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歌舞伎症候群
(Kabuki Syndrome)

[Kabuki Make-Up Syndrome, Niikawa-Kuroki Syndrome]

Gene Review著者: Margaret P Adam, MD, MS, FAAP, FACMG, Louanne Hudgins, MD, Mark Hannibal, MD, PhD
日本語訳者: 峠和美、升野光雄、山内泰子、黒木良和
(川崎医療福祉大学大学院医療福祉学研究科遺伝カウンセリングコース)
Gene Review 最終更新日: 2011.9.1. 日本語訳最終更新日: 2012.12.9.(minor revision 2014.6.1)

原文 Kakbuki Syndrome


要約

疾患の特徴 

歌舞伎症候群(KS)は、特徴的顔貌(外側1/3の下眼瞼外反を伴う切れ長の眼瞼裂、弓状で広い眉毛、押しつぶされた鼻尖を伴う短い鼻柱、大きく突出した耳またはカップ耳)、軽微な骨格異常、胎児期遺残である指尖の膨らみ、軽度から中等度の知的障害、そして出生後にはじまる成長障害によって特徴づけられる。その他の所見として、先天性心疾患、腎尿路生殖器異常、口唇裂と/または口蓋裂、鎖肛を含む消化管異常、眼瞼下垂と斜視、歯間空隙の拡大と歯牙低形成が含まれる。機能的異常として、易感染性と自己免疫疾患、けいれん、女児の早期乳房発育症を含む内分泌学的異常、摂食の問題と難聴がある。

診断・検査 

診断は第一に臨床所見によって行われる。KSの原因として変異が確認されている唯一の遺伝子はMLL2で分子遺伝学的検査は臨床的に利用可能である。

臨床的マネジメント 

症状の治療:胃食道逆流現象の治療のため濃厚流動食や食事後の体位設定、摂食困難が重症ならば胃瘻造設を行う。認知障害が明白ならば、心理教育的な検査と個々の子どものニーズに的を絞り特別な教育サービスを行う。行動が自閉症スペクトラムを示唆するならば発達小児科医または精神科医による評価。けいれんに対する標準的な抗てんかん薬治療。

二次的合併症の予防:特定の心疾患を伴う場合、何らかの処置(歯の治療のような)の前と処置中には抗生物質の予防的投与は必要である。

経過観察:身長、体重、頭囲を最低1年に1回それぞれの子どもの受診時に測定する。受診ごとに発達を評価し、年1回視力と聴力を測定する。

遺伝カウンセリング 

KSは常染色体優性遺伝形式で遺伝する。新生変異によるKSの割合は明らかではないが、臨床経験によると高率だろう。KSの人の子どもに変異が伝わる可能性は50%である。疾患の原因となる遺伝子変異が家系内の罹患者で同定されていれば、リスクの増加した妊娠に対しての出生前診断は可能である。


診断

臨床診断

歌舞伎症候群(KS)の共通した臨床診断基準は確立されていない。この状態をもつ人は診断を示唆する多様な先天奇形をもつ上に、特徴的顔貌をもつ。

下記のリストは新川らによって定義された5つの主要な症状である。

  1. 1.特徴的顔貌
  • 外側1/3の下眼瞼外反を伴う切れ長の眼瞼裂
  • 外側1/3が疎または切れ込みを伴う弓状で広い眉毛
  • 押しつぶされた鼻尖を伴う短い鼻柱
  • 大きく突出した耳またはカップ耳 
  1. 骨格系の奇形
    • 椎体矢状裂、蝶形椎、椎間腔狭窄かつ、または脊柱側弯を含む脊柱の異常
    • 第5指短縮
    • 中節骨短縮症
    • 第5指内弯
  1. 皮膚紋理異常:胎児期遺残である指尖の膨らみ、

 注釈:指三叉cかつ、またはdの欠損、指尖の尺側蹄状紋増加、そして小指球部蹄状紋を認めることもあるが、このタイプの分析は、多くのセンターではルーチンの臨床実践としては行われない。

  1. 軽度から中等度の知的障害
  2. 出生後にはじまる成長障害

KSの器質的異常は次に述べるものがある:

