[Synonyms:BRCA1およびBRCA2関連HBOC]
Gene Reviews著者: Nancie Petrucelli, MS, Mary B Daly, MD, PhD, and Tuya Pal, MD.
日本語訳者: 箕浦祐子(札幌医科大学大学院医学研究科遺伝医学),櫻井晃洋(札幌医科大学医学部遺伝医学)
GeneReviews最終更新日:2022.5.26 日本語訳最終更新日: 2022.6.12
原文 BRCA1- and BRCA2-Assohciated Hereditary Breast and Ovarian Cancer
BRCA1およびBRCA2関連遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)は,女性および男性の乳癌,卵巣癌(卵管癌や原発性腹膜癌も含む)のリスク上昇を特徴とし,主にBRCA2遺伝子の病的バリアントを有する患者では,前立腺癌,膵癌,悪性黒色腫をリスクが低いながらも発症する.関連癌の発症リスクは,HBOCの原因となる病的バリアントがBRCA1かBRCA2のどちらであるかによって異なる.
診断・検査
BRCA1およびBRCA2関連HBOCの診断は,分子遺伝学的検査で発端者のBRCA1またはBRCA2遺伝子にヘテロ接合性生殖細胞系列病的バリアントが同定されることによって確定する.
臨床的マネジメント
症状の治療:
同側および対側乳癌の発症率が高いため,一次的な外科的治療として両側乳房切除術を考慮した腫瘍専門医による乳癌治療を行う;BRCA1およびBRCA2遺伝子関連癌に対しては,PARP阻害薬薬の使用が検討される.悪性黒色腫の治療は皮膚科専門医および腫瘍専門医によって行われる.
一次症状の予防:
乳癌予防のために予防的両側乳房切除術,予防的卵巣摘出術,化学予防(タモキシフェンなど)が用いられるが,リスクの高い女性を対象にした無作為化比較試験は行われていない.卵巣癌予防のために,予防的卵管摘出術とその後の卵巣摘出術,または卵管卵巣摘出術がある.
サーベランス:
女性の乳癌スクリーニングは,月1回の乳房自己触診,毎年または半年ごとの医師による乳房視触診検査,年1回のマンモグラフィ,乳房MRIを組み合わせて行われる.卵巣癌のスクリーニングとしては,年1回の経腟超音波検査やCA-125濃度測定が35歳から検討される.しかし,こうしたスクリーニングは,高リスク女性においても平均的なリスクをもつ女性においても,早期の卵巣癌を検出する効果はない.男性では,乳癌のスクリーニングは,乳房自己触診の教育および練習と,35歳からの医師による乳房視触診検査.45歳からは年1回,血清前立腺特異抗原(PSA)の測定および直腸指診を開始すべきである.無症状者への膵癌のスクリーニングは,一般的には推奨されていない.
リスクのある血縁者の評価:
家系内で癌の易罹患性BRCA1またはBRCA2生殖細胞系列病的バリアントが同定された場合,リスクの高い血縁者に検査を行うことにより,同様の病的バリアントを持っていればサーベイランスを強化し,癌を発症した場合に特定の治療に結び付けられる家系員を同定することが可能である.
遺伝カウンセリング
BRCA1およびBRCA2関連HBOCは常染色体顕性遺伝 (優性遺伝)形式をとる.BRCA1またはBRCA2病的バリアントを持つ患者の大多数が,片親からバリアントを受け継いでいる.しかし,これらの病的バリアントに関連する乳癌・卵巣癌やその他の癌の浸透率は100%ではないため,BRCA1またはBRCA2病的バリアント保持者の親が癌を発症しているとは限らない.BRCA1またはBRCA2生殖細胞系列病的バリアントを持つ人の子がこのバリアントを受け継ぐ確率は50 %である.家系内で癌易罹患性となるBRCA1またはBRCA2の生殖細胞系列バリアントがわかっている場合,出生前診断や着床前診断が可能である.
訳注:日本では,本症に対する出生前診断や着床前診断は行われない.いずれにしても次世代への遺伝に関しては細心の遺伝カウンセリングが必要である.
