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ニーマン・ピック病C型
(Niemann-Pick Disease Type C)

[Synonyms: Juvenile Niemann-Pick Disease:若年性ニーマン・ピック病]

Gene Review著者: Marc Patterson, MD.
日本語訳者: 和田宏来(県西総合病院小児科/筑波大学大学院小児科)

Gene Review 最終更新日: 2013.7.18.日本語訳最終更新日: 2017.1.27.

原文 Niemann-Pick Disease Type C


要約

疾患の特徴 

ニーマン・ピック病C型(Niemann-Pick disease type C, NPC)は乳児期、小児期、成人期に発症しうる脂質蓄積病である。新生児期に、腹水、肝への浸潤による重症肝疾患、肺への浸潤による呼吸不全で発症することもある。肝疾患や肺疾患を認めない乳児では筋緊張低下や発達障害を認める。典型的には、小児期の中期から後期に、運動失調、垂直性核上性注視麻痺、認知症で発症する。ジストニアとけいれんはよく認められる。構音障害と嚥下障害により次第に日常生活に支障をきたし、経口摂取が不可能となる。通常は10代後半か20代に誤嚥性肺炎で死亡する。成人期には認知症や精神症状で発症する傾向にある。

診断・検査 

生化学検検査でコレステロールエステル化障害、培養線維芽細胞のフィリピン染色陽性を認めた場合にニーマン・ピック病C型(NPC)と診断される。生化学検査による保因者診断は信頼性がない。ほとんどの患者はNPC1遺伝子変異によるNPC1である。NPC2遺伝子変異によるNPC2の報告は20症例未満である。NPC1およびNPC2の分子遺伝学検査により、NPC患者の約94%で変異が認められる。

臨床的マネジメント 

病変の治療: けいれん、ジストニア、カタプレキシーに対する対症療法、睡眠障害に対する夜間の鎮静、可能な限り可動性を維持するため理学療法を施行する。

二次合併症の予防: 気管支拡張薬の積極的な使用や合併感染症に対する抗生剤とともに胸部理学療法を行う。重度の便秘、およびそれによる痙攣頻度の増加や痙縮(spasticity)を予防するために、可動性が障害された患者に対しては定期的な腸管プログラム(bowel program)を行う。

定期検査: 嚥下機能を観察し、誤嚥や栄養障害が切迫している場合には胃瘻チューブを留置する。

避けるべき薬物/環境: 過剰な唾液分泌を起こす薬物や抗痙攣薬との相互作用で痙攣を悪化しうる薬物は避ける。アルコールや運動失調を悪化させる薬物も避ける。

遺伝カウンセリング 

NPCは常染色体劣性遺伝性疾患である。罹患者の同胞は、25%の確率で罹患者であり、50%の確率で無症候性キャリアであり、25%の確率で罹患者でもキャリアでもない。通常は家族内で同じような臨床型(すなわち発症年齢や重症度)を呈する。家族内で病原性変異が判明している場合、リスクのある親族に対する保因者診断や出生前検査を行うことは可能である。


診断

臨床診断

以下のような所見を認めた場合にはNPCを考慮するべきである。

  • 胎児腹水もしくは新生児肝疾患、とくに後者は遷延性黄疸や肺浸潤を伴う。
  • 月〜年単位で進行を認めない乳児の筋緊張低下。続発する所見の概容はBradyら(1989年)の文献に記載されている。垂直性核上性注視麻痺(以下)を参照。
  • 小児期の中期に、垂直性核上性注視麻痺(vertical supranuclear gaze palsy, VSGP)に続いて進行性の運動失調、構音障害、ジストニア、そして一部では痙攣および笑いによるカタプレキシーを呈し、幾年もかけて緩徐に進行する。まれに、小児期の後期や成人期からみられることがある。
  • 思春期や成人期にうつ病や統合失調症に類似した精神症状を呈し、神経学的徴候はほとんどないかあっても僅かである。
  • とくに小児期の早期に肝脾腫を認める。

