毛髪-鼻-指節症候群
(Trichorhinophalangeal Syndrome)

[Synonyms:Tricho-Rhino-Phalangeal syndrome (TRPS)]

Gene Reviews著者: Saskia Maas, MD,Adam Shaw, BM, MD,Hennie Bikker, PhD,and Raoul CM Hennekam, PhD, MD
日本語訳者: 佐藤康守(たい矯正歯科)、水上都(札幌医科大学医学部遺伝医学)

GeneReviews最終更新日: 2017.4.20.  日本語訳最終更新日: 2022.6.8

原文 Trichorhinophalangeal Syndrome


要約

疾患の特徴 

毛髪-鼻-指節症候群(TRPS)には、TRPSⅠ(TRPS1のヘテロ接合性病的バリアントに起因するもの)とTRPSⅡ(TRPS1RAD21EXT1の隣接遺伝子欠失に起因するもの)がある。
両型とも、特徴的顔貌、外胚葉症候(細く、疎で、色素が脱失し、成長の遅い毛髪,爪の形成異常,小さな乳房)、骨格症候(低身長,小さな足,第2-第5指の尺側ないし橈側偏位を伴う短指,早発性で顕著な股関節形成不全)を特徴とする。
TRPSⅡは、多発性骨軟骨腫(通常、生後1ヵ月から6歳までの間に、肩甲骨や、肘・膝周囲に最初に出現する)と、軽度から中等度の知的障害に関するリスクの高まりを特徴とする。

診断・検査 

発端者におけるTRPSの診断は、以下の項目の1つをもって確定する。

  • 顔貌の症候、外胚葉の症候に加えて、X線写真での円錐形の骨端を含む四肢遠位の奇形といった典型的臨床症候がみられること。
  • TRPSⅠをうかがわせる所見に加え、TRPS1のヘテロ接合性病的バリアントが同定されること。
  • TRPSⅡをうかがわせる所見に加え、TRPS1RAD21EXT1を含む8q23.3-q24.11の隣接遺伝子欠失がみられること。

臨床的マネジメント 

症候に対する治療:
管理は、支持療法が中心となる。

外胚葉の問題については、毛髪の管理に関するアドバイス、かつらの使用、過剰歯の抜去などを検討する。
骨格の問題のうち、低身長については、成長ホルモン分泌不全が明らかになるものと明らかにならないものがあるが、これに対するヒト成長ホルモン投与療法の効果にはばらつきがある。

関節痛の治療の中心は鎮痛薬(NSAIDs〈訳注:非ステロイド性抗炎症薬〉ないし非麻薬系薬剤)である。
可動性を確保する上では理学療法が、微細運動技能の確保には作業療法が有効である。
重度の股関節形成不全に対しては、股義足挿入術を検討する必要がある。

定期的サーベイランス :

TRPSⅠ,TRPSⅡ共通
小児期に、線形の成長や精神運動発達のモニタリングを継続的に行う。

TRPSⅡのみ
症候がみられるとき、ならびに思春期が終了する段階(骨軟骨腫の成長が停止するはずの段階)でX線写真評価を行い、将来、拡大を見せた場合の比較の基準点の資料とする。

遺伝カウンセリング 

  • TRPSⅠ

多くの罹患者は、罹患者である親からの継承例である。
新生の病的変異に起因して生じたTRPSⅠの正確な比率についてはわかっていない。
TRPSⅠ罹患者の子にTRPS1の病的バリアントが継承される可能性は50%である。

  • TRPSⅡ

大多数のTRPSⅡ罹患者は、TRPS1RAD21EXT1の新生の隣接遺伝子欠失の結果として生じたものである。
TRPSⅡ罹患者の子に隣接遺伝子の欠失が継承される可能性は50%である。

  • TRPSⅠ,TRPSⅡ共通

家系内に存在するTRPSの原因となった遺伝子の変化が同定された場合は、出生前、着床前の遺伝学的検査を行うことが可能である。


GeneReviewsの視点

毛髪-鼻-指節症候群:ここに含まれる表現型
  • 毛髪-鼻-指節症候群Ⅰ型
  • 毛髪-鼻-指節症候群Ⅱ型(Langer-Giedion症候群)

別名、ならびに過去に用いられた名称については、「命名法」の項を参照のこと。


診断

毛髪-鼻-指節症候群(TRPS)については、今のところ合意済の診断基準は公表されていない。

TRPSには、TRPSⅠ(TRPS1の病的変異のヘテロ接合に起因するもの)と、TRPSⅡ(TRPS1RAD21EXT1の隣接遺伝子欠失に起因するもの)がある。

本症候群を示唆する所見

以下のような臨床所見、X線写真所見がみられる例については、TRPSを疑うべきである。

臨床所見

TRPSⅠ,TRPSⅡ共通

  • 特徴的顔貌
    最も大きな(同時に、おそらく特有と言える)特徴は、幅広の鼻梁・鼻尖を伴う大きな鼻、低発達の鼻翼、そして(時として)幅広の鼻柱である。
    その他の所見としては、太く長い眉、長い人中、薄い上赤唇、大きな目立つ耳がある(図1参照)。
  • 外胚葉の症候
    外胚葉の症候としては、細く、疎で、低色素で、成長の遅い毛髪、爪の形成異常、小さな乳房などがある。
  • 骨格の症候
    骨格の症候としては、低身長、小さな足、第2-第5指の尺側ないし橈側への偏位を伴う短指(図2参照)、早発性で顕著な股関節形成不全などがある。