臨床診断
HBOCが疑われる所見
既往歴もしくは家族歴(父系・母系双方の1~3度近親者)に以下を認める場合,BRCA1およびBRCA2関連遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)を疑うべきである:
注:(1)「乳癌」は,浸潤癌と非浸潤性乳管癌(DCIS)の双方を指す.(2)「卵巣癌」には,上皮性卵巣癌,卵管癌,原発性腹膜癌を含む.
BRCA1およびBRCA2病的バリアントの確率モデル
個人や家系がBRCA1またはBRCA2生殖細胞系列病的バリアントをもつ確率を推定するための多くのモデルが開発されている[Parmigiani et al 1998, Frank et al 2002, Antoniou et al 2004, Evans et al 2004, Tyrer et al 2004].数多くの症例を扱っている施設でも,BRCA1またはBRCA2病的バリアントが存在する確率が高いかどうかを見極める際に,確率モデルが有益であることが示されている[Euhus et al 2002, de la Hoya et al 2003].BRCA1およびBRCA2病的バリアントの確率モデルに関する詳細な情報については,こちらを参照のこと.
確定診断
BRCA1およびBRCA2関連HBOCの診断は,発端者の分子遺伝学的検査でBRCA1またはBRCA2遺伝子にヘテロ接合性生殖細胞系列病的バリアントが同定されることによって確定する( Table 1参照).
注:(1)BRCA1またはBRCA2関連癌(50歳未満の乳癌,卵巣癌など)患者では,分子遺伝学的検査によって得られる情報が多く,こうした患者は「最適な検査候補」と言われることが多い.そのため,分子遺伝学的検査は,関連のない癌を発症しているあるいは癌の既往歴のない家系員ではなく,まず,「最適な検査候補」に行うことが理想的である.(2)最適な検査候補がいない場合には,病的バリアントが検出されないことが家系内にBRCA1またはBRCA2病的バリアントが存在する可能性が否定されたのではないということを理解した上で,癌の既往のない人に対して分子学的検査を行うことがある.
分子学的検査法には,BRCA1およびBRCA2遺伝子パネルやマルチジーンパネルなどがある:
アシュケナージ系ユダヤ人では3つのBRCA1およびBRCA2の病的な創始者バリアントに対して,標的解析を考慮してもよい.アシュケナージ系ユダヤ人で同定される病的バリアントの99 %が,BRCA1 c.68_69delAG (BIC: 185delAG),BRCA1 c.5266dupC (BIC: 5382insC),BRCA2 c.5946delT (BIC: 6174delT)である.標的解析で病的バリアントが同定されない場合には,BRCA1とBRCA2の配列解析,欠失・重複解析,またはマルチジーンパネルを行うとよい.
注:BRCA1またはBRCA2に生殖細胞系列病的バリアントがあることがわかっている家系の場合,以下の場合を除き,リスクのある血縁者は家系特異的生殖細胞系列病的バリアントを調べるだけでよいことがほとんどである.
マルチジーンパネルの概要については こちらをクリック.臨床医のための,遺伝学的検査依頼に関するより詳細な情報は こちらを参照.
表1. BRCA1およびBRCA2関連遺伝性乳癌卵巣癌の分子遺伝学的検査
遺伝子1 | BRCA1およびBRCA2関連HBOCにおける病的バリアントのある遺伝子の割合 | 検査法ごとの病的バリアント2の検出割合 | |
---|---|---|---|
配列解析3 | 標的遺伝子の欠失・重複解析4 | ||
BRCA1 | >66 % | 87-89 %5 | 11-13%5 |
BRCA2 | >34 % | 97-98 %5 | 2-3 %5 |
HBOC=遺伝性乳癌卵巣癌
臨床像
BRCA1およびBRCA2関連遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC) は,女性および男性の乳癌,卵巣癌(卵管癌や原発性腹膜癌も含む)のリスク上昇を特徴とし,主にBRCA2遺伝子の病的バリアントを有する患者では,前立腺癌,膵癌,悪性黒色腫をリスクが低いながらも発症する.悪性腫瘍のリスク推定値は,由来する背景によって大きく異なる.生殖細胞系列のBRCA1またはBRCA2に病的バリアントを有する場合の悪性腫瘍のリスクを Table 2 にまとめた.
