SALL4関連疾患
(SALL-4 Related Disorders)

[Includes: Acro-Renal-Ocular Syndrome, Duane-Radial Ray Syndrome/Okihiro Syndrome, SALL4-Realted Holt-Oram Syndrome]

Gene Review著者:Jürgen Kohlhase, MD
日本語訳者: 小原令子,羽田 明(千葉大学医学部附属病院遺伝子診療部)
Gene Review 最終更新日: 2008.3.12 日本語訳最終更新日:2013.4.8

原文 SALL-4 Related Disorders


要約

疾患の特徴 

SALL4関連疾患にはデュアン-橈側列症候群(DRRS: Duane-radial ray syndrome、オキヒロ症候群)と肢端-腎-眼症候群(AROS: acro-renal-oculuar syndrome)が含まれるが、この2つは以前、別疾患と考えられていた。DRRSでは片側性または両側性のデュアン異常と橈側列形成異常が特徴的症状であるが、この橈側列形成異常には、母指球形成不全か母指の低形成または無形成のいずれか、橈骨の低形成または無形成、前腕の短縮と橈骨偏位、三指節母指、重複母指(軸前多指症)などが含まれる。AROSは橈側列形成異常と腎奇形(中等度の回転異常、位置異常、馬蹄腎、腎形成不全、膀胱尿管逆流、膀胱憩室)、眼欠損症、デュアン異常などが特徴的症状である。まれに臨床診断では典型的ホルト-オーラム症候群(症状は橈側列形成異常と心奇形のみ)がSALL4変異を原因とする場合もある。さらに臨床症状としては感音性難聴と伝音性難聴のいずれかまたは両方が含まれる。.

診断・検査 

SALL4関連疾患の原因遺伝子はSALL4遺伝子のみである。診断は臨床所見とSALL4変異の検出に基づいて行なわれる。SALL4全翻訳領域の塩基配列と遺伝子欠失を調べる検査は、臨床的に利用可能である。

臨床的マネジメント 

症状の治療:デュアン異常による斜視、前腕の形成異常、先天的心疾患には外科的手術の適応がある;必要に応じて補聴器を使用する;身体発育の遅れがある子どもには成長ホルモン治療の適応がある。

経過観察腎奇形のある患者は、診断時に腎機能が正常である場合でも、腎機能の定期的チェックを行なう。

回避すべき薬剤/環境腎機能障害に対しては腎臓に負担のかかる薬剤を、聴力障害がある場合は内耳に影響する薬剤を避けるべきである。

遺伝カウンセリング 

SALL4関連疾患は常染色体優性形式で遺伝する。患者の約 40%-50%は新生突然変異によって発症する。本症が子どもに伝わる確率は50%である。リスクのある妊娠に際しての出生前診断は、家系内の患者において原因変異が特定されている場合に可能である。


診断

臨床診断

SALL4関連疾患は多様な症状を示すため、以前は次に挙げる別々の疾患に属するものと考えられていた:デュアン-橈側列症候群(DRRS)またはオキヒロ症候群;肢端-腎-眼症候群(AROS) [Kohlhase et al 2003];まれではあるがホルト-オーラム症候群。

デュアン-橈側列症候群/オキヒロ症候群 臨床的に次のような症状がある場合に、この診断名がつけられる:

肢端-腎-眼症候群 臨床的に次のような症状がある場合に、この診断名がつけられる:

ホルト-オーラム症候群 まれに臨床診断では典型的ホルト-オーラム症候群(すなわち橈側列形成異常と心奇形があるだけで他の症状は何もない)がSALL4変異を原因とする場合もある。

分子遺伝学的検査

GeneReviewsは,分子遺伝学的検査について,その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り,臨床的に実施可能であるとする. GeneTestsは研究機関から提出された情報を検証しないし,研究機関の承認状態もしくは実施結果を保証しない.情報を検証するためには,医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない.―編集者注.

