FGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症概説
(FGFR Craniosynostosis Syndromes Overview)

[Synonyms:Acrocephalosyndactly]

Gene Reviews著者: Tara Wenger, MD, PhD, Danny Miller, MD, PhD, and Kelly Evans, MD.
日本語訳者: 大島龍之介(大阪市立総合医療センター 小児脳神経外科)、國廣誉世(大阪市立総合医療センター 小児脳神経外科)、馬場良子(大阪市立総合医療センター 小児脳神経外科)、瀨戸俊之(大阪公立大学大学院 医学研究科 臨床遺伝学)、坂本博昭(大阪市立総合医療センター 小児脳神経外科、大阪公立大学大学院 医学研究科 脳神経外科)

GeneReviews最終更新日: 2020.4.30.  日本語訳最終更新日: 022.9.3.

原文 FGFR Craniosynostosis Syndromes Overview


要約

要 約

本概要の目的は、FGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症とその管理について臨床医の見識を深めることを目的としている。

項目1

FGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症の臨床的特徴

項目2

FGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症の遺伝的要因

項目3

発端者におけるFGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症の遺伝的要因を特定する評価法

項目4

FGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症の早期発見と治療のため、家系内でのリスク評価および発症リスクのある血縁者の調査に関する周知

項目5

FGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症患者へ現在推奨される管理のまとめ


1. FGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症の臨床的特徴

臨床像

今日までに、500例以上のFGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症の症例が報告されている。経口摂取や気道に問題を伴う重篤な胎児期の複数縫合早期癒合症から、非症候群性の単一縫合早期癒合症まで重症度には幅がある。本概要では以下に挙げるFGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症の各表現型について述べる。

  • Apert症候群
  • Beare-Stevenson Cutis Gyrata症候群
  • Bent bone dysplasia弯曲骨異形成症
  • Crouzon症候群
  • 黒色表皮症を伴ったCrouzon症候群
  • Jackson-Weiss症候群
  • Muenke症候群
  • Pfeiffer症候群
  • 非症候群性冠状縫合早期癒合症

多くの表現型で重複する部分はあるが、特徴を識別することで特定の診断をつけることが可能となる(表 1)。以下に挙げる個々の表現型が知られている。

Apert症候群

  • 頭蓋・顔面

頭部の形態は癒合した縫合と早期癒合の生じた時期に依存し、多くの症例では様々な程度の尖頭症がみられる。顔面中部後退は中等度から重度であり、Crouzon症候群の多くの症例と比較して、中顔面のvertical impaction垂直性の嵌入を強く認める(Forte et al 2014)。その他の特徴としては、眼球異常(例えば、眼球突出【訳者注:眼球突出はApert症候群よりもCrouzon症候群に特徴的である。】、斜視、屈折異常、不同視)、口蓋裂、歯牙異常(叢生crowding、萌出遅延、交叉咬合、欠損歯)、難聴(80%)(ほとんどは伝音性)が認められる。

  • 呼吸

後鼻孔狭窄、舌による気道閉塞、気管の形成異常を含む様々な部位での気道閉塞が認められる。

  • 四肢

多指(趾)症の有無に関わらず、第1から第5指(趾)まで様々な皮膚性もしくは骨性の合指(趾)症(mitten glove、ミトン手袋)が認められるが、なかでも第2指(趾)、第3指(趾)、第4指(趾)の癒合がしばしば認められる。上肢では特にsynonychia(第2、第3、第4指の爪癒合)がより多い頻度でみられる。橈骨と上腕骨の癒合を認める症例もあり、rhizomelia短肢症も散見される[Cohen & Kreiborg 1995, Wilkie et al 1995]。

  • 神経系

種々の程度の発達障害および/または知的障害(50%)は、頭蓋顔面の手術時期が関係している可能性がある【訳者注:脳容積と頭蓋内容積の不均等を防ぐための手術の時期が遅れれば、このような障害が発生する可能性がある】[Renier et al 1996]。脳室拡大はよくみられるが、進行性水頭症はあまりみられない(2%)。また、脳の構造上の異常(例えば、キアリ奇形I型【訳者注:小脳扁桃の下垂を特徴とするキアリ奇形I型は、最近では人字縫合早期癒合による後頭蓋窩の狭小化によって発生する二次的な脳の形態変化と考えられている】、透明中隔欠損、脳梁欠損)も報告されている。

  • 腸管形成異常

腸回転異常症が最も多く認められる[Hibberd et al 2016]。先天性横隔膜ヘルニアは5例報告されている[Witters et al 2000, Bulfamante et al 2011, Sobaih&AlAli 2015, Kosiński et al 2016, Kaur et al 2019]。下部食道狭窄症、幽門狭窄症、食道閉鎖症、異所性肛門も報告されている[Cohen&Kreiborg 1993, Pelz et al 1994, Zarate et al 2010, Hibberd et al 2016]。

  • 皮膚

多汗、ざ瘡様の病変、爪形成異常が報告されている[Cohen&Kreiborg 1993, Cohen&Kreiborg 1995, Bissacotti Steglich et al 2016]。

  • その他
    • 頚椎および/または胸椎の癒合が認められ(68%)、通常は第5-第6頚椎。
    • 先天性心疾患(10%)(例えば、心室中隔欠損症、大動脈騎乗)
    • 卵巣未分化胚細胞腫(1例)[Rouzier et al 2008]。低異度乳頭状尿路上皮癌が1例報告されている。これら腫瘍とApert症候群と関連があるかどうかは明らかではない。

Beare-Stevenson cutis gyrata症候群

  • 頭蓋・顔面骨

クローバー葉頭蓋を伴う複数縫合早期癒合症が頭蓋の形態としては最もよくみられる。中等度から重度の顔面中部後退、眼球突出、耳の形態異常、口蓋裂、伝音性難聴、出生歯、相対的下顎前突症【訳者注:上顎骨の低形成による】がみられる。

  • 呼吸

後鼻孔狭窄、舌による気道閉塞、気管の形成異常を含む様々な部位での気道閉塞が認められ、生存には気管内挿管による人工呼吸もしくは気管切開が必要である。

  • 四肢

Cutis gyrataを除いて手足の形態は正常である。

  • 神経系

生存した全例で知的障害を認める(一般的に新生児期に死亡)。水頭症とキアリ奇形I型がしばしばみられる。

  • 皮膚

Cutis gyrataと黒色表皮腫が生下時に通常明らかである。多毛症、軟性線維腫、prominent umbilicus with redundant tissue余剰組織を伴った臍突出、副乳頭もみられる。

  • その他

泌尿生殖器の形成異常(例えば、二分陰嚢、顕著なlabial raphe、皺のある大陰唇)、幽門狭窄、肛門の前方偏位を認める。

Bent bone dysplasia弯曲骨異形成症

  • 頭蓋・顔面

頭蓋冠の骨化不良、冠状縫合早期癒合症、前頭縫合の拡大、眼窩間解離、巨大眼球、中顔面骨の低形成、過剰に折れ込んだ耳輪上部を伴って後方回転した低位の耳介、低形成の耳、歯肉増殖、prenatal teeth出生前時歯、小顎といった様々な特徴を認める。

  • 呼吸

周産期に鐘状胸郭を伴う致死的な骨格形成異常

  • 四肢

曲がった長管骨、骨減少、不整な骨膜表面(特に指(趾)骨)、短指(趾)

  • 腸管

肝脾腫、髄外造血

  • 皮膚

多毛症

  • その他

骨減少、鎖骨低形成、narrow ischia、恥骨低形成、陰核肥大

Crouzon症候群

  • 頭蓋・顔面

頭蓋骨縫合早期癒合症はほとんどの症例に認められる。頭部の形態は癒合した縫合と早期に癒合が生じた時期に依存し、正常な頭蓋の形態からクローバー葉頭蓋まで様々である。頭蓋骨縫合早期癒合症を伴わない乳児では出生時に正常な顔貌であったとしても、生後1-2年で著しい眼球突出、外斜視、顔面中部後退、凸の鼻堤、相対的な下顎前突症【訳者注:上顎骨の低形成による】といった頭蓋・顔面の特徴が出現することがある。顔貌の特徴は家族間で大きく異なることがある。高口蓋は通常みられるが、口蓋裂はあまりみられない。難聴は74%に生じ、ほとんどは伝音性難聴である。

  • 呼吸

気道に問題のないものから、後鼻孔狭窄、舌による気道閉塞、気管の形成異常を含む様々な部位の気道の閉塞が認められる。

  • 四肢

正常である(ただし、罹患していない家族と比較して指(趾)骨の短縮がX線検査にて認められる)[Murdoch-Kinchi&Ward 1997]。

  • 神経系

構造上の脳の形成異常は稀であるが、キアリ奇形Ⅰ型、しばしば小脳扁桃ヘルニアを伴う進行性水頭症(30%)が報告されている。多くの症例では知能は正常であるが、特に水頭症や頭蓋内圧亢進を伴う症例で、発達遅滞が生じる可能性がある。31例の成人Crouzon症候群を対象とした研究では、教育水準が低く、恋愛上のパートナーを得る機会が少なく、子供の数も少ないことが報告されている。居住に違いはなく、抗けいれん薬の使用率が高いことを除けば健康状態は健常者と同様であった。抑うつ気分はCrouzon症候群の罹患者で多くみられたが、生活に対しての前向きさは健常者と同様であった。罹患患者間には大きなばらつきが認められた[Fischer et al 2014]。

  • 皮膚

線上の深い皮膚の皺、余剰な頭皮(Beare-Stevenson cutis gyrata症候群でみられるものと同様)が、c.Ser267Proならびにc.Val274_Glu275delinsLeuといった病的変異を有する症例で報告されている[LeBlanc et al 2018]。