表2. 生殖細胞系列のBRCA1またはBRCA2に病的バリアントを有する者の悪性腫瘍のリスク
癌の種類 | 一般集団のリスク | 悪性腫瘍のリスク1 | |
---|---|---|---|
BRCA1 | BRCA2 | ||
乳癌 | 12% | 70歳までに55-72% | 45-6% |
対側の乳癌 | 5年以内に2 % | 10年以内に20-30% 20年以内に40-50% |
|
卵巣癌 | 1-2 % | 39-44% | 11-17% |
男性乳癌 | 0.1 % | 1-2 % | 6-8 % |
前立腺癌 | 69歳までに6% | 75歳までに21% 85歳までに29 % |
75歳までに27% 85歳までに60 % |
膵癌 | 0.5% | 1-3% | 2-7% |
黒色腫(皮膚・眼) | 1.6% | リスク上昇 |
乳癌.散発性の癌と比較して,BRCA1関連癌では髄様型の病理組織像を呈することが多く,悪性度が高く,エストロゲン受容体陰性およびプロゲステロン受容体陰性であることが多く,ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)の過剰発現が少ない傾向がある;そのため,BRCA1関連癌は“トリプルネガティブ”乳癌とされ [Rakha et al 2008, Lee et al 2011, Mavaddat et al 2012],基底細胞様乳癌と一部重複する.
BRCA2関連癌は組織学的な特徴は一貫性がなく,BRCA1関連癌より不均一であり,あまり特徴がない.一般的にエストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体陽性が多いが,BRCA2生殖細胞系列病的バリアント患者2,392人の広域国際研究では,トリプルネガティブ腫瘍が16%に見つかっている[Mavaddat et al 2012].
生殖細胞系列BRCA1またはBRCA2病的バリアントが乳癌の予後不良に関連するという科学的根拠については,議論のあるところである[Verhoog et al 2000, Bordeleau et al 2010, van den Broek et al 2015, Zhong et al 2015].
対側乳癌(CBC).幾つかの研究では,温存療法を受けた患者でCBCの発症率が高くなると報告されている [Metcalfe et al 2011a, Vichapat et al 2012, van den Broek et al 2015].CBCの予測因子は,最初の乳癌の発症年齢,早期発症乳癌の家族歴,BRCA遺伝子にバリアントがあることである [Graeser et al 2009, Malone et al 2010, Metcalfe et al 2011a, van den Broek et al 2015].CBCのリスクは若い年齢で乳癌を発症した女性で非常に高い.多くの研究で,BRCA1病的バリアントを持つ患者はBRCA2病的バリアントを持つ患者と比較し,CBCが多いことが示されている.予防的卵巣摘出術を受けた女性では,CBCのリスクが低下した[Metcalfe et al 2011a]; BRCA1またはBRCA2病的バリアントを持つ患者で,放射線治療とCBCのリスク上昇との関連ははっきりしていない.
同側乳癌.2つの症例対照研究では,生殖細胞系列BRCA1またはBRCA2病的バリアントを持つ患者での同側乳癌の発症率が,散発例の対照群と比較して顕著に高くなると報告されている[Haffty et al 2002, Seynaeve et al 2004]が,他の研究では生殖細胞系列BRCA1またはBRCA2病的バリアントを持つ女性での同側乳癌リスクが散発性乳癌の女性と比較して高まることは示されなかった [Robson et al 2004, Graeser et al 2009] .また,放射線療法を受けなかった患者と比べて,受けた患者では同側乳癌のリスクが大幅に軽減されたことも示されている[Metcalfe et al 2011b].