臨床医が精査を必要とする患者を選択する際の助けとなるように、NPCの症状を重視した定量的なスコアリングシステムが作成されている。

検査

生化学検査 NPCの確定診断には、培養線維芽細胞において細胞内コレステロールの恒常性異常を認めることが必要である。これらの細胞において、外因性LDLコレステロール負荷後にコレステロールエステル化障害がみられる。フィリピン染色では、非エステル化コレステロールに一致して、核周囲に蛍光色素が緊密に点状集積する像を認める。

  • 従来型 ほとんどの患者では、従来の染色法でエステル化を全く認めないかかなりの低下が認められる。
  • 異型 患者の約15%は、中等度もしくは「さまざまな」レベルのコレステロールエステル化と典型的ではない染色パターンを認める。BODIPY-ラクトシルセラミドを用いて脂質輸送異常を精査することによって、生化学検査でより正確に診断を行うことができる。

オキシステロールの測定は皮膚生検に代わって施行されており、将来的に確固とした第一のスクリーニング検査および診断的検査となるだろう。

病理組織 組織生検や組織脂質分析などその他の検査が現在でもまれに必要となる。組織生検や組織脂質分析は、生化学的異常を認める前の診断には不可欠である。骨髄、脾臓、肝臓の泡沫細胞(脂肪貪食マクロファージ)を検査する。進行例では骨髄に青藍組織球(sea-blue histiocytes)を認めることがある。皮膚、直腸の神経細胞、肝臓、脳の電顕像で多形細胞質小体(polymorphous cytoplasmic bodies)を認めることがある。

分子遺伝学的検査

遺伝子

ニーマン・ピック病C型(NPC)を起こす2つの遺伝子変異が知られている。NPC1およびNPC2(遺伝子変異)である。

さらなる座位異質性のエビデンス その他の遺伝子座の関与を示す直接的なエビデンスは存在しない。しかし、典型的な臨床症状及び生化学所見を認める患者の一部では、NPC1もしくはNPC2遺伝子変異が認められない。

臨床検査

表1 ニーマン・ピック病C型(NPC)に用いられる分子遺伝学的検査の概要
遺伝子1 この遺伝子変異によるNPC患者の割合2 検査方法3 同定される変異 この方法で遺伝子変異が同定される割合4
NPC1 90%5 シークエンス解析6 シークエンス変異 80%-90%7
欠失/重複解析8 部分および完全遺伝子欠失 不明9
病原性変異のターゲット解析 検査機関によって検査パネルは異なる。 さまざま10
NPC2 4% シークエンス解析6 シークエンス変異 100%に近い
欠失/重複解析8 部分および完全遺伝子欠失 不明:報告はない11
病原性変異のターゲット解析 検査機関によって検査パネルは異なる。 さまざま

  1. 表A(遺伝子ならびに染色体遺伝子座とタンパク名のデータベース)を参照。
  2. 少なくとも1つの病原性変異を有するNPC患者の割合。
  3. アレル変異の情報に関する「分子遺伝学」の項を参照。
  4. 示されている遺伝子の変異の同定に用いられる検査方法の検出能。
  5. シークエンス解析を用いた同定率は、スキャニングを用いた病原性変異の同定率(90%の患者でNPC1遺伝子変異を同定)と同等である。
  6. シークエンス解析で同定される病原性変異には、小さな遺伝子内欠失・挿入、ミスセンス変異、ナンセンス変異、スプライス部位変異が含まれるが、典型的にはエクソンや遺伝子全体の欠失・重複は検出できない。シークエンス解析の結果の解釈について考慮すべき問題はこちらをクリック。
  7. ほとんどのNPC1患者はその家族に固有の複合体ヘテロ接合体変異を有する。現在まで、まとまった数の報告があるNPC1アレル変異はない。
  8. ゲノムDNAのコーディング領域や隣接するイントロン領域に対するシークエンス解析では容易に同定することのできない欠失/重複を識別する検査である。用いられる可能性のあるさまざまな方法には、この遺伝子/染色体領域を含んだ定量PCR、ロングレンジPCR、MLPA(multiplex ligation-dependent probe amplification)法、染色体マイクロアレイ解析(chromosomal microarray, CMA)などがある。
  9. 報告例はほとんどない。そのような変異の頻度はまれである可能性がある。
  10. 注目すべきことに、NPC1遺伝子変異を有するノバ・スコシアの患者(以前はニーマン・ピック病D型といわれていた)のほとんどでp.Gly992Trp変異が認められる。
  11. NPC2遺伝子において巨大な挿入/欠失は報告されていない。NPC2シークエンシング検査の感度は高いため、巨大な欠失/重複のスクリーニング検査の恩恵は非常に少ない可能性がある。