  • その他

約25%の症例で椎体の癒合がみられ、ほとんどが第2-第3頚椎。仙尾部の皮膚突起物も報告されている[Lapunzina et al 2005]。

黒色表皮症を伴ったCrouzon症候群

  • 頭蓋・顔面

早期癒合を来す縫合によって頭部の形態は様々である。著明な眼球突出、外斜視、顎前突がみられ、14%に難聴がみられる。

  • 呼吸

気道に問題がないものから、後鼻孔狭窄、舌による気道閉塞、気管の形成異常を含む様々な部位での気道閉塞がみられる。

  • 四肢

正常である(ただし、罹患していない家族と比較して指(趾)骨の短縮がX線検査にて認められる)[Murdoch-Kinchi&Ward 1997]。

  • 神経系

知能は一般的に正常であるが、特に水頭症により頭蓋内圧が亢進している小児では発達遅延が生じる可能性がある。

  • 皮膚

黒色表皮腫(皺の色素性変化)が新生児期、もしくはそれ以後にみられることがある。

  • その他

歯原性腫瘍の報告がある[Xu et al 2018]。

Jackson-Weiss症候群

  • 頭蓋・顔面

眼球突出ならびに顎前突を伴う複数縫合早期癒合症がみられる。68%の症例で難聴がみられるが、通常伝音性難聴である。

  • 呼吸

気道に問題がないものから、後鼻孔狭窄、舌による気道狭窄、気管形成異常を含む様々な部位での気道閉塞がみられる。

  • 四肢

幅が広く内側に変位した母趾、第2-3趾の合趾がみられ、手指は正常である。第1中足骨の短縮、踵骨と立方骨の癒合、足根骨の異常で外反膝がみられる。

  • 神経系

知能は通常正常である。 

Muenke症候群

明らかな特徴がないため、子供がMuenke症候群と診断されて始めて、その親がこの疾患だと判明する症例もみられる。

  • 頭蓋・顔面骨

一側もしくは両側の冠状縫合早期癒合症を含む様々な特徴がみられる。一側の冠状縫合早期癒合症は男性に多い[Honnebier et al 2008]。頭蓋骨縫合早期癒合症がなく、頭蓋の形態が正常もしくは大頭の症例もある。軽度から重度の顔面中部後退、眼窩間解離、左右対称の中低音域での感音性難聴(61%)がみられる[Honnebier et al 2008]。

  • 四肢

様々である。手根骨もしくは足根骨の癒合はあれば指摘できるが、必ずしも生じるわけではない。短指、手根骨不分離、円錐状骨端が生じうる。

  • 神経系

知能は正常から軽度知的障害まで幅があり、社会的問題や軽度の精神神経疾患(例えば、注意欠如・多動症)は罹患していない親族と比較するとより多くみられる。痙攣は20%の症例でみられる。

  • その他

骨軟骨腫がみられる[Barbosa et al 2009]。

Pfeiffer症候群はCrouzon症候群と表現型が大きく重複している。いくつかのFGFRの病的変異はPfeiffer症候群の症例のみで報告されているが、同じ病的変異をもった症例がPfeiffer症候群もしくはCrouzon症候群と診断【訳者注:表現型により】されている。

  • 頭蓋・顔面

ほとんどの症例で複数縫合早期癒合症がみられる。頭部の形態は早期癒合を来した縫合の部位とその時期に依存し、正常な頭蓋の形態からクローバー葉頭蓋まで様々である。頭蓋骨縫合早期癒合症のない症例も報告されている。顔面中部後退は中等度から重度であり、Crouzon症候群と比較して中顔面のvertical impaction垂直性の嵌入の程度は大きい[Forte et al 2014]。眼窩が浅い重度の頭蓋骨縫合早期癒合症を伴う症例では、眼球突出が著しく眼球の亜脱臼の危険性がある。症例の92%に難聴がみられ、ほとんどは伝音性難聴である。難聴は外耳道の狭窄もしくは閉鎖に起因することもある。口蓋裂を有する症例もある[Stoler et al 2009]。

  • 呼吸

後鼻孔狭窄もしくは閉鎖、tracheal cartilaginous sleeve【訳者注:気管軟骨輪が癒合し硬い筒状の気管となったもの】を含む喉頭気管の形成異常、舌による気道閉塞など様々な部位の気道閉塞がみられる例がある。

  • 四肢

母指および母趾は扁平かつ外反し、様々な程度の短指(趾)がみられる。橈骨と上腕骨の癒合は特にFGFR2の病的変異 であるp.Trp290Cysを有する症例にみられることがある。膝関節拘縮が報告されている。一家系では足の病変のみが臨床的な特徴を呈した[Rossi et al 2003]。

  • 神経系

知能は正常から重度の知的障害まで様々である。痙攣や早期死亡の危険性は高いと報告されている。脳容積と頭蓋内容積の不均等を防ぐための早期手術と睡眠時無呼吸の管理は、重症の小児例においてその知的予後を改善させる可能性がある[Wenger et al 2019]。約28%の症例で水頭症に対し外科的治療が必要となる[Cinalli et al 1998]。クローバー葉頭蓋を伴う症例の約50%ではキアリ奇形Ⅰ型がみられる[Cinalli et al 1995]。

  • その他

仙尾部の皮膚突起物が報告されている[Oliveira et al 2006, Lai et al 2008]。Prune belly(プルーンベリー)症候群は2症例で報告されている[Bracero et al 1998, Peña-Padilla et al 2019]。

非症候群性冠状縫合早期癒合症

  • 知能

正常

  • 頭蓋・顔面

一側もしくは両側の冠状縫合早期癒合症、左右非対称的な短頭や眼窩間開離

  • 四肢

正常    

FGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症の特徴(別紙)

表現型 頭蓋骨縫合早期癒合 追加すべき頭蓋顔面/気道の特徴 手/足 神経系 その他
Apert症候群 複数縫合早期癒合
(典型的には冠状縫合を含む)
  • 顔面中部後退、眼球突出
  • 口蓋裂
  • 伝音性難聴
  • 歯牙異常
  • 様々な部位での気道閉塞
  • 皮膚性もしくは骨性の合指(趾)症および/または多指(趾)症
  • synonychia【訳者注:第2、第3、第4指の爪癒合】
  • 知的障害(〜50%)
  • 非進行性の脳室拡大(>50%)
  • キアリ奇形I型、透明中隔欠損、脳梁欠損
  • 椎体癒合(多くは第5-第6頚椎)
  • 多汗
  • ざ瘡
  • 爪形成異常
Beare-Stevenson cutis gyrata症候群 複数縫合早期癒合、
ほとんどの例でクローバ葉頭蓋
  • 重度の顔面中部後退と眼球突出
  • 口蓋裂
  • 伝音性難聴
  • natal teeth出生時歯
  • 様々な部位での気道閉塞
正常
  • 知的障害(100%)
  • 水頭症
  • キアリ奇形I型
  • 高い新生児死亡率
  • 脳回状の皮膚
  • 黒色表皮腫
  • 多毛症
Bent bone dysplasia 冠状縫合
  • 前頭縫合は開存
  • 眼窩間解離
  • 中顔面の低形成
  • prenatal teeth
  • 耳介低位
  • 短指(趾)
  • 指骨と中手骨の骨性結節
致死的、データなし
  • 肝脾腫
  • 陰核肥大
  • 多毛症
Crouzon症候群 様々な複数縫合早期癒合:小児期後半に発症することもある
  • 様々な顔面中部後退と眼球突出(年齢とともに増悪)
  • 伝音性および感音性難聴
  • ±気道閉塞
一般的に正常
  • 水頭症
  • キアリ奇形I型
  • 知的障害は稀
25%に椎体癒合(多くは第2-第3頚椎)
黒色表皮腫を伴うCrouzon症候群 様々な複数縫合早期癒合:小児期後半に発症することもある
  • 様々な顔面中部後退と眼球突出は年齢とともに増悪する
  • 伝音性および感音性難聴
  • ±気道閉塞
正常
  • 水頭症
  • キアリ奇形I型
  • 知的障害は稀
黒色表皮腫
Jackson-Weiss症候群 複数縫合早期癒合
  • 眼球突出
  • 伝音性難聴
  • ±様々な部位での気道閉塞
  • 幅が広く内側に変位した母趾、第2-3合趾症、足根骨および/または中足根の癒合
  • 正常な手指
  • 多くは知能正常
  • 外反膝
Muenke症候群 一側もしくは両側の冠状縫合早期癒合(85%)
  • 様々な程度の顔面中部後退と眼球突出
  • 感音性難聴
  • 短指
  • 手根骨および足根骨の癒合
  • 発達障害(66%)
  • 知的障害(36%)
  • ADHD(24%)
  • 痙攣発作(20%)
 
Pfeiffer症候群 多くは複数縫合早期癒合、クローバ葉頭蓋もある
  • 多くは中等度から重度の顔面中部後退と眼球突出
  • 伝音性難聴
  • ±様々な部位での気道閉塞
  • 幅が広く内側に変位した母指と母趾
  • ±短指
  • 水頭症
  • キアリ奇形I型
  • 知的障害(注1)
  • ±肘関節と膝関節の癒合
  • ±仙骨部の皮膚突起物
非症候群性冠状縫合早期癒合症 一側もしくは両側の冠状縫合早期癒合
  • 両側冠状縫合早期癒合では眼球突出
  • 様々な程度の顔面中部後退
正常 (注2)  
 