卵巣癌(卵管癌および原発性腹膜癌も含む).生殖細胞系列BRCA1またはBRCA2病的バリアントを持つ女性では,粘液性および境界型腫瘍よりも,漿液性腺癌が多く見られる [Liu et al 2012, McLaughlin et al 2013].漿液性腺癌は一般的に悪性度が高く,上皮内にリンパ球の浸潤を認め,核異型性が顕著であり,核分裂像数が非常に多くなる[Fujiwara et al 2012].ほとんどの高悪性度漿液性癌は卵巣よりは卵管から発生する[Daly et al 2015].
生殖細胞系列BRCA1またはBRCA2病的バリアントを持つ女性における卵巣癌の生存率を調べた研究では,相反する結果が出ている.26の観察研究の統合解析では,BRCA1またはBRCA2病的バリアント患者の生存率が,これらのバリアントをもたない患者と比べて良好であった.病期,グレード,組織型,診断年齢を調整した後も結果は同じであった[Bolton et al 2012].大規模集団の症例対照研究では,生殖細胞系列BRCA1またはBRCA2病的バリアントを持つ患者において,プラチナ製剤を主体とする治療が著効し,無増悪生存期間が延長して全生存率が改善していることがわかった[Alsop et al 2012].同様に,プラチナ感受性の上皮性卵巣癌患者では,プラチナ抵抗性の患者と比べて,生殖細胞系列BRCA1またはBRCA2病的バリアントがある確率が高かった [Dann et al 2012].無作為抽出した卵巣癌患者の大規模研究で,生殖細胞系列BRCA1またはBRCA2病的バリアントを持つ卵巣癌患者の短期生存率が,これらの病的バリアントが同定されていない患者と比べて良好であったが;この生存率への効果は短期的なものであり,長期的な生存率の改善にはつながらない [McLaughlin et al 2013].
男性乳癌.BRCA1およびBRCA2関連男性乳癌は,特にBRCA2病的バリアントと関連しており,悪性度が高く,ホルモン受容体陽性でリンパ節転移を伴うことが多い.高悪性度の組織像ではあるが,BRCA1またはBRCA2関連乳癌は,良好な5年生存率を示す[Ibrahim et al 2018].
前立腺癌.BRCA2遺伝子関連の前立腺癌では,診断時のステージおよび/または悪性度が高く,グリソンスコアが高い[Gallagher et al 2010],前立腺癌特異抗原(PSA)が高い[Ibrahim et al 2018]など,進行性疾患の様相を呈することが多い.
膵癌.BRCA1およびBRCA2は遺伝性膵管癌(PDAC)の最もよく知られた遺伝的要因であり,平均診断年齢は60.3歳(33-83歳)である[Golan et al 2014].BRCA1およびBRCA2関連PDACではプラチナ製剤およびポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害薬への感受性が高まるという科学的根拠が集積されている[Kowalewski et al 2018].
黒色腫.BRCA2病的バリアント患者では,皮膚および眼球の黒色腫のリスクが上昇する [Breast Cancer Linkage Consortium 1999, Hearle et al 2003, van Asperen et al 2005, Gumaste et al 2015].BRCA1またはBRCA2病的バリアントを持つ490家系の解析から,生殖細胞系列BRCA2病的バリアントを持つ患者でブドウ膜黒色腫のリスクが上昇していることが示された [Moran et al 2012].
その他の癌.BRCA1およびBRCA2病的バリアントを持つ患者では,他の悪性腫瘍のリスクが高まる可能性がある.さらにBRCA1病的バリアントを持つ女性で,漿液性子宮体癌のリスクが上がるかもしれないが,データは相反している[de Jonge et al 2017].
現時点では,BRCA1またはBRCA2病的バリアントと関連する良性腫瘍や身体的異常の報告はない.
遺伝子と表現型の相関
生殖細胞系列BRCA1病的バリアントを持つ女性では,生殖細胞系列BRCA2病的バリアントを持つ女性と比べて,卵巣癌と原発性腹膜漿液性乳頭状腺癌の頻度がかなり高く,発症年齢が低くなる傾向がある [Casey et al 2005, Yates et al 2011].BRCA2病的バリアントを持つ場合,男性乳癌[Evans et al 2010],前立腺癌[Mersch et al 2015],膵癌 [Dagan 2008],黒色腫のリスクがより高くなる傾向にある.