検査戦略

発端者において診断を確定するために、以下を行う。

  • 培養線維芽細胞にて細胞内コレステロールの恒常性異常を認めることが診断の主流であり、皮膚/直腸生検における微細構造の変化は診断を支持する可能性がある。
  • 分子遺伝学的検査は、さまざまな生化学的所見を認める患者において、主に診断を確定するために用いられる。

リスクのある親族の保因者診断には、家族内における病原性変異の同定が先がけて必要である。

注:保因者(キャリア)はこの常染色体劣性疾患のヘテロ接合体変異を有し、発症リスクはない。
リスク妊娠における出生前診断や着床前診断には、家族内における病原性変異の同定が先がけて必要である。


臨床的特徴

臨床像

ニーマン・ピック病C型(NPC)はどの年齢でも発症する可能性がある。

新生児期・乳児期発症

出生早期の発症例では非特異的で、経験のない臨床医では見逃される可能性がある。時折、妊娠末期のエコーで胎児腹水を認めることがある。そのような患児は典型的には黄疸や持続性の腹水を伴う重度の新生児肝疾患を呈する。

泡沫細胞の肺浸潤を新生児肝疾患とともに、もしくは初発症状として認めることがある(拡散障害に続発する呼吸不全)。
多くの乳児はこの時期に死亡する。生存者のうち、一部では筋緊張低下や精神運動発達の遅れを認め、その他の者は完全に症状が消失することはあるが、結局のところ長年を経て神経疾患を発症する。症候性肝疾患を認める患児では、肝臓および脾臓は腫大している。しかし、患児はしばしば「成長して臓器が目立つ」といわれるように、臓器腫大は小児期の後期まで見つからないことがある。実際、多くのNPC患者では臓器腫大を全然認めない。臓器腫大を認めなくてもNPCを除外することはできない。

それ以外に、肝臓や肺の機能異常がほとんどないか全くない患者群も存在し、主に筋緊張低下や発達遅滞で発症する。その患者群では、通常は発症時に垂直性核上性注視麻痺を認めないが、さまざまな期間を経て、進行性脳症の他の症状とともに認めるようになる。

小児期発症

典型的には小児期の中期から後期にかけて動作のぎこちなさや歩行困難を認め、次第に運動失調が明らかとなる。注意深い両親の多くが初期症状である垂直視障害に気付いている。垂直性核上性注視麻痺は、初期には垂直方向への衝動性眼球運動の開始が遅れ、その後衝動性眼球運動速度が次第に遅れやがて失われる。疾患後期には、水平方向への衝動性眼球運動もまた障害される。潜在的な進行性の認知障害を伴い、最初はしばしば単純な学習障害に間違われる。協調運動障害を認識されておらず、一次性の行動障害と考えられている小児もいる。疾患の進行に従い、知的機能の低下が明らかとなってくる。上述した症状にくわえて多くの患児ではジストニアを認めるが、典型的には四肢の1つから始まり次第に全ての四肢および体軸筋に広がる。構音障害と発生障害の混在により言語能力は次第に低下する。嚥下困難も構音障害とならんで進行し、経口摂取は次第に不可能となる。

