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先天性N結合型糖鎖合成経路異常症概説
(Congenital Disorders of N-linked Glycosylation Pathway Overview)

[Synonyms: CDG Syndromes, Carbohydrate-Deficient Glycoprotein Syndromes ]

GeneReviews著者: Susan E Sparks, MD, PhD; Donna M Krasnewich, MD, PhD
日本語訳者: 大塚洋子(ボランティア翻訳者),櫻井晃洋(札幌医科大学附属病院遺伝子診療室)

GeneReviews最終更新日: 2014.1.30. 日本語訳最終更新日: 2016.9.19

原文 Congenital Disorders of N-linked Glycosylation Pathway Overview


要約

疾患の特徴 

先天性N結合型糖鎖合成異常症(ここではN結合型CDGと略す)とは、N結合型糖鎖合成経路に関わる42種類の酵素の欠損を原因としてN結合型オリゴ糖鎖に異常を生じる疾患群である。発症時期は乳児期であることが多い。症状は多岐にわたり、多臓器の機能障害を伴う重度の精神運動発達遅滞や筋緊張低下を示す例から正常発達を遂げながらも低血糖や蛋白漏出性胃腸症を示す例までみられる。ただし、大多数の病型の記述は少数患者の観察に基づくにすぎず、表現型の医学的理解は限定的なものでしかない。最も報告例の多い病型PMM2-CDG (CDG-Ia)の臨床症状と経過は、乳児期死亡例から成人期の軽度障害例まで多様性を極める。.

診断・検査 

N結合型CDGの確定診断にはトランスフェリンアイソフォーム分析を使用し(N結合型CDGのほぼすべての病型に適用可能)、血清トランスフェリンに結合したN結合型シアル化オリゴ糖のシアル酸残基数を決定するか不完全な糖鎖構造の有無を確認する(あるいは両者とも実施)。CDGの各病型に関連する酵素は大多数が判明しているが、対応する酵素活性測定法は僅かしか開発されていない。従って、病型の解明には分子遺伝学的検査が必要となる。

臨床的マネジメント 

症状の治療: MPI-CDG (CDG-Ib)以外の病型のN結合型CDGに罹患した新生児・小児患者には、カロリー摂取量を最大化するための栄養素の経口補充および/または経鼻チューブか胃瘻チューブを用いた栄養補給が必要となる。胃食道逆流および/または持続的嘔吐、精神運動発達遅滞、眼異常、ならびに甲状腺機能低下症に対しては標準治療を行う。脳卒中様エピソードに対しては経静脈的水分補給および理学療法を行う。成人患者の整形外科的問題には、必要に応じ、理学療法、車椅子や搬送具の利用、脊柱弯曲症の外科的治療法により対応する。

一次病変の予防: MPI-CDG (CDG-Ib)は肝臓・腸疾患を主徴とし、治療法が存在するCDGの病型のなかでは最も患者数が多い。マンノースを1日に付き体重1kgあたり1.0gを5回に分けて経口摂取することにより、低蛋白血症および血液凝固障害が正常化し蛋白漏出性胃腸症および低血糖が急速に改善する。

二次的合併症の予防: 手術時には深部静脈血栓症と出血の危険性が高まるため、術前に血液凝固能の状態を確認する。

回避すべき薬剤: アセトアミノフェンなど肝代謝型薬剤の使用を避ける。

遺伝カウンセリング 

大多数の病型のN結合型CDGは常染色体劣性遺伝形式で遺伝し、MAGT1-CDG、ALG13-CDG、SLC35A2-CDG、およびSSR4-CDGはX連鎖性遺伝形式で遺伝する。理論上、常染色体劣性疾患の発端者の同胞が受精時点で罹患する確率は25%、無症候性保因者となる確率は50%、罹患せず保因者ともならない確率は25%である。しかしながら、PMM2-CDG (CDG-Ia)の患児を擁する家族を対象にリスクの高い妊娠の転帰を解析したところ、胎児の再発危険率は予想された1/4よりも1/3に近い値が導き出された。リスクを持つ血縁者の保因者検査およびリスクの高い妊娠に対する出生前診断は、対象となるCDG遺伝子の検査または検査項目を選択できる出生前検査(custom prenatal testing)を実施している臨床検査施設を通じて実施することができる。


定義

:これまでに発見されたヒトの糖鎖合成経路の異常は、N結合型オリゴ糖鎖、O結合型オリゴ糖鎖、共通基質、GPIアンカー、ドリコールの合成経路異常など、多岐にわたる。この概説では、次の疾患に的を絞って説明する。

(1) N結合型糖鎖合成経路異常症 - ここではN結合型CDGと称する

(2) N結合型糖鎖の代謝経路が部分的に関与するいくつかの疾患 - ここでは多経路異常症(multiple pathway disorders)と称する

臨床像

先天性糖鎖合成異常症(CDG: congenital disorders of glycosylation)は、ほぼ全ての病型で共通して乳児期に発現する。多臓器の合併症を伴う重度の精神運動発達遅滞や筋緊張低下を示す例から正常発達を遂げながらも低血糖や蛋白漏出性胃腸症を示す例まで、症状は多岐にわたる。

確定診断

N結合型CDGとは、N結合型オリゴ糖鎖の合成異常を原因とする疾患群を指す。このオリゴ糖鎖は複数の単糖が特定のパターンで連なって蛋白質または脂質に付加されている(N結合型糖鎖はN-アセチルグルコサミン残基を介してアスパラギンのアミド基に結合する)。
N結合型CDGの確定診断はいずれの病型も、血清トランスフェリングリコフォーム分析(「トランスフェリンアイソフォーム分析」または「炭水化物欠乏性トランスフェリン分析」とも呼ばれる)の結果に基づき行う。次のいずれかの測定方法により、血清トランスフェリンに結合したN結合型シアル化オリゴ糖のシアル酸残基数を決定するか不完全な糖鎖構造の有無を確認する。