遺伝子 

デュアン-橈側列症候群/オキヒロ症候群(DRRS)と肢端-腎-眼症候群(AROS)の原因遺伝子はSALL4遺伝子のみである。

臨床利用

臨床検査

表1 SALL4関連疾患における分子遺伝学的検査の概要

遺伝子 検査方法 検出される変異 検査による変異検出頻度1 実施可能性
SALL4 塩基配列解析 塩基配列のバリアント2 ≦80% 臨床的に実施可能 Testing
定量的リアルタイムPCR エクソンの欠失または遺伝子の全欠失 10%-15%
FISH 遺伝子の全欠失 未知 

検査の実施に関してはGeneTestsTM Laboratory Directoryを参照のこと。Gene Reviewsは、分子遺伝学的検査について、その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTestsTM Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り、臨床的に実施可能としている。GeneTestは研究機関から提出された情報の確認や、研究機関の承認状態もしくは実施結果の保障は行なわない。情報を承認するためには、医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない。

  1. 変異検出に用いられる検査方法の有効性は、この遺伝子に限定したものである。
  2. 塩基配列解析によって検出される変異の例としては、遺伝子間領域の小さな欠失/挿入、ミスセ  ンス変異、ナンセンス変異、スプライス変異が含まれる。

検査結果の解釈

検出されうる変異1

変異が検出されない場合に考えられる可能性

注:GeneReviewsの方針として、GeneTestTM Laboratory Directoryに掲載されている検査機関おいて臨床的実施可能な検査については、検査可能として記載してある;しかしこのことは、必ずしも著者、編集者、査読者がこれらを推奨しているということではない。

遺伝的に関連のある(同一アレルの)疾患

SALL4遺伝子変異と関連のある他の表現型は何も知られていない。


臨床像

自然経過

診断の項に記載した臨床的特徴に加えて、SALL4関連疾患の臨床所見として次のようなことが含まれる:

SALL4変異がある23家系中の69人については、その13%がもともとオキヒロ症候群として記載されていたデュアン異常、橈側列形成異常、感音性難聴の三兆候を現していた;45%がデュアン異常と橈側列形成異常をもっていた;21%が橈側列障害のみをもっていた。82.6%の家系では少なくとも一人はデュアン異常を、48%の家系では少なくとも一人が難聴をもっていた。橈側列形成異常はSALL4変異のある全家系に見られ、この遺伝子変異をもつ人の91.3%に観察された。またこの遺伝子変異をもつ人の65%の人にデュアン異常が、16%に難聴があった。

遺伝子型と臨床型の関連

ほとんどの変異がその家系に特有か、または同じであっても独立した3家系以上にわたって見ることはない。大きな欠失変異(他の遺伝子には及んでいない変異)による表現型は、ほぼすべてがトランケーションしてしまうような変異で起こる表現型と大差なく、これは結果的にナンセンス変異依存mRNA分解機構が生じるためと予測される。

これまでに特定された唯一のミスセンス変異(c.2663A>G)は正中線欠損(単上顎切歯、下垂体低形成、両眼近接症)と関連があり、SALL4タンパク質のDNA結合能が増加する結果と推測される [Miertus et al 2006]。

ナンセンス変異依存mRNA分解機構を逃れると推測される唯一のトランケーション変異は、報告家系の中の一人について観察されたもので、広範囲にわたる臨床的多様性と重度の片側顔面萎縮と関連があった[Terhal et al 2006]。

オキヒロ症候群と発達遅滞の両方がある人たちは、SALL4とその近隣遺伝子を含むより大きな欠失変異をもっているようである[Borozdin et al 2007]。発達遅滞/知的障害とSALL4遺伝子内の変異の関連性については、これまで観察されていない。

浸透率 

浸透率は約95%であるが、変異によってはそれより低くなるであろう。

(家系図情報から)SALL4変異をもっているはずだが発症していない人がいる家系、またはSALL4変異をもっていることが証明されているがSALL4関連疾患の兆候が全くない人がいる家系は、2家系報告されている[Hayes et al 1985,Kohlhase et al 2002]。しかし、後者の家系においては、変異がある人全員の症状は中等度のものであった(すなわち母指の低形成やデュアン異常のみであった)。

2004年の時点で変異のあることがわかっていた SALL4家系の中の69人について、臨床的に何も症状がなかったのは一人だけ(1.4%)であった「Kohlhase私信」。