遺伝型と表現型の関連
BRCA1およびBRCA2の遺伝型と表現型の関連が確認されている.現在,このような相関が個別のリスク評価や管理に利用されることはないが,今後,適切に実証されれば,活用されるようになるかもしれない.
BRCA1
p.Arg1699Glnは中間的なリスクであることが確定した,低浸透率のバリアントである;乳癌または卵巣癌の70歳までの累積リスクは24%と推定される [Spurdle et al 2012].
BRCA2
p.Lys3326Terは,国際的な患者団体に基づく大規模な症例対照研究で,他のBRCA2病的バリアントよりも乳癌および卵巣癌発症のリスクが低かった;乳癌のオッズ比は1.28,浸潤卵巣癌のオッズ比は1.26だった[Meeks et al 2015].
BRCA1およびBRCA2のどちらにも,エクソン11内もしくは隣接部に卵巣癌多発領域(OCCR)が確認されている[Rebbeck et al 2015].OCCR内に病的バリアントがあると,両遺伝子のこの他の部位に病的バリアントを持つ家系でみられるよりも,乳癌に対して卵巣癌の比率が高くなる.
BRCA1およびBRCA2遺伝子では多数の乳癌多発領域が観察されており,乳癌リスクの相対的上昇と卵巣癌リスクの相対的低下に関連している[Rebbeck et al 2015].
浸透率
BRCA1およびBRCA2病的バリアントの乳癌・卵巣癌およびその他癌の浸透率は100%よりは低い(Table 2参照).
頻度
BRCA1およびBRCA2病的バリアントはHBOCの最も一般的な原因である.一般集団でのBRCA1およびBRCA2病的バリアントの頻度は,400~500人に1人と推定されている[Anglian Breast Cancer Study Group 2000, Whittemore et al 2004].
BRCA1およびBRCA2関連HBOCの頻度は,創始者バリアントの存在により,特定の集団で高まる(Table 6参照):
BRCA1および/またはBRCA2の創始者バリアントはアフリカ,アマン派,アイスランドに祖先を持つ集団など,他のいくつかの集団でも報告されている(Table 6参照).
ファンコニ貧血.BRCA1およびBRCA2の両アレルの生殖細胞系列病的バリアントは,ファンコニ貧血と関連する.ファンコニ貧血は多器官の発達異常や再生不良性貧血を伴う若年発症の骨髄不全(しばしば10歳までに発症),若年発症の急性白血病や固形癌を含む,がんの高い易罹患性を特徴とする.6歳までの何らかの悪性腫瘍の累積発症率は97%に達する.
症候性乳癌.以下の癌易罹患性症候群では乳癌のリスクが高まる.多くの場合,BRCA1およびBRCA2関連遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)は,がんの家族歴などに基づいて,これらの疾患と鑑別可能な場合が多いが,なかには鑑別のために分子遺伝学的検査を要する症例もある.