  • 等電点電気泳動 (IEF)
  • キャピラリ電気泳動
  • GC/MS
  • キャピラリ電気泳動-エレクトロスプレーイオン化質量分析 (CE-ESI-MS)
  • マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析 (MALDI-MS)

測定結果は次のように解釈される。

  • 正常なトランスフェリンアイソフォームのパターン - アスパラギンに結合した2個の2分岐型糖鎖を有し、糖鎖末端にシアル酸残基4個を有する。
  • I型トランスフェリンアイソフォームのパターン - テトラシアロトランスフェリンの減少、アシアロトランスフェリンとジシアロトランスフェリンの増加がみられる。このパターンはN結合型オリゴ糖鎖合成経路の最上流における異常を示す。
  • II型トランスフェリンアイソフォームのパターン - トリシアロ糖鎖画分(およびモノシアロ糖鎖画分)の増加がみられ、おそらく切断された糖鎖か単分岐型糖鎖の存在を示すものと考えられる。このパターンはN結合型オリゴ糖鎖合成経路の最下流における異常を示す。

    注:

    (1) 週齢3週未満の新生児を対象とした血清トランスフェリングリコフォーム分析の診断的価値については議論が分かれる。

    (2) ガスリー濾紙に採取した全血検体を試料とすることは推奨できない。ガスリー濾紙に採取した血清検体であれば正確な結果が得られる。

    (3) ホスホマンノムターゼ (PMM) 欠損症と診断されながらも正常なトランスフェリン糖鎖パターンを示す例がまれに報告される。

    (4) MOGS-CDG (CDG-IIb)とSLC35C1-CDG (CDG-IIc)の患者の分析結果は正常値を示すものと予測される。

    (5) トランスフェリングリコフォーム分析で判明した異常がトランスフェリンの多型蛋白質に由来する可能性は、患者の両親の血清検体のグリコフォーム分析により確認することができる。

神経画像

PMM2-CDG (CDG-Ia)

  • 大槽と上小脳槽の拡大が後期乳児期から早期小児期において観察される。
  • 症例によってはテント下およびテント上のいずれにも、脳萎縮を伴う病変を呈することがある。
  • ダンディー・ウォーカー奇形および小さな白質嚢胞が報告されている。
  • 髄鞘形成の程度は、正常から形成遅延(あるいは形成不十分)まで多様である。
  • 脳卒中様エピソード発生後の画像検査により、巣状壊死につながる虚血領域や浮腫領域が検出されることがある。

PMM2-CDG (CDG-Ia)以外の病型 MRI画像所見は正常から小脳外の異常まで多岐にわたる。

鑑別診断

鑑別すべき遺伝子疾患を以下に示す。

  • プラダー-ウィリ症候群
  • 先天性筋ジストロフィー、特に福山型先天性筋ジストロフィー (FCMD)、筋・眼・脳病 (MEB)、およびWalker-Warburg症候群 - これらの疾病は、糖鎖異常症に分類され、6種類の遺伝子、POMT1POMT2FKTNFKRPPOMGNT1LARGEのいずれかの変異を原因とする。
  • 肢帯型筋ジストロフィー
  • GNEミオパチー
  • 先天性ミオパチー(例えば、X連鎖性ミオチューブラーミオパチー、マルチミニコア病)

以下の代謝疾患は、筋緊張低下、精神運動発達遅滞、および成長障害を示す場合があるため、鑑別の必要がある。

  • ミトコンドリア病
  • ペルオキシソーム生合成障害(ゼルウィガー症候群スペクトラム)- ペルオキシソーム生合成障害の患児は痙攣および/または難聴を示す傾向がある。
  • 尿素サイクル異常症 - 尿素サイクル異常を有する児は出生時から臨床症状を呈する可能性が高い。

次の遺伝子疾患においてもトランスフェリンの糖鎖修飾に異常が認められ、弛緩性皮膚、重度の精神運動発達遅滞、痙攣、および神経学的退行などの症状を伴う。

  • ATP6V0A2遺伝子関連皮膚弛緩症

病型の命名法

2009年にCDGの全病型の命名規則が変更され、公式遺伝子記号(ローマン体による表記)の後に-CDGを加える形式が提案された。アルファベットの病型名がすでに周知されている場合は、例えばPMM2-CDG (CDG-Ia)のように、従来の名称を括弧で囲んで併記する。

頻度

PMM2-CDG (CDG-Ia) N結合型CDGの病型のうち今日までに最も多くの症例が報告されている(世界各地で700例以上)。頻度は1:20,000にのぼる可能性がある。デンマーク人母集団のPMM2変異の保因者頻度は1:60〜1:79と予測される。

MPI-CDG (CDG-Ib) 少なくとも20人がMPI-CDG (CDG-Ib)と診断されている。

ALG6-CDG (CDG-Ic) 少なくとも30人がALG6-CDG (CDG-Ic)と診断されている。
上記以外の病型のN結合型CDGと多経路異常症については、いずれも少数患者の症例報告しかない。
N結合型CDGおよび多経路異常症の病型

注: 以下の一覧は、(1) N結合型糖鎖合成経路異常症(N結合型CDG)および (2) N結合型およびO結合型オリゴ糖鎖合成経路がいずれも障害される疾患(多経路異常症 "multiple pathway disorders")の各病型である。

臨床所見 糖蛋白質または糖脂質のいずれに結合しているオリゴ糖鎖も重要な生体機能に関与するため、これらの化合物の正常な合成が阻害されれば多臓器の臨床症状につながる。先天性糖鎖合成異常症(CDG)に属する疾患群は幅広い臨床スペクトラムをもつ。

病型の多くは少数例が報告されているにすぎず、表現型の解明は不十分である。

  • PMM2-CDG (CDG-Ia) CDG-Iaの典型症例は、乳児期の多臓器障害段階、乳児期後期〜小児期の運動失調-精神遅滞段階、さらには成人期の障害安定段階へと臨床経過をたどる(GeneReviewsの"PMM2-CDG (CDG-Ia)"を参照)。近年の症例報告により、最重症例の胎児水腫から最軽症例の多臓器障害を合併する成人まで、従来にも増して幅広い表現型が確認された。