促進現象

継続世代において明らかに重症度が増していくというのは、確認バイアスであると考えられる。

病名

橈側列障害を伴うデュアン異常についての初期の報告のひとつにFerrellらのものがある(1966)(初期の報告はOMIM 607323に引用されている)。他の家系についても、Temtamyら(1975)、Okihiroら(1977)によって報告されている。TemtamyとMcKusick(1978)はこの症候群をデュアン/橈側異形成症候群と名付けた[DR症候群、後にデュアン-橈側列症候群(DRRS)と改められた]。オキヒロ症候群という診断名はHayesらによって初めて使われた(1985)。

「肢端-腎-眼症候群」は、1984年に、母指形成異常、腎奇形、眼球欠損、眼瞼下垂、デュアン異常を伴う常染色体優性遺伝の一家系について記載された際に使われた診断名である[Halal et al 1984]。

頻度 

発生頻度はわかっていない。その一因として、多くの国において、今日に至るまでSALL4関連疾患がホルト-オーラム症候群と区別されていないことが挙げられる。


鑑別診断

本稿で扱われる疾患に対する遺伝学的検査の実施可能性に関する最新情報は,GeneTests Laboratory Directoryを参照のこと.―編集者注.

ホルト-オーラム症候群 SALL4関連症候群は主にホルト-オーラム症候群との鑑別診断になる。この疾患は次のような症状を特徴とする。橈骨や母指または手根骨の上肢形成異常;個人または家族歴においてみられる先天的心奇形。通常は二次孔型の心房中隔欠損(ASD)や心室中隔欠損(VSD)であり、特に筋性部中隔に起こる;そして心臓の伝導障害。ホルト-オーラム症候群はTBX5の変異によって起こる。ホルト-オーラム症候群とSALL4関連疾患は同じような橈側列形成異常を示すが、軸前多指症はSALL4変異においてのみ起こり、TBX5の変異では起こらない。SALL4変異とTBX5の変異に関わっている心疾患は同様なものであるが[Borozdin et al 2004a]、TBX5変異ではASDがVSDより一般的であり、SALL4変異ではその逆となる。この両遺伝子の変異は共にファロー四徴症のようなより重症度の高い心疾患を起こしうるが、心臓の伝導障害は、TBX5変異に比べるとSALL4変異ではあまり観察されていない。典型的な橈側列形成異常と腎臓または泌尿器系の奇形(特に腎臓の位置的異常)があるがデュアン異常がない人については、TBX5変異よりもSALL4変異をもっている方が多いようである。

タウンズ-ブロックス症候群 この症候群は、異形成耳、鎖肛、母指三指節症/軸前多指症の3症状を特徴とする[Powell & Michaelis 1999]。タウンズ-ブロックス症候群はSALL1遺伝子変異と関連している。まれであるが、オキヒロ症候群とタウンズ-ブロックス症候群の症状が完全に重なる症例が報告されている [Kohlhase et al 2002,Borozdin et al 2004a] 。デュアン異常がありSALL1変異が見つからなかった場合には、SALL4の遺伝子検査を考えるべきである。これまでSALL1変異のある人に橈骨形成不全が観察されたことはないので[Kohlhase 私信]、この症状が表れていることは、他のすべての症状がタウンズ-ブロックス症候群を示唆する場合であっても、SALL4変異の存在を示唆していることになる。

ファンコニ貧血 橈側列形成異常のある人がファンコニ貧血も発症している場合があり得る。ファンコニ貧血には骨格異常、心疾患、泌尿生殖器および腎臓の異常、性腺機能低下症、耳の異常、難聴、眼の異常、鎖肛、成長遅延、色素異常、発育遅延などの多様な合併症状がありうるファンコニ貧血のある人は、しばしば血球数の異常や汎血球減少症を伴う進行性骨髄形成不全を示すこともある。白血病や固形腫瘍についてもリスクは有意に高い。SALL4を含む隣接遺伝子欠失の人は別として、発育遅滞はSALL4関連症候群の特徴ではなく[Kohlhase 私信]、デュアン異常はファンコニ貧血の特徴でもない。典型的オキヒロ症候群/AROSの症状がない人で橈側列形成異常や他の器官の異常が認められる人については、適切な検査(すなわちDEB[diepoxybutane]やmitomycin Cのいずれかまたは両方を添加した培養液で細胞培養を行い、染色体異常[断裂、放射像]を調べること;詳細は”Fanconi Anemia”の章を参照)によってファンコニ貧血であるかどうかを評価すべきである。