fig1

116歳男性の顔面の症候。
幅広の鼻梁や鼻尖を示すものの、鼻根の幅は広くないことに注目。
鼻翼は低発達で、鼻柱は広く、垂れ下がっている。
人中は凹凸が少ない。
眉内側の幅がいくぶん広い。

fig2

221歳女性の手。
中手骨の短小、第3指の尺側偏位、第4指の橈側偏位、短い拇指に注目。

TRPSⅡのみ

  • 多発性骨軟骨腫

  多発性骨軟骨腫の最初の出現は生後1ヵ月から6歳の間で、初めに肩甲骨や肘・膝周囲に現れるのが普通である。

  • 知的障害

  これは、仮にあったとしても、通常は軽度から中等度である。

X線写真所見

TRPSⅠ,TRPSⅡ共通

  • 円錐形の骨端が、TRPSのほぼ全例にみられる。

これは、骨端形成中の早い年齢(通常、2歳以降)からみられ、中節骨に最も多くみられる。
ただ、中節骨に限らず、手足のあらゆる指趾節骨に出現する可能性がある(図3,図4参照)[Vaccaroら2005]。

  • 内反股、扁平股、過大大腿骨頭等の股関節の形態異常。
  • 関節腔狭小化や軟骨下骨硬化などの、二次性の関節変性。

これは指よりも股関節により多くみられるものの、あらゆる関節に起きうるものである[de Barros & Kakehasi 2016]。

34歳男児の手の正面X線写真。
第3-5指基節骨に円錐形の骨端(○で囲った部分)がみられること、ならびに、それより軽微ながら、第2-4指中節骨に部分的に癒合した円錐形の骨端(矢印)がみられることに注目。

fgi4

4第2指、第5指中節骨近位部に角張った形の変形がみられるが、これは、以前、円錐形の骨端だった部分が癒合して生じたものである。

TRPSⅡのみ

  • 多発性骨軟骨腫。

これは、長骨の骨幹端から発生する外骨腫で、無柄(平坦)であることもあれば、関節から直接伸びた有茎状のこともある。
肘や膝に最も多くみられるものの、それ以外の関節に生じることもあり、肩甲骨上にも多くみられる(図5)。

fig5

5上腕骨の外骨腫(矢印)。

診断の確定

発端者におけるTRPSの診断の確定は、以下の基準により行われる。

  • 顔貌の症候、外胚葉の症候、四肢遠位の奇形、X線写真でみられる円錐形骨端。

もしくは、

  • TRPSⅠを示唆する所見に加えて、TRPS1の病的バリアントのヘテロ接合が同定されること(表1参照)

もしくは、

  • TRPSⅡを示唆する所見に加えて、TRPS1EXT1にわたる8q23.3q24.11の隣接遺伝子欠失が同定されること(表1参照)。

表現型が顕著かつ明確であることが多いことから、診断の確定に分子遺伝学的検査を要しないことが多い。
臨床症候が軽度もしくは非定型的である場合は、分子レベルの検査で確認することが有効である。

分子遺伝学的検査を行う場合、そのやり方は表現型によって変わってくる。

  • TRPSⅠ:単一遺伝子検査

最初にTRPS1の配列解析を行う。
そこで病的バリアントが検出されなかった場合は、染色体マイクロアレイ解析(CMA)、もしくは遺伝子標的型欠失/重複解析を行って、今みられる症候が軽症のTRPSⅡに起因して現れたものではないかという点の確認を行う。
この手法でも病的変異が検出されなかった場合は、8q24を含む領域の均衡型転座ないし逆位を検出するための核型解析も検討対象になろう。

  • TRPSⅡ:染色体マイクロアレイ解析(CMA)

アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション(アレイCGH)、SNPアレイのいずれかを用いたCMAを行う。

1:毛髪--指節症候群で用いられる分子遺伝学的検査

遺伝子1 表現型 解析法 その手法で病的変異2,3が検出される発端者の割合
TRPS1 TRPSⅠ 配列解析4 83/1035
遺伝子標的型欠失/重複解析6 4/1035
核型解析(構造変異の検出目的) 2/1035,7
TRPSⅡ CMA8 14/1035
  1. 染色体上の座位ならびにタンパク質に関しては、表A「毛髪--指節症候群:遺伝子とデータベース」を参照。
  2. 本遺伝子において検出される各種変異に関する情報については、「分子遺伝学」の項を参照。
  3. 注:TRPSについては、まだ罹患者総数が比較的少ないため、本症候群の臨床スペクトラムの重度側にある例だけを評価している可能性がある。 したがって、それぞれの手法で検出される病的変異の割合に関する推定値は、今後変わっていく可能性がある。
  4. 配列解析を行うことで、benign、likely benign、意義不明の変異、likely pathogenic、pathogenic等が検出される。
    変異の種類としては、遺伝子内の微小欠失/挿入、ミスセンス、ナンセンス、スプライス部位バリアントなどがあるが、通常、エクソン単位ないし遺伝子全体の欠失や重複は検出されない。
    配列解析の結果の解釈に際して留意すべき事項についてはこちらをクリック。
  5. Maasら[2015]。
    このデータは、この研究以前に51例について行った別の研究[Lüdeckeら2001]に類似したものであるが、両研究とも、用いた試料が比較的重度側に偏ったものであるように思われる。
  6. 遺伝子標的型欠失/重複解析では、遺伝子内の欠失や重複が検出される。
    具体的手法としては、定量的PCR、ロングレンジPCR、MLPA法、あるいは単一エクソンの欠失ないし重複の検出を目的に設計された遺伝子標的型マイクロアレイなど、さまざまなものがある。
  7. 実際に、2例で8番染色体の逆位 ― inv(8)(q13q24.1) と inv(8)(q21.1q24.1) ― が検出されている。
    8番染色体のこの領域を含むその他の逆位や均衡型転座の報告もみられる[Lüdeckeら2001,Davidら2013,Crippaら2014]。
  8. オリゴヌクレオチドアレイもしくはSNPアレイを用いた染色体マイクロアレイ解析(CMA)。
    現在、臨床で用いられているCMAは、8q24領域を標的にしたものである。
    注:8q24の欠失については、以前のオリゴヌクレオチドやBAC(訳注:大腸菌人工染色体のこと)では検出されてこなかった可能性がある。