    乳児期の多臓器障害段階においては、成長障害、陥没乳頭、皮下脂肪分布異常、小脳低形成といった特徴的症状のほか、顔面形態異常、精神運動発達遅滞がみられる。CDG-Iaの症例はこの段階に属するものが最も多い。
  • MPI-CDG (CDG-Ib) 周期性嘔吐症、重度の低血糖、成長障害、肝線維症、蛋白漏出性胃腸症といった症状が特徴的にみられる。さらに、神経症状なく凝固障害を伴う例が時折りみられる。臨床経過は家族内であっても異なる場合がある。
  • ALG6-CDG (CDG-Ic) ALG6-CDG (CDG-Ic)は、過去には炭水化物欠乏性糖蛋白質症候群 (carbohydrate-deficient glycoprotein syndrome) V型に分類されていた。軽度から中等度の筋緊張低下を伴う神経症状、頚定不全、精神運動発達遅滞、運動失調、斜視、および痙攣(熱性痙攣からてんかん性痙攣まで多様)を特徴的症状とする。網膜変性の報告がある。脳卒中様エピソードと末梢神経障害の報告はなく、臨床症状はPMM2-CDG (CDG-Ia)よりも軽度の可能性がある。ALG6-CDG (CDG-Ic)の成人患者1例には、短指趾症、深部静脈血栓症、偽脳腫瘍(MRI画像が正常)、および内分泌異常(男性化徴候を呈するアンドロゲン過剰症を含む)がみられる。ALG6-CDG (CDG-Ic)患者の思春期発来異常の記述がある。
  • ALG3-CDG (CDG-Id)
    • 患児2例に、重度の精神運動発達遅滞、ヒプスアリスミア、出生後小頭症、視神経萎縮、虹彩コロボーマ、ならびに脳萎縮および脳梁萎縮を認めた。
    • 患児1例に、多発性関節拘縮(AMC: arthrogryposis multiplex congenita)、重度の精神運動発達遅滞、小頭症、痙攣、および重度の視覚障害を認めたが、虹彩コロボーマはみられなかった。
    • 同胞患者2例に重度の精神運動発達遅滞、成長障害、小頭症、筋緊張低下、および痙攣を認めた。このうち1例は消化機能に深刻な問題がみられ、他1例の神経系にはより重大な障害がみられた。
  • DPM1-CDG (CDG-Ie)
    • 5例に精神運動発達遅滞、小頭症、痙攣、両眼開離、ゴシック口蓋、爪の形成異常を伴う小さな手、および膝関節拘縮を認めた。
    • 2例の同胞患者は、精神運動発達遅滞、小頭症、運動失調、および末梢神経障害を伴う軽症の表現型を示した。形態異常や重度の痙攣はみられなかった。両患者とも眼球振盪と斜視があり、1例には網膜症がみられた。
  • MPDU1-CDG (CDG-If) 5例に重度の精神運動発達遅滞、全身性の落屑を伴う紅皮症、および筋緊張亢進の発作がみられた。
  • ALG12-CDG (CDG-Ig) 7例の患者にみられた異常には、形態異常、全身性筋緊張低下、哺乳・摂食機能障害、中等度から重度の精神運動発達遅滞、進行性の小頭症、頻回の上気道感染、免疫グロブリン濃度低下に由来する免疫不全、および血液凝固因子の欠乏があった。この他、性腺機能低下(一部の男性患者で尿道下裂を合併)、患者2例に痙攣、同胞患者2例に心奇形がみられた。
  • ALG8-CDG (CDG-Ih)
    • 月齢4か月の女児に中等度の肝腫大、重度の下痢、および蛋白漏出性胃腸症に由来する低アルブミン血症がみられたが、顔貌と発達は正常であった。第XI因子、プロテインC、およびアンチトロンビンIIIの減少がみられた。
    • 他3例には、肺形成不全に由来する心肺機能障害、重度の肝および小腸の疾患、および筋緊張低下がみられた。別の1例には痙攣と精神運動発達遅滞を認めた。以上の4例は、いずれも造血能に障害がみられ貧血と血小板減少症を合併した。4例とも生後3日から16か月の間に早期死亡するに至った。
    • より近年の記録によれば、軽症の同胞患者2例で、偽性女性化乳房、筋緊張低下、精神遅滞、および運動失調がみられた。  COG8-CDG (CDG-IIh)の項より移動 - 訳者注
  • ALG2-CDG (CDG-Ii) 6歳の患者に、両眼性虹彩コロボーマ、片眼性白内障、点頭てんかん(月齢4か月時に発症)、および重度の精神運動発達遅滞が認められた。また、血液凝固因子が異常値を示した。
  • DPAGT1-CDG (CDG-Ij) 患者1例に筋緊張低下、難治性痙攣、精神運動発達遅滞、および小頭症がみられたとの記録がある。続いて他2例が同様の症状を示し、生後1歳未満で早期死亡に至ったとの報告がある。別の1例については胎児運動の重度低下を示す徴候が記録されている。さらに別の1例では、無呼吸および呼吸不全、白内障、関節拘縮、ならびに摂食機能障害がみられ、2歳6か月で死亡した。
  • ALG1-CDG (CDG-Ik) 患者4例は重度の精神運動発達遅滞、筋緊張低下、および早期発症の痙攣がみられ、このうち3例の痙攣は難治性であった。3例は生後2週から10か月の間に死亡した。ALG3-CDG (CDG-Id)およびALG12-CDG (CDG-Ig)と同様に、ALG1-CDG (CDG-Ik)の病因はマンノース転移酵素の欠損であり、しかも急速進行性の小頭症がみられる。この他、重度の凝固不全、ネフローゼ症候群、肝機能障害、凝固障害、心筋症、および免疫不全がみられた。脳画像検査により2例に脳萎縮が検出されたが、他1例は正常であった。更なる研究が示すところによれば、ALG1-CDG (CDG-Ik)とMPI-CDG (CDG-Ib)は、PMM2-CDG (CDG-Ia)に次いで高頻度にみられ、CDG Iの臨床スペクトラムの最重症型に位置する可能性がある。
  • ALG9-CDG (CDG-IL) 患児2例に小頭症、筋緊張低下、精神運動発達遅滞、痙攣、および肝腫大がみられた。うち1例には上記症状に加え、成長障害、心嚢液貯留、および腎嚢胞がみられた。
  • DOLK-CDG (CDG-Im) 乳児患者4例に筋緊張低下および魚鱗癬がみられ、このうちの1例に痙攣および進行性小頭症、同胞患者2例に拡張型心筋症がみられた。この4例の患児は月齢4か月から9か月の間に死亡した。
  • RFT1-CDG (CDG-In) 血縁関係のない両親の間に早産で出生した乳児患者が、吸啜運動の協調不良をきたし哺乳・摂食機能障害および成長障害を招いた。生後3週時に、筋緊張低下および反射亢進を伴うミオクローヌスの記録があり、のちに痙攣性疾患に進行した。彷徨性眼球運動が観察されたが、網膜電図検査に異常はなく視覚誘発電位の低下が認められた。この患児は2歳時点で引き続き著しい精神運動発達遅滞が進行していた。この他に患者5例の記録がある。以上6例に共通する症状は、重度の精神運動発達遅滞、筋緊張低下、視覚障害、痙攣、摂食機能障害、感音性難聴に加え、CDGの他の病型が示す特徴(陥没乳頭、小頭症など)であった。