NPC患者の約1/3に部分発作もしくは全般発作を認める。一部の症例でてんかんは治療抵抗性であることがある。生存期間が延びるほど痙攣は通常みられなくなるが、これは神経細胞の持続的な脱落を反映している。NPC患者の約20%に笑いによるカタプレキシー、強い情動刺激によって誘発される筋緊張の突然の消失を認める。外傷を起こしかねない発作が一日に何度も多発すると、日常生活に支障をきたしうる。

その他は典型的である幼児期後期発症NPCでは、軽度の脱髄性末梢神経障害が報告されている。現在まで、ミグルスタットの臨床試験に参加して神経伝導検査を施行された患者41人のうち1例に認めただけであり、まれな症状のようである。
ポリソムノグラフィーや生化学検査では、睡眠障害や脳脊髄液中のヒポクレチン(オレキシン)濃度の低下が認められ、疾患が視床下部のヒポクレチン分泌細胞に影響を与えうることを示唆している。

通常は10-20代に誤嚥性肺炎によって死亡する。

思春期・成人期発症

より緩徐な進行であるが、思春期もしくは成人期に前節で記述した神経疾患で発症することがある。筆者は25年前に発症した60代患者を診療したことがある。より年長例では精神疾患で発症することもあるが、ときに大うつ病もしくは統合失調症を呈するようである。精神症状は神経学的徴候を目立たなくする可能性があるが、通常は注意深い診察で認められる。双極性障害で発症した成人例も報告されている。成人ではよくみられるような臓器症状は認めず、前頭葉萎縮を伴う成人発症の認知症を呈した2症例がドイツより報告されている。

画像

脳MRIは晩期まで通常正常である。晩期には、上/前小脳虫部の著明な萎縮、脳梁の菲薄化、軽度の脳萎縮を認める可能性がある。二次性の脱髄化を反映して、脳室周囲白質の高信号も認めることがある。1人の成人患者において、多発性硬化症に類似した融合性の白質高信号域が認められている。成人NPC患者における定量MRIでは、広汎な灰白質・白質異常および進行に従い脳梁容積の減少が認められている。くわえて、橋:中脳比は眼球運動機能や疾患重症度と相関する

NPCにおいては、核磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)は標準MRIよりも感度が高い可能性がある。ミグルスタット療法でMRSパラメーターの改善がみられたことをフランスのグループが報告している。

ヘテロ接合体

最近の報告によれば、変異アレルによると考えられる振戦を認めたNPC1ヘテロ変異保有者が報告されている。この観察研究があったとしても、ヘテロ変異保有者の症状に対する疑問を解決するには、体系的な前向き研究を進めていかねばならない。

遺伝子型と臨床型の関連

NPC1 NPC1遺伝子は約200の病原性変異が同定されているが、ほとんどの患者は複合ヘテロ変異保有者であるため遺伝子型と臨床型の相関は限定的である。また、培養細胞で認められた輸送障害と臨床病型の関連は乏しい。それにもかかわらず、ホモ変異保有者、およびより多くみられるヘテロ変異保有者においていくらかの相関はみられている。

  • 国際的な研究班によって、米国南西部のリオグランデバレー北部のヒスパニック系、および英国やフランスにおいて、臨床型とp.Ile1061Thrにつながる病原性変異の相関が報告されている。
  • より最近では、NPC1遺伝子内の未成熟終止コドン変異、ステロール感受性ドメインを含む変異、システインリッチな管腔ループにおけるp.Ala1054Thrと、疾患の早期発症および典型的な生化学的変化が関連することを同グループは報告している。
  • 生化学的に"変異している"臨床型と相関する全ての変異アレルはシステインリッチな管腔ループに集まっている。
  • 血縁関係がないスペイン人患者40人における研究で、p.Gln775Proのホモ変異保有者は乳児期に重度の神経疾患、p.Cys177Tyrのホモ変異保有者は乳児期後期の臨床型を呈することが報告された。

NPC2 Millatらによって同定された5つの病原性変異のうち、c.190+5G>Aを除く全ては重症型と相関し、肺浸潤、呼吸不全を認め4歳までに死亡する。

  • スプライス部位変異を有する患者2人において、若年発症で長期生存を認めている。
  • 前頭葉萎縮を伴う成人発症型とNPC2遺伝子のp.Val39Met変異との相関が報告されている。
  • p.Gln45Ter, p.Cys47Ter, p.Cys99Argのホモ変異を有している小児は、新生児期もしくは乳児期に発症し、小児期早期に死亡することが報告されている。一方で、p.Val39Met, p.Ser67Proのホモ変異を有する患児では、中年期までの長期生存がみられている。 .