臨床的特徴

臨床像

毛髪-鼻-指節症候群(TRPS)には、TRPSⅠ(TRPS1のヘテロ接合性病的変異に起因するもの)とTRPSⅡ(TRPS1RAD21EXT1の隣接遺伝子欠失に起因するもの)がある。
両型とも、特徴的顔貌、外胚葉症候(細く、疎で、色素が脱失し、成長の遅い毛髪,爪の形成異常,小さな乳房)、骨格症候(低身長,小さな足,第2-第5指の尺側ないし橈側偏位を伴う短指,早発性で顕著な股関節形成不全)を特徴とする。
TRPSⅡは、多発性骨軟骨腫(通常、生後1ヵ月から6歳までの間に、肩甲骨や、肘・膝周囲に最初に出現する)と、軽度から中等度の知的障害に関するリスクの高まりを特徴とする。

現在までに報告されているTRPS罹患者のコホートのうち最大のものは、103人の罹患者を用いたヨーロッパの大規模な共同研究である[Maasら2015]。
この研究や、その他の研究[Giedionら1973,Lüdeckeら2001]からわかることは、1家系内におけるTRPSⅠの表現型には顕著な幅があるということである。
こうした幅は、顔面形態、外胚葉の症候、成長、臨床所見、X線写真所見など、すべての部分においてみられる。

外胚葉の症候

頭髪
ほぼすべての罹患者において、若年期から、特に前頭・側頭領域に顕著な、細く疎な毛髪がみられる[Jeonら2014]。
頭髪は、多くの場合、成長が遅く、脆弱である。
毛髪は淡色であることが多いものの、これが本症候群の関連所見であるかどうかについては不明である。

男性罹患者の3分の1は、思春期の2,3年のうちに、頭髪を完全に、ないし完全に近い形で失う。
女性の場合は、男性より髪が多く残るものの、前頭部の毛髪線は高位になることが多い。

状況には幅がみられ、中には、頭髪が正常に近い罹患者や、髪の太さや質が経時的に改善していく例もみられる。


特にTRPSⅡにおいては、眉は通常密生し(濃い眉)、鼻側寄りの部分が幅広の形を示す。
眉の状況は部位ごとに異なり、内側寄りはほぼ例外なく、中央部や外側寄りに比べ、密生の程度が強く、幅も太い。


爪は、TRPS罹患者の約半数で、薄く、形成異常を呈する。
爪の変化は、手よりも足のほうにより顕著にみられる。


過剰歯のみられることがある。

骨格の症候

低身長
TRPSでは、特にTRPSⅡで線的成長の鈍化が多くみられる。
これは、出生前より出生後のほうがより顕著である。

手足の短小
TRPSⅠ,TRPSⅡとも、手足の短小化がみられ、通常は、1つないしそれ以上の中手骨/中足骨の選択的短小化や近位指節間関節の腫脹に起因して、特徴的な彎指を示すに至る[Lüdeckeら2001]。
小関節の可動性の障害が40歳超の罹患者で非常に多くみられ、関節リウマチと見誤られることがある。

長期にわたって続くTRPS関連の障害として大きなものは、大関節、特に股関節に現れる早発性の変形性関節症様変化で、思春期あるいは成人初期以降、疼痛や可動性減少の形で現れる[Ruéら2011,Maasら2015]。
また、頸椎、膝、くるぶしに退行性の骨格変化が現れることもある[Izumiら2010]。

骨格成熟の遅延の報告もみられる[de Barros & Kakehasi 2016]。

注:骨端部に顕著な変化が生じている罹患者についても、影響が現れていない多数の骨端を用いて、信頼性を確保した形で骨格成熟の評価を行うことが可能である。

骨減少症
骨減少症は、TRPSの両型でみられはするものの、TRPSⅡにより多くみられるように思われる。
TRPSⅠの2例で骨量の減少をみたとする報告がみられる[Stagiら2008]。
数人の罹患者で重度の骨粗鬆症が報告されている[Shaoら2011,Macchiaioloら2014]。

多発性骨軟骨腫
多発性骨軟骨腫はTRPS II(すなわちEXT1を包含する欠失を有する例)でのみみられる。
通常、生後1ヵ月から6歳の間に現れ、その自然経過については、多発性骨軟骨腫症の自然経過と同様である[Hennekam 1991]。