注1:重度の頭蓋骨縫合早期癒合症では知的障害はよくみられるが、脳容積と頭蓋内容積の不均衡および睡眠時無呼吸症候群に対して、積極的な内科的および外科的治療を行うことで知的障害が軽減される可能性がある。【訳者注:頭蓋容積を拡大する外科治療によって不均衡を早期に改善すれば、知的障害が予防できる可能性がある】
注2:FGFR2非関連症候群性冠状縫合早期癒合症の乳児では、経過とともにCrouzon症候群やMuenke症候群の特徴を示すことがある。

臨床的な合併症

この項目では、FGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症の管理に影響を及ぼす一般的な合併症について説明する。特に明記されていないかぎり、以下の一般的な説明にはMuenke症候群と非症候群性冠状縫合早期癒合症は含まれない。

頭蓋骨縫合早期癒合症
FGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症の大多数は先天的な頭蓋骨縫合早期癒合症を呈している。しかし、頭蓋骨縫合早期癒合症は幼児期もしくは小児期に発症することもあり、先天性の頭蓋骨縫合早期癒合症の症例では時間経過とともに新たな早期癒合が生じる可能性もある。Muenke症候群では冠状縫合のみの早期癒合が生じやすく、一方、他の頭蓋骨縫合早期癒合症(例えば、Apert症候群、Crouzon症候群、Pfeiffer症候群)では出生後に早期癒合が進行する。

一側冠状縫合早期癒合症では、鼻のねじれを伴う非対称的な前頭部といわゆるharlequin eye【著者注:本文の12p参照】と呼ばれる眼の変形が生じる。両側冠状縫合早期癒合症ではturribrachycephaly塔状短頭症を呈する。

複数縫合早期癒合症では、早期癒合した縫合、水頭症の有無、早期癒合の時期によってさまざまな頭部の変形をきたす。頭蓋骨の形態は、発達する脳が頭蓋骨による空間を外方向に広げる圧によって決まる。通常、縫合線に対し垂直方向に頭蓋骨は拡大する。複数の縫合が癒合した場合、抵抗の少ない部分の拡大が起こるため頭蓋骨の形態変化は予測可能である。出生前に全縫合に早期癒合が生じれば、クローバー葉頭蓋(Kleeblatschadel、cloverleaf skull)となる。幼児期や小児期に発生した全縫合に早期癒合が生じた場合はクローバー葉頭蓋の形態とはならず、頭囲の増大不良を呈し頭部CTにて診断されるのみである。この疾患の例では小頭を呈する場合やそうでない場合がある。

摂食の問題は多因子によって発生し、以下のいずれかが原因となりうる。
・吸啜の質に影響する口蓋の異常(例えば、高口蓋、狭口蓋、口蓋裂)
・気道閉塞による呼吸困難(例えば、後鼻孔狭窄、後鼻孔閉鎖、気管軟化症、喉頭軟化症)。後鼻孔狭窄や後鼻孔閉鎖を呈する乳児は吸啜を試みるが、口呼吸をするために突然吸啜をやめてしまう。骨性通路の狭窄の程度は、吸啜の持続時間と相関している【訳者注:上気道の狭窄が高度なほど鼻腔からの息継ぎの呼吸ができずに無呼吸となるため、息継ぎのため吸啜ができる持続時間は短くなる】。
・上行性および/または下降性の誤嚥
・吸啜、嚥下、呼吸の協調障害、これらは他の神経機能障害の兆候を伴わない場合もある。
・重度の神経障害(例えば、重症の水頭症、症候性のキアリ奇形I型)
・腸管異常(例えば、幽門狭窄、腸管回転異常、腸捻転)

複数の部位での気道閉塞:年齢によって要因は異なるが、ほとんどの症例である程度の気道閉塞を有する。
・後鼻孔閉塞ならびに閉塞を含む骨性の閉塞もしくは狭窄による鼻腔の狭小化。後鼻孔狭窄のある乳児において、骨性気道は比較的安定しているが、成長とともに1回換気量の増加により呼吸困難が増悪する可能性がある。後鼻孔狭窄のある乳児ではより少量でも換気を終えるまでに、徐々により時間がかかるようになる。口呼吸中の哺乳では鼻翼呼吸、胸骨上部の陥凹、吸啜の断続【訳者注:鼻からの息継ぎの呼吸が出来ないため】がみられることがある。
・舌による気道閉塞は、口蓋裂の修復後の乳児で増悪することがある。
・気管の形成異常には癒合した輪状軟骨やtracheal cartilaginous sleeves(気管軟骨輪が癒合し硬い筒状の気管となったもの)を含む。Tracheal cartilaginous sleevesは無症状であることが多いが、感冒などで粘液が気道を閉鎖し突然死する危険性が高い。Tracheal cartilaginous sleevesは術中の気道評価で確認でき、この評価は症候群性の複数縫合早期癒合症のすべての症例で推奨される[Pickrell et al 2017, Wenger et al 2017]。
・慢性的な誤嚥による気道の炎症

睡眠時無呼吸:様々な部位での気道閉塞による閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea: OSA)は、小児期から成人期に発症もしくは増悪することがある。FGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症の大多数の症例では顔面中部後退を呈し、これは閉塞性睡眠時無呼吸症候群の一因となりえる。持続陽圧換気用のマスク装着は上顎骨を圧迫し、小児期に持続的にこのマスクを着用すると顔面中部後退を悪化させて気道抵抗を大きくし、OSAを潜在的に悪化させる[Driessen et al 2013]ため、治療が困難な場合がある。

中枢性睡眠時無呼吸症候群は、キアリ奇形I型もしくは重症の水頭症を伴う症例でより多く認められる。FGFR2の病的変異であるp.Trp290CysによるPfeiffer症候群の小児例では、特に中枢性睡眠時無呼吸症候群を生じやすく、報告された生存例全例で少なくともある期間で睡眠中に人工呼吸管理を必要とした[Wenger et al 2019]。

眼球異常:冠状縫合早期癒合とmaxillary arches上顎弓の発育不全により、骨性の眼窩の奥行きが浅い状態や眼球突出が生じる。眼窩が特に浅い症例では眼窩内からの眼球の亜脱臼(すなわち、眼窩内から前方に脱出した眼球の後ろに眼瞼が引き込まれる)を生じることもある。眼球突出を呈する症例では睡眠中に完全に閉眼を保つことが難しく、角膜症や角膜瘢痕が起こる。
骨性眼窩への影響が軽度である症例では、眼瞼裂斜下(外眼角と内眼角を結ぶ線で想定される眼瞼裂の傾斜が異常に下がっている状態)が生じることがある。その他の眼科的異常としては、斜視、屈折異常、不同視、虹彩低形成、後部胎生環などがある[McCann et al 2005]。
頭蓋内圧が亢進した症例では、特に迅速かつ積極的な治療介入【著者注:頭蓋形成術などの治療】を行わないと、乳頭浮腫が発生することがあり、これにより視神経萎縮や視力喪失が生じる。

難聴:Muenke症候群を除く全てのFGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症で感音性難聴よりも伝音性難聴が生じやすい。

歯牙異常:欠損歯、エナメル斑、異常歯牙萌出がよく見られる。歯牙の成熟はApert症候群の方がCrouzon症候群よりも著しく遅延する[Reitsma et al 2014]。特にmaxillary arches上顎弓にdental crowding歯叢生がしばしば見られる。ほとんどの小児は、上顎の成長の際に進行性の上顎骨の後退そして/あるいは発達異常の結果として不正咬合が生じる[Kolar et al 2017]。

四肢異常:橈骨と上腕骨の骨癒合症は、一部の症例、最も多いのはApert症候群、ときにPfeiffer症候群、特にFGFR2の病的変異であるp.Trp290Cysの症例に生じうる。上腕の可動性は肩関節形成不全によって制限されることがあり、上腕の前屈と外転が徐々に制限され、頭上で【訳者注:上肢を挙上して】作業を行うことが困難となる。大腿骨骨折を含め骨折は生じやすくなる[Author, unpublished data]。扁平で内側偏位した母指(趾)はPfeiffer症候群に特徴的である。軽度に扁平な母指はその他のFGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症でも報告されている。軸前および/または軸後の多指(趾)症は稀である[Mantilla-Capacho et al 2005]。

椎骨異常:椎骨の癒合はCrouzon症候群よりもApert症候群の例でより生じやすい。椎骨癒合を生じた症例の約半数で複数の癒合を認める。その結果として側彎や不安定性が生じうる[Shotelersuk et al 2002, Lin et al 2019]。頚椎の不安定性も報告されている。環軸椎亜脱臼や第1頚椎の潜在性二分脊椎【訳者注:棘突起や椎弓の癒合不全を意味する。】の例も報告されている[Breik et al 2016]。

神経系:水頭症はCrouzon症候群とPfeiffer症候群には顕著な特徴であり、どの時期でも発症しうる。複数縫合早期癒合を認めるCrouzon症候群とPfeiffer症候群の症例の多くで、生後2-3年以内に閉塞性水頭症に対して外科的治療(例えば、脳室腹腔シャント、内視鏡下第三脳室底開窓術)が必要で、一部の例では乳児期の早い時期に治療する必要がある【訳者注:生後6か月までは内視鏡下第三脳室底開窓術は有効性が低いため、この時期に行うことは少ない】。FGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症の各々の疾患で大後頭孔部の発達の程度は異なり、後頭内軟骨結合に早期癒合が生じ、水頭症や頭蓋の形態異常を来すことがある[Rijken et al 2015, Coll et al 2018]。非進行性の脳室拡大はApert症候群の半数以上でみられるが、これらの症例は水頭症に対する外科的治療を必要とする可能性は非常に低い【訳者注:脳室拡大のみでは必ずしも治療が必要な水頭症の病態とは言えず、脳室拡大が進行すれば脳室内圧が高く水頭症の病態と評価し、治療が必要と判断する】。