  • 先天性心疾患
  • 男児の停留精巣を含む腎尿路生殖器異常
  • 口唇裂と/または口蓋裂
  • 鎖肛を含む消化管異常
  • 眼瞼下垂と斜視を含む眼科的異常
  • 歯間空隙の拡大と歯牙低形成を含む歯科的異常
  • 耳瘻孔(他の典型的な所見がある時、診断の手がかりとして役立つ可能性がある)

機能的な異常として以下が含まれる:

  • 易感染性と自己免疫疾患
  • けいれん
  • 女児における早期乳房発育症を含む内分泌学的異常
  • 摂食の問題
  • 難聴

分子遺伝学的検査

GeneReviewsは,分子遺伝学的検査について,その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り,臨床的に実施可能であるとする. GeneTestsは研究機関から提出された情報を検証しないし,研究機関の承認状態もしくは実施結果を保証しない.情報を検証するためには,医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない.―編集者注.

遺伝子 MLL2はKSの既知の唯一の原因遺伝子である。

可能性のある遺伝子座異質性の根拠

KSの原因に関係する他の座位は知られていない。しかしながら、中等度の変異検出率(シークエンス解析を参照)は、未だ同定されていない1つまたはそれ以上の遺伝子座異質性の可能性を示唆している。

臨床検査

  • シークエンス解析 MLL2コード領域のシークエンスは、臨床診断されたKSの約56%〜76%において変異を検出する。
  • 欠失/重複検査 は臨床上使用可能である。しかしながら、大きな(すなわち、エクソン、または遺伝子全体の)MLL2欠失または重複はKSの原因として報告されていないため、そのような検査の有用性は明らかではない。

表1.歌舞伎症候群(KS)に使用される分子遺伝学的検査の概要

遺伝子記号

検査方法

検出される変異

検査方法による
変異の検出頻度
1

検査の実施可能性

MLL2

シークエンス解析

シークエンスバリアント2

56%〜76%

臨床

欠失/重複解析3

エクソンもしくは遺伝子全体の欠失

未知4

検査の実施可能な施設は、GeneTests Laboratory Directoryを参照。GeneReviewsは、分子遺伝学的検査について、その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り、臨床的に実施可能としている。GeneTestsは研究機関から提出された情報の検証や、研究機関の承認状態もしくは実施結果の保証は行わない。情報を検証するためには、医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない。

  1. 示された遺伝子に存在する変異を検出するために用いられる検査方法の検出能力。
  2. シークエンス解析で検出された変異例は、小さな遺伝子内の欠失/挿入、ミスセンス変異、 ナンセンス変異、およびスプライス部位変異などである。
  3. ゲノムDNAのコード領域と隣接イントロン領域のシークエンス解析では容易に検出できない欠失/重複を同定する検査。定量PCR法、long-range PCR法、multiplex ligation-dependent probe amplification(MLPA法) もしくはターゲットアレイGH(遺伝子/分節特異的)を含む様々な方法を使用することが可能である。ゲノム全体の欠失/重複を検出する全アレイGH解析も、当然この遺伝子/分節を含む。アレイGH参照。
  4. 今までに欠失/重複の報告はない。

検査結果の解釈

  • 現在の変異検出率を考えれば、変異が同定されなくても、KSの診断を除外することにはならないであろう。
  • シークエンス解析結果の解釈で熟慮すべき問題については、ここをクリック。

検査手順

発端者の診断目的

  • 診断は第一に臨床所見によって行われる。
  • MLL2の分子学的検査(シークエンス解析)は、大多数の症例において診断を確定する。
  • アレイCGH(aCGH)は、KSと表現型が重複する細胞遺伝学的異常を除外するために考慮される。

リスクのある妊娠に対する出生前診断と着床前遺伝学的診断(PGD)は、家系内の疾患の原因となる遺伝子変異の同定が前提となる。

メモ:GeneTests Laboratory Directoryに記載された研究室から利用可能な検査の臨床用 途を含むことがGeneReviewsのポリシーであるが、これを含めることは著者、編集者、評価者によるそうした使用の推奨を必ずしも反映していない。

遺伝学的に関連する疾患

MLL2変異に関連している他の表現型は判明していない。


臨床像

自然歴

この項は歌舞伎症候群(KS)をもつ350人以上の所見を要約する。

成長と摂食

新生児は正常範囲内の成長をする。しかしながら、出生後の成長障害は比較的よくみられる(35%〜81%)。低身長を伴う/または伴わない小頭症がある。成長ホルモン分泌不全が報告されている(内分泌を参照)が、一般的ではない。