命名

NPCの古い文献を参照すると、本疾患患者に対して多数の病名がつけられている。若年性ジストニア性白痴(juvenile dystonic idiocy)、若年性ジストニア性リピドーシス(juvenile dystonic lipidosis)、若年性ニーマン・ピック病C型、垂直性核上性注視麻痺を伴う神経内臓リピドーシス(neurovisceral lipidosis)、ネヴィル・レイク病、青藍組織球症(sea-blue histiocytosis)、ラクトシルセラミド蓄積症、DAF(downgaze paralysis, ataxia, foam cells)症候群などがある。

ニーマン・ピック病D型という病名は、ノバ・スコシアの遺伝学的に隔離され、生化学的および臨床的にNPCと区別できない患者で使用されたが、それもNPC1変異によるものであった。

臨床型の責任遺伝子を正確に表しているため、現在はNPC1やNPC2という病名が好んで使用されている。

発生率

西欧ではNPCの発生率は150,000人に1人である。10年間に出生後に診断された症例数と同期間の出生数に基づくと、フランスにおけるNPC発生率は約120,000人に1人である。死産となった出生前診断症例を含めると、100,000人に1人とわずかに高くなる。その非特異的な症状から、出生後早期におけるNPC発生率はおそらく過小評価されている。後期に発症した患者では相対的に生存期間が長いため、全体の発生率は推定された発生率よりも高い傾向にあるが、包括的なデータは存在しない。

ノバ・スコシアのアカディア人、コロラド州やニューメキシコ州のヒスパニック系、イスラエルのベドウィンは創始者効果により遺伝学的に隔離されている。


遺伝的レベルでの関連疾患

その他の臨床型でNPC1またはNPC2遺伝子変異と相関するものは知られていない。


鑑別診断

新生児期・乳児期発症では、胆道閉鎖症、先天性感染、α1-アンチトリプシン欠損症、チロシン血症、悪性疾患(白血病、悪性リンパ腫、組織球症)、その他蓄積病(ゴーシェ病、ニーマン・ピック病A型、ニーマン・ピック病B型など)、感染症(TORCHなど)を鑑別する。コロラド州からの報告によると、初期には特発性新生児胆汁うっ滞症と診断された乳児の27%、および胆汁うっ滞を認めた乳児の8%はNPCだった。遺伝的に隔離されたヒスパニック系の多い地域であった可能性もあるが、乳児黄疸の原因としてのNPCの重要性は強調しておきたい。

小児期発症では、背側中脳症候群を起こす松果体/中脳腫瘍、水頭症、GM2ガングリオシドーシス、ミトコンドリア病、メープルシロップ尿症、注意欠陥障害、学習障害、欠神発作、その他認知症、特発性捻転性ジストニア、ドーパ反応性ジストニア、ウィルソン病、アミノ酸尿症、有機酸代謝異常(グルタル酸尿症1型など)、仮性認知症(うつ病性障害)、神経セロイドリポフスチン症、亜急性硬化性全脳炎(ミトコンドリアDNA関連リー症候群およびNARPを参照)、HIV脳症、睡眠障害、失神、周期性四肢麻痺(高カリウム性周期性四肢麻痺1型低カリウム性周期性四肢麻痺を参照)を鑑別する。

思春期・成人期発症では、アルツハイマー病、ピック病(認知症とピック小体と呼ばれる特徴的な神経細胞封入体を認める、ニーマン・ピック病とは関連のない成人期発症疾患)、前頭側頭型認知症、スティール・リチャードソン・オルシェウスキー症候群(進行性核上性麻痺としても知られる)、晩期発症ライソゾーム蓄積症、梅毒、HIV認知症、一次性の精神疾患を鑑別する。