脳梁の異常、透明中隔の欠損、後頭蓋窩のくも膜嚢胞、辺縁系など脳の形成異常はApert症候群でよくみられる。キアリ奇形I型そして/あるいは小脳扁桃下垂が認められ、Crouzon症候群の73%で慢性の小脳扁桃ヘルニアを認め、対照的にApert症候群では2%のみに認められる【訳者注:病的な小脳扁桃ヘルニアとは、画像上で小脳扁桃が大後頭孔から5mm以上の尾側への下垂(Strahle J at al: Chiari malformation associated with craniosynostosis. Neurosurg Focus. 2011 Sep;31(3):E2.)をいい、一般的に腫瘍性病変、血腫、水頭症などの脳圧迫病変を伴わずにこのような慢性の小脳扁桃下垂を呈すればキアリI型奇形と診断する】。

神経系の発達:知能発達は正常から重度の障害まで様々である。重篤な障害をもつ小児のほとんどはクローバー葉頭蓋、脳の形成異常および/または重症の水頭症を伴っている。複数縫合早期癒合症の小児では、頭蓋内圧亢進に対処するため早期かつ積極的な外科的治療により、知的障害を防ぐことができる可能性がある[Wenger et al 2019]。神経行動学的もしくは発達上の課題は、聴覚障害、視覚障害、身体的制限(例えば、四肢の形成異常)、睡眠時無呼吸症候群によるものも挙げられる。

心血管系:構造面での心臓の形成異常はApert症候群の約10%に生じるが、Crouzon症候群やPfeiffer症候群では稀である。複雑な先天性心疾患は、他の処置(例えば、気管切開による陽圧換気は単心室を有する症例で予後不良の原因となりうる)と同様に心臓病変によって障害の罹患率や死亡率の上昇と関連している。心房でのシャントの原因となる心臓の欠損は頭蓋骨縫合早期癒合症の手術中の塞栓による脳梗塞のリスクを上昇させうる。小児の重症かつ未治療の閉塞性睡眠時無呼吸は右室肥大と肺高血圧を発症する可能性がある。

その他:
消化器系:構造的な異常として腸回旋異常、幽門狭窄、食道閉鎖が挙げられる。
泌尿生殖器系:水腎症や停留精巣が報告されている。

予後: Crouzon症候群ならびにApert症候群の複数世代にわたる遺伝家系が報告されている。介助を必要とする身体的もしくは認知面での障害がある症例は存在するが、多くのCrouzon症候群の成人例ならびに一部のApert症候群の成人例は完全に自立した生活を送っている。


鑑別診断

頭蓋骨縫合早期癒合症は原発性もしくは二次性のものがある。原発性の頭蓋骨縫合早期癒合症では、FGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症のように縫合部の生物学的な異常により縫合部の早期癒合が生じる。原発性の頭蓋骨縫合早期癒合症は孤発性もしくは症候群性の例のこともある。

二次性の頭蓋骨縫合早期癒合症では、縫合部の生物学的特性は正常であるが、異常な外力により縫合部の早期癒合が生じる【訳者注:頭蓋骨縫合早期癒合症を呈さない水頭症の乳児例で脳室腹腔シャントの術後慢性期に、頭蓋内からの髄液の長期にわたる過剰排除により二次性に頭蓋骨縫合早期癒合症が発生することがある】。

非症候群性頭蓋骨縫合早期癒合症

単一縫合早期癒合症では特徴的な頭蓋の形態が認められる。前頭縫合(三角頭蓋を来たす)、矢状縫合(舟状頭蓋を来す)、人字縫合(片側耳介の垂直方向への偏位と傾斜した頭蓋底部を伴う非対称的な後頭部の平坦化を来す)、一側冠状縫合(鼻の正中線のゆがみといわゆるharlequin eye【著者注:8p参照】とよばれる眼の変形徴候を伴う非対称的な前頭部を来す)、両側冠状縫合(塔状/短頭蓋を来す)。

明らかに非症候群性かつ非家族性の単一縫合早期癒合症の204例では、早期癒合を来す縫合の違いによって内在する遺伝学的差違が発見される可能性に差があった。[Wilkie et al 2010, Mathijssen]。 

  • 非症候群性の一側冠状縫合頭蓋骨縫合早期癒合症:明らかに非候群性の一側冠状縫合早期癒合症では、何らかの症候群性の疾患である有病率は17%であり、Muenke症候群は10%で認められた。
  • 非症候群性の両側縫合早期癒合症:明らかに非症候群性の両側冠状縫合早期癒合症では、Muenke症候群は38%に認められ、その他の症候群性の疾患は認められなかった。

注:(1)非症候群性の人字縫合、矢状縫合あるいは前頭縫合の早期癒合症の例では、病的な遺伝子変異は同定されなかった[Wilkie et al 2010, Mathijssen 2015]。(2)症候群性もしくは非症候群性の前頭縫合早期癒合症の例を対象とした研究では、FGFR1CER1あるいはCDONに病的変異は確認されなかったことから、前頭縫合早期癒合症に対してこれら遺伝子解析は不要であることが示唆された[Jehee et al 2006]。

症候群性の原発性頭蓋骨縫合早期癒合症
頭蓋骨縫合早期癒合症は150以上の遺伝性疾患にみられる所見である。これに加えて考慮すべき疾患を表2に示す。

表 2. FGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症の鑑別疾患(別紙)

遺伝子 症状 遺伝形式 鑑別疾患での臨床症状
頭蓋骨縫合早期癒合 顔面の特徴 手および/または足の所見  
CD96 Opitz三角頭蓋症候群(C症候群)
(OMIM 211750)
常染色体顕性遺伝 三角頭蓋 小顎、内眼角贅皮、眼瞼裂斜上、斜視、上向きの鼻孔、
広い鼻梁、短い鼻、巨口
軸後性多指症、彎指趾症、指の尺側偏位、terminal transverse limb reduction、中手骨低形成、合指(趾)症  
EFNB1 頭蓋前頭鼻骨症候群
(OMIM 304110)
伴性遺伝 冠状縫合早期癒合 非対称の前頭隆起、後頭部毛髪線低位、widow's peak富士額、眼窩間解離、広い鼻裂、 ±口唇裂および口蓋裂 手と足の分裂爪、指および趾は遠位側に変位あるいは低形成  
FLNA X連鎖性耳口蓋指症候群(X-linked otopalatodigital spectrum disorders 伴性遺伝 様々 様々 様々、第1指(趾)の低形成  
GLI3 Greig頭蓋多合指症候群 常染色体顕性遺伝 大頭 前頭隆起、眼窩間開離, 広い鼻梁 多指(趾)症(しばしば軸後性) 、第1-3趾の合趾症、しばしば重複した第1趾  
IHH1 Philadelphia型頭蓋骨縫合早期癒合症 2 常染色体顕性遺伝 矢状縫合早期癒合 張り出した前額部 皮膚性合指(趾)症  
MSX2 Boston型頭蓋骨縫合早期癒合症
(OMIM 604757)
常染色体顕性遺伝 冠状縫合早期癒合;クローバ葉頭蓋 前頭眼窩の後退もしくは前頭部の隆起 足:短い中足骨  
POR Antley-Bixler症候群(Cytochrome P450 Oxidoreductase Deficiency参照) 常染色体潜性遺伝 短頭あるいは尖頭 中顔面後退 手:長い指、彎指趾症、屈指症, 中手骨癒合、wrist deviation手首の偏位
足:揺り椅子状の足底、中足骨癒合、湾足
 
RAB23 Carpenter症候群
(OMIM 201000)
常染色体潜性遺伝 様々な程度の矢状縫合、人字縫合、冠状縫合の早期癒合;尖頭 中顔面後退、低い鼻梁, 内眼角贅皮, 角膜混濁 手:短指症、合指症、中節骨無形成/低形成
足:軸前性多趾症
 
RECQL4 Baller-Gerold症候群 常染色体潜性遺伝 冠状縫合、人字縫合の早期癒合;短頭 眼球突出、張り出した前額部 手: radial ray defect 橈側列欠損(第1指無形成/低形成、橈骨無形成/低形成)  
SKI Shprintzen-Goldberg症候群 常染色体顕性遺伝 冠状縫合、矢状縫合あるいは人字縫合 高く伸びた、あるいは張り出した前額、眼球突出、眼窩間解離、眼瞼裂斜下、頬部の平坦化 手:長い指、屈指症
足:malposition、扁平足
 
SOX9 屈曲肢異形成症 常染色体顕性遺伝 認められない 小顎、顔面中部後退、巨頭、Robin sequenceシークエンス 指(趾)節骨の短縮
内反足
 
TGFBR1
TGFBR2
Loeys−Dietz症候群 常染色体顕性遺伝 矢状縫合早期癒合、
長頭
眼窩間解離、
二分口蓋垂±口蓋裂
扁平足  
TWIST1 Saethre-Chotzen症候群 常染色体顕性遺伝 冠状縫合(一側もしくは両側) 低い前頭毛髪線、眼瞼下垂、斜視、顔面非対称 手:第2-3指合指症  

注1: Klopocki et al[2011]
注2:Robin et al [1996]