血小板減少-橈骨欠損 (TAR) 症候群  TAR症候群の人で橈骨形成不全をもつ人がいるが、SALL4関連疾患の場合と違って、母指が形成異常となることはあっても欠損することはない。血小板減少症はSALL4関連疾患で起こることはあまりない;TAR症候群の場合でも、一過的に観察されるに過ぎない症状であろう。TAR症候群では他の奇形も起こるかもしれない[Greenhalgh et el 2002]。TAR症候群は染色体1q21.1の微細欠失が原因で起こり、これに関与するとされる修飾因子については未だ特定されていない。

関節拘縮症-眼筋麻痺症候群 この症候群において、デュアン異常は難聴や筋消耗、拘縮を伴うが、上肢橈骨形成異常とは関係がない。数家系の中の1つを調べた限りでは、SALL4変異は見つからなかったとの報告がある[McCann et al 2005]。

ワイルダーヴァンク症候群 ワイルダーヴァンク症候群では、先天性感音性難聴、クリッペル-ファイル異常、デュアン異常がある。この疾患はほとんど女性のみに起こる。ワイルダーヴァンク症候群の原因はわかっていない。ワイルダーヴァンク症候群の診断基準に見合う何人かの人について調べた限りでは、SALL4変異は見つかっていない[Kohlhase 私信]。

サイドマイド胎芽症 1957年から1962年にかけて、妊娠期の吐き気や不眠症に対してサリドマイドを処方され、それを服用した母親から奇形児が生まれた。今日では、サリドマイドは多発性骨髄腫、HIV、ハンセン病などの治療に処方されている。妊娠期のサリドマイド投薬による胎児奇形には、無肢症あざらし肢症、橈骨低形成、外耳異常(無耳症、小耳症、小耳介を含む)、顔面神経麻痺、目の異常(無眼球症、小眼球症、デュアン異常、脳神経の誤った投射によって起こる“ワニの涙”)、先天的心臓欠陥が含まれる。消化管、尿路、生殖器の形成異常も起こる。出産時または出産後間もなくの死亡率は約40%である[Miller & Stromland 1999]。サイドマイド胎芽症と診断された人が、ホルト-オーラム症候群や SALL4関連疾患で観察されるような橈側列形成異常と他の合併奇形(デュアン異常または腎臓欠陥)のある子どもをもった場合には、TBX5変異よりもSALL4変異の方がより検出されるであろう[Kohlhase et al. 2003]。

臨床医への注: この疾患の患者に特化した「同時診断」については、相互的診断確定の支援ツールソフトSimulConsultを参照するとよい。ここでは患者の所見に基づいた鑑別診断を提供している(要登録、アクセス制限あり)。


臨床的マネジメント

最初の診断時における評価

SALL4関連疾患と診断された人の病状を把握するには、次のような点について評価することが推奨される:

症状に対する治療

デュアン異常 強度の斜視は手術が必要であろう

橈側列形成異常 重度の前腕奇形は外科的手術が必要である、たとえば母指の無形成に対しては機能的に働く指をつける(再建)

心奇形 重度の先天的心奇形については外科的手術を必要とする

聴力欠損 補聴器具が必要であろう

成長発達遅滞 成長発達遅滞がみられる子どもについては成長ホルモン治療を考えるべきであろう

経過観察

たとえ最初の検査で腎臓機能が正常だったとしても、腎臓に異常がある人は定期的に腎機能をモニターするべきである。

回避すべき薬物/環境

腎機能や聴力に問題がある人は、腎臓の浄化機能や内耳に影響する薬剤を回避する。

リスクのある親族の検査

ほとんどの変異について浸透率の低下はないと思われるが、家族計画の前に、家系内において未発症の人は分子遺伝学的検査を考えてもよいだろう。明らかな発症を呈していなくても、遺伝子変異をもっているのならば、聴力の問題、腎疾患、眼科的疾患、心奇形について臨床的評価を受ける必要があるので、患者の子どもは家系内で受け継がれている遺伝子変異について検査を受けておいた方がよい。