摂食困難は、かなりよくみられる(〜70%)。しかしながら、重症度には幅がある。KSをもつ多くの人は胃食道逆流がある。哺乳や嚥下することが不十分なために胃瘻チューブ造設が必要な人もいる。その結果、KSをもつ乳児は発育不全を示すこともある。

発達と行動

新川らは、62人の罹患者において、通常は軽度から中等度の知的障害は92%にみられる主要な特徴であると報告した。しかしもっと多くのKSをもつ人が発見され報告されるに従い、1/6もの人が正常な知能を持つと示唆する著者もいる。著者が不完全あるいは診断が不明確と判断した報告を除外した最近のレビューにおける算出では、知的障害の全体の頻度は、最初の評価により近い数値であった。

KSをもつ人のほとんどは話すことができ、歩くことができる。まれに歩行不能な人がいるが、話すことは可能である。一方、重大な運動機能障害がなくて、しゃべれない人もいる。Vauxらは、15人の歌舞伎症候群をもつ人において独歩可能になった年齢は15〜30か月で、平均20か月だと報告している。これらの症例において、単語は10〜30か月、平均21か月で話すことができる。今までのところ、早期の予後予測に役立つ要因は認められていない。

特定な発達障害のパターンは明らかになっていない。限られた根拠ではあるがKSをもつ人は文法上の解釈の様な作業は特に困難だと示唆している。Mervisらは、KSをもつ子どもと青年期の11人に標準化された神経心理学的なテストを行い、言語と非言語的解釈において相対的な強さを示し、視覚空間的な能力が相対的に弱いと報告している。この研究では、理解言語能力が表出言語能力より非常に優れていた。対照的に他の著者らは表出言語が優れていると報告している。

KSをもつ人は陽気で社交的な傾向がある。KSをもつ子どもと青年期の11人についてMervisらは、概していえば、行動の困難さは暦年齢相当の想定範囲を超えないと報告している。

自閉症は稀だが、その存在は記述された所見である。HoとEavesは多様な認知能力をもつ4人の男性について、3人は広汎性発達障害から自閉症に似た自閉的障害までに及ぶ自閉症スペクトラムの範囲の特徴をもっていたと報告した。しかし、自閉症が一般集団にみられる水準を超えて存在するという確証はない。KSがもっと広く社会に認められるようになるにつれ、社会性とコミュニケーション障害の真の発生率が明白になってくるだろう。

神経

KSをもつ多くの子どもは筋緊張低下を認める(25%〜89%)が、重大な関節弛緩がその寄与要因となっているかもしれない。筋緊張低下を特徴とする他の疾患と同様、筋緊張低下は時間とともに改善する。

KSではけいれんは一般集団より高頻度(10%〜39%)にみられるが、一般的に薬物療法で良好にコントロールされる。

歌舞伎症候群をもつ多くの人は、てんかんや発達遅滞のような適応のためにある時期に脳の画像検査を受けるが、重大な脳の構造異常は稀である。しかしながら、症候性のキアリ奇形T型は多くの症例で報告されている。

心臓血管系

KSをもつ人の約40%〜50%は先天性心疾患を合併する。左心系の閉塞性病変、特に大動脈縮窄症はよく合併する。興味深いことに、これらの病変は一般集団では稀である。中隔欠損もよくみられる。

内分泌

女児の早期乳房発育症は最もよくある内分泌異常である(7%〜50%)。この所見は思春期早発症を示すことは稀で、次第に正常に戻ることが多い。
低血糖、先天性甲状腺機能低下症、成長ホルモン分泌不全の報告はあるが稀である。

眼科

眼の所見は歌舞伎症候群をもつ人の1/3以上に存在し、青色強膜、斜視、眼瞼下垂、コロボーマとピータース奇形のような角膜の異常がみられる。視神経形成不全、白内障、デュアン奇形、網膜色素変性症、マーカスガン現象(下顎眼瞼異常運動ともいわれる)等もみられる。しかしながら、重症な視覚障害は稀である。

下眼瞼外反の結果としてKSをもつ子どもは、通常重大な問題ではないが流涙症がみられやすい。KSをもつ多くの子どもに生じる夜の兎眼は角膜の剥離と瘢痕を起こしやすくさせる。

