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Lynch症候群
(
Lynch Syndrome)
[Synonym: HNPCC, Hereditary Non-Polyposis Colon Cancer (EPCAM-Related Syndromeも含む), MLH1-Related Lynch syndrome, MSH2-Related Lynch Syndrome, MSH6-Related Lynch syndrome, PMS2-Related Lynch Syndrome]

Gene Review著者: Wendy Kohlmann, MS and Stephan B Gruber, MD, PhD
日本語訳者: 岩泉守哉(浜松医科大学消化器内科)
Gene Review 最終更新日: 2011.8.11 日本語訳最終更新日: : 2012.7.8

原文 Lynch Syndrome


要約

疾患の特徴

ミスマッチ修復遺伝子の生殖細胞変異を原因とし、マイクロサテライト不安定性(MSI)を示す腫瘍と関連が深いLynch症候群は、大腸癌および子宮内膜、卵巣、胃、小腸、肝胆道系、泌尿生殖器系、脳および皮膚の癌のリスクが上昇することを特徴とする。Lynch症候群の癌罹患リスクは、大腸癌:52%-82%(診断時平均年齢44-61歳)、胃癌:6%-13%(診断時平均年齢56歳);卵巣癌:4%-12%(診断時平均年齢42.5歳;およそ30%で40歳以前に診断される)。他のLynch症候群関連癌のリスク増加率は一般人口においてのリスク増加率よりも事実上高いものの、代表的なLynch症候群関連癌よりも低い。

診断・検査

Lynch症候群の診断はアムステルダム基準を満たすようなMSIを持つ家族の家族歴、あるいは個人および家族に対するミスマッチ修復(MMR)遺伝子(MLH1, MSH2, MSH6, PMS2)の遺伝子変異検索によりなされる。Lynch症候群の家系においてMLH1およびMSH2生殖細胞変異の頻度はおよそ90%を、MSH6変異は7%-10%を占め、PMS2変異は5%に満たない。EPCAM遺伝子(この遺伝子はミスマッチ修復遺伝子ではない)の生殖細胞欠失の頻度はLynch症候群の家系の約1%である(EPCAM遺伝子の生殖細胞欠失によりMSH2が不活性化される)。

Lynch症候群に対する遺伝学的検査は理想的には各ステップを踏んで行われる。

  1. MSI検査および4種のミスマッチ修復(MMR)蛋白について免疫組織化学法(IHC)を用いての評価。腫瘍部のみのMSIの同定のみではLynch症候群というには十分ではない、なぜならば10%-15%の散発性大腸癌でMSIを呈するためである。IHC検査は生殖細胞変異ではないかと思われるMMR遺伝子の同定の助けとなる。
  2. 散発性腫瘍か遺伝性腫瘍かを見極めるために行われる、腫瘍部のメチル化およびBRAFの体細胞変異同定検査。
  3. これまでに得られた検査結果からLynch症候群のものと一致した場合、MMR遺伝子の生殖細胞変異検査。

臨床的マネジメント 

症状出現時の治療Lynch症候群の者に対して大腸癌出現前の予防的大腸摘出術は一般的には推奨されない。理由はルーチン大腸内視鏡検査が大腸癌の予防に効果的であるからである。癌発生前の予防的な子宮および卵巣摘出術は出産を終えた後に考慮されうる。

定期的検査1-2年に1回の内視鏡的ポリープ切除術を含む大腸内視鏡検査。20-25歳の間、あるいは家系内で最も若く大腸癌と診断された年齢よりも10歳若い年齢から開始されるのが望ましい。子宮内膜癌、卵巣癌、胃癌、十二指腸癌および泌尿器系悪性腫瘍に対する定期的検査の効果は不明である。

避けるべき化学物質および環境喫煙

リスクのある近親者に対する検査:18歳未満のリスクのある近親者に対する遺伝学的検査は一般的に推奨されない。しかしながら前述したように、家系内で最も若く大腸癌と診断された年齢よりも10歳若い年齢からの大腸癌スクリーニングが推奨されるため、家系によっては18歳未満であっても分子遺伝学的検査や大腸内視鏡検査によるスクリーニングがなされる場合がある。

遺伝カウンセリング 

Lynch症候群は常染色体優性遺伝の遺伝形式とる。Lynch症候群と診断された者の大部分は親から遺伝される。しかしながら、不完全浸透であること、発癌年齢にばらつきがあること、スクリーニングおよび予防的手術により発癌リスクが軽減されること、あるいは早期死亡といったことによりLynch症候群に関連する遺伝子のうちのひとつが変異を有していてもその親が必ずしも癌に罹患しているとは限らない。

Lynch症候群患者の子供は50%の確率で変異を受け継ぐ。リスクのあるものが妊娠した場合、出生前診断は家系内での疾患感受性遺伝子変異が同定されている場合に限って可能である。Lynch症候群のような、典型的には成人発症の疾患群に対しての出生前診断は一般的ではない.


診断

臨床診断

Lynch症候群は、アムステルダム基準を満たしかつ腫瘍でマイクロサテライト不安定性(MSI)を有する家族の家族歴、あるいはミスマッチ修復(MMR)遺伝子(MLH1, MSH2, MSH6, PMS2)またはEPCAMの生殖細胞変異を有する者、および家族に対する分子遺伝学的検査に基づいて診断される。

1990年に、International Collaborative Group on Hereditary Non-Polyposis Colorectal Cancer (遺伝性非ポリポーシス大腸がんに関する国際共同研究グループ) が、遺伝性非ポリポーシス大腸がん(HNPCC、Lynch症候群)に対する最初の臨床診断基準として、アムステルダム基準を確立させた。この基準は他のHNPCC関連癌を含める目的で後にアムステルダム基準IIとして改定された(Table 1)。 Table1. HNPCCの臨床診断のためのアムステルダム基準およびアムステルダム基準II

アムステルダム基準

アムステルダム基準II

家系内に少なくとも3名以上の大腸癌がおり、下記の基準を満たしていること

そのうちの1名は他の2名に対して第一度近親者(親、子、兄弟)であること

少なくとも2世代にわたって発症していること

少なくとも大腸癌の1名は50歳未満で診断されていること

家族性大腸線種症 (FAP) が除外されていること

家系内に少なくとも3名のHNPCCに関連した腫瘍(大腸がん、子宮がん、胃がん、小腸がん、尿管あるいは腎盂のがん)が認められること

そのうちの1名は他の2名に対して第一度近親者(親、子、兄弟)であること

少なくとも2世代にわたって発症していること

少なくとも1名は50歳未満でHNPCC関連癌と診断されていること

家族性大腸腺腫症 (FAP) が除外されていること

アムステルダム基準を満たす家系では、MMR遺伝子の生殖細胞変異を有することが予測可能であるが、この基準を満たすもののMMR遺伝子の生殖細胞変異を有する者の多くを同定し損ねることがある。従って、アムステルダム基準と家族歴のみを信用してMMR遺伝子の生殖細胞変異を有する者の同定を行うことできない。

  • Sjursenらは2010年に、アムステルダム基準IIによってMLH1MSH2PMS2およびMSH6の生殖細胞変異を有する者が同定されうる感度はそれぞれ、87%、62%、38%、および48%であると報告している。
  • Hampelらは2005年に大腸患者のpopulation-based studyにおいて、MMR遺伝子の生殖細胞変異を有する者のうち、アムステルダム基準を満たす例はわずか23%であると報告している。

