部静脈血栓(DVT) および 肺塞栓症(PE).

プロテウス症候群の最も緊急で生命を脅かす合併症はDVTおよびPEである[Slavotinek et al 2000]. 小児患者では,このような合併症が起きるのは稀なので,診断が遅れることがある.

著者らは,DVT(例えば, 触知できる皮下の縄状の腫瘤, 腫脹, 紅斑, 疼痛および遠位静脈性うっ血)またはPEの症状(例えば,息切れ,胸痛および喀血を含む咳)が現れた患者には,緊急に診察を受けることを推奨している.PEの患者は無症候性のこともあるため,DVTを伴う患者は,症状の有無に関係なくDVTの検査を受けることが推奨されている.

DVTの評価.

心肺に病変がない場合, dダイマー検査および/または超音波検査を考慮する.

PEの評価.

高解像度胸部CT(スパイラルCT) が推奨される.換気/血流シンチグラフィを用いた核医学検査が適切なケースもあるかもしれない.

DVT/PEの治療は,その病態の抗凝固ガイドラインを参照すべきである.
著者らは,DVT / PEを起こす可能性のある手術または他の処置を受けている患者に対する血液学的検査や予防的抗凝固剤投与のコンサルトを推奨している.

嚢胞性肺疾患.

稀であるが,一部のプロテウス症候群が嚢胞性肺疾患に罹患し, 他の疾患の症状と同様に驚く速さで進行しうる.これらの患者の肺の評価が推奨される.また,一部の症例では大きな嚢胞性病変の切除の適応となる.側弯症の嚢胞性疾患は適切な管理をするのが重要かつ複雑な難題となりうる.
社会心理学的問題.  機能的妥協に加え,PSにおける骨格及び結合組織の過成長は,一部の患者においては美観が損なわれ多くの家族にとって重大な懸念となる[Turner et al 2007]. この症状は進行性で,重症度は患者により大きく異なり医師及び家族に不確実性を生み出す.多くの患者,その家族,さらに遺伝学的カウンセリング,社会心理学的カウンセリングにとって,極端に稀でPSと同様の慢性状態に対処することは,ほとんどの例で確かに必要である.
PSは非常に稀な疾患であるが,しっかりした支援団体の基盤が存在し,多くの家族はこの支援グループがとても役立つと認識されている(Resourcesを参照).

経過観察

骨格,肺,軟部組織および他のPSの症状に対する経過観察の計画は,各患者の必要性に応じて作成しなければならない.
様々な腫瘍の素因があるため(ほとんどは良性腫瘍),プライマリ・ケア医療従事者によって,治療歴および検査より、定期的な検診で患者をモニタリングしなければならない.

発症リスクのある血縁者への検査

プロテウス症候群(PS)は遺伝しないため,血縁者はリスクが増加せず,評価を必要としない.

研究中の治療法

種々の疾患に対する臨床試験についてはClinicalTrials.govを参照のこと.

注: 本疾患の臨床試験が行われていないことがある.


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝学的検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的、倫理的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

プロテウス症候群 (PS) は遺伝しない.

母子伝達および子が発症した例は確認されていない.

分子的データによると,罹患者はすべて同じAKT1 変異 (c.49G>A)がモザイク状態であるが,これは受精後,胎芽細胞の1つの細胞において変異が生じたことを示唆する.

患者家族のリスク

発端者の両親

  • PSの体細胞変異の機序を考慮すると,真のプロテウス症候群の子供の親で,著しく,はっきりとした症状を示した例は示されておらず,また,臨床所見が予測された例もない.

発端者の子

  • プロテウス症候群の体細胞変異の機序を考慮すると,罹患した親族のリスクは一般集団におけるリスクと同じであると推測される.

発端者の子孫

  • PSの成人患者における生殖結果のデータは非常に少ない.PSの母子伝達はない.

発端者の他の家族

  • 他の家族に対するリスクは一般集団と同じである.

遺伝カウンセリングに関連した問題

明らかに新規のモザイク変異である家族における考慮.患者数は増加しているが,この遺伝子の機序が原因として知られる数少ない疾患であるため,この疾患は比較的新しい臨床遺伝学分野である.

プロテウス症候群の再発リスクに関するカウンセリングでは,リスクのない妊娠はありえないが,一般集団と比較して再発リスクは増加しないことを,すべてのエビデンスが示唆していることを強調する必要がある.

家族計画 

  • 遺伝学的リスク評価や出生前検査の可否などについての議論は妊娠前に行うのが望ましい.
  • 罹患している若年成人に対して遺伝カウンセリング(子への潜在的リスクや生殖)の提供は適している.

DNAバンク は主に白血球から調製したDNAを保存して将来利用することを想定して保存しておくものである.検査技術や遺伝子,変異あるいは疾患に対するわれわれの理解が将来さらに進歩するものと考えられるので, 罹患者のDNA保存が考慮される.DNAバンクは特に分子遺伝学的検査の感度が100%でないような状況においてはことに重要である.

出生前診断

超音波検査.

非典型的プロテウス症候群 (すなわち片側巨脳症の稀な出生前診断) は,出生前の超音波検査を使用して発見可能である.ただし,このようなケースを著者は知らない.

分子遺伝学的検査

.PSは典型的に出生前に発症せず,遺伝しないため,出生前検査は適応されない.
出生前に発症する片側巨頭症の孤発例における AKT1 p.Glu17Lys 変異の出生前診断を考慮すると,1つの理論的(および推論的)例外となる可能性がある.

AKT1 p.Glu17Lysの遺伝子検査あるいは個別の出生前検査を提供する施設で実施可能である.

着床前診断 (PGD)

著者らはプロテウス症候群の着床前診断の役割を認識していない.


更新履歴

  1. Gene Reviews著者:  Leslie G Biesecker, MD and Julie C Sapp, ScM, CGC.
    日本語訳者: 吉村祐実(翻訳ボランティア),和泉賢一(札幌医科大学医学部遺伝医学,文部科学省NGSDプロジェクト)
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