耳と聴覚

KSをもつ大多数の人は、突出したカップ耳をもつ。耳瘻孔も比較的よくある。

臨床の観点からみると、慢性中耳炎は伝音性難聴を含む病的状態の主要な原因である。しかしながら、この所見が潜在的な易感染性または口蓋機能不全のような頭蓋顔面の異常と関係づけられるかどうかは明らかではない。

KSをもつ人の40%もが難聴である。慢性中耳炎は最もありふれた原因であるが、感音性難聴は滅多に生じない。モンディーニ異形成、前庭腫脹、蝸牛と半規管無形成や水管腫脹を含む内耳奇形が報告されている。

頭蓋顔面

口唇裂と/または口蓋裂はKSをもつ人の約1/3にある。粘膜下口蓋裂は実際より低頻度に把握されている。罹患者のほぼ3/4は高口蓋をもつ。口蓋の異常を持つすべての子どもと同様、摂食困難、頻繁におこる中耳炎や発語困難がよくみられる。下口唇の小窩をもつ多数の人が報告されている。

典型的な特徴的顔貌(外側1/3の下眼瞼外反を伴う切れ長の眼瞼裂、弓状で幅広い眉毛、押しつぶされた鼻尖を伴う短い鼻柱、大きく突出した耳またはカップ耳)は、KSの診断基準の一部とみなされているためKSと臨床診断されたほとんど全ての人に存在する。

KSをもつ人において多種多様な歯の奇形が知られている。小臼歯だけでなく、側切歯と中切歯の欠損を伴う歯牙低形成は最もよくみられる。異常な形態の歯、小さい歯、歯間空隙の拡大、不正咬合等も記載されている。

胃腸

胃腸系に関わる異常はKSにおいて頻繁ではない。しかしながら、鎖肛、肛門前庭瘻、肛門前方偏位を含む肛門直腸奇形は主に女性に多く報告されている。先天性横隔膜ヘルニアと横隔膜弛緩症もまた記述されている。色々な原因からおこる新生児の胆汁うっ滞のリスクが増加している。

腎尿路生殖器

腎尿路奇形は罹患者の25%以上にみられる。よくある腎臓の所見は、腎臓の位置と上昇の異常(単一融合腎、交差性融合腎)、腎盂尿管移行部通過障害、集尿系の重複、水腎症を含む。尿道下裂、停留精巣と(めったにない)小陰茎は男性に認められる、女性では陰唇低形成が認められる。

筋骨格

関節の過度可動性はKSをもつ人の50%〜75%にみられる。関節の脱臼は、とくに股関節、膝蓋骨、肩関節でよくおこる。関節弛緩症を伴う多くの疾患と同様、この所見は年齢とともに改善する。

様々な程度の脊柱側弯と脊柱後弯がみられ、椎骨奇形(半椎、蝶形椎、矢状裂)と関連しているかもしれない。

胎児期遺残である指尖の膨らみは、KSの主要な症状の5つのうちの1つとみなされている。従ってKS と臨床診断された人の大部分にみられる。

免疫

免疫機能障害は、ほとんどの場合、思春期で記載されている。Hoffwan らはKS をもつ19人のうち16人に何らかのタイプの低ガンマグロブリン血症をみつけた。血清IgAの低値は特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血や再発性副鼻腔肺感染症と関連していると報告されている。

遺伝子型と臨床型の関連

歌舞伎症候群の変異遺伝子は2011年に同定されたばかりなので、現在までに遺伝子型と臨床型の関連について行われた研究はわずかしかない。

歌舞伎症候群と臨床診断された人で、MLL2変異ポジティブ例とMLL2変異ネガティブ例の臨床的特徴の比較では、わずかな違いしかない。

  • 一般にMLL2変異をもつ人たちは、それをもたない人より、腎奇形をもち、低身長であることが多い様である。
  • MLL2変異をもつ人たちに特徴的な歌舞伎顔貌の表現型が多いのは驚くべきことではない。そして、そのことはMLL2変異を持たない人の一部は実際は誤診されているかもしれないという現実を反映しているのかもしれない。

浸透率 

浸透率は完全のようである。表現度の差異のため、軽い症状をもつ罹患者を少なく把握している可能性もある。

表現促進

現在までのところ、表現促進は観察されていない。

有病率

はじめのうちは、KSをもつ人の報告の大部分は日本人だった。日本における有病率は約32,000人に1人と推定されている。Whiteらはオーストラリアとニュージーランドにおいて、最低86,000出生に1人と推定した。KSはほとんど全ての民族において報告されている。日本以外の有病率も、日本人集団でみられるのとほぼ同様であろう。


鑑別診断

本稿で扱われる疾患に対する遺伝学的検査の実施可能性に関する最新情報は,GeneTests Laboratory Directoryを参照のこと.―編集者注.