注)Lynch症候群に関連する4つのMMR遺伝子の内、1つの遺伝子で生殖細胞欠失変異が認められた者は家族歴の内容にかかわらずLynch 症候群であると考える。

検査

腫瘍組織を用いて検査を行う目的

  • Lynch症候群である確率を予測するため。
  • Lynch症候群に罹患している者の中で、どの遺伝子の生殖細胞変異が疾患の原因に関与しているかを同定するため。

Table3に、腫瘍組織を利用した検査結果に対する解釈と推奨される追加検査について要約した。

組織型

  • 大腸癌組織を用いての検査が好ましいが、腺腫性ポリープの組織を用いられることも時々ある。しかし、ポリープの生検から得られた腫瘍の量が少ない場合、検査に不十分である場合がある。
  • MMRの欠損した子宮内膜癌のスクリーニング目的で子宮内膜の腫瘍組織を用いた検査が行われる場合がある。

散発性に発生した腫瘍と生殖細胞変異が原因で発生した腫瘍との区別

  • 大腸癌;MLH1のメチル化の異常(多くはプロモーター領域のhypermethylation)およびBRAF変異認められた場合、その腫瘍はMMR遺伝子の生殖細胞変異が原因であることよりも散発性腫瘍である可能性が高い。これらの検査結果および腫瘍組織を用いた他の検査の結果がLynch症候群を疑うものである場合、生殖細胞遺伝子検査を加えて行う。
  • 子宮内膜癌;BRAFの変異は子宮内膜癌では一般的ではないため、BRAFの検査は散発性の子宮内膜癌かLynch症候群由来のものかを見分けるための参考にはならない。

腫瘍組織の免疫組織化学(IHC);IHCでは、MMR遺伝子によって発現された蛋白が存在するか欠損しているかを同定することが可能である。MMR遺伝子産物は二量体で機能する。すなわち、MSH2蛋白はMSH6蛋白あるいはMSH3蛋白と複合体を形成し、MLH1蛋白はPMS2蛋白あるいはPMS1蛋白と複合体を形成する。MSH6とPMS2蛋白は複合体を形成していないときは不安定である。したがって、MSH2生殖細胞変異では典型的にはMSH2/MSH6複合体の発現が欠損している。また、MLH1生殖細胞変異では、MLH1/PMS2複合体の発現が欠損している。しかしながら、MSH6PMS2の生殖細胞変異ではMSH2蛋白とMLH1蛋白の発現の欠損を引き起こさない、なぜならば、MSH2はMSH6以外の蛋白と、MLH1はPMS2以外の蛋白とそれぞれ複合体を形成するからである。

IHC検査試行の利点

  • IHC検査はMMR欠損により引き起こされる腫瘍の同定に有効である。MSH2, MLH1, MSH6, およびPMS2に対する抗体は生殖細胞変異を有する腫瘍に対し、感度92%である。
  • IHC検査は手技的には簡便で、ほとんどの施設で容易に実施可能である。
  • IHC検査はほとんどのMMR遺伝子の生殖細胞変異、および発現が低下させている体細胞変化を同定可能である。したがって、分子遺伝学的検査のコストを有意に下げることにつながる。

IHC検査の欠点

  • 固定その他の基本的操作による染色パターンの減弱や曖昧な結果となることがある。
  • ミスセンス変異がタンパク発現の欠損を引き起こさない可能性がある。
  • 検体が小さい場合、信用性に欠けることがある。

腫瘍部のマイクロサテライト不安定性(MSI)検査MMR遺伝子は、細胞が成長し分裂する際、一塩基ミスマッチ、挿入および欠失を同定し修復する役割を担っている。MMR遺伝子の欠損は細胞内の遺伝子変異を蓄積させ、ひいては細胞の悪性化につながる。

マイクロサテライトとは、DNA繰り返し配列領域のことであり(例;AAAAA or CGCGCGCG)、この領域ではMMR遺伝子の機能異常が存在する場合、複製エラーがおきやすい。MMR遺伝子機能異常により発生した癌は、正常細胞に比較してむらのある回数の反復が認められる。これらをマイクロサテライト不安定性(MSI)と呼ぶ。

マイクロサテライトマーカーの繰り返し回数を腫瘍部と正常部で比較してMSIを査定する。1997年のNCIコンセンサス会議で、主要な5つのマーカーを使用することが推奨された(BAT25, BAT26, D2S123, D5S346, D17S250)。しかし、検査室ではしばしば10種類のマーカーを使用する。MSIの判定は以下のとおり。

  • MSI-high; 2種類より多くの(あるいは使用したマーカー数の30%より多くの)マーカーで不安定性を示すもの。
  • MSI-low; 1種類の(あるいは30%未満の)マーカーで不安定性を示すもの。
  • MSI-stable; 0種類の(あるいは0%の)マーカーで不安定性を示すもの。

注:多くの臨床検査室ではMSI検査の際に、表示した5週類のマーカーと別に他のマーカーを追加することがあるが、1998年にBolandらがデザインしたマーカー以外のものに関してはコンセンサスが得られていない。

  • 大腸腫瘍.適切な検体が得られた場合、Lynch症候群関連腺腫では浸潤癌よりもMSIの割合がやや低いといわれており、80%の腺腫ではMSI-Hである(Table 3参照)。High-grade dysplasiaの腺腫では早期のポリープに比してMSIを呈する場合が多い。
  • 子宮内膜癌.およそ20-30%の子宮内膜癌でMSIを呈し、大腸癌と同様、多くの場合MLH1プロモーター領域のメチル化が原因である。

MSI検査の利点

  • どの腫瘍がMMR欠損により発生しているかが判明する点で有用である。MMR遺伝子の生殖細胞変異を有する者に起こる腫瘍の同定のためのMSI検査の感度は93%である。
  • IHC検査で偽陰性であった場合(適切の抗体が使用されなかったため、タンパクが発現していたが機能が損なわれている場合)、MSI検査では陽性と出る場合がある。
  • MSI検査は少量の組織を利用して実施可能である。
  • MSI検査は再現性が高い。

MSI検査の限界

  • Microdissectionおよび分子解析を要するため、すべての癌で容易に実施可能である訳ではない。
  • 粘液の多く充満した粘液癌などのように、検体から得られるDNAが比率的に少ない場合、MSI検査での同定が不可能な場合がある。
  • MSH6生殖細胞変異が原因によるMMR欠損により発生した腫瘍では、MSIのレベルが低いために同定を見逃す場合がある。
  • 分子検査の費用を下げない。なぜならば最も高頻度に変異していそうな遺伝子の同定の助けにはならないからである。

BRAF検査

  • 大腸腫瘍.BRAF変異(最も頻度の高い変異はVal600Glu (V600E))は、大腸癌の15%に認められる。BRAF変異はLynch症候群関連癌ではまれであると考えられているため、BRAF変異の保有によりLynch症候群が除外される。
  • 子宮内膜癌.BRAF変異は散発性子宮内膜癌では一般的ではない。したがって、BRAF変異検索によって散発性子宮内膜癌とLynch症候群関連子宮内膜癌を区別することはできない。

腫瘍組織のメチル化検査大部分において、MSIはMLH1のプロモーターsomatic methylationによるsilencingが原因である。従って、MLH1プロモーター領域のメチル化検索はLynch症候群を除外する手助けとなる。

しかしながら、MLH1生殖細胞変異をあらかじめ有する者で、機能している対側アレルがメチル化により不活性化することで、”second hit” が起こり、遺伝子のhomozygous inactivationを獲得すると、癌の発育進展が促される。従って、早期発生の大腸癌を有し、家族歴や危険因子の高度な者において、MLH1遺伝子のプロモーター領域のhypermethylationの存在からでは完全にはLynch症候群の除外はできない。