精神運動発達

TRPSⅠ罹患者で知的障害を有する例の割合は、一般集団とほぼ同じである一方、TRPSⅡ罹患者については、3分の2が軽度から中等度の知的障害を有する。
運動発達の遅延は、多くの場合、股関節形成不全を伴っていることから、二次性のものである可能性が高い[Maasら2015]。

その他

身長との関連でみたときの体重は、通常、正常である。

TRPSⅡ罹患者の3分の1は、頭囲が3パーセンタイル未満の値を示すものの、それ以外の罹患者については、通常、生涯を通じて頭囲は正常である[Lüdeckeら2001]。

心臓の異常は、TRPS罹患者の15%にみられ、軽度の奇形(動脈管開存,卵円孔開存,大動脈二尖弁,僧帽弁逆流)から重度の問題(大動脈弁狭窄,静脈還流異常)まで幅がみられる。
心調律異常は稀である。

遺伝子型-表現型相関

TRPSⅠについては、遺伝子型-表現型相関は明らかではない。
TRPS1の同一の病的バリアントを共有する家系間だけでなく、同一家系内の血族間にあってさえ、表現型には顕著な幅がみられる[Giedionら1973,Lüdeckeら2001,Maasら2015]。

 Lüdeckeら[2001]の同定した5種の病的ミスセンスバリアントのうちの4つは、GATAファミリー転写因子のDNA結合ジンクフィンガーに変化を及ぼすもので、これらの病的バリアントを有する互いに血縁関係のない7人中6人に、表現型の1つと認定できるレベルの顕著な低身長がみられ、TRPSⅢと命名された。
しかしながら、この表現型は、現在ではTRPSⅠのスペクトラム内にあるものとみなされているため、TRPSⅢの用語はもはや用いられていない[Lüdeckeら2001,Maasら2015]。

浸透率

不完全浸透を示す例は報告されておらず、浸透率は100%であるとみられている[Lüdeckeら2001]。

命名法について

疎な毛髪、特徴的顔貌(主として鼻の形)、四肢遠位の奇形を呈する例を最初に報告したのは、オランダの医師、Van der Werff ten Bosch [1959]である。

そして、3つの主徴に因んで、Giedionが「毛髪-鼻-指節症候群」という呼び名を提唱した[Giedion 1966]。

また、発達遅滞と多発性骨軟骨腫を呈する例が、Langer [1969]、Gorlinら[1969]により、ほぼ同時に報告されている。

Hallら[1974]は、TRPSについて、罹患者に発達遅滞や骨軟骨腫がみられないTRPSⅠと、知的障害と多発性骨軟骨腫を有するTRPSⅡ(Langer-Giedion症候群)とに細分化することを提唱している。

TRPSⅢは、TRPSの表現型に加えて顕著な低身長を呈するものを指す用語として、Niikawa & Kameiが用い始めたものであるが、これはTRPSⅠの表現型のスペクトラム内にある所見と考えられていることから、現在、この用語は用いられていない。

発生頻度

現在のところ、バイアスを排除した人口ベースのTRPSの発生頻度の推定値というものは存在しない。
TRPSは、診断がなされないままになっている例が多く存在するのではないかと思われる。
それでも、この疾患はおそらく稀なもので、10万人あたり0.2人から1人の頻度と思われる。

TRPSはあらゆる民族でみられる。


遺伝子の上で関連のある疾患(同一アレル疾患)

TRPS1の病的変異、あるいはTRPS1を含む隣接遺伝子欠失に関しては、このGeneReviewで述べたもの以外の表現型は知られていない。

RAD21(これはEXT1の上流に位置する)の欠失は、Cornelia de Lange症候群類似の表現型を呈する可能性がある[Deardorffら2012,Chenら2013,Ansariら2014]。

TRPSⅡの表現型形成に支配的役割を果たすのは、通常、TRPS1EXT1で、RAD21のみが欠失した例においてみられる外見上の特徴は、TRPSⅡにおいては明確には現れない。
ただ、何らかの形で関与している可能性が、現時点では排除できない。


鑑別診断

毛髪、鼻、四肢に異常を示す各種疾患との鑑別に際して、TRPSはしばしば検討対象となる。

2:毛髪--指節症候群との鑑別を検討すべき疾患

疾患名 遺伝子 遺伝様式 鑑別すべき疾患で現れる臨床症候
TRPSと重なる症候 TRPSと異なる症候
眼-歯-指症候群 GJA1 常染色体顕性
  • 成長が遅く乾燥した毛髪
  • 鼻翼低形成
  • 長い人中
・眼の徴候
・歯の徴候がより顕著にみられる。
軟骨-毛髪症候群 RMRP 常染色体潜性
  • 低身長
  • 細い毛髪
  • 円錐形の骨端
・鼻の形
・免疫不全
Ellis-Van Creveld症候群 EVC
EVC2
常染色体潜性
  • 低身長
  • 短指趾
・鼻の形
・口腔の小帯
・多指趾

臨床的マネジメント

最初の診断に続いて行う評価

毛髪-鼻-指節症候群(TRPS)と診断された罹患者に対しては、疾患の範囲や支援上のニーズを明らかにすることを目的として、以下のような評価を行う必要がある。

TRPSⅠ,TRPSⅡ共通

  • 身長の測定。
  • 発達評価。
    これを行うのは、幼い段階ではまだTRPSⅠとTRPSⅡを臨床的に鑑別することができない可能性があるためである。
    年長者の場合は、TRPSⅡの罹患者のみこれを行う。
  • 症状がみられるようであれば、手・足・骨盤・股関節のX線写真撮影。
  • X線写真で骨減少症が確認された場合、骨塩密度・骨代謝に関するさらに突っ込んだ検査が必要になることもある。
  • 過剰歯を評価するための歯科的診査
  • 心評価(1度のみ)
  • 臨床遺伝医ないし遺伝カウンセラーとの面談