歌舞伎症候群(KS)と重複する特徴をもつ疾患には下記が含まれる:

  • CHARGE症候群では特に口蓋裂、心奇形、コロボーマと成長障害が特徴的である。しかしながら、KSにおける特徴的顔貌と指尖の膨らみはCHARGE症候群にはみられない。CHARGE症候群はCHD7遺伝子変異が原因であり、遺伝形式は常染色体優性遺伝である。
  • 22q11欠失症候群では特に口蓋裂、先天性心疾患と尿路異常が特徴的。しかしながら、2つの疾患においてみられる異なった典型的な特徴的顔貌により見分けることができるはずである。
  • IRF6関連疾患(Van der Woude症候群と膝窩翼状片症候群) では特に口唇・口蓋裂、口蓋裂と口唇小窩が特徴的。IRF6関連疾患をもつ人は非定型の成長と発達、心奇形または特徴的な歌舞伎症候群顔貌はもたない。翼状片はKSをもつ人にはみられない。
  • 鰓・耳・腎(BOR)症候群では特に耳瘻孔、カップ耳、難聴と腎奇形。しかしながら、BOR症候群をもつ人は他の点では正常な頭蓋顔面で、正常な成長と正常な発達をする。BOR症候群によくおこる腎臓の異常は腎低形成かつ、または無形成であるが、一方KS における腎臓の異常は、通常水腎症と位置異常である。BORには鰓嚢胞があるかもしれないが、KSでは報告されていない。
  • エーラスダンロス症候群関節可動性亢進型またはLarsen症候群(FLNB関連疾患を参照) では特に重大な関節過度可動性(先天性股関節脱臼と膝蓋骨脱臼を含む)と青色強膜。これらの疾患ではKSにみられる他の臓器系統を巻き込む主要な奇形または典型的な小奇形は伴わない。
  • X染色体異常とその他の様々な染色体異常では、よく似た顔貌、先天性心疾患と成長障害がみられる。これらは、染色体検査または染色体マイクロアレイ(CMA)によってKSと容易に見分けることができる。
Hardikar症候群(OMIM 612726) では特に口唇口蓋裂を伴う遷延性高ビリルビン血症。しかしながら、Hardikar症候群にみられる網膜色素変性症、または硬化性胆管炎は一般的にはKSをもつ人にはない。

臨床医のためのメモ: この疾患に関連した個別の患者に対する「simultaneous consult」については,SimulConsult(R)を参照.それは患者の所見を基に鑑別診断を提供する双方向型診断決定支援ソフトである(登録または施設からのアクセスが必要)。