表3. BRCA1およびBRCA2関連遺伝性乳癌卵巣癌との鑑別診断を考慮する癌易罹患性と関連する遺伝子
遺伝子 | 癌易罹患性症候群 | MOI | 関連癌/ 鑑別にあがる特徴 |
---|---|---|---|
乳癌の高浸透率 (高リスク)遺伝子 | |||
CDH1 | 遺伝性びまん性胃癌 | AD | 乳癌(小葉癌), びまん性胃癌. 多くは40歳未満で癌を発症する. |
PALB2 | PALB2-関連癌易罹患性 (OMIM 610355) | AD | 乳癌≤58%,1卵巣癌, 男性乳癌, 膵癌 |
PTEN | PTEN 過誤腫性腫瘍症候群 | AD | 乳癌. その他癌: 甲状腺癌, 腎細胞癌, 子宮体癌, 大腸癌. 多数の過誤腫,巨頭症, 外毛根鞘腫, 乳頭腫の丘疹. 通常,20歳代後半までに何らかの臨床所見が認められる. |
STK11 | Peutz-Jeghers症候群 | AD | 乳癌. その他癌:消化管, 卵巣 (ほとんどがSCTAT), 子宮頸部 (悪性腺腫), 膵, 精巣のセルトリ細胞. 消化管ポリポーシス, 皮膚粘膜の色素沈着, 指の過剰な色素沈着斑. |
TP53 | Li-Fraumeni 症候群 | AD | 乳癌(しばしば閉経前). その他癌: 軟部肉腫, 骨肉腫, 脳腫瘍, 副腎皮質癌, 白血病. 若年発症&多発する原発癌. |
乳癌および/または卵巣癌の中程度浸透率(中程度リスク)遺伝子 | |||
ATM | ATM-関連癌易罹患性 (ATM ヘテロ接合体; 血管拡張性失調症参照) | AD | 乳癌 |
BARD1 | BARD1-関連癌易罹患性(OMIM 114480) | AD | 乳癌 |
BRIP1 | BRIP1-関連癌易罹患性(OMIM 605882) | AD | 上皮性卵巣癌,2乳癌のリスク上昇の可能性 |
CHEK2 | CHEK2-関連癌易罹患性(OMIM 604373) | AD | 乳癌3 |
EPCAM MLH1 MSH2 MSH6 PMS2 |
Lynch症候群 | AD | 卵巣癌, 乳癌リスクのわずかな上昇. 大腸ポリープ, 子宮体癌, 胃癌, その他癌. 4 |
RAD51C | RAD51C-関連癌易罹患性(OMIM 613399) | AD | 卵巣癌, 乳癌の可能性 (特に ER/PR 陰性乳癌) |
RAD51D | RAD51D-関連癌易罹患性(OMIM 614291) | AD | 卵巣癌, 乳癌の可能性 (特に ER/PR 陰性乳癌) |
AD = 常染色体顕性(優性);ER=エストロゲン受容体;MOI=遺伝形式;PR=プロゲステロン受容体;SCTAT =輪状細管を伴う性索腫瘍
最初の診断後の評価
BRCA1またはBRCA2生殖細胞系列病的バリアントがある場合,分子遺伝学的検査の結果を開示する際に,今後のサーベイランスや一次予防の選択肢についてカウンセリングを行う.
症状に対する治療
乳癌.米国総合癌ネットワーク(NCCN)ガイドラインによれば,BRCA1またはBRCA2病的バリアントを持つ女性では同側・対側乳癌の発症率が高いため,乳癌の一次的外科治療として両側乳房切除を検討することを提案している (NCCN ガイドライン; 無料登録およびログインが必要).
PARP阻害薬は,DNAの修復に関与していることから,BRCA1およびBRCA2関連乳癌患者に対して有望な治療法として注目されている.BRCA1およびBRCA2とPARPはDNA修復に関わっているため,それらが相互に働きを阻害することで腫瘍細胞の“合成致死”を導く.PARP阻害薬の最初の研究は,BRCA1およびBRCA2関連転移性乳癌女性で行われた.無増悪生存期間において,顕著な改善がみられ,2017年に限局的な進行性転移性乳癌女性に対してオラパリブがFDA承認を得た [Robson et al 2017, Litton et al 2018].最近の二重盲検無作為化比較第Ⅲ相試験では,初期の高リスク,ヒト上皮増殖因子受容体2 (HER2)陰性のBRCA1およびBRCA2関連乳癌の補助療法としても,オラパリブが無増悪生存期間を改善した[Tutt et al 2021].
卵巣癌.PARP阻害薬は最初に,プラチナ製剤を用いた治療が無効になった卵巣癌の再発において奏効率を改善することが明らかにされた[Fong et al 2009].オラパリブはその後,プラチナ感受性再発卵巣癌の維持療法において,無増悪生存期間の顕著な改善を示した.この研究では,BRCA1およびBRCA2病的バリアントを持つ患者で最も奏功した [Ledermann et al 2014].オラパリブは進行したBRCA1およびBRCA2関連初発卵巣癌の一次治療後の維持療法としても顕著な有効性を示した.SOLO-1試験では,プラセボ群と比較しオラパリブによる維持療法群では癌の進行または死亡リスクが70%低かった[Moore et al 2018].オラパリブは2014年に転移性卵巣癌に対して,2017年に再発癌に対する維持療法に対して,2019年には補助療法終了後の維持療法としてFDAの承認を得た.