これら表現型に関連する遺伝子をOMIMでみるには、「Craniosynostosis: OMIM Phenotypic Series」を参照。

二次性の頭蓋骨縫合早期癒合症【訳者注:上の「鑑別診断の項目」でのべたように、水頭症の乳児例に対する脳室腹腔シャントの術後に二次性の頭蓋骨縫合早期癒合症が発生することがある。母が妊娠中に甲状腺機能亢進の状態では、二次性の頭蓋骨縫合早期癒合症が児に発生することがある。】: 脳の発達が不十分な小児において、全ての頭蓋縫合で早期癒合が生じ、左右対称な小頭となる。子宮内や乳児期の頭位異常でも頭蓋形態の異常は引き起こされうる(斜頭症)。この異常は適切な頭位で改善することが多いが【訳者注:生後2,3カ月の仰臥位による後頭部の平坦化の発生は、長時間の頭部の同じ部位への加重によって二次的に発生し、通常向き癖、あるいは抱き癖と呼ばれる。一側の後頭部の平坦化であれば、積極的に他方向に頭部を向けることで改善したり、寝返りが可能となれば後頭部に加重がかかる時間が短縮するため、通常は生後6カ月頃から自然に改善する。】、ときに頭蓋骨縫合早期癒合が生じうる[Hunt & Puczynski 1996, Kane et al 1996]。


2.FGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症の原因

FGFR1FGFR2FGFR3の3つの遺伝子がFGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症と関連しているとされる(表3)。

表 3.頭蓋骨縫合早期癒合症の分子遺伝学的特徴

表現型 遺伝子 遺伝子に病的変異が検出された罹患者の割合 遺伝形式 コメント
Apert症候群 FGFR2 100% 常染色体顕性遺伝 Apert症候群の最も多い原因遺伝子として、FGFR2の病的変異原であるp.Ser252Trpおよびp.Pro253Argが挙げられる1。
遺伝子欠失/重複が3例報告されている
Beare-Stevenson cutis gyrata症候群 FGER2 100% 常染色体顕性遺伝 63-bp遺伝子内欠失が1例報告されている3
Bent bone dysplasia FGFR2 100% 常染色体顕性遺伝 Bent bone dysplasiaの原因となるFGFR2の病的変異は、膜貫通ドメインにのみ同定されている
Crouzon症候群 FGFR2 100% 常染色体顕性遺伝  
黒色表皮腫を伴うCrouzon症候群 FGFR3 100% 常染色体顕性遺伝 黒色表皮腫を伴うCrouzon症候群の原因となるFGFR3の病的変異としてp.Ala391Gluが挙げられる
Jackson-Weiss症候群 FGFR2 100% 常染色体顕性遺伝
Muenke症候群 FGFR3 100% 常染色体顕性遺伝 Muenke症候群の原因となるFGFR3病原性バリアントとして、p.Pro250Argが挙げられる
Pfeiffer症候群 FGFR1 <5%7 常染色体顕性遺伝  
FGFR2 >95% 常染色体顕性遺伝  
FGFR3 1例のみ 常染色体顕性遺伝 Pfeiffer症候群において、FGFR3の病的変異としてp.Ala391Gluが1例報告されている
非症候群性冠状縫合早期癒合症 FGFR2 常染色体顕性遺伝  
FGFR3 <100%9 常染色体顕性遺伝  
  1. Bochukova et al[2009]
  2. Oldridge et al[1999]、Bochukova et al[2009]、Fenwick et al[2011]
  3. Slavotinek et al[2009]
  4. Merrill et al[2012]
  5. Mulliken et al[1999]
  6. Muenke et al[1997]
  7. FGFR1関連 Pfeiffer症候群は重症度が様々であり、頭蓋顔面に特徴を示さない症例もあるため、診断されていないこともある[Flöttmann et al 2015]。
  8. Rymer et al[2019]
  9. FGFR2もしくはFGFR3非関連症候群性頭蓋骨縫合早期癒合症において、他のFGFR表現型を後に発症したかどうかについては明確ではない。その理由として、Crouzon症候群とMuenke症候群の形態的特徴は進行性であり、乳児期では評価が困難であることがあげられる。

3.発端者によるFGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症の遺伝子上の原因を特定するための評価戦略

発端者

片側あるいは両側の冠状縫合早期癒合あるいはクローバー葉頭蓋、特徴的な顔貌の特徴、および/または手や足に種々の所見がある胎児や症例では、FGFR頭蓋骨関連頭蓋骨縫合早期癒合症を疑うべきである(1参照)。これらの特徴は重篤で生命を脅かすものから極めて軽度のものまで様々であり、新生児期には明らかでない場合もある。一般的に、上記の特徴は年齢とともに顕著となる。

FGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症を来す特異的な原因遺伝子の解明:

  • 予後についての議論(このGeneReviewが扱う範囲外となる)や遺伝カウンセリングに役立つ。
  • 臨床的そして放射線学的所見、あるいはFGFRFGFRFGFR3の病的変異の同定に基づき、病歴、身体的診察、画像診断、家族歴そして、遺伝子検査に基づいて行なう。

注:正式な臨床診断基準がないため、特定の診断を下すには遺伝子検査によって確認をすべきである。

病 歴

胎児期の超音波検査にて、冠状縫合が関連する頭蓋縫合の早期癒合、特にクローバー葉頭蓋、多指(趾)症、顔面中部後退、頭蓋の発育制限などの所見がある胎児では、FGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症を疑うべきである。短い肋骨を伴う胸郭低形成、短い四肢、曲がった大腿骨、頭蓋骨変形といった特徴をもつ胎児ではbent bone dysplasia弯曲骨異形成症を疑うべきである。【訳者注:Apert症候群は合指(趾)症を呈する特徴があるため、多くの場合、出生前に超音波検査による外表所見から診断される。】

身体的診察

身体的診察は標準的な成長指標(身長、体重、頭囲)を含み、下記の所見に留意すべきである。

  • 頭蓋骨縫合早期癒合症の評価のため、頭蓋の形態異常や大泉門部の膨隆(これは頭蓋内圧亢進を示唆する)
  • 眼窩部の保護、および睡眠時に眼瞼が眼球を完全に覆っているかどうかに特に注意
  • 鼻翼呼吸、胸骨上部の陥凹【訳者注:特に吸気時】、あるいはその他の閉塞性呼吸障害の所見、あるいは経鼻胃管や吸引カテーテルの挿入困難、後鼻孔狭窄もしくは閉鎖を示唆する所見
  • 多指(趾)症や母指異常を検索するための手や足の慎重な診察
  • 橈尺骨癒合症および/または関節拘縮を評価するため、肘関節や膝関節の可動域 
  • 仙骨部の突起物やその他異常がないことを確認するための泌尿生殖器領域の診察 

家族歴

FGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症の臨床的ならびに画像的な所見を有する親族に着目し、三世代の家族歴を聴取すべきである(例えば、頭蓋の形態異常、眼球突出、顔面中部後退、骨格の形成異常、および/またはその他構造的な先天性異常について具体的な質問を行う)。診察所見もしくは診療録(分子遺伝子検査の結果を含む)から得られた所見は文書化し記録しなくてはならない。

分子遺伝学的検査

遺伝子標的検査(ターゲット解析、単一遺伝子検査、マルチ遺伝子パネル)、網羅的ゲノム検査(エキソームシーケンス、エキソームアレイ、ゲノムシーケンス)などがある。遺伝子標的検査ではどの遺伝子が関与しているかを臨床医が判断する必要があるが、ゲノム検査ではその必要がない。検査の選択肢は下記の通りである。

ターゲット解析や単一遺伝子検査は特定のFGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症の臨床的特徴を有する発端者で施行することを検討(1参照)。

  • Apert症候群

FGFR2病的変異 p.Ser252Trp、p.Pro253Argのターゲット解析

  • Beare-Stevenson cuit gyrate症候群

FGFR2の病的変異 p.Ser372Cys、p.Tyr394Cysのターゲット解析

  • Bent bone dysplasia弯曲骨異形成症

FGFR2の病的変異 p.Met391Arg、p.Tyr381Aspのターゲット解析

  • 黒色表皮症を伴ったCrouzon症候群

FGFRの病的変異 p.Ala391Gluのターゲット解析

  • Jackson-Weiss症候群

FGFRの配列解析を行い、遺伝子内の小さな欠失/挿入、ミスセンス、ナンセンス、スプライス部位の変異を最初に検出する。一般的に、エキソンあるいは全遺伝子の欠失/重複は検出されない。病的変異が検出されない場合、遺伝子内欠失もしくは重複を検出するため、FGFRの欠失/重複に対しターゲット解析を行う。

  • Muenke症候群

FGFRの病的変異p.Pro250Argのターゲット解析を行う。病的変異が検出されない場合、次にTCF12の配列解析の実施を検討する(2参照)。

  • Pfeiffer症候群

FGFR2の配列解析を行い、遺伝子内の小さな欠失/挿入、ミスセンス、ナンセンス、スプライス部位の変異を最初に検出する。一般的に、エキソンや全遺伝子の欠失/重複は検出されない。病的変異が検出されない場合、遺伝子内の欠失もしくは重複を検出するため、FGFR2の欠失/重複に対しターゲット解析を行う。 