臨床的マネジメント

NPCにおける臨床治療ガイドラインが発行されている。

初期診断後の評価

NPCと診断された患者における疾患の広がりとニーズを把握するために、以下が推奨される:

  • 歩行および運搬、分泌物の制御、コミュニケーション(言語、会話、聴力)をとる能力の評価。
  • 肝脾腫を認める患者では、血算や肝機能検査。
  • 頭部MRI。通常は精密検査で施行され、疾患が進行するまで正常である。
  • 痙攣または睡眠障害の病歴があれば、脳波および睡眠検査を考慮する。
  • 臨床遺伝専門医に診療を依頼する。

病変に対する治療

NPCに対する根治療法は存在しない。

痙攣、ジストニア、カタプレキシーに対する対症療法は少なくとも部分的に効果がある。
睡眠障害を認める場合、夜間の鎮静が適応となる可能性がある。複雑な症例では、睡眠専門医による正式な評価を考慮するべきである。

気管支肺胞洗浄により、肺浸潤を認める1人の小児において肺機能の改善を認めたことが報告されている。

主たる介護者のレスパイトを含む全体的な支持療法は、この難病に直面する家族のまとまりを保つためにも重要である。

二次合併症の予防

系統的な研究は行われていないが、併発する感染症に対し、積極的な気管支拡張剤・抗生剤の投与と胸部理学療法を行うことは有益なようである。

可動性が障害された患者では、重度の便秘を予防するために定期的な腸管プログラム(bowel program)を行う。重度の便秘は、一部のNPC患者において痙攣頻度または痙縮を増加させる可能性がある。

可能な限り可動性を維持するためにも理学療法が適応となる。

誤嚥や栄養学的合併症が明らかな場合、胃瘻チューブを挿入できるかどうか嚥下機能をモニターしなければならない。

定期検査

ほとんどの若年・成人患者は、肺機能・嚥下機能・排便・気分(潜在的なうつ病のため)に特に注意を払った小児科医による診察を6ヶ月ごとに受けることがのぞましい。NPCでは睡眠障害はよく認められる。患者もしくは介護者に対し、定期的な評価の一部として睡眠衛生に関する質問を行うべきである。

適切な学校や職場への配置のために、1年に1回の心理検査が有用である可能性がある。

運動/感覚障害を有しながら運転している10代や成人では、自分や他人に対するリスクがないかを確認するために6-12ヶ月ごとに評価するべきである。

避けるべき薬物/環境

唾液を過剰に分泌させる、もしくは抗痙攣薬との相互作用によって痙攣を直接悪化させる可能性のある薬剤は避けるべきである。

多くの薬剤と同様にアルコールは運動失調を増悪させる。アルコールも避けるべきである。

リスクのある親族の検査

遺伝カウンセリングとして扱われるリスクのある親族への検査に関する問題は「遺伝カウンセリング」の項を参照のこと。

研究中の治療法

n-ブチルデオキシノジリマイシンはスフィンゴ糖脂質合成を阻害し、発症を遅らせ生存期間を延長することがNPCモデルマウス/ネコで示されている。同薬による前向き研究では、一部の患者で疾患の安定化と有益性が認められている。ひきつづき行われた臨床研究では、ミグルスタットがNPCの安定化に有用であることが示された。同薬はいくつかの国においてNPCの神経症状に対する治療薬として承認を受けているが、米国では未承認である。

細胞およびNPCモデルマウスの基礎研究では、アポトーシスを起こす経路や細胞死・細胞機能障害に関連する経路を阻害する小分子療法の可能性が示唆された。現在のところ臨床試験には至っていない。

神経ステロイド補充療法とアロプレグナノロンを併用したNPCマウスの予備的研究では、出生後早期にステロイドが投与された場合に、n-ブチルデオキシノジリマイシンと同等の生存率の改善がみられた。続いて、NPCモデルマウスにおいて、溶媒(vehicle)であるヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの作用で劇的な効果を認めたことが報告された。
組織培養による研究では、GTPase Rab の直接的/間接的な過剰発現によってNPCの症状が改善することが示されたヒトにはまだ応用できないが、小分子療法のターゲットとなりうる、エンドソームの積み荷分子の移動における代替経路の存在が示唆された。