機能しているMSH2アレルのsomatic hypermethylationはMSH2関連癌の24%で確認されている。しかしながら、MSH2のメチル化が散発性大腸癌の原因であることは確認されていない。

Table 2. 腫瘍組織検査結果とその解釈、および追加検査についてのまとめ

腫瘍検査1

考えられる病因

追加で行うべき検査2

IHC

MSI

BRAFV600E3

MLH1
プロモーター領域のメチル化

MLH1

MSH2

MSH6

PMS2

+

+

+

+

MSS/MSI-Low

   

散発性癌

なし4

+

+

+

+

MSI-High

   

いずれかのMMR遺伝子の生殖細胞変異

MLH1MSH2の生殖細胞変異検査、引き続きMSH6と、可能ならばPMS2の生殖細胞変異検査

       

MSI-High

   

散発性癌、あるいはいずれかのMMR遺伝子の生殖細胞変異

生殖細胞変異検索の必要性有無の参考のためにIHCを考慮。

もし、IHCが行われない場合、MLH1MSH2の生殖細胞変異検査、引き続きMSH6と、可能ならばPMS2の生殖細胞変異検査

-

+

+

-

     

散発性癌

MLH1生殖細胞変異

BRAF変異検索3/MLH1メチル化検索を考慮する。陰性の場合、あるいは上記検査がなされない場合はMLH1生殖細胞変異検索を考慮する。

-

+

+

-

 

陽性

 

散発性癌

なし4

-

+

+

-

 

陰性

陽性

散発性癌

まれにMLH1生殖細胞変異あるいはMLH1 epimutation

なし。ただし若年発症、あるいは家族歴が存在する場合はMLH1生殖細胞変異検索を考慮する。また、若年発症の場合はMLH1 epimutation検索についても専門家に相談する。

-

+

+

-

 

陰性

陰性

MLH1生殖細胞変異

MLH1生殖細胞変異検索

+

-

-

+

     

MSH2生殖細胞変異

EPCAM生殖細胞変異

まれに、MSH6生殖細胞変異

MSH2生殖細胞変異検査。変異が認められなかった場合、EPCAMについても検査を考慮。

MSH2,EPCAMいずれにも生殖細胞変異が認められず、大欠失も認められない場合、MSH6生殖細胞変異検査を考慮する。

-

+

+

+

     

MLH1生殖細胞変異

MLH1生殖細胞変異検査

+

+

+

-

     

PMS2生殖細胞変異

MLH1生殖細胞変異

PMS2生殖細胞変異検査。もし、変異が認められなかった場合、PMS2MLH1生殖細胞変異検査を行う。

+

-

+

+

     

MSH2生殖細胞変異

MSH2生殖細胞変異検査。

+

+

-

+

     

MSH6生殖細胞変異

MSH2生殖細胞変異

MSH6生殖細胞変異検査。変異が認められなかった場合、MSH2生殖細胞変異検査を考慮する。

[NCCN20111より]

空欄は検査が行われていない、あるいは検査方針が反映されていない。

MSI=microsatellite instability
MSS=MSI-stable

+;タンパクに対する染色陽性

-; タンパクに対する染色陰性

注)

  1. 検査方針は大腸癌および子宮内膜癌に当てはまる。他のLynch症候群関連腫瘍に関する検査効率に関してはデータの蓄積が少ない。
  2. 生殖細胞変異検査に関する情報はMolecular Genetic Testingの項、およびTable3を参照のこと。
  3. 大腸癌以外の腫瘍では適当ではない。
  4. 濃厚な家族歴が認められる場合、(例;アムステルダム基準を満たす場合)、発端者に対しての追加検査や罹患家族の腫瘍検索をすることが望ましい、なぜならば検査の対象となった腫瘍がたまたま散発性であった可能性も否定できないからである。

分子遺伝学的検査

GeneReviewsは,分子遺伝学的検査について,その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り,臨床的に実施可能であるとする. GeneTestsは研究機関から提出された情報を検証しないし,研究機関の承認状態もしくは実施結果を保証しない.情報を検証するためには,医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない.―編集者注.

遺伝子 

Table3に示すような、生殖細胞変異が認められた場合にMMRシステムが破綻し、Lynch症候群の原因となる5種の遺伝子(MLH1, MSH2, MSH6, PMS2, および EPCAM (以前はTACSTD1と呼ばれていた。)。

注)EPCAMはMMR遺伝子ではないが、3’側の生殖細胞変異(欠失)がその下流近傍に存在するMSH2のプロモーター領域のメチル化を誘導し、MSH2のsilencingが起こる。

可能性のある遺伝子座のheterogeneityに対するエビデンスLynch症候群のいくつかの家系で、MLH3, MSH3, EXO1, PMS2, TGFBR2生殖細胞変異を有する報告があるが、臨床的意義は明らかでない。これらの遺伝子のLynch症候群での役割に関する議論については以下のサイトへ

www.omim.org

MLH3: 604395

MSH3: 600887

EXO1: 606063

PMS1: 600258

TGFBR2: 190182

Lynch症候群が疑われた者において、これらの遺伝子の生殖細胞変異検索の臨床的有用性は知られていない。

Table 3. Lynch症候群において生殖細胞遺伝子変異検索に用いられる分子遺伝学的検査一覧

遺伝子記号

Lynch症候群における当該遺伝子の変異の割合

検査法

検出される変異

実施レベル

MLH1

50%1,2

シーケンス解析

塩基配列変化3

臨床

欠失/重複解析4

エクソン欠失あるいは全ゲノム欠失5

MSH2

40%1

シーケンス解析

塩基配列変化3

臨床

欠失/重複解析

エクソン欠失あるいは全ゲノム欠失5

MSH6

7-10%6

シーケンス解析

塩基配列変化3

臨床

欠失/重複解析

エクソン欠失あるいは全ゲノム欠失5

PMS2

<5%7

シーケンス解析

塩基配列変化3

臨床

欠失/重複解析

エクソン欠失あるいは全ゲノム欠失5

EPCAM (TACSTD1)

〜1%-3%9

欠失/重複解析

エクソン欠失あるいは全ゲノム欠失8

臨床

「検査の実施」はGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている検査実施状況である。検査の実施に関してはGeneTests Laboratory Directoryを参照のこと.GeneReviewsは,分子遺伝学的検査について,その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り,臨床的に実施可能としている.GeneTestsは研究機関から提出された情報の検証や,研究機関の承認状態もしくは実施結果の保証は行わない.情報を検証するためには,医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない.