遺伝カウンセリングを目的としたリスクのある人の遺伝子検査については、「遺伝カウンセリング」の項を参照のこと。

研究中の治療法

様々な疾患や病態に対する臨床試験情報へアクセスする場合には、Clinical Trials.govを参照のこと。 注:現在この疾患についての臨床試験はないであろう。

その他

遺伝クリニック 遺伝専門医のいるクリニックでは、患者やその家族に対して、自然経過、治療、遺伝形式、患者家族の遺伝的リスクについての情報を提供してくれるであろう。また患者向けの情報資源についても教えてくれるであろう。Gene Tests Clinic Directoryを参照のこと。

患者会について参照のこと 疾患に特化した、または複数疾患にまたがった支援団体の会があり、これらの団体は患者や家族に対して、情報や支援、他の患者との交流の場を提供するために設立されている。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

SALL4関連疾患は常染色体優性形式で遺伝する。

患者家族のリスク

発端者の両親

発端者の同胞 

発端者の子 SALL4関連疾患患者の子ども一人一人について、変異が伝わる確率が50%ある。

発端者の他の家族 家系内の他の家族における遺伝リスクは、発端者の両親の遺伝的状況に依存する。もし両親のどちらかが発症しているか、またはSALL4変異をもっているならば、その父方または母方の家族にはリスクがある。

遺伝カウンセリングに関連した問題

明らかに新生突然変異をもった家族に対して 常染色体優性形式の変異をもつ発端者の両親どちらもが、疾患原因となる変異を有していないのならば、発端者は新生突然変異をもっていることになる。しかし父親/母親が違う場合(生殖補助医療の場合)や、公になっていない養子縁組など、非医学的なところで説明が可能かどうかについても検討するのがよいだろう。

家族計画 

遺伝的リスクの算定や出生前診断の利用についての議論は、妊娠前に行なわれるのが最も好ましい。

DNAバンキング

DNAバンキングとは、将来的利用を想定してDNAを保存しておく(多くの場合は白血球から抽出する)ことである。検査技術や、我々の遺伝子、変異、疾患に関する理解が将来的によい方向に変わっていくことも考えられるので、患者のDNAを保存しておくことは考慮されるべきことである。DNAバンキングを提供している検査機関リストについてはTestingを参照のこと。

出生前診断

リスクのある妊娠に際しての出生前診断は、妊娠約15-18週に羊水穿刺によって得た胎児細胞や、妊娠約10-12週に絨毛採取によって得た胎児細胞からDNAを抽出して行なわれる。出生前診断が行なわれる前には、家系内の患者について疾患の原因となった変異アレルが特定されていなければならない;しかし、たとえば超音波検査で胎児の発症がわかれば、発症者の事前の遺伝子検査がなくても出生前診断は可能である。ただし、このような検査で胎児がSALL4疾患の原因となる変異をもっているかいないかわかっても、どのような症状でその重症度はどれくらいのものなのか予測することはできない。従って高解像度の超音波検査によって胎児に現れている表現型を評価することが推奨される。

注:妊娠期間は月経週齢によって表わされ、最終の月経期間の第1日めから計算する場合と超音波診断で計測する場合とがある。

SALL4関連疾患のように知性に影響を与えず何らかの治療法がある場合には、出生前診断の要望は通常ない。医療専門医の間でも、家族の間でも、特に出生前診断を早期の診断というよりも妊娠中絶のための検査と考えているような場合は、その後の展望に相違があるかもしれない。ほとんどの検査機関では、出生前診断についての決断は両親の選択によって行なわれるであろうが、付随するこれらの問題について議論されることが大切である。

着床前遺伝子診断(PGD) この検査は疾患原因となっている変異が特定されている家族において利用可能である。PDGを提供している検査機関リストについてはTestingを参照のこと。

注:GeneReviewsのポリシーとして、 GeneTestTM Laboratory Directoryに掲載されている検査機関において臨床実施可能な検査については、検査可能として記載してある;しかしこのことは、必ずしも著者、編集者、査読者がこれらを推奨しているということではない。


更新履歴:

  1. Gene Review著者:Jürgen Kohlhase, MD
    日本語訳者: 小原令子,羽田 明(千葉大学医学部附属病院遺伝子診療部)
    Gene Review 最終更新日: 2008.3.12 日本語訳最終更新日:2013.4.8 [ in present]

原文 SALL-4 Related Disorders

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