臨床的マネジメント

最初の診断後における評価

歌舞伎症候群(KS)と診断された人の疾患の程度とニーズを確かめるために、以下の評価が推奨される。

  • 身長、体重と頭囲を計測し、標準成長曲線に記す。甲状腺機能低下または成長ホルモン欠損症を含むホルモン欠損症の評価は、成長加速度の遅い子ども達には推奨される。
  • 摂食の問題が重大かつ、または発育不全が明白ならば食道pHプローブ検査が考慮される。バリウム嚥下検査は吸畷または嚥下機能が正常かどうかを判断することの助けになるかもしれない。
  • 発達の指標のための評価は推奨される。発達遅滞を認めた場合は、正式な発達評価のための紹介が必要とされる。
  • 筋緊張低下を示すKSをもつ子ども達において、理学療法の評価は必要とされる。
  • けいれん発作の疑いがある人たちは神経科医による評価が推奨される。
  • 頭痛、眼の障害、耳神経障害、下位脳神経徴候、小脳性運動失調、痙直またはけいれんをもつ人において、キアリ奇形T型や脳奇形を評価するために、診断時の脳の画像診断(もしまだ行っていなければ)は推奨される。
  • 心奇形の頻度が高いので大動脈弓が良好に描写された心エコー図は診断時に全ての人に必要とされる。心奇形がある時、マネジメントのための小児循環器科医への紹介は考慮されるべきである。
  • 眼の所見は頻発するため、全てのKSをもつ人は診断の時に、正式な眼科評価を行うことが推奨される。
  • 診断時に口蓋に留意した評価は必要である。口唇裂、口蓋裂、粘膜下口蓋裂または鼻腔閉鎖不全の何らかの根拠を伴う人は耳鼻咽喉科の評価を受けるべきである。
  • 胃腸系の異常の有無についてKSをもつ新生児には十分注意して評価する必要がある。胆汁うっ滞の根拠があれば、他の子どもと同様に、すぐに十分詳しく調べるべきである。この疾患では横隔膜弛緩症がみられることを認識しておくことで、医療的ケアを行う人は横隔膜神経麻痺の可能性について更に進んだ評価を行うことを避けることができる。
  • 腎/尿路系の奇形は頻発するので診断時に、KSをもつ全ての人に腎臓の超音波検査が必要である。水腎症をもつ人には腎臓科医や泌尿器科医への紹介が推奨される。停留精巣をもつ人は泌尿器科医への紹介が必要とされる。
  • 先天性股関節脱臼と他の関節脱臼をもつ子ども達では、整形外科医による評価を行うための紹介が推奨される。
  • KSをもつ全ての人において、診断時の脊椎のX線撮影は必要とされる。脊柱側弯が気づかれたり、椎骨の異常が見つけられた場合、整形外科医の評価が考慮される。
  • T細胞の数、T細胞のサブセットと血清免疫グロブリンレベルを把握することはKSの診断時、または1歳時(いずれが2番目になろうと)に推奨される。そのレベルが異常、または、KSをもつ人が感染症を繰り返す場合は免疫の専門医による評価が必要とされる。
  • 遺伝医学のコンサルテーションは適切である。

包括的マネジメントのガイドラインはDYSCERNEからもまた得られる。Guidelines(pdf)を参照。

症状に対する治療

濃厚流動食と、食事の後に適切な姿勢をとることは胃食道逆流症状の改善に役立つであろう。

胃瘻チューブ造設は重大な摂食困難のある人において、特に吸畷と嚥下不良に気づかれる時に検討される。

認知困難を示す全ての子どもには、得手不得手を見極め、特別な教育サービスを提供するために綿密な心理教育的テストを行うことが必要である。能力障害の特徴的な傾向は認められていないので、特別な教育サービスは、KSをもつ子どもそれぞれの得手不得手に取り組むように合わせられる。自閉症スペクトラムを疑わせる特徴を示す子ども達にとって発達小児科医または精神科医による正式な評価は役立つかもしれない。なぜなら、教育的な介入はその評価の結果により影響を受けるかもしれないからである。標準的なてんかんの治療はKSをもつ人のけいれんの治療に有効である。感音性難聴の根拠があれば通常は耳鼻咽喉科医への紹介と内耳奇形に対する画像診断でフォローされる。持続する説明のつかない頭痛と頚の痛みや他の頭蓋内異常を疑わせる兆候は、キアリ奇形T型による二次性のものかもしれず、脳の画像診断の明らかな適応となる。

両親や介護者による夜間の兎眼の観察が推奨される。それがあれば、眼科医による評価が必要とされる。

全てのKSをもつ子どもにおいて、歩き始めの時に歯の評価が必要とされる。歯牙低形成や重大な不正咬合のような異常が小児期のどの時点でも認められるならば、歯科矯正アセスメントのための紹介は行われるべきである。免疫グロブリン欠損がある人は定期的な免疫グロブリン静脈内注入を行うことは有益かもしれない。早期乳房発育症の治療は思春期早発症の他の徴候が明らかでない限りは行う理由にはならない。ヒト成長ホルモンの治療をした時、少なくとも1人は成長率に変わりはなかったという。