  • DPM3-CDG (CDG-Io) 女性患者1例の初発症状(11歳時)は軽度の筋力低下とアヒル様歩行であった。20歳時に心筋肥大の徴候がみられない拡張型心筋症と診断され、21歳で脳卒中様エピソードを生じた。27歳時に軽度の筋力低下がみられ知能指数は正常低値を示した。この時に唯一のCDG-Io患者と診断されている。
  • ALG11-CDG (CDG-Ip) 乳児患者1例に、特徴的な頭蓋顔面形態(小頭症、前頭毛髪線高位、および後頭部毛髪線低位)、筋緊張低下、および成長障害を認めた。この女児患者は頻回の難治性痙攣を伴う重度の神経障害を示し、月齢6か月前後には異常な皮下脂肪分布を生じた。持続的嘔吐と胃出血がみられ、2歳で死亡に至った。後に、生後1年以内の患児3例に精神運動発達遅滞、斜視、および痙攣の発生が確認された。
  • SRD5A3-CDG (CDG-Iq)
    • 7家系に属する患者に、先天性眼形成異常(眼コロボーマ、視神経低形成、および様々な重症度の視力障害)、眼球振盪、筋緊張低下、ならびに精神運動発達遅滞/精神遅滞などの症状が共通にみられた。一部の患者に皮膚合併症および/または先天性心疾患がみられた。
    • 別の9家系に属する患者12例に小脳性運動失調と先天性眼形成異常がみられた。
    • コロボーマ、白内障、脊柱後弯、および精神遅滞の症状を示すKahrizi症候群の患者においてSRD5A3遺伝子に新規変異が同定された。
  • DDOST-CDG (CDG-Ir) 成長障害、精神運動発達遅滞、筋緊張低下、斜視、および肝機能障害を示す患児1例の記述がある。この患児は3歳時には歩行可能であったが微細運動機能の発達遅滞が続いていた。また、発話言語発達の大幅な遅滞がみられた。脳MRI画像により髄鞘形成不全が確認された。
  • MAGT1-CDG 同一家族内において女児2例に軽度の精神遅滞、男児2例にはより重度の精神遅滞がみられたとの記録がある。母親は軽度の精神遅滞を有していた。
  • TUSC3-CDG 患者12例(フランス人同胞患者2例とイラン人同胞患者3例を含む)が中等度から重度の非症候性の精神遅滞を示しながらも脳MRI画像に異常はなかったと記録されている。
  • ALG13-CDG 患児1例は小頭症、肝腫大、四肢浮腫、難治性痙攣、反復感染、および出血傾向の増強を示し、1歳で死亡に至ったと記録されている。
  • PGM1-CDG 患者2例で拡張型心筋症が認められたとの記述がある。さらに、このうち患者1例には口蓋裂、疲労、および慢性肝炎を伴うピエール・ロバン連鎖が認められた。反復性横紋筋融解症を伴う糖原病14型と診断された同一患者がホスホグルコムターゼ1 (PGM1) 欠損症とも診断されている。
  • MGAT2-CDG (CDG-IIa) 患者らには、顔面形態異常、手の常同運動、痙攣、および様々な重症度の精神運動発達遅滞がみられたが、末梢神経障害および小脳低形成はみられなかった。血小板凝集能の低下を原因とする出血性障害がみられた。
  • MOGS-CDG (CDG-IIb) 乳児患者に全身性筋緊張低下、頭蓋顔面形態異常、生殖器形成不全、痙攣、哺乳障害、低換気、および全身性浮腫がみられ、月齢2.5か月で死亡に至った。
  • SLC35C1-CDG (CDG-IIc) 特徴的な症状には、重度の成長遅滞および精神運動発達遅滞、小頭症、筋緊張低下、特徴的な頭蓋顔面形態の他、持続的に末梢血白血球数高値を示す反復細菌感染がある。
  • B4GALT1-CDG (CDG-IId) 軽度の精神運動発達遅滞、ダンディー・ウォーカー奇形、進行性水頭症、血液凝固障害、および血清クレアチンキナーゼ濃度の上昇が観察されている。
  • SLC35A2-CDG 重度の早期発症性てんかん性脳症を引き起こすX連鎖性疾患。
  • GMPPA-CDG 精神遅滞および自律神経機能障害(アカラシアと無涙症を含む)を示す数例の患者でGMPPA-CDGが確認された。患者らには歩行異常もみられた。
  • SSR4-CDG X連鎖性疾患である。小頭症、精神遅滞、および発作性障害を示した16歳の男性患者の記録がある。
  • STT3A-CDGおよびSTT3B-CDG 筋緊張低下、精神運動発達遅滞、摂食機能の問題、および成長障害が複数患者でみられた。
  • COG7-CDG (CDG-IIe) 患児6例に、形態異常 ― 狭い口(ただし1例に口唇肥厚)、小顎および下顎後退、短頚、皺の多い弛緩性皮膚、内転母指、および折り重なった長い指 ― が認められ、この他に、筋緊張低下、骨格異常、肝脾腫、進行性黄疸、痙攣がみられた。患児らは早期死亡に至った。
  • SLC35A1-CDG (CDG-IIf) 患児1例が生後4か月時に巨大血小板性血小板減少症、好中球減少、および免疫不全を示した。患児は骨髄移植手術の合併症により3歳1か月で死亡した。
  • COG1-CDG (CDG-IIg) 乳児患者1例は、生後1か月までの間に哺乳障害、成長障害、および筋緊張低下を示した。また、この女児患者には、軽度の精神運動発達遅滞、近位肢節短縮型低身長、進行性小頭症(脳MRI画像にて脳萎縮と小脳萎縮を確認)の他、心機能異常、肝脾腫がみられた。
  • COG8-CDG (CDG-IIh) 患児2例に、重度の精神運動発達遅滞、筋緊張低下、痙攣、内斜視、成長障害、および進行性小頭症がみられたとの報告がある。  一部をALG8-CDG (CDG-Ih)の項へ移動 - 訳者注
  • COG5-CDG (CDG-IIi) 軽度の運動機能発達遅滞と言語発達遅滞を示した患者1例の記録がある。
  • COG4-CDG (CDG-IIj) 患児1例が月齢4か月で複雑発作を生じ、フェノバルビタールにより抑制されたとの記録がある。3歳時にはさらに、筋緊張低下、小頭症、運動失調、すばやい非協調運動、無発語、運動機能発達遅滞、および反復性呼吸器感染がみられた。
  • TMEM165-CDG (CDG-IIk) 同胞患者に骨端、骨幹端、および骨幹を障害する骨系統疾患がみられたとの記録がある。この他の特徴としては、脳MRI画像にて白質異常と下垂体低形成が確認されている。同胞患者の1人は反復性の原因不明熱を生じ、月齢14か月で死亡に至った。トランスフェリンアイソフォーム分析でII型の等電点電気泳動パターンを示す診断未確定の症例の評価から、新たに3例の患者が同定された。そのうち1例には骨系統の異常はみられなかった。
  • COG6-CDG (CDG-IIL) 乳児患者1例に、重度の神経疾患(難治性痙攣を含む)、ビタミンK欠乏症および頭蓋内出血、ならびに嘔吐がみられ、早期死亡に至った。
  • DPM2-CDG 成長障害、精神運動発達遅滞、骨減少症、筋緊張低下、肝機能障害、およびクレアチンキナーゼ高値が観察され、早期死亡に至った。
  • DHDDS-CDG 報告のあった臨床症状は網膜色素変性症のみである。
  • MAN1B1-CDG 非症候性精神遅滞