  1. Peltmaki [2003]
  2. functional alleleのsomatic LOHかつメチル化によるMLH1の不活性化はLynch症候群ではまれである。このような症例はMLH1のシーケンス解析、あるいは欠失/重複解析からは同定できない。
  3. シーケンス解析で同定された変異として、遺伝子内の小規模な欠失・挿入、ミスセンス変異、ナンセンス変異およびスプライス部位変異が含まれる。
  4. 欠失・挿入の同定はgenomic DNA内のコード領域およびイントロン・エクソン間領域のシーケンス解析では不可能であり、定量PCR、long range PCR、multiplex ligation-dependent amplification (MLPA)、あるいはtarget array GHが利用されている。
  5. 大欠失および遺伝子再配列はMSH2変異の20%、MLH1変異の5%、PMS2変異の20%、MSH6変異の7%、EPCAM変異の100%で認められる。[Wijnen et al 1998, Charbonnier et al 2000, Wagner et al2003, Plaschke et al 2004, Senter et al 2008]
  6. Miyaki et al [1997], Berends et al [2002], Peltomaki [2003]
  7. Senter et al [2008]
  8. EPCAM生殖細胞系列欠失は、近傍に存在するMSH2のプロモーター領域のメチル化によりsilencingを引き起こす。
  9. Niessen et al [2009], Goel et al [2011], Kuiper et al [2011]

検査結果の解釈. シーケンス解析の結果解釈についてはこちら。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK6851/

検査手順

発端者に対するLynch症候群に診断確定National Comprehensive Cancer Network (NCCN) による大腸癌スクリーニング検査指針を参照の場合はNCCNのウェブサイト参照のこと。検査は段階的に行われるのが理想的である。

I. 腫瘍組織での検査 (Table 2) Lynch症候群の可能性のある者に対して、MSIやIHC検査は腫瘍組織でのスクリーニングの手段となりうる。

  1. アプローチその1.すべての大腸癌をMSI検査あるいはIHC検査でスクリーニングする [EGAPP Working Group 2009].2005年に実施された、大腸癌1566例では、MMR生殖細胞変異が認められた症例のうち、25%でアムステルダム基準やベセスダガイドラインを満たしていなかった。
    注)MSI検査とIHC検査の両方を組み合わせて行うことが理想であるが、IHC検査のみの実施は大規模なスクリーニングプログラムに対しては実行可能である、理由としては、IHC検査はMSI検査よりも容易に実施しやすく、かつどのMMR遺伝子が生殖細胞変異の可能性であるか、といった情報が得られるからである。たとえば、IHCでMLH1PMS2両方で発現が認められなかった場合、MLH1プロモーター領域のメチル化およびBRAF変異の有無で散発性腫瘍であるか、MLH1生殖細胞変異による腫瘍であるかの判断材料となりうる。
  2. アプローチその2 IHCあるいはMSI検査を大腸癌罹患者、あるいは他のLynch症候群関連癌の罹患者、さらに若年者やはっきりした家族歴のある者、に絞って実施する。
    注)ベセスダガイドラインはLynch症候群かもしれない者、あるいは腫瘍組織に対するMSI検査あるいはIHC検査実施候補者を同定する助けとなる基準である。Lynch症候群罹患者同定の感度は94%であるが、特異度はわずか25%である。

II.分子遺伝学的検査 (Table 3) .

  • アプローチその1.腫瘍検査の結果により推奨されるとおり(Table 2)
  • アプローチその2以下に述べるのような、Lynch症候群関連遺伝子群のうちのひとつの変異を同定予測するためのリスクアセスメントモデルに従う。
    • PREMM1,2,6モデルは、4539名で行われたMSH2MLH1MSH6の遺伝学的検査結果に基づいた商業的な検査室によるデータである。このモデルは、発端者、第一度近親者、第二度近親者におけるLynch症候群関連癌(大腸、子宮内膜、胃、卵巣、小腸、泌尿器、胆道、髄芽腫、皮脂腺腫瘍、膵)に関する情報、発症年齢に関する情報が含まれている。MSIやIHC検査の結果は含まれていない。このモデルは遺伝子型/臨床型のデータに基づき、個々のMMR遺伝子の変異を推定するものである。5%変異確率をMMR検査の標準とすると、このモデルは感度90%、特異度54%である。このモデルは家族歴を用いて、MMR遺伝子変異を持つ癌に罹患しているか否かを推定することも可能である。
    • MMRpredictは、MLH1,MSH2およびMSH6の変異検索をされた55歳未満の大腸癌症例によるpopulation-basedコホートからのデータに基づいている。MSI検査、IHC検査および第一度近親者の大腸癌/子宮内膜癌の有無がデータとして取り入れられている。このモデルは、罹患者にのみ利用される。高年齢で診断された者に対してはどの程度正確かは明らかではない。
    • MMRproは、発端者、第一度近親者および第二度近親者に対する大腸癌および子宮内膜癌の有無、発症年齢、家系内のMLH1,MSH2,あるいはMSH6の生殖細胞変異を推測するためのIHCおよびMSI検査結果、が取り入れられている。また、家族が生殖細胞変異を受け継いでいるか否かを推定するために、メンデルの法則を利用しており、個々が大腸癌および子宮内膜癌に罹患するリスクを算定する。

変異に関するデータは、論文で報告されたclinic-あるいはpopulation-based dataであり、発癌リスクの推測はメタ解析あるいは大規模なLynch症候群に関する検討から得られた浸透度に基づいている。このモデルは大腸癌以外の癌はほとんど情報に取り入れられていないため、どの程度正確にもっとも変異している可能性の遺伝子を同定できるかは不明である。

  • アプローチその3アムステルダム基準を満たす家族に対し、MSI検査は控え、直接分子遺伝学的検査を進める。このアプローチは推奨されないが、以下に示すような場合に考慮されうる
    • 検査で癌が診断されなかった場合:
    • Lynch症候群関連癌と診断された家族に分子遺伝学的検査を始める。
    • 4種すべてのMMR遺伝子とEPCAMの遺伝子変異検索を行う。検査は変異が同定されやすい遺伝子から順に、段階的に進める。
    • もし、生殖細胞変異が同定されなかった場合でも、Lynch症候群は除外されたとは限らない。なぜならばいくつかの変異が見逃されているかもしれないからである、あるいは検査の対象となった家族が散発性癌であった可能性も否定できないからである。その場合には、他の近親者でLynch症候群関連癌に罹患している者に対しての分子遺伝学的検査結果により、原因遺伝子の生殖細胞変異であるか否か同定が可能となる。
    • 腫瘍部のMSI statusに関する情報がない場合、Lynch症候群か、他の家族性大腸癌かの区別はつけられない。
  • 腫瘍組織や生存している罹患者が得られない場合:
    • 生殖細胞変異を同定するための分子遺伝学的検査は罹患していない家族で追跡されうる。
    • 罹患していない者が変異を有する見込み(もし、その変異が家系内で有している場合)は、罹患した家族との血縁の程度による。(例;第一度近親者は50%の確率で変異が受け継がれる)
    • この場合、Cost-benefit解析からの視点では、罹患していない者に対して検査を行うことは価値がある。理由としてはLynch症候群をおこす原因遺伝子の生殖細胞変異が同定された場合、家族にとって明らかに利益があるからである[Dinh et al 2011]

予測的検査無症候性でリスクのある成人の家族に対する予測的検査には、家系内での疾患原因遺伝子の前もった同定が必要である。

出生前診断と着床前診断(PGD)リスクのある妊娠に対する出生前診断と着床前診断には、家系内での疾患原因遺伝子の前もった同定が必要である。

遺伝学的に関連する疾患

MLH1,MSH2,MSH6,PMS2は他の疾患とは関連していない。

臨床像

自然経過

MMR遺伝子の生殖細胞に起因する、あるいはMSIを呈する腫瘍を有するLynch症候群の罹患者は大腸癌、および他の関連癌(子宮内膜、卵巣、胃、小腸、肝胆道系、上部尿路系、脳、皮膚)が発症するリスクが上がる(Table 4)。

Table 4. 一般人口と比較した70歳以下のLynch症候群の罹患者の癌発症リスク

癌の種類

一般人口でのリスク

Lynch症候群 (MLH1およびMSH2 heterozygotes)