TRPSⅡのみ

  • 整形外科医の手で骨軟骨腫のチェックを行い、何らかの機能上の制限がないかどうか確認する。
  • 視覚や聴覚の評価。
    これは、原因の如何を問わず、知的障害を有するすべての人について行うことが推奨されているものである。

症候に対する治療

TRPSの管理は支持療法が中心となる。

外胚葉の症候

毛髪
毛髪のケアやかつらの使用に関する実用的なアドバイスが有益である。


過剰歯の抜去が検討される可能性がある[Kantaputraら2008,Lubinski & Kantaputra 2016]。

骨格

低身長
低身長があって、成長ホルモン分泌不全が明らかになった例については、ヒト成長ホルモン投与療法が検討対象になりうる。

ただ、その効果に関する報告には幅がみられる。

治療によって成長速度の増加が得られることは、それほど多くはない。

注:子どもの成長パターンが、年齢・性別あたりの標準範囲を下回り、これに関して家族が懸念を感じているような場合は、成長ホルモン分泌刺激試験を行うことも可能である。
結果が正常範囲を下回るようであれば、成長ホルモン治療が検討対象になりうる[Marquesら2015]。
ただし、その成果のほどには幅がみられる。


円錐形骨端を伴う指の近位指節間関節(PIP)の疼痛を伴う尺側偏位について、引き寄せ締結骨接合法を用いた切除関節固定術を行って安定化させた1報告がみられる[Brennerら2004]。
ただ、その後の経過が報告されていないこと、他に類似の報告がないことに注意が必要である。

関節の疼痛
単純な鎮痛薬(NSAIDsないし非麻薬系薬剤)を用いた治療を定期的に行うことが主流である。

可動性については、理学療法により改善がみられることがある。

運動は積極的に推奨されるものの、可動性に障害を有している罹患者については、強い衝撃を伴うスポーツや身体接触を伴うスポーツはリスクがある。

学校や職場で、可動性に関する支援が必要になるようなことも考えられる。

作業療法を行うことは、微細運動技能の多くに関して有益である。
また、関節奇形の問題を緩和する上では、電動缶切りのような機器の使用も有益である。

重度の股関節形成不全を有する例については、股義足挿入術を検討すべきである。

股義足挿入術は、早ければ30歳くらいから必要になることがある。

こうした義肢の類には寿命があるため、何度かやり直しが必要になることがある。

TRPS関連の変形性関節症類似の変化、ないし、長期的な代償性ストレスが加わるといったことに起因して、他の関節にダメージが生じるといったことがあることから、人工関節手術による機能改善の獲得は難しいこともある。

骨減少症
骨の脆弱性を示すTRPSⅠ罹患者については、ビスフォスフォネートが検討対象になりうる[Macchiaioloら2014]。

その他
身体的に他者と異なっていることを気に病んでいる罹患者については、ピアサポートや、(必要であれば)心理カウンセリングが有益なことがある。

TRPSⅡのみ

外骨腫
疼痛、可動域の制限、神経圧迫などの臨床的問題がみられる場合には、外骨腫の切除を検討すべきである[Payneら2016]。
遺伝性多発性骨軟骨腫」のGeneReviewを参照されたい。

定期的追跡評価

TRPSⅠ,TRPSⅡ共通

  • 小児期の線形成長状況のモニタリング
  • 小児期におけるルーチンの発達評価

TRPSⅡのみ

骨軟骨腫が出現したとき、ならびに思春期の終わり(骨軟骨腫の通常の成長が終了に至るとき)に骨軟骨腫のX線的評価を行い、将来、これが拡大していったときのための比較の基準とする。

リスクを有する血縁者の評価

リスクを有する血族に対して行う遺伝カウンセリングを目的とした検査関連の事項については、「遺伝カウンセリング」の項を参照されたい。

研究段階の治療

さまざまな疾患・状況に対して進行中の臨床試験に関する情報については、アメリカの「Clinical Trials.gov」、ならびにヨーロッパの「EU Clinical Trials Register」を参照されたい。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝学的検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的、倫理的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

毛髪-鼻-指節症候群(TRPS)は、常染色体顕性の遺伝様式を示す。

  • TRPSⅠは、TRPS1の病的バリアントのヘテロ接合に起因して生じる。
  • TRPSⅡは、8番染色体上の隣接遺伝子TRPS1RAD21EXT1の欠失に起因して生じる。

家族構成員のリスク― TRPSⅠ

発端者の両親

  • TRPSⅠと診断された罹患者の多くは片親からの継承例である。

1家系内における表現型のばらつきの幅が非常に大きい場合がある[Giedionら1973,Lüdeckeら2001,Maasら2015]ものの、それでもふつうはそれぞれの罹患者について臨床診断を下すことが可能である(「臨床像」の項を参照)。