分子遺伝学

現時点では、N結合型CDGまたは多経路異常症の各

病型においては、N結合型オリゴ糖鎖合成経路または相互作用経路に関わる42種類の酵素がいずれかが欠損していると理解されている(表1を参照)。

表1. N結合型CDGの分子遺伝学的データ

CDGのタイプ1

報告 症例数 2

遺伝子記号 3

蛋白質名 3

N結合型CDG

PMM2-CDG
(CDG-Ia)

700

PMM2

ホスホマンノムターゼ2

MPI-CDG
(CDG-Ib)

20

MPI

マンノース-6-リン酸イソメラーゼ

ALG6-CDG
(CDG-Ic)

30

ALG6

Dol-P-Glc:Man9GlcNAc2-PP- Dol α-1,3-グルコース転移酵素

ALG3-CDG
(CDG-Id)

6

ALG3

Dol-P-Man:Man5GlcNAc2-PP- Dol α-1,3-マンノース転移酵素

DPM1-CDG
(CDG-Ie)

≤2

DPM1

ドリキルリン酸β-D-マンノース合成酵素

MPDU1-CDG
(CDG-If)

≤2

MPDU1

マンノース-P-ドリコール利用障害1タンパク

ALG12-CDG
(CDG-Ig)

6

ALG12

Dol-P-Man:Man7GlcNAc2-PP- Dol α-1,6-マンノース転移酵素

ALG8-CDG
(CDG-Ih)

5

ALG8

Dol-P-Glc:Glc1Man9GlcNAc2-PP- Dol α-1,3-グルコース転移酵素の可能性がある

ALG2-CDG
(CDG-Ii)

≤2

ALG2

α-1,3-マンノース転移酵素ALG2

DPAGT1-CDG
(CDG-Ij)

5

DPAGT1

UDP-N-アセチルグルコサミン-ドリキル-リン酸N-アセチルグルコサミンリン酸転移酵素

ALG1-CDG
(CDG-Ik)

4

ALG1/
HMT-1

キトビオシル二リン酸ドリコールβ-マンノース転移酵素

ALG9-CDG
(CDG-IL)

≤2

ALG9

α-1,2-マンノース転移酵素ALG9

DOLK-CDG
(CDG-Im)

≤2

DOLK
(DK1)

ドリコールキナーゼ

RFT1-CDG
(CDG-In)

6

RFT1

RFT1蛋白質ホモログ

DPM3-CDG
(CDG-Io)