リスク

発症平均年齢

大腸

5.5%

52-82%

44-61歳

子宮内膜

2.7%

25-60%

48-62歳

<1%

6-13%

56歳

卵巣

1.6%

4-12%

42.5歳

肝胆道系

<1%

1.4-4%

報告なし

尿路系

<1%

1-4%

-55歳

小腸

<1%

3-6%

49歳

中枢神経系

<1%

1-3%

-50歳

皮脂腺

<1%

1-9%

報告なし

引用元;Aarnio et al [1999], Vasen et al [2001], American Cancer Society [2002], Hampel et al [2005], Ponti et al [2006], South et al [2008],Watson et al [2008], Barrow et al [2009], Stoffel et al [2009

大腸癌.アムステルダム基準を満たす高リスクの親族に関する最初の研究では、大腸癌の生涯リスクは82%にのぼり、発症平均年齢は44歳である。この場合、2/3で近位大腸(右側結腸)で発症する。

さらに最近の検討では、MLH1およびMSH2のヘテロ変異を有する場合、リスクは男性で66-69%、女性で43-52%、平均発症年齢は61歳と低くなっている。

MSH6およびPMS2のヘテロ変異を有する場合でも発癌リスクは低くなっている。MSH6ヘテロ変異を有する場合、80歳までに発症するリスクは男性で44%、女性で20%で、MLH1およびMSH2のヘテロ変異を有する場合よりも低いが、それでも大腸癌発症リスクは一般の8倍である。PMS2ヘテロ変異を有する者の70歳までに発症するリスクは5-20%である。

EPCAMの変異を有する者の発癌リスクに関するデータは十分に蓄積されていないが、Kempersらは194例のEPCAM欠失の症例を報告しており、彼らが70歳までの大腸癌の累積発症率は75%(95%CI;65-86)と結論付けている。EPCAM遺伝子の3’側の欠失のみ有する者と、EPCAMMSH2の双方をを含む部分の欠失を有する者との間で、大腸癌の発症リスクに差は認められなかった。

ステージごとに照らし合わせた場合、Lynch症候群関連大腸癌に罹患した者は散発性大腸癌患者に比べ予後が良好である。これは期待していなかった結果である、というのも典型的な低分化型のLynch症候群関連大腸癌は予後不良であるからである。(Lynch症候群関連大腸癌は以下の特徴が一般的である;低分化組織、リンパ球浸潤をみとめる、印環細胞癌あるいはふるい型の組織型である)

子宮内膜癌.Lynch症候群に罹患した女性は25%-60%の子宮内膜癌の累積生涯リスクを持ち、Lynch症候群で2番目に高頻度の関連癌である。高リスク家系による検討では、平均診断年齢は48歳、population-based studyでの平均診断年齢は62歳である。

MSH6変異が大腸癌のリスクの多くで関連しているのに対し、ヘテロ変異を有する場合の子宮内膜癌のリスクは44%であり、この割合はMLH1およびMSH2ヘテロ変異を有する場合の子宮内膜癌のリスクと同程度である。最初に大腸癌と診断されたLynch症候群罹患女性がその後子宮内膜癌に罹患するリスクは、大腸癌診断後10年以内で26%である。

Kampersらは、70歳までの子宮内膜癌の累積リスクは12%(95%CI;0-27)と報告している。EPCAMMSH2の両方の欠失を有する女性に対する子宮内膜癌のリスクは、MSH2の変異を有する者に対するリスクと同程度であった。

総合すると、Lynch症候群を有する者から発症する子宮内膜癌は、全子宮内膜癌症例のおよそ2%を占める。Lynch 症候群関連子宮内膜癌の生存率はLynch症候群関連大腸癌の生存率と同様である。

胃癌.MLH1およびMSH2ヘテロ変異を有する者の胃癌のリスクは6-13%であり、中でもMSH2変異を有する男性でリスクが最も高い。胃がんに対する他のリスク(H. pylori感染など)のほうが高い地域ではさらに高い胃癌発癌リスクが報告されている。胃癌と診断される平均年齢は56歳である。Lynch 症候群で最も頻度の高いとされる、intestinal-typeの腺癌は、CDH1変異が原因として起こる遺伝性びまん性胃癌に見られる組織型とは異なる。しかしながら、Lynch症候群関連胃癌の20%ではびまん性である。

卵巣癌.MMR生殖細胞変異による卵巣がんのリスクは報告によりさまざまである。MLH1ヘテロ変異をを有する者でのリスクは4-6%である一方、MSH2ヘテロ変異を有するもののリスクは8-11%である。Lynch 症候群関連卵巣がんの平均診断年齢は42.5歳であるが、さらに若年で診断されている例も報告されている。およそ30%のLynch症候群関連卵巣癌は35歳までに診断されている。

病理組織の分布は散発性卵巣癌の分布と同様である。境界型卵巣腫瘍はLynch症候群とは関連がないようである。

他の臓器癌.他のLynch症候群特有の関連癌も報告されている。

  • 尿路系癌.Lynch症候群関連尿路系癌で最も一般的なのは尿管および腎盂の移行上皮癌である。

最近の検討で、膀胱癌のリスクがLynch症候群で上昇傾向にあると報告されている。オランダのLynch症候群コホート研究で、膀胱癌の相対リスクは男性で4.4、女性で2.2と報告され、MSI検査あるいはIHC検査が試行可能であった組織のほとんどでMSI陽性あるいは関連遺伝子の生殖細胞変異であった。

尿路系腫瘍のリスクは性別で異なり、MSH2ヘテロ変異を有する女性で特に高い。MLH1変異を有する女性のリスクは1%であるのに対し、MSH2変異を有する男性でのリスクは27%まで上る。

  • 小腸癌.小腸癌のリスクは3-6%である。十二指腸と空腸で最も発生頻度が高く、上部消化管内視鏡検査で50%の頻度で発見される。組織型は大部分が腺癌である。
  • 膵癌.Stoffelらの報告によると、Lynch症候群の家族歴からの検討で、70歳までの膵癌のリスクは一般の8.6倍であるが、他の報告でリスクの上昇する報告は散見されない。

Lynch症候群での膵癌発症はまれとの報告もある。

  • 脳腫瘍.脳腫瘍のリスクは約2%と報告されている。一方Barrowらによると、biallelic MSH2変異を有するものの脳腫瘍のリスクは16倍である。最も一般的な中枢神経系腫瘍は膠芽腫である。
  • 乳癌.乳癌とLynch症候群の関連は不明である。Lynch症候群での乳癌のリスクが上昇するという事実が一貫して報告されているわけではない。Walshらによる最近の報告では、MMR遺伝子の変異を認める乳癌症例の51%で生殖細胞変異に関連するタンパクの発現が癌組織で欠損している。
  • 皮脂腺腫瘍 (皮脂腺腫、脂肪上皮腫、脂腺癌、ケラトアカントーマを含む).Lynch症候群に関連した皮脂腺腫瘍はMSIを呈する。Lynch症候群での皮脂腺腫瘍の発生頻度はわずかである。過去の検討では、MMR遺伝子の生殖細胞変異を有する者のうち、1%あるいは報告によっては9%が皮脂腺腫瘍を発症している。
  • その他の発癌リスク.Lynch症候群に合併した造血器腫瘍、喉頭癌の報告があるが、Lynch症候群との関連性は明らかでない。
  • Nibertらは、Lynch症候群8例中6例に発症した、MMR欠損を呈する肉腫について報告しており、肉腫はLynch症候群関連腫瘍のひとつではないかと報告している。しく腫自体の頻度がまれであるため、肉腫がLynch症候群関連癌のひとつであると定義するのは困難である。