頭蓋骨縫合早期癒合症のマルチ遺伝子パネルは、FGFR1FGFR2FGFR3TCF12TWIST1、その他関連する遺伝子(2、表 3 参照)を含み、非常に妥当な費用で病状の遺伝的原因を特定できる可能性が高い。その一方で、表現型が特定できない意義不明な病的変異や、表現型が不明な病的変異の同定には限界がある。
注:(1)パネル検査に含まれる遺伝子および各遺伝子検索の診断感度は検査機関ごとに異なり、時間経過とともに変化する可能性がある。(2)マルチ遺伝子パネルのなかには、本記事のGeneReviewで議論されている疾患と関連性のない遺伝子が含まれている場合がある。(3)検査機関によってはパネル検査として、検査機関が独自に想定したパネル検査や、臨床医が指定した遺伝子を含む表現型に焦点を当てた独自のエキソーム解析が含まれる場合がある。(4)パネル検査に使用される検出法として、配列解析、欠失/重複解析、その他のnon-sequencing-based testsが含まれる。これら疾患では欠失/重複解析も含むマルチ遺伝子パネルが推奨される(3参照)。

マルチ遺伝子パネルの紹介はこちらEducational Materials — Genetic Testing: Current Approaches - GeneReviews® - NCBI Bookshelf)から。遺伝子検査を指示する臨床医向けの詳細情報はこちらEducational Materials — Genetic Testing: Current Approaches - GeneReviews® - NCBI Bookshelf )から。

網羅的ゲノム検査(臨床医がどの遺伝子が関与しているか判断する必要はない)を検討することもできる。エキソームシーケンスは現在もっとも広く行われているが、ゲノムシーケンスも可能である。

網羅的ゲノム検査はこちらEducational Materials — Genetic Testing: Current Approaches - GeneReviews® - NCBI Bookshelf)から。ゲノム検査をオーダーする臨床医向けの詳細情報はこちらEducational Materials — Genetic Testing: Current Approaches - GeneReviews® - NCBI Bookshelf)から。


4.遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝学的検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的、倫理的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

FGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症は常染色体顕性遺伝の形式をとる。

家族内リスク

発端者の両親の場合

  • FGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症の症例では、罹患している親を持つ場合もあれば、de novoで病的変の結果として発症する場合もある。
    • 軽度な表現型の場合(Muenke症候群、Crouzon症候群、Pfeiffer症候群、Jackson-Weiss症候群にてみられる)、罹患した親からの病的な遺伝子変異の遺伝が一般的で、最重症例(例えば、bent bone dysplasia弯曲骨異形成症)ではde novoの病的変異が一般的である。
    • FGFR非関連の症候群性冠状縫合早期癒合症では、罹患しているかあるいはしていないかもしれないヘテロ接合体を持つ親から通常遺伝する。
  • 明らかにde novoの病的変異を持つ発端者の両親には、分子遺伝学的検査と臨床的ならびに画像的な評価が推奨される。
  • 発端者で確認された病的変異が、どちらかの両親の白血球のDNAで検出されない場合、その理由としてde novoの病的な遺伝子変の発端者であるということ、もしくは両親の生殖細胞のモザイクが考えられる。
  • FGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症と診断された何例かの家族歴は、家族の症状が認識されていなかったり、あるいは浸透率が低かったりしたために問題ないと判断されることがある。したがって、発端者の両親に対して分子遺伝学的検査ならびに臨床的、画像的な評価が行われない限り、家族歴で明らかに異常がないとは判断されない。
  • 親が最初に病的変異を起こした個体である場合、その本人は遺伝子変異を来した体細胞および生殖細胞にモザイクを有し、無症状もしくは中等度から軽度の症状を有している可能性がある。現在までにCrouzon症候群は親のモザイク状態である唯一のFGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症と報告されている。
  • 注:Crouzon症候群、Apert症候群、Pfeiffer症候群[Glaser et al 2000]、Beare-Stevenson cutis gyrata症候群、Muenke症候群[Rannan-Eliva et al 2004]において、父親が高年齢化がde novoの病的変異と関連していることが臨床的に明らかになった。de novo変異における父親の年齢は、Apert症候群では分子レベルで既に明らかにされている[Moloney et al 1996, Yoon et al 2009]。FGFRの病的変異はそれが生じる精原細胞において選択優位性をもたらすので、男性生殖細胞に逆説的に強められるものと考えられる[Goriely et al 2003, Choi et al 2008, Bochukova et al 2009, Yoon et al 2009]。

発端者の同胞

発端者の同胞のリスクはその両親の遺伝状態によって異なる。

  • 親が罹患しているかまたは発端者で同定されている病的変異を有していることが判明している場合、同胞が病的変異を受け継ぐリスクは50%である。
  • FGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症の表現型に関して、重症度や特異的な症状は罹患した個人ごとに大きく異なってもよいが、通常同じ病的変異をヘテロ結合で持つ家族内では均一である。例えば、発端者がPfeiffer症候群の臨床所見を有する場合、発端者のヘテロ接合の同胞は、Crouzon症候群、Jackson-Weiss症候群、Apert症候群よりもむしろPfeiffer症候群の臨床所見を有する可能性が高い。しかし、稀に同じ家系の罹患者間で表現型が異なる例が報告されている。Moko & Blandin de Chalain[2001]、Aravidiset al[2014]、Bessenvei et al[2014]らは、家族内の例ではPfeiffer症候群を示唆する臨床所見をもち、また他の例ではJackson-Weiss症候群もしくはCrouzon症候群を示唆する所見をもったと報告している。
  • ヘテロ接合の同胞では、特定のタイプのFGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症の臨床的重症度に大きな違いが認められることがある。例えば、Crouzon症候群の家系内で、出生時に早期癒合している縫合や呼吸補助の必要性の程度が大きく異なる場合がある。Muenke症候群の家系では、頭蓋骨縫合早期癒合症の浸透率は低下し、さまざまな程度の難聴を呈する。
  • 発端者で確認されたFGFRの病的変異がいずれの親の白血球DNAでも検出されない場合、親の生殖細胞モザイクの可能性があるため、発端者の同胞のリスクは一般集団より若干高くなる。Crouzon症候群では、親の生殖細胞モザイクと体細胞モザイクが報告されている[Goriely et al 2010]。
  • 親が発端者で同定された病的変異の検査を受けておらず、臨床的には罹患していない場合、ヘテロ接合である親の浸透率の低下あるいは表現度の差異の可能性や、親の生殖細胞モザイクの可能性があるため、同胞はFGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症のリスクは高いと推定される。
  • 上記リスクはApert症候群、Beare-Stevenson cutis gyrata症候群、bent bone dysplasia弯曲骨異形成症、Pfeiffer症候群では低いと考えられる。
  • Crouzon症候群やMuenke症候群では臨床像の発現度が家族内で異なるため、これらの症候群に罹患している親が軽度の特徴(例えば、軽度難聴、眼球突出)を呈していてもこれらを病的な症状として自覚していないかもしれないことから、見かけ上では罹患していない親族に対して慎重に臨床的評価を行う必要がある。

発端者の子

FGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症をもつ親の子はそれぞれ50%の確率でFGFRの病的変異を受け継ぐとされる。

その他の血縁者

その他の血縁者の罹患のリスクは、発端者の親の状態によって異なる。親がFGFRの病的変異を有している場合、その血縁者は罹患リスクがある可能性がある。

遺伝カウンセリングに関する問題点

早期の診断と治療の目的のためリスクを有する血縁者を評価するための情報は、[リスクのある親族の評価]の項を参照。

de novoの病的変異を有する家族に関して考慮すべき点について:常染色体顕性遺伝の発端者の両親のいずれにおいて、発端者で同定された病的変異あるいは臨床症状がない場合、その病的変異はde novoである可能性が高い。しかし、他の方法による父子あるいは母子関係(例えば、生殖補助医療など)を含めた医学的ではない背景、および非公表の養子縁組なども調査される可能性がある。

家族計画

  • 遺伝的リスクの評価と出生前検査の施行についての検討に関する最適な時期は妊娠前である。
  • 罹患している、もしくはそのリスクがある若年成人に遺伝カウンセリング(子への潜在的遺伝リスクおよび生殖医療に関する話し合いを含む)を行うことは適切である。

DNAバンキングとは将来のためにDNA(通常は白血球から抽出)を保管することを指す。将来的に、検査法および遺伝子、対立遺伝子変異、疾患自体についての理解が深まる可能性は高いので、罹患者のDNAを保存することについて検討する必要がある。

出生前検査と着床前遺伝子検査

高リスク妊娠:罹患家族内でFGFRの病的変異が同定されれば、この疾患に罹患している可能性の高いハイリスク妊娠に対する分子遺伝子学的な出生前検査や着床前の遺伝子検査が可能である。

  • FGFRの病的変異が確認されても、ほとんどのFGFRの表現型の臨床症状の発現や重症度の予測には利用できない。
  • 従来予後不良とされていた症候群性の例の長期予後は、外科的な疾患管理の進歩により過去の文献データが示唆する予後から劇的に改善し、その予測は困難となった。例えば、FGFR2 p.W290Cの全ての症例は、従来の文献では重度の知的障害および/または早期死亡とされていたが、Wengerら[2019]は、頭蓋と脳の不均衡の改善を目的とした積極的な外科的手術を受けた3症例で、幼少期以降の神経認知機能の発達が全例ほぼ正常であったと報告した。