HDAC(ヒストン脱アセチル化酵素)阻害剤を用いたNPC線維芽細胞株の治療では、コレステロール蓄積の著明な減少が認められた。

さまざまな疾患に関する臨床試験に関する情報はClinicalTrials.govを参照のこと。

その他

NPCモデルマウス(C57系統)において、骨髄移植、骨髄・肝移植、積極的なコレステロール降下療法を含めたすべての治療法で十分な効果は認められなかった。

コレスチラミン、ロバスタチン、ニコチン酸などのコレステロール降下療法によって、NPC患者の肝臓における遊離コレステロールの量を減らせることが示されているが、神経症状の進行を抑制するというエビデンスは得られていない。

肝移植は肝機能障害を改善させるが、神経症状は改善しない。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝学的検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的、倫理的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

NPCは常染色体劣性遺伝形式をとる。

患者家族のリスク

発端者の両親

  • 罹患者の両親は必然的にヘテロ接合保因者である。
  • ヘテロ接合保因者(キャリア)は無症状である。

発端者の同胞 

  • 受胎時には、発端者の同胞の25%は罹患者、50%は無症候性キャリア、25%は変異をもたない非罹患者である。通常は家族内で同じような臨床型を呈する。すなわち、発端者が早期発症型であれば、それに続く罹患者は同様の臨床経過をたどる。まれに、発端者と子どもは異なった臨床経過をたどることがある。
  • 発端者より年下の同胞は、罹患しているが無症状である可能性がある。家族内で同じような臨床型を呈することから、罹患していない年上の同胞の2/3はNPC変異アレルを1つ有するリスクがある。

発端者の子

  • NPC患者の子どもは1つのNPC変異アレルを受け継ぎ、必然的にヘテロ接合保因者である。

発端者の他の家族

  • 発端者の両親の同胞がキャリアであるリスクは50%である。

保因者診断

生化学検査では、対照群の多くで所見が重複してしまうため、信頼性をもってヘテロ接合保因者と診断することはできない。

家族内で変異が同定されている場合、NPCもしくはNPCの分子遺伝学的検査は保因者診断に有用である可能性がある。

遺伝カウンセリングに関連した問題

家族計画

  • 遺伝学的リスク評価、保因者診断、および出生前診断の可否などについての議論の最適な時期は妊娠前である。
  • 罹患者、キャリア、キャリアのリスクがある若年成人に対して遺伝カウンセリング(潜在的な子どもへのリスクや出産方法の選択肢に関する話し合いなど)を行うことがのぞましい。

DNAバンクは主に白血球から調整したDNAを将来利用することを想定して保存しておくものである。検査技術や遺伝子、変異、あるいは疾患に対するわれわれの理解が将来さらに進歩すると考えられるので、DNA保存が考慮される。

出生前診断

25%のNPC発症リスクがある妊娠において、羊水穿刺(通常はおよそ妊娠15〜18週に行われる)もしくは絨毛膜絨毛採取(通常はおよそ妊娠10〜12週に行われる)によって得られた胎児細胞から抽出したDNAの分子遺伝学的検査を行うことは可能である。家族内の両病原性変異は、出生前診断が行われる前に同定しなければならない。

注:妊娠週数は最終月経の開始日からの計算あるいは超音波検査による測定に基づく。

着床前診断は家族内で病原性変異が同定されている場合にオプションとなる可能性がある。


更新履歴

  1. Gene Review著者: Marc Patterson, MD.
    日本語訳者: 和田宏来(県西総合病院小児科/筑波大学大学院小児科)
    Gene Review 最終更新日: 2013.7.18.日本語訳最終更新日: 2017.1.27.(initial post, in present)

原文 Niemann-Pick Disease Type C

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