Lynch症候群の異型

  • Muir-Torre症候群は、皮脂腺腫瘍と1種類以上の腸管悪性腫瘍の組み合わさったものと定義され、Lynch症候群の罹患者でも認められる。皮脂腺腫瘍とは、皮脂腺腫、脂肪上皮腫、脂腺癌、ケラトアカントーマが含まれる。
  • Turcot症候群は、大腸癌あるいは大腸腺腫に中枢神経腫瘍が加わったものと定義される。臨床像としては、多数の最長ポリープから単一ポリープ、大腸癌と多岐にわたる。

Turcot症候群は通常APC変異あるいはLynch症候群と関連するMMR遺伝子変異が原因とされている。APC変異を有するものは一般的には多くのポリープが発生するが、ポリープの数に関してはAPC変異によるTurcot症候群とLynch症候群と関連するTurcot症候群との間ではオーバーラップすると言われている。中枢神経系腫瘍の病理診断は遺伝子変異診断の助けとなる、というのもAPC変異は一般的には髄芽腫と関連があるといわれており、MMR遺伝子変異は膠芽腫と関連があるといわれているからである。

MMR遺伝子変異と関連する脳腫瘍はMSIを呈する。

  • MMRホモ変異.MLH1,MSH2,MSH6,PMS2ホモ変異はまれと報告されている。罹患したものは20歳までに大腸癌あるいは小腸癌が発症する。ホモ変異を有する小児は10個以上のポリープが認められる。MMRホモ変異における造血器腫瘍、脳腫瘍、カフェオレ斑の症例報告がある。

遺伝子型と臨床型の関連

MMR遺伝子の種類によって、発癌リスクは異なってくる。

MSH2ヘテロ変異は腸管外癌の腫瘍のリスクが高いことと関連がある。子宮内膜癌以外の腸管外腫瘍のリスクはMSH6, PMS2, EPCAMヘテロ変異例では低い。

MSH2変異は他のMMR遺伝子変異に比して、Muir-Torre異型のLynch 症候群の罹患者で高頻度に報告されている。

MSH6ヘテロ変異はMSI-low腫瘍と関連がある。MSH6変異を有する家系では、らのMMR遺伝子変異を有するLynch症候群の罹患者よりも大腸癌の発生が遅く、遠位大腸に癌が局在すること傾向にある。MSH6変異を有する女性では、子宮内膜癌は高頻度に認められる。MSH6変異を有する者では、MLH1あるいはMSH2変異を有する者よりもやや大腸癌のリスクが低く、子宮内膜癌のリスクが高いと報告されている。

PMS2ヘテロ変異はLynch症候群関連癌のリスクが低い傾向(25-35%のリスク)にあると報告されている。

MSH2遺伝子のサイレンシングを引き起こすEPCAMの欠失は、大腸癌のリスクを上げると報告されている。大腸幹細胞ではEPCAMが高発現であると報告されているが、すべての臓器でEPCAMの発現は高発現ではないので、腸管外腫瘍のリスクに対するEPCAMの関与は不明である。Kempersは、MMR遺伝子変異を有する例に比べ、EPCAM欠失を有する例のほうが子宮内膜癌の陸巣が低いと報告している。194例のEPCAM変異を認める群で、16例で腸管外腫瘍が発生した(その内3例が十二指腸、4例で膵に発生)。EPCAM欠失に関連した腸管外悪性腫瘍に関しては、更なる検討が必要である。

浸透率 

MMR遺伝子あるいはEPCAMに関連した大腸癌の浸透度は100%未満である(Table 4参照)。ゆえに、MMR遺伝子変異を有する者であっても発癌しない場合がある。

促進現象 

Lynch症候群での促進現象の報告(例;子孫で両親よりも若年で発症した例)がひとつあるが、結果は再現されていない。他の報告で、同様の報告があるが、birth cohort biasがかかっていた。

命名法

Lynch症候群は遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)と呼ばれる。遺伝性大腸癌の分野の研究者や臨床家はMMR欠損を有する家系の罹患者と他の家族性大腸癌家系の罹患者を区別するために、元来使用されていた名称である“Lynch症候群”と呼ぶように提案している。

頻度 

Lynch症候群は全大腸癌症例の1-3%を、全子宮内膜癌の0.8-1.4%を占める。

Lynch症候群のpopulation prevalenceは1:440である。

鑑別診断

本稿で扱われる疾患に対する遺伝学的検査の実施可能性に関する最新情報は,GeneTests Laboratory Directoryを参照のこと.―編集者注.

家族性大腸癌.MSIを測定することは、Lynch 症候群と他の家族性大腸癌を鑑別するのに重要である。濃厚な大腸癌の家族歴でMSI-Sの腫瘍を有する群で、大腸癌以外のMMR遺伝子の生殖細胞変異に関連する癌のリスクが上昇するという根拠は得られなかった。大腸癌に対するリスクはMSI-S腫瘍を有する家系ではLynch症候群の家系よりも低いと報告されている。家族性大腸癌に関連しそうな多くの候補遺伝子、低浸透度アレル、環境因子、およびリスク因子について検討されている。

希薄型FAPAFAP).FAPの表現型の軽度なものをさし、この疾患もFAPと同様APCの変異が原因である。AFAPは、古典的FAPと比較してポリープの数が少なく、発症年齢が高齢である点が特徴である。通常AFAPの場合、認められるポリープの数は100個未満である。胃底腺や十二指腸にもポリープが発生するが、FAPで認められる多数の大腸外病変(表皮のう胞、歯牙異常、先天性網膜色素上皮肥厚、デスモイド腫瘍。)はAFAPでは認められない場合がありうる。AFAP関連大腸癌や大腸ポリープは通常MSIを認めない。AFAPは常染色体優性遺伝の形式をとる。

APC p.Ile1307Lys変異.このミスセンス変異は古典的なFAPとは関連がない。しかしながら、APC p.Ile1307Lys変異を有する者の大腸癌の発生リスクは2倍に上昇する。アシュケナージ系ユダヤ人家系の6%で本変異が認められる。

MYHMYHの変異は多発性大腸腺腫様ポリープで認められる。MYH変異は臨床的に以下の場合に同定されることがある、(1)15-100個のポリープを有する症例の約30%で同定される。(2)APC変異を認めない古典的FAPの一亜型である。(3) 多発性ポリープを認めない大腸癌の家族歴を持つ者。常染色体劣性の遺伝形式をとる。

過誤腫性ポリープ症候群.過誤腫性ポリープおよび大腸癌に対するリスクと関連のあるいくつかの状況は、ポリープが腺腫か過誤腫か、といった病理組織所見上の違いからだけでなく、大腸外病変からでも見分けがつくことがある。

  • 若年性ポリポーシス症候群はSMAD4BMPR1A変異が原因である。
  • Peutz-Jeghers症候群はSTK11変異が原因である。
  • PTEN過誤腫性症候群(Cowden症候群、Bannayan-Riley-Ruvalcaba [BRR]症候群を含む)はPTEN変異が原因である。

遺伝性びまん性胃癌(HDGC).このタイプの胃癌はCDH1変異が原因であり、通常腺癌である。

BRCA1/BRCA2遺伝性乳癌/卵巣癌症候群は、卵巣癌を含む癌の家族歴を有する者を評価する際に鑑別の考慮に入れる。


臨床的マネジメント

最初の診断に続いて行う評価

Lynch症候群と診断された者の病状の程度を評価する方法は経過観察の項を参照のこと。

症状に対する治療

Lynch症候群に罹患した者に対する大腸癌の管理.大腸癌が発見された場合、回盲部を含む全大腸内視鏡検査が推奨される、というのは異時性癌の発生のリスクが高いからである。注)初回に発見された大腸癌が治療されてから初めてLynch症候群の診断について考慮されることがしばしばあるため、Lynch症候群と診断されたの多くは過去に大腸癌の治療として大腸部分切除術が行われている。