  • 孤発例(家系内で1人だけの発生)について、TRPS1の病的バリアントが新生の形で生じたものかどうかに関する十分な確認作業がこれまでなされてきていないため、新生の病的バリアントに起因するTRPSⅠの占める正確な比率については、明らかではない。
  • 発端者が、見かけ上、新生の病的バリアントと思われる場合でも、その両親については、発端者の有する病的バリアントを有していないかどうかを調べる分子遺伝学的検査、完全な形での身体の診査、手足のX線写真のチェックといった評価を行うことが推奨される。
  • 発端者の有するTRPS1の病的バリアントが、両親いずれの白血球DNAからも検出されない場合、考えられる説明としては、発端者に生じた新生の病的バリアントであるか、親のモザイクであるかのいずれかということになる。

実際に、非罹患者である親が、体細胞・生殖細胞両方のモザイクを有していた例が報告されている[Corsiniら2014]。
こうしたモザイクの占める割合に関して、信頼に足る推定値は今のところ存在しないが、著者自身の経験から言うと、その比率は低い(2%未満)ものと思われる。

  • 中には、家系内に存在する罹患者を臨床評価で見つけ出すことができなかった、あるいは親が早死にしてしまったため臨床症候を見つけることができなかったといった理由で、あたかもTRPSⅠの家族歴がないように見受けられる例もみられる。

したがって、発端者の両親について、適切な臨床的評価を行う、ないし分子遺伝学的検査を行うといったことがなされない限り、家族歴陰性の確定はできない。

発端者の同胞 

発端者の同胞の有するリスクは、発端者の両親の遺伝子の状態によって変わってくる。

  • 発端者の片親が罹患者ということであれば、同胞の有するリスクは50%ということになる。
  • ただ、その場合でも、家系内に現れる表現型の幅は非常に大きい[Giedionら1973,Lüdeckeら2001,Maasら2015]。
  • 臨床的にみて両親とも非罹患者であるということであれば、発端者の同胞の有するリスクは低いものと推察される。
  • 発端者で同定されたTRPS1の病的バリアントが、両親いずれの白血球DNAからも検出されなかった場合でも、同胞の有するリスクは一般集団の有するリスクより高くなる。 それは、親の生殖細胞系列モザイクの可能性が残っているからである[Corsiniら2014]。

発端者の子

TRPSⅠ罹患者の子は、50%の確率でTRPS1の病的変異を継承することになる。

他の家族構成員

他の血族の有するリスクは、発端者の両親の遺伝子の状態によって変わってくる。
仮に片親が罹患者ということになれば、その血族にあたる人はすべてリスクを有することになる。

家族構成員のリスク― TRPSII

発端者の両親

  • TRPSⅡと診断された罹患者の大多数は、TRPS1RAD21EXT1の新生の隣接遺伝子欠失によって生じた例である。

孤発例(すなわち、家系内にあって1人だけの発生例)については、これが新生の欠失によるものかどうかの厳密なチェックがこれまでなされてこなかったため、新生の欠失に起因するTRPSⅡの正確な比率については、今のところ不明である。

  • TRPSⅡと診断された罹患者の中には、親もまた罹患者であるという例もみられる。

表現型は、家系内においても一定の幅が存在するものの、それほど大きいものではなく、臨床診断によって罹患者を特定することが、多くの場合、可能である(「臨床像」の項を参照)。

  • 両親について、ゲノム検査を通じて、発端者で同定された欠失の有無を調べることが推奨される。
  • 発端者の有する欠失が、両親いずれの白血球DNAからも検出されないということであれば、考えられる説明は、発端者に生じた新生の欠失であるか、もしくは、片親が生殖細胞系列モザイクを有するかのどちらかということになる。 これまでに親の生殖細胞系列モザイクの例は報告されていないものの、理論的にはその可能性が残っている。
  • 中には、家系内に存在する罹患者を臨床評価で見つけ出すことができなかったために、あたかもTRPSⅡの家族歴がないように見受けられる例もみられる。 したがって、発端者の両親について、適切な臨床的評価を行う、ないしゲノム検査を行うといったことがなされない限り、家族歴陰性の確定はできない。
  • 注:もしも発端者より先に親のほうに欠失が生じていたということであれば、その欠失に関して、その親は体細胞モザイクであって、そのために症候の現れ方が軽度ないし軽微となった可能性がある。 分子診断が確定した罹患者の中で、これまでに1例だけ、体細胞モザイクの例が存在する[Shanskeら2008]。

発端者の同胞 

発端者の同胞の有するリスクは、発端者の両親の遺伝子の状態によって変わってくる。

  • 発端者の両親が罹患者であるということであれば、同胞の有するリスクは50%ということになる。

その場合、家系内の表現型には一定の幅がみられる可能性があるものの、それはそれほど大きなものではない。

  • 臨床的にみて両親とも非罹患者ということであれば、発端者の同胞の有するリスクは低いものと考えられる。
  • 発端者の有する欠失が、両親いずれの白血球DNAからも検出されないということであれば、同胞の有するリスクは、一般集団の有するリスクより若干高い程度(1%未満ではあるが)ということになるように思われる。 それは、理論上、親の生殖細胞系列モザイクの可能性が残っているからである。
    ただし、今のところ、親の生殖細胞系列モザイクの例は報告されていない。

発端者の子

TRPSⅡ罹患者の子は、50%の確率でTRPS1RAD21EXT1の隣接遺伝子欠失を継承することになる。

他の家族構成員

他の血族の有するリスクは、発端者の両親の遺伝子の状態によって変わってくる。
仮に片親が罹患者ということになれば、その血族にあたる人はすべてリスクを有することになる。