≤2

DPM3

ドリコールリン酸マンノース転移酵素サブユニット3

ALG11-CDG
(CDG-Ip)

4

ALG11

アスパラギン結合型糖鎖付加タンパク11ホモログ

SRD5A3-CDG
(CDG-Iq)

15

SRD5A3

ポリプレノール還元酵素の可能性がある

DDOST-CDG
(CDG-Ir)

1

DDOST

ドリキル-二リン酸オリゴ糖-タンパク糖転移酵素48-kdサブユニット

MAGT1-CDG

4

MAGT1

マグネシウム輸送体タンパク1

TUSC3-CDG

12

TUSC3

腫瘍抑制タンパク候補3

ALG13-CDG

1

ALG13

UDP-N-アセチルグルコサミン転移酵素サブユニットALG13ホモログ

PGM1-CDG

2

PGM1

グルコースリン酸ムターゼ1

MGAT2-CDG
(CDG-IIa)

4

MGAT2

α-1,6-マンノシル-糖タンパク2-β-N-アセチルグルコサミン転移酵素

MOGS-CDG
(CDG-IIb)

≤2

MOGS
(GCS1)

マンノシル-オリゴ糖グルコシダーゼ

SLC35C1-CDG
(CDG-IIc)

≤2

SLC35C1

GDP-フコース輸送体1

B4GALT1-CDG
(CDG-IId)

≤2

B4GALT1

β-1,4-ガラクトース転移酵素1

SLC35A2-CDG

<2

SLC35A2

UDP-ガラクトース輸送体

GMPPA-CDG

<2

GMPPA

マンノース-1-リン酸グアニル酸転移酵素α

SSR4-CDG

<2

SSR4

トランスロコン関連蛋白質サブユニットδ

STT3A-CDG,
STT3B-CDG

2

STT3A,
STT3B

ドリキル-二リン酸オリゴ糖-タンパク糖転移酵素サブユニットSTT3A/STT3B

多経路異常症

COG7-CDG
(CDG-IIe)

≤2

COG7

COG複合体サブユニット74

SLC35A1-CDG
(CDG-IIf)

≤2

SLC35A1

CMP-シアル酸輸送体

COG1-CDG
(CDG-IIg)

≤2

COG1

COG複合体サブユニット1 4

COG8-CDG
(CDG-IIh)

≤2

COG8

COG複合体サブユニット8 4

COG5-CDG
(CDG-IIi)

≤2

COG5

COG複合体サブユニット5 4

COG4-CDG
(CDG-IIj)

≤2

COG4

COG複合体サブユニット4 4

TMEM165-CDG
(CDG-IIk)

5

TMEM165

膜貫通タンパク165

COG6-CDG
(CDG-IIL)

≤2

COG6

COG複合体サブユニット6 4

DPM2-CDG

<2

DPM2

ドリコールリン酸マンノース生合成調節タンパク

DHDDS-CDG

<2

DHDDS

デヒドロドリキル二リン酸合成酵素

MAN1B1-CDG

<2

MAN1B1

小胞体マンノシル-オリゴ糖1,2-α-マンノシダーゼ

  1. CDGの病型の表記には、ローマ数字IまたはIIに英字(a〜i)を加える方法を用いた(1999年のAebiら提案の表記法に準拠)。ローマ数字はトランスフェリンアイソフォーム分析により確認さた糖鎖構造のパターンIまたはIIに基づく。英字は新規同定された病型の発表年代順に割り当てられる。
  2. CDGの各病型の分類はJaekenの報告(2010年)に基づく。
  3. 表中のデータは、標準的なデータベースを出典としている。遺伝子記号はHGNC、蛋白質名はUniProtに倣った。
  4. COG: conserved oligomeric Golgi(保存されたオリゴマーゴルジ)

評価手順

トランスフェリンアイソフォーム分析 N結合型CDGの確定診断には、血清トランスフェリン等電点電気泳動法(IEF)などによる血清トランスフェリンアイソフォーム分析を使用し(ほぼ全ての病型に適用可能)、血清トランスフェリンに結合したN結合型シアル化オリゴ糖のシアル酸残基数を決定するか不完全な糖鎖構造の有無を確認する(あるいは両者とも実施)。

分子遺伝学的検査 N結合型CDGの各病型に関与する酵素は大多数が判明しているが、対応する酵素活性測定法はごく少数しか開発されていない。従って、病型の確定には分子遺伝学的検査(単一遺伝子検査か多重遺伝子パネルによる検査)が必要となる。

:欠損酵素の特定により確定診断を受けた患者においては、PMM2遺伝子またはMPI遺伝子変異検出率はほぼ100%である(G Matthijsからの個人的な情報提供による)。