二次的合併症の予防

先天性心疾患の多くの症例は菌血症を引き起こすかもしれない手技(例えば、歯科治療)の前とその治療中には抗生物質の予防投与が必要かもしれない。

経過観察

以下の項目はKSをもつ人のために推奨される。

  • 身長、体重、頭囲の頻繁なモニタリング(健診時、最低1年毎)
  • 健診時は毎回、発達指標の評価を行う、もし発達遅滞が認められる場合は正式な発達の評価のための専門医への紹介
  • 早期乳房発育症の所見が明らかになって来ても、保健医療提供者は両親を安心させることができるように、早期乳房発育症が予測される思春期前の女児のフォローをしっかりと行う
  • 年1回の視力のモニタリング
  • 年1回の聴力の評価
  • 子どもの中耳炎を予期したモニタリング。耳の診察は全ての健診時に必要とされる、つまり、中耳炎の徴候がある全ての子ども達の速やかな評価。
  • 免疫検査の異常や反復感染のある人の免疫専門医による定期的なフォローアップ

リスクのある血縁者の検査

遺伝カウンセリングの目的でリスクのある血縁者を検査することに関する問題については遺伝カウンセリングを参照。

研究中の治療法

広い範囲の疾患と健康状態に対する臨床研究情報にアクセスするためにはClinicalTrial.govを検索のこと。 メモ:この疾患における臨床試験はないかもしれない。

その他

遺伝クリニックでは、遺伝専門職が、自然歴、治療、遺伝形式とその他の家族構成員の遺伝的リスクに関する情報を患者と家族に提供する。同時に入手可能な利用者本位の資源情報も提供できるGene Tests Clinic Directory参照。

この疾患に対する疾患特異的か上部支援団体の利用者資源を参照。これらの団体は、個人や家族に情報、支援および他の罹患者との接触が提供できるように設立されている。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

歌舞伎症候群(KS)は常染色体優性遺伝形式である。

患者家族のリスク

発端者の両親

  • KSと診断された少数の人は罹患した親をもつ。
  • KSの発端者は新生変異の結果として疾患をもつかもしれない。弧発例(すなわち1家系に1人だけ発症)は、新生変異かどうか決定するために十分に評価されていないので、新生変異によるKSの割合は明らかではない。しかしながら、臨床経験に基づけば新生変異によるKSの割合はおそらく高いと考えられる。
  • 発端者における疾患の原因となる変異がいずれの親の白血球DNAにも検出されない場合、2つの可能性があり、片親の生殖細胞系列モザイク、または発端者の新生変異である。生殖細胞系列モザイクの症例は報告されていないが、その可能性はある。
  • 発端者の原因遺伝子変異が同定されれば、両親は検査を受けることができる。発端者の原因遺伝子変異がみつからなければ、臨床遺伝医による発端者の両親の完全な診察(KSの表現型の特徴と一致するかどうかの臨床評価)は必要である。両親の評価で片親が疾患をもつことが発見されるかもしれないが、それは軽い表現型の症状のため、それ以前には診断されなかったことによる。従って、適切な評価が行われるまで、明らかに家族歴がないとは決定できない。

メモ:親が最初の変異をもつ人であれば、彼女または彼は体細胞モザイク変異であり、軽い/最小限の症状があるかもしれない。

発端者の同胞 

  • 発端者の同胞のリスクは、発端者の両親の遺伝的状況に依存する。
  • 発端者の片親が罹患者ならば、同胞のリスクは50%である。
  • 両親が明らかに罹患していない時(分子遺伝学的検査による評価またはMLL2変異が認められない家系において完全な臨床評価が行われる時)、発端者の同胞のリスクは低い。
  • 発端者の疾患原因遺伝子変異がいずれの親の白血球DNAにも検出されない場合、同胞のリスクは低下するが、生殖細胞系列モザイクの可能性があるため、一般集団よりはリスクは高い。

発端者の子

歌舞伎症候群をもつ人の子どもは、それぞれの子が50%の確率で原因となる遺伝子変異を受け継ぐ。

他の家族構成員

他の家族構成員のリスクは発端者の両親の状況に依存する。もし、片親が罹患していれば、彼または彼女の家族構成員はリスクがあるだろう。

遺伝カウンセリングに関連した問題

見たところ新生変異をもつ家族で考慮すべき事柄常染色体優性遺伝疾患の発端者の両親がどちらも疾患の臨床所見をもたない時、おそらく発端者は新生変異をもつ。しかしながら、生物学的父親や母親が異なる場合(例えば、生殖補助に伴う)または告知されていない養子縁組を含む、起こりうる非医学的な事実もまた明らかににされるかもしれない。