タイミングが困難であるかもしれないが、腫瘍組織をMSI検査およびIHC(およびもし必要ならばMLH1プロモータ領域のメチル化検査)で状況を確認することは、最適な手術療法の選択決定の助けとなりうる。ある検討で、大腸癌患者は大腸癌診断時に遺伝学的検査を行うことを受け入れやすい。

Lynch症候群で認められる大腸以外の癌は通常の場合(Lynch症候群でない者が罹患した場合)と同様に管理する。

一次病変に対する予防

出産を終了した後に予防的尿管あるいは卵巣を摘出することが推奨される。

定期的大腸内視鏡検査が大腸癌の予防に有効であるため、予防的大腸摘出術(大腸癌が発症するまえに大腸を摘出すること)はLynch症候群の大腸癌には推奨されない。

経過観察

大腸癌.通常の大腸内視鏡検査および前癌病変であるポリープの摘出はLynch症候群に罹患した大腸癌の発症を低下させる。2009年のコホート研究で、スクリーニングのコンプライアンスが良いと、Lynch症候群罹患者はMMR変異を有さない家族よりも死亡率が高くなることはなかった。4人のLynch症候群罹患者でリンパ節転移陽性の大腸癌と診断され、内1人は定期的大腸内視鏡検査期間中に診断され、他の3人は最終大腸内視鏡検査施行2年後に診断されている。ゆえに最近は、20−25歳時、あるいは家族の中で最も若年で発症した年齢よりも10年早い年齢(いずれかのうち、早い年齢に相当する年齢)で大腸内視鏡検査を開始し、1−2年ごとに検査を繰り返すことが推奨されている。

MSH6およびPMS2ヘテロ変異は大腸癌のリスクが低いので、この場合スクリーニングの大腸内視鏡検査は30歳まで延期されうる。

注)Lynch症候群における大腸癌の発生は右側結腸に発生しやすいため、S状結腸内視鏡検査のみよりも全大腸内視鏡検査が推奨される。

子宮内膜癌.子宮内膜癌の定期観察指針は大腸癌の定期観察指針ほど確立されていない。

多くの子宮内膜癌は症状の出現から診断される際に早期であるため、女性は子宮内膜癌の兆候ついて教育を受けるべきである。

最近、National Comprehensive Cancer Network (NCCN)は子宮内膜癌および卵巣癌に対しての特異的なスクリーニングを推奨していない。

経膣超音波検査や子宮内膜生検の有効性についての報告は矛盾する結果である。経膣超音波検査と子宮内膜生検の組み合わせが早期子宮内膜癌の同定に有効か否かについて、さらなる検討が必要である。

  • 子宮内膜癌のスクリーニングのための経膣超音波検査に関する検討で、癌は同定できなかったと報告されている。しかしながら、この検討調査期間中、症状の出現から2例で癌が同定可能であった。
  • フィンランドでのコホートによると、内膜採取と経膣超音波検査を2−3年ごとに行うことは早期診断につながると報告されている。しかしながら、子宮内膜癌はしばしば早期であっても症状が出現するため、スクリーニングが本当に早期発見に役立つかは定かでない。

卵巣癌.Lynch症候群の女性に対する卵巣癌の特異的なスクリーニングが何かは定まっていないが、血中CA125を利用した卵巣癌のスクリーニングと経膣超音波検査はBRCA1あるいはBRCA2変異を有する女性のような高リスク群に対して有効ではなかったと報告されているとは注目に値する。

胃および十二指腸癌.上部消化管内視鏡検査がスクリーニングに利用される。最近、NCCNは側視鏡を使った十二指腸までのスクリーニングを、30−35歳の間に開始し、所見により2−3年ごとに観察を繰り返すことを推奨している。慢性炎症、萎縮性胃炎、および腸上皮化生の所見が認められた場合は経過観察の頻度を多くすることが考慮される。注)必要に応じて、適切な治療を施すためにH Pylori感染の評価目的の生検は行われるべきである。

Lynch症候群関連の早期胃癌の早期発見目的の上部消化管内視鏡検査の有効性は限られている。

  • ある検討では、同定可能な前癌病変に欠いているため、胃癌スクリーニング目的の内視鏡検査の有用性はないと結論付けている。
  • オランダでの胃癌のリスクに関する検討によると、胃癌リスクのレベルはスクリーニングを正当化するのに十分根拠がある。しかしながら、87%で45歳以後に胃癌が発症するため、コスト効果を考えると45歳以後にスクリーニングを開始するのがよいと思われる。
  • Schulmannらは、Lynch症候群関連小腸癌のおよそ50%は十二指腸に局在していると報告している。このことはスクリーニングに上部消化管内視鏡検査が有効であることを暗示している。しかしながら、十二指腸癌に対する上部消化管内視鏡検査によるスクリーニングの有用性についての検討についての報告はない。

遠位小腸.現時点での遠位小腸癌に対するスクリーニングに関するデータは少ない。30−35歳の時点でから2−3年ごとにカプセル内視鏡検査を行うことが考慮される。

尿路.NCCNは、尿検査を推奨している。尿路癌に対する適切なスクリーニング開始年齢は定かでない。しかしながら、尿路癌のリスクは30歳以前では低い。

肝胆道系.現時点での推奨される特異的なスクリーニングは確立されていない。脳/中枢神経系.現時点での推奨される特異的なスクリーニングは確立されていない。

回避すべき薬物や環境

喫煙はLynch症候群関連大腸癌のリスクを高める。

リスクのある親族への検査

Lynch症候群関連癌の早期診断は時宜を得た治療介入を可能にし、患者の利益を生む。よって無症候性の高リスクの家族に対する定期観察は適当である。

Lynch症候群家系の家族でMMR遺伝子変異が同定された場合、第一度親近者(親、兄弟、子)全員に対して分子遺伝学的検査を行うべきである。

  • 親に癌が発症していなくても、その兄弟は高リスクと考えるなぜならばLynch症候群の多くはde novoではなく、遺伝によるものだからである。
  • もし、現病歴や家族歴からではどちらの親が発端者に変異MMR遺伝子を遺伝しているか判断不可能である場合、両方の親に対して分子遺伝学的検査がなされるべきである。

一般的に、Lynch 症候群に対する分子遺伝学的検査は18未満のリスクのある者に対しては推奨されていない。しかしながらLynch症候群関連癌は若年で癌が診断されるため、家系内でもっとも若年で癌が発症した年齢よりも10年赤い年齢でスクリーニングを開始することがすすめられている。18歳未満の子供には癌のスクリーニングを行う前に分子遺伝学的検査を行うことが適当である。

遺伝カウンセリング目的の、高リスクの近親者に対する検査に関しては、遺伝カウンセリングの項を参照のこと。

研究中の治療法

色素内視鏡と大腸内視鏡.Lynch症候群に発症した大腸ポリープの早期同定のための色素内視鏡と強調大腸内視鏡の有効性を比較した検討が2008年に報告されている。通常大腸内視鏡検査後に、参加者は色素内視鏡検査あるいは大腸内視鏡による詳細な検査に無作為に割り付けられた。その結果、通常大腸内視鏡検査ではポリープを見落とすことがしばしばあるが、色素内視鏡検査によりさらに見つかったポリープの数は詳細な内視鏡検査により見つかったポリープの数と差はなかった。内視鏡技術の向上がLynch症候群のスクリーニングに対して利益があるか否か、更なる検討が必要である。

化学予防に関する検討.