低リスク妊娠:出生前の超音波検査で頭部の形態異常が検出される頭蓋骨縫合早期癒合症のリスクが確認されていない妊娠では、出生前検査はより困難である。

  • 分子遺伝学的検査FGFR1FGFR2FGFR3の病的変異の検査は可能であるが、その利点は低いと考えられる。加えて、これら遺伝子のいずれかに病的変異が同定されても、臨床所見による予後について明らかにすることはできない(例えば、遺伝子の分子的な欠損、あるいは手や足の欠損の状態にかかわらず、 クローバー葉頭蓋の予後は一般的に不良とされる)。
  • 出生前画像診断:出生前の画像診断で胎児の児頭大横径の異常や脳室拡大などの身体所見が明らかな場合、様々な頭蓋骨縫合早期癒合症の出生前検査が可能となる。三次元超音波検査、三次元CT【訳者注:胎児期の放射線検査としてCTは可能な限り避け、MRIで代行できないかを検討する】、MRIは疑わしい超音波検査所見をさらに詳しく描出し、潜んでいる脳の異常を評価する際に有用となる例がある。出生前のMRIは、Pfeiffer症候群やApert症候群などの頭蓋骨縫合早期癒合症が疑われる場合、正確な診断を得るためにしばしば用いられる。MRIで検出可能な所見には、脳梁欠損、胎児の児頭大横径の拡大を来す水頭症、あるいはクローバー葉頭蓋などがある[Tonni et al 2011, Ketwaroo et al 2015, Helfer et al 2016]。【訳者注:Apert症候群は特徴的な合指(趾)症を呈するため、多くの場合、出生前に超音波検査で診断される。】

出生前検査については、特に早期診断ではなく妊娠中絶を目的として検査を検討している場合、医療関係者の間や家族間で見解の相違が生じることがある。ほとんどの施設では、出生前検査の使用は個人による決定によってなされると考えられているが、こうした問題について議論することは有用である。


関連情報

GeneReviewsスタッフは、この疾患を持つ患者および家族に役立つ以下の疾患特異的な支援団体/上部支援団体/登録を選択した。GeneReviewsは、他の組織によって提供される情報には責任をもたない。選択基準における情報についてはここをクリック。

  • Children's Craniofacial Association (CCA)

13140 Coit Road
Suite 517
Dallas TX 75240
Phone: 800-535-3643 (toll-free)
Email: contactCCA@ccakids.com
www.ccakids.org

  • Cleft Palate Foundation (CPF)

1504 East Franklin Street
Suite 102
Chapel Hill NC 27514-2820
Phone: 800-242-5338 (toll-free); 919-933-9044
Fax: 919-933-9604
Email: info@cleftline.org
www.cleftline.org

  • Face Equality International

United Kingdom
Email: info@faceequalityinternational.org
www.faceequalityinternational.org

  • My46 Trait Profile

Apert syndrome

  • National Institute of Neurological Disorders and Stroke (NINDS)

PO Box 5801
Bethesda MD 20824
Phone: 800-352-9424 (toll-free); 301-496-5751; 301-468-5981 (TTY)
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5.FGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症の症例への対応

初診後の評価

FGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症と診断された症例の疾患の程度や必要となるものの範囲を明確にするため、4に記載した評価項目を行うことが推奨される(診断に至るまでに評価として実施されていない場合)。注:Muenke症候群の初診時に推奨される評価については、[Muenke症候群の項]を参照。

表 4. FGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症の初診時に推奨される評価

関心領域 評 価 コメント
頭蓋顔面 口蓋裂、耳の形成異常、顔面形態、頭蓋の泉門【訳者注:菱形を呈する大泉門の形態異常やこの早期閉鎖や骨性膨隆の有無】、縫合部の隆起、頭蓋形態、頭蓋底の対称性などの身体的な所見を確認 上顎低形成の重症度を評価することは気道障害のリスクを判断するのに重要
小児眼科医に診察を依頼 眼球表面、眼位、視神経の評価を含む
Ear-specific hearing diagnostic eval【訳者注:耳に特化した聴覚診断評価】  
呼吸 気道の症状(いびき、喘鳴、無呼吸、呼吸困難)の評価 覚醒時、睡眠時、授乳時にそれぞれ評価
終夜ポリソムノグラフィー(睡眠時検査) 睡眠時無呼吸症候群の有無を評価し、その程度を定量化
耳鼻咽喉科医と睡眠医学の専門医の診察を検討 気道内視鏡(ベッドサイドでの軟性の内視鏡;喉頭内視鏡および気管支鏡)は、気道狭窄の種類と程度の評価に役立つ場合がある。
筋骨格 頭部、頭蓋、縫合部のCT CTを用いた3D再構成像は病的な縫合を明確に描出し、術前の計画に役立つ。
頚椎の画像診断により椎骨癒合と不安定性(脊柱側弯症を呈することもある)の評価を行う。 術前に頚椎CTを行い、異常があれば脊椎専門医に相談することで注意すべき点を明確にする。もしくは2歳以降(椎骨が骨化した時期)にX線撮影を行う。
レントゲン撮影で、合指症(骨性癒合を含む)もしくは指節癒合症の程度を評価する。 手の外科医とhand therapistハンドセラピストによる診察を依頼する。
消化器 徴候を認めたり、胃瘻造設の術前評価として、小腸とともに上部消化管の検査を施行 腸回転異常症の評価
神経 水頭症や中枢神経系の先天性の病変を評価するための頭部CTあるいはMRI。頭部の成長【訳者注:頭囲】を慎重に評価する。 水頭症やキアリ奇形I型が疑われる場合は、頭部MRIの施行を検討
発達 発達障害の評価 早期介入可能なサービスを紹介し、神経発達の専門家への紹介を検討
心血管 心機能の評価 心雑音を聴取する場合、臨床的に心臓に異常がある場合は、心臓エコー検査
生殖器 男性では停留精巣の評価 停留精巣を認めた場合、泌尿器科に診察を依頼
腎臓のエコー検査 水腎症の評価
その他 Clinical geneticist【訳者注:日本では臨床遺伝専門医にあたる】ならびに遺伝カウンセラーに診察を依頼 家族内リスクについてのカウンセリングも含む

兆候に対する治療

FGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症の症例には、形成外科医、脳神経外科医、耳鼻咽喉科医、歯科医、言語聴覚士、言語療法士、developmental pediatricians【訳者注:日本では小児の発達を専門領域にするのは主に小児(脳)神経科医】、ソーシャルワーカー、臨床遺伝学者を含む集学的な頭蓋顔面チームによるアプローチが有用である。
注:Muenke症候群の症状に対して推奨される治療については、[Muenke症候群]の項を参照。