関連する遺伝カウンセリング上の諸事項

予測される表現型について

臨床症候には家系内でばらつきが存在するため、TRPS1の病的変異、ないしTRPS1を含む欠失を継承する血族について、その表現型の重症度を事前に把握することはできない。
ただ、EXT1までを包含する欠失を有する罹患者はすべて、多発性外骨腫を発症する、すなわちⅡ型のTRPSになるということだけは確実に言うことができる。

見かけ上、新生と思われる遺伝子の変化を有する家系について頭に入れておくべき事項

常染色体顕性遺伝疾患を有する発端者のいずれの親からも、発端者の有する遺伝子の変化が検出されない、もしくは、いずれの親も本疾患の臨床症候を有していないということであれば、発端者の有する遺伝子の変化は新生のものである可能性が高い。
ただ、代理父、代理母(例えば生殖補助医療によるもの)、もしくは秘匿型の養子縁組といった、医学とは別次元の理由が潜んでいる可能性も考えられる。

家族計画

  • 遺伝的リスクの確定や、出生前/着床前遺伝子検査を受けるかどうかの話し合いといったことに最も適しているのは、妊娠前の時期である。
  • 罹患者である若い成人、あるいはTRPSの子をもつリスクを有する若い成人に対しては、遺伝カウンセリング(子に生じる可能性のあるリスクや、子を儲ける上での選択肢についての説明を含む)を提供することが望ましい。

DNAバンキング

DNAバンキングとは、将来の利用を見越してDNA(通常は白血球から抽出したもの)を保存しておくことをいう。
検査の手法であるとか、遺伝子・アレルバリアント・疾患等に対するわれわれの理解は、将来、より進歩していくことが予想される。
そのため、罹患者のDNAについては、保存しておくことを検討すべきである。

出生前検査ならびに着床前の遺伝子検査

家系内に存在するTRPSを引き起こす原因としての遺伝子の変化の内容が確定すれば、出生前検査や着床前遺伝子検査(PGT)を行うことが可能となる。
注:出生前検査やPGTを行うことで、家系内に存在するTRPS関連の遺伝子の変化の有無は判定できるものの、その結果に基づいて、TRPSⅠやTRPSⅡの表現型の重症度を予測することまではできない。

 出生前検査の利用に関しては、医療者間でも、また家族内でも、さまざまな見方がある。
早期診断を目的とするのではなく、堕胎を目的としてこれを利用しようという場合は、特にそれが言える。
現在、多くの医療機関では、出生前検査を個人の決断に委ねられるべきものと考えているようであるが、こうした問題に関しては、もう少し議論を深める必要があろう。


関連情報

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分子遺伝学

分子遺伝学とOMIMの表の情報はGeneReviewsの他の場所の情報とは異なるかもしれない。表は、より最新の情報を含むことがある。

表A:毛髪-鼻-指節症候群の遺伝子とデータベース

遺伝子 染色体上の座位 タンパク質 座位別データベース HGMD ClinVar
EXT1 8q24.11 エクソストシン-1 EXT1 gene database EXT1 EXT1
RAD21 8q24.11 二重鎖切断修復タンパク質rad21ホモログ RAD21 database RAD21 RAD21
TRPS1 8q23.3 ジンクフィンガー転写因子Trps1 TRPS1 database TRSP1 TRSP1

データは、以下の標準資料から作成したものである。
遺伝子についてはHGNCから、染色体上の座位についてはOMIMから、タンパク質についてはUniProtから。
リンクが張られているデータベース(Locus-Specific,HGMD,ClinVar)の説明についてはこちらをクリック。

表B:毛髪-鼻-指節症候群関連のOMIMエントリー(閲覧はすべてOMIMへ)

150230 TRICHORHINOPHALANGEAL SYNDROME, TYPE II; TRPS2
190350 TRICHORHINOPHALANGEAL SYNDROME, TYPE I; TRPS1
604386 ZINC FINGER TRANSCRIPTION FACTOR TRPS1; TRPS1
606462 RAD21 COHESIN COMPLEX COMPONENT; RAD21
608177 EXOSTOSIN GLYCOSYLTRANSFERASE 1; EXT1

分子レベルでの病原

TRPS1RAD21EXT1は、8q23.3-8q24.11(2.8Mb以内の範囲)に座位している。
毛髪-鼻-指節症候群Ⅰ型(TRPSⅠ)が、TRPS1内の1塩基の変異(ミスセンスバリアント,ナンセンスバリアント,小欠失)により引き起こされるものである一方、TRPSⅡのほうは、TRPS1RAD21EXT1を包含するより大きな欠失によって生じる。
TRPSⅡの表現型のほとんどは、TRPS1EXT1の欠失によって説明可能なものである。

しかしながら、TRPS1からEXT1までの範囲を超えて、それより外側にある遺伝子までを含む、より大きな欠失になればなるほど、それ以外の症候(例えば、認知機能障害)が併せて現れるようになる[Lüdeckeら1999]。
より重度の症候、特に認知機能障害に関しては、TRPS1EXT1の間に位置するRAD21のハプロ不全が関与している可能性も考えられる。

RAD21単独の欠失の場合、TRPSⅡ罹患者にみられる身体的特徴は現れてこず、影響の範囲はきわめて限定的のようである。

TRPS1

遺伝子構造

TRPS1は約260kbのサイズで、7つのエクソンから成り、そのうちの6つはコーディングエクソンである。

病的バリアント

これまでに130種以上の病的バリアントが報告されている。
TRPS1の病的バリアントの一覧はMaasら[2015]に掲載されている。
反復性の病的バリアントは少数である。