  • プラセボVSアスピリン、およびプラセボVS耐性澱粉の4アームの比較検討が1071例のLynch 症候群で行われた。アスピリンでも、耐性澱粉でも、プラセボに比較して大腸癌のリスクに影響は与えなかった。経口避妊薬はLynch症候群でない女性の子宮内膜癌および卵巣癌のリスクを下げたが、Lynch症候群の女性に関しては不明である。

その他

遺伝クリニックは、遺伝学の専門家から構成され、個人、あるいはその家族に消費者の目線からであるだけでなく、自然経過、治療、遺伝形式および他の家族に対する遺伝リスクについての情報を提供する。GeneTests Clinic Directoryを参照のこと。

Lynch症候群をサポートする団体についての詳細はConsumer Resourcesを参照のこと.


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

Lynch症候群は常染色体優性の遺伝形式をとる.

患者家族のリスク

発端者の両親

  • Lynch症候群と診断された者の大多数は親の持つ遺伝子変異を受け継ぐ。しかしながら、不完全浸透のため、癌の発生年齢、スクリーニングや予防的手術によるリスクの軽減、あるいは早期死亡はバラエティーに富むため、Lynch 症候群の原因となるMMR遺伝子の変異を有する者すべてが癌を有する親を持つとは限らない。
  • もし、現病歴や家族歴からではどちらの親が発端者に変異MMR遺伝子を遺伝しているか判断不可能である場合、両方の親に対して分子遺伝学的検査がなされるべきである。
  • Lynch症候群の詳細な変異率は知られていないが、非常に低いと推測されている

発端者の同胞 

  • 発端者の同胞は50%の確率で変異を受け継ぐ。
  • 家系内で同定された遺伝子変異に対する分子遺伝学的検査はすべての同胞になされるべきである。
  • 同胞は、たとえ両親に癌を発症していなくても癌のリスクがあると考えるべきである。理由としてはLynch症候群は遺伝により発症するもので、de novo変異によるものではないからである。

発端者の子 Lynch症候群罹患者の子は変異を50%の確立で受け継ぐ。

発端者の他の家族 

他の家族に対するリスクは発端者との家族関係による。家族歴、あるいは分子遺伝学的検査はリスクが母方にあるのか、父方にあるのかを決定するのに有用である。Lynch症候群関連遺伝子変異を有する、あるいは関連癌を発症した家族の子は50%のリスクがあると考えられる。癌を発症せずに死亡した家族の分家に関しては、その子のリスクの推定のためにベイズの解析が行われる。

遺伝カウンセリングに関連した問題

特異的なリスク家族歴によるLynch症候群の診断の際、いくつかの要因が妨げになりうる。スクリーニングと予防的ポリープ摘出および予防的手術はリスクのある近親者の大腸癌あるいは子宮内膜癌の発症を防ぐことになる。また、他の原因で若くて死亡した場合は癌を発症しないかもしれない。

早期治療および早期予防目的のリスクのある家族に対する検査に関する情報は、マネジメントの項、リスクのある近親者に対する検査の項を参照のこと。

新生突然変異(de novo変異)と思われる家系の問題  両方の親でLynch症候群の原因遺伝子変異を有さなかったりLynch症候群の症状が認められない場合、発端者はde novo変異の可能性がある。しかしながら、MR遺伝子のde novoの可能性はまれであると考えられており、代理父や代理母、あるいは極秘の養子といった理由で説明がつく場合がある。

家族計画 

  • 遺伝リスクの決定や出生前検査の試行についての話し合いは妊娠前に行うのが適正である。
  • リスクの若年の者に対し、遺伝カウンセリング(子孫に対するリスクや出産方法に関する話し合い)を行うのが適当である。

癌リスク評価と遺伝カウンセリング.分子遺伝学的検査あるいは他の検査による癌リスクアセスメントを通してのリスクの同定に関する医学的、心理学的および倫理的な事項に関してはNCIのPDQ(R)の一部であるElements of Cancer Genetics risk Assessment and Counselingを参照のこと。

無症候性リスク成人例に対する検査.Lynch症候群に対する無症候性リスク成人例に対する検査はMolecular Genetic Testingの項に詳細が記載されている。これらの検査は症状が起きるか否か、いつ発症するか、どのような症状がどれくらいの感度でおきるか、疾患の進行度、の予測には有用ではない。Lynch 症候群のリスクのある者に検査をする場合、まずは罹患した家族が、家系の分子遺伝学的診断を確定するために検査を受けるべきである。

遺伝カウンセリングは遺伝学的検査を受けるか否かの決定前に行うことが推奨されている。Brianらは、治療のリスクがある無症候性成人例に対する遺伝カウンセリングのための教育セッションは適当であると提案している。しかしながら、予備知識を与えることは、以前に考慮されなかったことに対して考えることの助けになる。遺伝カウンセリングは対象者およびその家族にとっての遺伝学的検査の臨床的および心理学的かかわりについて話し合うことも含まれる。遺伝学的検査後の心理的調節に関する検討で、ある者がLynch症候群関連遺伝子の変異を有するとわかることが更なる心理的結果あるいは臨床的 に明らかな苦痛が伴うということは明らかにされていない。しかしながら、Lynch症候群の一部のサブグループ(たとえば検査前の強い苦痛を持つ群、生活の質が落ちる群、社会的支援が充実していない群)で、精神疾患を経験するリスクが高いと報告されている。

18歳未満の無症候性リスク例に対する検査一般的に、Lynch症候群に対する遺伝学的検査は18歳未満の邪念者には推奨されていない。American College of Medical Genetics/American society of Human Genetics合同のガイドラインでは、18歳未満に対する予測的遺伝学的検査は医療管理に影響する場合に限ってなされるべきであると提唱している。検査を行うか否かの決定は成人になって自分で決定できるまで見合わせることが推奨されている、というのもLynch症候群に関連した癌のリスク管理は20歳になるまでは薦められないからである。非常に若年でLynch症候群関連癌を発症したという、まれな症例報告もあるため、スクリーニングは家族内でもっとも若年に癌に発症した年齢よりも10歳若い時期から解しすすることが推奨されている。いくつかの家族では、18歳以前でもスクリーニングが必要な場合がある。National Society of Genetic counselorsの小児に対する遺伝学的検査の決議も参照のこと。

DNAバンキング DNAバンクは主に白血球から調製したDNAを将来の使用のために保存しておくものである.検査法や遺伝子,変異あるいは疾患に対するわれわれの理解が進歩するかもしれないので,特に発症原因が確定できない発端者のDNAの保存は考慮に値する.

出生前診断

Lynch症候群のリスクのある妊娠に対し、妊娠15−18週に採取した羊水中細胞や妊娠12週に採取した絨毛から調製したDNAを解析することで出生前診断が可能である。罹患家族の疾患感受性アリルの検査は出生前診断が行われる前に同定されなければならない。

注:胎生週数は超音波による胎児の計測や最終月経第1日から算定される。

Lynch症候群のように典型的には成人発症の症候群で、治療可能な疾患に対する出生前診断の依頼は一般的ではない。医学的専門性と家族の間で、出生前診断をどのような目的で利用するか(とりわけ出生前診断を早期診断目的というより妊娠の目的に考慮している場合)といった観点では、出生前診断に対する視点が異なる。ほとんどの施設では出生前診断を行うか否かの決断は両親によってなされるが、このことに関しては議論の必要がある。

家族で疾患感受性遺伝子の変異が認められた場合、着床前診断(PGDは可能である。PGDに関してTestingのサイトを参照のこと。


原文 Lynch Syndrome

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