表 5.FGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症を持つ個々の症例の兆候への治療

症状/重要事項 治療 配慮すべき点/その他
頭蓋骨縫合早期癒合症 一般的に、複数縫合早期癒合症は生後1年以内に外科的治療が望ましい【訳者注:頭蓋の狭小化が強ければ生後早期に狭小化を解消する外科治療を施行】。1,2, 3, 4 解剖学的構造、頭蓋内圧亢進のリスク、呼吸状態により治療時期を決定する。
顔面中部後退 中部顔面を前方へ進展させるための顎部手術
  • 一般的に、小児期もしくは青年期に行う。6, 7
  • 気道閉塞の治療のために、早期に顔面中部の前進を行うこともある。
口蓋裂 口蓋に対する手術は通常pressure consonants【訳者注:圧声子音】が発達する前に行う。 発声とその明瞭度を向上させる。
摂食障害/嚥下障害8 摂食療法は嚥下の安全性を評価するのに有用で、経口摂取を支援する。 嚥下評価は頭蓋顔面手術後に改めて行う。
歯牙異常 頭蓋顔面チームによるケアの一環として、craniofacial orthodontist(頭蓋顔面・矯正歯科医)による歯科治療と評価 歯科医は歯科矯正と顎矯正の種類と時期の決定に際して重要な役割を担う。
斜視 頭蓋骨縫合早期癒合症の小児例の斜視は眼科医とexpertise in eye alignment【訳者注:眼位の専門家】によって治療されるべきである。 弱視は視覚障害の主な原因である。
眼球突出 閉眼障害がある場合、早期から点眼薬を開始する。 眼球亜脱臼がある場合、もしくは眼球脱臼や露出性角膜症を予防する場合は、瞼板縫合術の適応となりうる。
難聴 鼓膜切開チューブの留置 慢性中耳炎がある場合
補聴器、 bone conduction sound processors骨伝導サウンドプロセッサー、鼓室形成術、外耳道閉鎖症/狭窄症の治療 聴覚の最適化は言語とコミュニケーションの発達を促進する。
気道閉塞 乳幼児や小児例では、気道障害のリスクを理解したうえで積極的な気道管理を行うことが重要である。【訳者注:乳児期に生命予後を左右するのは気道閉塞で、出生直後に認められれば増悪していくことが多いいので慎重に対応すべきである】 ・具体的な気管管理は閉塞の程度や重症度によって異なる。
・軟部組織もしくは骨に対して処置をおこなった後に、obstructive sleep apnea (OSA)が残存するのはよくみられる。
気道閉塞を防ぐための一時的な処置
・鼻腔内ステント留置
・気管内挿管
・気管切開
気管切開が必要な乳幼児や小児例では、ガス交換の正常化と、適切な睡眠と成長を得るために、人工呼吸器による陽圧呼吸管理が必要となることがある。
睡眠時無呼吸症候群 外科的介入(アデノイド切除、経鼻エアウェイ、気管切開)がしばしば有効である。 顔面中部への圧迫は、顔面中部後退を増悪させるため、睡眠時無呼吸症候群の長期治療としてCPAP/BiPAPの使用は可能な限り避けるべきである。
鼻カニューレからの酸素投与が有効なこともある。 睡眠時無呼吸症候群の改善と睡眠の質の向上は学習、認知、行動を改善する可能性がある。
合指(趾) 手術の種類と時期は、母指の合指の有無と軟部組織の欠損の程度による。 一般的な目標としては、最小限の手術回数で手足の機能を改善することである。
治療は初期(合指の解除)と後期(機能的骨切り術)に分けられる。9、10 多くの症例で小児期に複数回の手術や再建を必要とする。
腸回転異常 外科医による標準的治療 胃瘻造設前に上部消化管検査を行う。
発声異常 頭蓋顔面に対し専門的知識をもつspeech-language pathologist【訳者注:日本では言語聴覚士】による言語評価を行い、推奨される言語療法を行う。 発声、共鳴、言語発達、理解に影響を及ぼす可能性がある。
発達遅滞 早期治療介入 発達に関する知識を持つ小児科医や専門医への相談を検討
先天性心疾患 循環器専門医による標準的治療 塞栓症のリスクを減らすため、頭蓋骨縫合早期癒合症の手術前に循環器専門医により心内シャントの閉鎖について検討
停留精巣もしくは水腎症 泌尿器科医による標準的治療  
側彎 整形外科医による標準的治療 【訳者注:側彎の原因がキアリ奇形I型に伴う脊髄空洞症によるかどうかを脊髄のMRIで評価】
  皮疹 標準治療に反応しない難治性ざ瘡には、isotretinoin【訳者注:わが国で未承認の難治性ニキビ治療薬】の経口投与も検討される。12  Isotretinoinの経口剤は催奇形性を有することが知られており、妊娠可能年齢の女性には2種類の独立した避妊法を行った上で、毎月妊娠検査をしない限りは処方してはならない。
情緒面および行動面での
調整
幼少期を通して心理社会的評価とメンタルヘルス支援13 周囲からのいじめやからかいの可能性を考慮し、それらに対処する。
  1. 頭蓋形成術は、頭蓋内圧の亢進を防ぎ頭蓋顔面の異常な発育を防ぐために、癒合した縫合を切り離し、頭蓋骨の整復や再構築を行う。
  2. 現在、内視鏡を用いたendoscopic strip craniectomy帯状頭蓋骨切除【訳者注:縫合切除の手術法の一つ】、頭蓋の後方への拡大advancement through posterior distraction、従来の【訳者注:開頭による】頭蓋形成術などいくつかの手法が用いられている。症候群性の症例では、早期に行うと再発率が高いため、従来の前眼窩の前進をできるだけ遅らせることが重要である。したがって、【訳者注:前頭蓋窩の狭小化や眼球突出の程度が強くない例では】生後早期に頭蓋の後方への拡大形成術を行うことで、頭蓋前方の変形の進行を最小限に抑えることができる。distraction osteogenesis骨延長法による頭蓋形成は、その後に必要となる従来の手術法に適した年齢までの一時的な措置と考え、早期に施行することがある[Hopper 2012]。
  3. 頭蓋内圧を下げるため早期に手術が行われることがある。Apert症候群の幼少児は生理的予備能が少なく、それが手術成績に影響を及ぼす可能性がある。待機手術ではより安定した頭蓋骨の矯正が得られる傾向にある[Taylor & Bartlett 2016]。
  4. 頭蓋内容積を増加させて脳を保護し、眼球を保護するためにしばしば複数回の段階的な治療が行われ、両側冠状縫合早期癒合症のほとんどの小児にとってfronto-orbital advancement前頭眼窩拡大術は有効である。
  5. 頭蓋顔面手術の目標は、脳の発達にとって十分な頭蓋内容積を確保することと、頭蓋の形態を改善することである。外科的介入の時期と順序は、患者の機能的、審美的、心理的な必要度の高さによって決まる[McCarthy et al 2012]。
  6. 顎部に対しての手術時期は咬合と気道閉塞の程度によって決まる。
  7. Le Fort III型骨切り術と比較し、頬骨を同時に再配置するLe Fort II 型骨切り術は、Apert症候群の年長児の顔面と眼窩との形態面での関係を改善する[Hopper et al 2013]。
  8.  tracheal cartilaginous sleeves気管軟骨のスリーブ形成のある症例では、気管切開後に創部の良好な治癒が得られなかったり肉芽組織が形成されるため、気管切開の施行やその管理には十分な注意が必要である[Wenger et al 2017]。
  9. Fearon & Rhodes[2009]
  10. 近年、複雑な合指症の患児では、その審美的な面を向上させるため新しい技術が報告されている[Lohmeyer et al 2016]。
  11. Pettitt et al[2017]
  12. isotretinoin経口内服が標準治療より有効であることを示す根拠として、生物モデルではアンドロゲンとFGFR2シグナルを調整するisotretinoinの役割がエビデンスとして示されている[Melnik et al 2009]。
  13. 両親や家族の感情的、社会的、経済的な必要度、患児の神経認知的発達や教育の必要性、ケアに対する潜在的な障害などの領域に注目すべきであると示唆されている[McCarthy et al 2012]。

サーベイランス
注:(1)Muenke症候群に対して推奨されるサーベイランスについては[Muenke症候群]の項を参照。(2)Apert症候群に特有の追加すべきサーベイランスについては[Apert症候群]の項を参照。

関心領域 評 価 頻 度
水頭症
  • 頭囲/頭部の成長の慎重なモニタリング
  • 頭蓋内圧亢進の兆候(例えば、頭痛、嘔吐)の評価
少なくとも1歳までは3か月毎に臨床的評価を行う。頭蓋骨縫合早期癒合症の評価のため、可能であればチーム医療体制で行う。                          
少なくとも1年に1回、あるいは徴候があれば評価
視神経乳頭の浮腫に対して眼科的精査
頚椎不安定性 頚椎単純レントゲン検査ならびに頚椎CT ・頭部CT撮影時に頚椎CTの撮影も検討
・3-4歳時にX線検査を行い、頚椎癒合の進行の有無を評価
  気管異常 手術時の気道評価 初回の全身麻酔時に耳鼻咽喉科医が行う。鎮静を行わない場合、craniofacial otolaryngologist頭蓋顔面・耳鼻咽喉科医が手術時に気道評価を行うが、tracheal cartilaginous sleeve気管軟骨のスリーブ形成がある場合は突然死の危険があるため、乳児期に実施することが望ましい。
歯牙異常 craniofacial orthodontis頭蓋顔面・矯正歯科医による評価 永久歯が生える時期
視機能異常 視神経の眼科的精査、強膜・角膜、 orbital protection眼球保護、斜視、弱視 少なくとも年1回、何か問題が生じた際は緊急で行う。
難聴 聴力検査 少なくとも年1回
睡眠時無呼吸症候群 睡眠時無呼吸症候群の症状に対する臨床的評価 1年目は少なくも3か月毎、それ以降は年1回
ポリソムノグラフィー 臨床症状から判断し、中枢性の無呼吸がある場合は、MRIでキアリ奇形I型の評価を行う。
発声障害 言語聴覚的な評価 ・生後18か月以降、毎年
・顔面中部の手術前後では追加で発声評価を行う。
神経発達障害 早期の治療介入および/または小児神経発達の評価 生後1年は少なくとも3か月毎、それ以降は年1回

避けるべき外因/状況

頚椎の形成異常のある症例では頚部の過伸展による脊髄損傷の危険性があり、ファイバースコープによる気管内挿管が必要となる、および/または頭部や頚部の損傷のリスクがあるスポーツの制限が必要となる場合がある。

眼球突出がある症例では、眼球損傷の危険性がある活動時(例えば、球技など)には保護メガネの着用が必要な場合がある。

リスクのある親族の評価

早期の発見と治療が有益な症例を可及的速やかに特定するために、一見罹患していないようにみえるがリスクを有する年長および若年の親族の遺伝的背景を明らかにするのが適切である。評価には以下の項目が含まれる。

  • 家系内でFGFRの病的変異が判明している場合の分子遺伝学的検査
  • 臨床的、放射線学的な基準に基づく評価(注:全ての罹患者で症状が現れやすいということはない)

遺伝カウンセリングを目的としたリスクのある親族の検査については、[遺伝カウンセリングに関する問題点]の項を参照。

妊娠中の管理

FGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症に罹患した胎児を妊娠した妊婦は、早期の障害発生と死亡率を左右する可能性のある項目について妊娠中は経過を観察するようにし、小児耳鼻科、形成外科、脳神経外科、呼吸器内科にすぐ受診できる病院での分娩を推奨すべきである。後鼻孔閉鎖などの気道閉塞の発生率が高いため、気管内挿管や蘇生に習熟した医療従事者が分娩に立ち会うべきである。

妊娠中の薬の使用に関する詳細情報は、MotherToBaby(Home Page - MotherToBaby)を参照。

研究中の治療法

米国では ClinicalTrial.gov、欧州では EU clinical Trials Register で検索すると、様々な疾患や症状に関する臨床試験の情報を入手することができる。注:当疾患の臨床試験は行われていない可能性がある。


更新履歴:

  1. Gene Review著者: Nathaniel H Robin, MD   Marni J Falk, MD
    日本語訳者: 池田英敏,松阪康弘,坂本博昭(大阪市立総合医療センター小児脳神経外科)
    Gene Review 最終更新日: 2006.1.9. 日本語訳最終更新日: 2006.12.22.
  2. Gene Reviews著者: Tara Wenger, MD, PhD, Danny Miller, MD, PhD, and Kelly Evans, MD.
    日本語訳者: 大島龍之介(大阪市立総合医療センター 小児脳神経外科)、國廣誉世(大阪市立総合医療センター 小児脳神経外科)、馬場良子(大阪市立総合医療センター 小児脳神経外科)、瀨戸俊之(大阪公立大学大学院 医学研究科 臨床遺伝学)、坂本博昭(大阪市立総合医療センター 小児脳神経外科、大阪公立大学大学院 医学研究科 脳神経外科)
    GeneReviews最終更新日: 2020.4.30.  日本語訳最終更新日: 022.9.3 .[in present]

原文 FGFR Craniosynostosis Syndromes Overview

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