臨床的マネジメント

症状に対する治療

MPI-CDG (CDG-Ib)を除くN結合型CDGの全病型および大多数の多経路異常症を対象とした治療

  • 成長障害 乳幼児の患者には、カロリー摂取量が最大になるように任意の種類の調整乳を用いるとよい。患児は炭水化物、脂質、および蛋白質に対して耐容性を示す。小児期には消化態栄養の摂取により、よい結果を得る可能性がある。口腔運動機能の発達状況を踏まえて食事摂取方法を改めることがある。患児によっては、口腔運動スキルが改善するまでの間、鼻腔栄養チューブや胃瘻栄養チューブの造設が必要になる。
  • 持続的嘔吐を伴う口腔運動機能障害 胃食道逆流および/または持続的嘔吐を示す患児には、食品用増粘安定剤、食後の姿勢の保持(上体挙上位)、および制酸剤が助けになる。胃腸病専門医および栄養士との綿密な相談が欠かせない。胃瘻を造設した患児に対しては、誤嚥の危険性が低くなった時点で経口的食餌摂取を誘導するべきである。言語聴覚療法および口腔運動療法を続ければ、患児の発達上のレディネスが形成された段階で経口摂取への移行の助けとなるばかりでなく、発声発語を促すことにつながる。
  • 精神運動発達遅滞 作業療法, 理学療法、および言語聴覚療法を行う必要がある。また、CDG患児と同世代の健常児との発達差が拡大していくため、両親に対するカウンセリングと支援を継続する必要がある。
  • 「乳児期最重篤段階」 乳児患者はごくまれに、経過の初期に感染、痙攣、または体液貯留を伴う低アルブミン血症(進行して全身浮腫に至る症例もみられる)を合併する場合がある。ラシックスを併用したアルブミンの積極的投与に反応する患児もみられるが、一部の患児はより難治性の経過を辿る。小児専門医療施設での対症療法が推奨される。PMM2-CDG (CDG-Ia)の患児は、まったく受診経験のない例がある一方で頻回の入院加療を要する例がある。この事実を両親にも伝えておく必要がある。
  • 斜視 視力を守るための治療(眼鏡、訓練用眼帯、手術)を必要に応じて開始できるように、出生後早期に小児眼科医を受診することが重要である。
  • 甲状腺機能低下症 CDGの患児は、生化学的には甲状腺機能は正常値を示すことが多いが、甲状腺機能検査では高い頻度で異常値を示す。しかし、遊離サイロキシン濃度がCDG患者7例で正常値であったとの報告がある(最も精度の高い分析法である平衡透析法による測定結果)。甲状腺刺激ホルモン (TSH) が高値、かつ平衡透析法による測定で遊離サイロキシンが低値を示す小児および成人の患者に対しては、甲状腺機能低下症の確定診断およびL-サイロキシン製剤の補充療法は留保されるべきである。
  • 脳卒中様エピソード 支持療法としては必要時の経静脈的水分補給および回復期の理学療法などがある。
  • 血液凝固障害 血液凝固関連因子(凝固促進因子、抗凝固因子のいずれも)の欠乏が原因となって日常生活活動において臨床的問題を生ずることは滅多にない。ただし、CDGの患者が手術を受ける際には、血液凝固障害に対処する必要がある。血液専門医へのコンサルトに際しては血液凝固状態と血液凝固因子レベルを記録に残し、担当外科医との間では管理上の問題を話し合うことが重要である。必要時には新鮮凍結血漿の投与により血液凝固因子を補充し臨床的出血を防ぐ。凝固促進因子と抗凝固因子の平衡状態が破れれば、出血や血栓形成を招く危険がある。介護者(特に高齢患者の介護者)は深部静脈血栓症の徴候を知っておく必要がある。
  • 免疫状態 CDG患者の大多数は免疫システムが正常に機能する。ただし、まれにCDG患児に反復感染や予期せぬ重症感染が生じるが、その場合は免疫専門医による診断を受ける必要がある。特別な指示がない限り、小児および成人期発症疾患を対象とした小児科領域の全種類のワクチン接種が推奨される。

成人患者に対し上記に加えて必要となるマネジメント上の問題

  • 整形外科的問題 胸郭低形成、脊柱側湾/脊柱後弯 整形外科や理学療法上の適切な方法によりマネジメントを行う。十分な支持機能を備えた車椅子、家庭用の介護リフト、理学療法などを利用する。脊柱弯曲の外科的治療が妥当とされる場合がある。
  • 自立生活の課題 若年成人期のCDG患者とその両親は、自立生活を行う上での課題に取り組む必要がある。実際に役立つ生活技能を習得するための積極的な教育プログラムや職業訓練は、学校教育終了後の新生活への円滑な移行を助ける。セルフケアを初めとする日常生活動作(ADL)においては患者の主体性を重視する必要がある。成人障害者の両親に向けた情報提供などの支援はマネジメント活動の重要な一側面である。
  • 深部静脈血栓症(DVT: deep venous thrombosis) PMM2-CDG (CDG-Ia)の成人患者2例でDVTが生じたとの報告がある。肺血栓塞栓症の危険を最小限に抑えるためにはDVTの迅速な診断と治療が不可欠である。運動不足の小児および成人の患者はDVT発症の危険が高まる。

一次病変の予防

MPI-CDG (CDG-Ib)は肝臓・腸疾患を主徴とし、治療法が存在するCDGの病型のなかでは最も患者数が多い。治療を受けたCDG患者が非常に少ないうえに当疾患の自然経過が多様であることから、治療にあたる医師の間で慎重なモニターと議論が行われて然るべきである。

  • 最初に報告のあった症例では、マンノースの摂取により低蛋白血症と血液凝固障害が正常化し蛋白漏出性胃腸症と低血糖が急速に改善した。1日あたり体重1kgにつきマンノース1gを5回に分けて経口投与した。
  • MPI-CDG (CDG-Ib)の患児2例は乳児期からマンノースによる治療を続け、蛋白漏出性胃腸症と嘔吐が顕著に改善した。しかし近年、同患児らが進行性の肝線維症を発症したとの報告があった。
  • 繰り返し血栓塞栓症と消耗性血液凝固異常を起こしていたMPI-CDG (CDG-Ib)の患者がマンノースの摂取により再発を免れた。
  • MPI-CDG (CDG-Ib)の患者の一部を対象とした蛋白漏出性胃腸症の治療においては、マンノースの代わりにヘパリンを使用することができる。

二次的合併症の予防

CDGの患児は同世代の健常児に比べ予備能が限られるため、発熱、嘔吐、下痢が多少とも長引くときにはすみやかに医師の診断を仰ぐべきである。解熱剤、抗生物質の投与などによる的確な治療、あるいは水分補給といった積極的な介入を行えば、「乳児期最重篤段階」につながる病的状態を回避し「脳卒中様エピソード」発生の危険性を減す可能性がある。

経過観察

年次

  • 内科医による評価 ー あらゆる側面から心身の健康状態に注意を向けて診断する。また、発話訓練、作業療法、および理学療法の受療を目的とした照会の必要性を判断する。
  • 眼科的検査
  • 肝機能検査、甲状腺パネル検査、血液凝固/抗凝固因子(プロテインC、プロテインS、第IX因子、およびアンチトロンビンIII)の血清中濃度の測定