同定されている病的バリアントの中に、TRPS1のエクソン6とエクソン7のヘテロ接合性ミスセンス変異がある。

その他に、ナンセンスバリアント(小欠失/重複,未成熟終止コドン,スプライス部位変異)があり、こちらはコーディング配列のあらゆる部位にみられる。

遺伝子全体の欠失もよくみられ、その場合の切断点は多様である。

3:このGeneReviewで述べたTRPS1の病的バリアント

DNAヌクレオチドの変化 予測されるタンパク質の変化 参照配列
c.1010_1014dup p.(Cys339GlnfsTer27) NM_014112​.4
NP_054831​.2
c.1093C>T p.Gln365Ter
c.1105C>T p.Gln369Ter
c.1176dup p.Asn393Ter
c.1231dup p.(Gln411ProfsTer11)
c.1460del p.(Lys487Serfser13)
c.1630C>T p.Arg544Ter
c.1870C>T p.Arg624Ter
c.1882C>T p.Gln628Ter
c.2094C>A p.Tyr698Ter
c.(2096+1_2097-1)_(2700+1_2701-1)dup
c.(2096+1_2097-1)_(2700+1_2701-1)del
c.2179_2180del p.(Val727SerfsTer29)
c.2355_2356del p.(Lys786GlyfsTer14)
c.2394dup p.(Ser799GlunfsTer2)
c.2557C>T p.Arg853Ter
c.(2700+1_2701-1)_(*_?)del
c.2731A>T p.(Asn911Tyr)
c.2732A>G p.(Asn911Ser)
c.2756T>C p.(Leu919Pro)
c.2761C>T p.Arg921Ter
c.2762G>C p.(Arg921Pro)
c.2762G>A p.(Arg921Gln)
c.2783_2784insC p.(Val929CysfsTer22)
c.2794G>A p.(Ala932Thr)
c.2795C>T p.(Ala932Val)
c.2801G>T p.(Gly934Val)
c.2823+1G>T
c.2824-23>G
c.(2823+1_2824-1)_(*1_?)del
c.2852_2859dup p.(Gly954LysfsTer43)
c.2981_2984del p.(Glu994GlyfsTer7)
c.2893C>T p.(Arg965Cys)
c.2894G>A p.(Arg965His)
c.3077del p.(Ser1026ThrfsTer27)
c.3140del p.(Pro1047LeufsTer6)
c.3424del p.(Ser1142ValfsTer36)
inv(8)(q13q24.1)
Inv(8)(q21.1q24.1)

上記の変異は報告者の記載をそのまま載せたもので、GeneReviewsのスタッフが独自に変異の分類を検証したものではない。
GeneReviewsは、Human Genome Variation Society(varnomen.hgvs.org)の標準命名規則に準拠している。
命名規則の説明については、Quick Referenceを参照のこと。

正常遺伝子産物

TRPS1は、1,294個のアミノ酸から成る転写因子をコードする。
この転写因子は、GATA制御型遺伝子を抑制するとともに、ダイニンの軽鎖タンパク質に結合する。
この遺伝子によってコードされるタンパク質がダイニンの軽鎖タンパク質に結合することで、GATAコンセンサス配列との結合に影響が及び、転写活性が抑制されるに至る。

異常遺伝子産物

TRPS1の病的バリアントのヘテロ接合により、毛髪-鼻-指節症候群Ⅰ型(TRPSⅠ)が引き起こされる。

EXT1

遺伝子構造

EXT1は約312kbのサイズで、11のコーディングエクソンをもち、合わせて746個のアミノ酸から成るタンパク質をコードする。
1つの転写産物、NM_000127.2(2241個のヌクレオチド)が知られている。
EXT1TRPS1よりも遠位に位置し、TRPS1EXT1の両方を跨ぐ大きな欠失により、TRPSⅡが引き起こされる。

異常遺伝子産物

遺伝性多発性骨軟骨腫の罹患者においてEXT1が果たしている役割については、「遺伝性多発性骨軟骨腫」(以前は遺伝性多発性外骨腫と呼ばれていた)のGeneReviewでも述べられている。

RAD21

遺伝子構造

RAD21は約29kbのサイズで、14のエクソン(うち13がコーディングエクソン、1つがノンコーディングエクソン)をもち、合わせて631個のアミノ酸から成るタンパク質をコードしている。
1つの転写産物、NM_006265.2(1896個のヌクレオチド)が知られている。
RAD21は、TRPS1EXT1の中間に位置している。

異常遺伝子産物

RAD21の病的バリアントのヘテロ接合はCornelia de Lange症候群4型(CDLS4)を引き起こす。
RAD21に顕性のミスセンスバリアントが生じると、機能喪失型の変異や欠失の場合よりも重度の機能障害、重度の臨床症候が生じる結果となる。
TRPSに関係してくるのは遺伝子全体の欠失のみである。


更新履歴:

  1. Gene Reviews著者: Saskia Maas, MD,Adam Shaw, BM, MD,Hennie Bikker, PhD,and Raoul CM Hennekam, PhD, MD
    日本語訳者: 佐藤康守(たい矯正歯科)、水上都(札幌医科大学医学部遺伝医学)
    GeneReviews最終更新日: 2017.4.20.  日本語訳最終更新日: 2022.6.8 [in present]

原文 Trichorhinophalangeal Syndrome

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