家族計画 

  • 遺伝的リスクの決定と出生前検査の有用性の討議のための最適な機会は妊娠前である。
  • 罹患している若年成人に遺伝カウンセリング(子孫への潜在的なリスクと生殖の選択肢の討議を含む)を提供することは適切である。

DNAバンキング は(通常は白血球から抽出された)DNAを将来の使用のために保存しておくものである。検査法並びに遺伝子、変異および疾患に対する我々の理解が将来進歩するかも知れないので、罹患者のDNAの保存は考慮すべきである。DNAバンキングを提供している研究室の一覧についてはTesting参照。

出生前診断

リスクの増した妊娠で出生前診断は、通常おおよそ妊娠15〜18週に行われる羊水穿刺、またはおおよそ妊娠10〜12週に行われる絨毛生検(CVS)でえられた胎児細胞から抽出されたDNA分析により可能である。ただし、出生前診断を行う前に罹患した家族構成員の疾患原因遺伝子変異が同定されていることが前提である。

メモ:妊娠期間は最終正常月経期の初日からか、超音波による計測のどちらかにより算出された月経週数として表される。

 

着床前診断 (PGD)は疾患の原因となる変異が同定された家族において利用できるかもしれない。PGDを提供している研究室については、Testing参照。

メモ:GeneTests Laboratory Directoryに記載された研究室から利用可能な検査の臨床用途を含むことがGeneReviewsのポリシーであるが、これを含めることは著者、編集者、評価者によるそうした使用の推奨を必ずしも反映はしていない。


分子遺伝学

分子遺伝学とOMIMの表の情報は、GeneReviewsの他の場所の情報とは異なるかもしれない。表は、より最近の情報を含むかもしれない。

表A. 歌舞伎伎症候群:遺伝子およびデータベース

遺伝子記号

染色体座

蛋白の名称

MLL2

12q12-q14

ヒストン-リジン N-メチル基転移酵素MLL2

データは、以下の標準的な参考文献を編集したものである:HGNCによる遺伝子記号;OMIMによる染色体の座、座の名前、決定的領域、相補性群;UniProtによるタンパク質名。データベース (Locus Specific, HGMD) の記述についてのリンク、 ここをクリック。

 表B. OMIMに登録されている歌舞伎症候群(OMIMで全てを参照のこと)

147920

KABUKI SYNDROME 1; KABUK1

602113

MYELOID/LYMPHOID OR MIXED LINEAGE LEUKEMIA 2; MLL2

正常アレルのバリアント 

MLL2は54エクソンを含む36.3kbの大きさである。それは5,537のアミノ酸を含む蛋白をコードしている。

病的アレルのバリアント

変異の大多数はナンセンス変異とフレームシフト変異である。変異は遺伝子の至る所に分布しているが、3’側のエクソンにより多く認められている。ミスセンス変異は報告されているが比較的稀である。

正常遺伝子産物

MLL2はヒストンH3蛋白の4番目のアミノ酸のリジン残基を特異的に修飾すると同定されている少なくとも10の蛋白の1つである、ヒストン3リジン4(H3K4)N-メチル基転移酵素である。MLL2はC末端近くにyeast Set1、Drosophila Trithorax (TRX)とhuman MLL1と共有されるSETドメインをもっている。MLL2は初期発生において遺伝子の転写とクロマチン構造を規定しているようである。それは、β-グロビンとESR1座を規定すると考えられているASCOM複合体としても知られているMLL2/MLL3複合体の一部を構成する。

異常遺伝子産物

罹患者の大多数においてMLL2のハプロ不全がおそらく歌舞伎症候群の発症基盤であろう。

資源

この疾患に対する疾患特異的か上部支援団体の利用者資源を参照。これらの団体は、個人や家族に情報、支援および他の罹患者との接触が提供できるように設立されている。

Gene Testsは、読み手に利益を与えるような選択された組織と資源についての情報を提供する。Gene Testsは他の組織によって提供された情報については責任をもたない。

参考文献

遺伝医学検索:PubMed Clinical Queriesのページに記載されている臨床家のための特別なPubMed検索。

公表されたガイドライン / コンセンサス ステートメント

Kabuki Syndrome Guideline Development Group. Management of Kabuki Syndrome − A Clinical Guideline (pdf).


原文 Kakbuki Syndrome

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