その他

  • 血液専門医による血液凝固因子および抗凝固因子の定期的な評価
  • 脊柱側弯を発症した場合、整形外科医による経過観察

回避すべき薬剤

アセトアミノフェンをはじめとする肝代謝型薬剤の使用には注意を要する。

リスクのある血縁者の評価

リスクのある血縁者を対象として遺伝カウンセリングを目的とした検査を検討する際には、前述の「遺伝カウンセリング」の項を参照されたい。

研究中の治療法

SLC35C1-CDG (CDG-IIc)に罹患した患者1例で、フコースの摂取により糖蛋白質のフコシル化が改善し反復感染が減少した。

ClinicalTrials.govの検索により、さまざまな疾患や病態についての臨床試験情報を入手することができる。

遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

先天性N結合型糖鎖合成異常症(N結合型CDG)の病型のうちMGAT1-CDG、ALG13-CDG、SLC35A2-CDG、およびSSR4-CDGはX連鎖性遺伝形式で遺伝し、その他の病型は常染色体劣性遺伝形式で遺伝する。

血縁者のリスク ― 常染色体劣性遺伝

発端者の両親

  • 発端者の両親はいずれも絶対的保因者である。従って、変異アレルを1つ保有する。
  • 保因者は無症状である。

発端者の同胞

  • 受精時に発端者の同胞が罹患する確率は25%、無症候性保因者となる確率は50%、罹患せず保因者ともならない確率は25%である。ただし、後述「関連する遺伝カウンセリング上の問題」の項の「PMM2-CDG (CDG-Ia)の再発危険率の上昇」を参照されたい。
  • リスクを持つ同胞が罹患していないと判明すれば、その同胞が保因者である確率は2/3である。
  • ヘテロ接合体(保因者)は無症状である。

発端者の子

  • MPI-CDG (CDG-Ib)を除くCDGの成人患者が子を儲けたとの報告はない。MPI-CDG (CDG-Ib)の女性患者1人が合併症を生じることなく一子を得ている。
  • MPI-CDG (CDG-Ib)の患者の子は絶対的ヘテロ接合体(絶対的保因者)である。

血縁者のリスク ― X連鎖性遺伝

発端者の両親

  • MAGT1-CDG、ALG13-CDG、SLC35A2-CDG、またはSSR4-CDGの男性患者の父親は罹患せず、変異の保因者ともならない。
  • 複数のCDG患者を擁する家系内においては、男性患者の母親は絶対的保因者である。
    注: 複数のCDG患者を子に持つ女性は、他の血縁者が一人も罹患しておらず,しかも白血球から抽出したDNAに病原性変異が検出されない場合,生殖細胞モザイクを有する。
  • 家系内で男性1人だけが罹患している場合(つまり孤発例)、患者の母親が保因者である可能性がある。母親が保因者でなければ、その男性患者が新生変異を有する。男性孤発例の割合は不明である。

発端者の同胞

  • 同胞のリスクは母親の保因者状態により決まる。
  • 発端者の母親が病原性変異を有する場合は、妊娠のたびに50%の確率で病原性変異を子に伝える。変異を受け継いだ男性は罹患する。他方、変異を受け継いだ女性は保因者となり、症状が出る場合も出ない場合もある。報告のあった家族の母親(絶対的保因者)には、軽度の精神遅滞がみられた。
  • 発端者が孤発患者(一家系内唯一の発症例)であり、しかも母親の白血球から抽出したDNAに病原性変異が検出されない場合、同胞のリスクは低い。しかし母親の生殖細胞モザイクの可能性があるため一般集団に比較すれば高い。

男性発端者の子 

男性患者が生殖可能であるか否かについては今までのところ判明していない。

保因者診断

リスクのある血縁者の保因者検査を行うためには、家系内で病原性変異が事前に同定されている必要がある。
関連する遺伝カウンセリング上の問題

PMM2-CDG (CDG-Ia)の再発危険率の上昇 出生前検査の結果を解析したところ、罹患した胎児の割合は、メンデルの第二法則から予想される再発危険率よりも高いことが示唆された。発端者の同胞の再発危険率は予想された1/4ではなく1/3に近いものと推測され、危険率が上昇したように見える。この解析結果は伝達比の歪みにより説明できる可能性があり、検証研究が進められている。

家族計画

  • 遺伝的リスクの評価、保因者状態の確認、および出生前診断の利用の検討は妊娠前に行うのが望ましい。
  • 若年成人の患者もしくは保因者、または保因者リスクを持つ若年成人に対しては、子孫に及ぶ潜在リスクや挙児に関する選択肢の検討を含めた遺伝カウンセリングの機会を提供することが望ましい。

DNAバンキングとは、将来の使用に備えてDNA(一般には白血球より抽出)を貯蔵しておくことをいう。今後、検査技術の改良や遺伝子とその変異や疾患の研究の進展が見込まれるため、患者のDNAの貯蔵は検討に値する。

出生前診断

当該家系において病原性変異が同定されていれば、リスクの高い妊娠に対して出生前診断を実施することができる。絨毛膜絨毛サンプリング(CVS)により絨毛細胞を採取するか(通常、妊娠第10〜12週頃に実施)、羊水穿刺により胎児細胞を採取したうえで(通常、妊娠第15〜18週頃に実施)、これらの細胞から抽出した胎児DNAを解析する。対象となる遺伝子の検査または検査項目を選択する出生前検査(custom prenatal testing)を提供している臨床検査施設ならば出生前検査を実施できる可能性がある。

: 胎生週数は、最終正常月経の開始日から数えた月経週で表すか、超音波検査の測定結果を基に割り出す。

着床前遺伝子診断(PGD: Preimplantation Genetic Diagnosis)は、すでに病原性変異が同定されている家系ならば利用できる可能性がある。


原文 Congenital Disorders of N-linked Glycosylation Pathway Overview

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