前立腺癌.PARP阻害薬は,第Ⅰ相試験で固形癌に対して有望なデータを示した後,第Ⅱ相試験では進行したBRCA1およびBRCA2関連前立腺癌男性に対する有効性が立証された[Kaufman et al 2015].第Ⅱ相試験では, BRCA1およびBRCA2を含むDNA損傷修復遺伝子に病的バリアントを持つ進行性前立腺癌患者に対するアンドロゲン標的薬とプレドニゾンの併用療法とオラパリブを比較した.オラパリブ群で顕著な奏効率と無増悪生存期間の改善を示した.2020年には,オラパリブとルカパリブが,この状況に対してFDA承認を得た [De Bono et al 2020].
膵癌.膵癌に対する標準治療の奏効率は低く,新たな標的治療薬が強く求められていた.第Ⅲ相POLO試験は,BRCA1およびBRCA2関連膵癌患者をオラパリブとプラセボに無作為に割り付けた.奏効率はオラパリブ群22.1%,プラセボ群9.6%だった.無増悪生存期間および全生存率はオラパリブ群で2倍良好であった.しかしながら,PARP阻害薬は,特に他の全身治療との併用において毒性が強く,使用が制限される.FDAはオラパリブをBRCA1およびBRCA2関連進行膵癌の維持療法として承認した.
悪性黒色腫.治療は皮膚科専門医および/または腫瘍専門医によって行われる.
一次予防
乳癌.
注:タモキシフェン治療を受けた人は受けていない人と比較し,子宮体癌や血栓塞栓症(肺塞栓症など)を高率で発症するなど明らかな副作用がみられる.血栓塞栓症または血液凝固疾患の既往のある女性はタモキシフェンの服用は避けなければならない.タモキシフェン服用中の女性から不正出血の報告があれば,ただちに婦人科医に紹介するべきである.
卵巣癌(卵管癌含む)
注:現在(1975年以降)使用されている経口避妊薬が,生殖細胞系列BRCA1またはBRCA2病的バリアントを持つ女性での若年発症乳癌リスクを増加させるとする科学的根拠はない.
サーベイランス
表 4. BRCA1およびBRCA2関連遺伝性乳癌卵巣癌女性に対して推奨されるサーベイランス
臓器/関連事項 | 評価項目 | 頻度 |
---|---|---|
乳癌 | 乳房の自己触診 | 月1回 |
医師による乳房視触診 | 25歳から6-12 ヶ月ごと | |
マンモグラフィ | 30歳から1年ごと | |
乳房MRI | 25歳から1年ごと,家系員が30歳未満で乳癌を発症している場合は,25歳より前に開始 | |
卵巣癌 | 経過観察は推奨されない1 | |
黒色腫 | 皮膚科専門医による皮膚の検査 | 家族歴に応じて個別に |
膵癌 | 変異状況および家族歴の基準に適合する無症候者に対しては,膵癌検診の利点と欠点をより明確にするための研究として,造影強調MRI/MRCPおよび/またはEUSを考慮してもよい. |
EUS=超音波内視鏡;MRCP = MR胆管膵管撮影
表5. BRCA1およびBRCA2関連遺伝性乳癌卵巣癌男性に対して推奨されるサーベイランス
臓器/関連事項 | 評価項目 | 頻度 |
---|---|---|
乳癌 | 乳房自己触診の練習 | BRCA1またはBRCA2病的バリアントが同定された時 |
乳房の自己触診 | 35歳から月1回 | |
医師による乳房視触診 | 35歳から1年ごと | |
前立腺癌 | 血清PSA;直腸指診 | 40歳から1年ごと |
黒色腫 | 皮膚科専門医による皮膚の検査 | 家族歴に応じて個別に |
膵癌 | 変異状況および家族歴の基準に適合する無症候者に対しては,膵癌検診の利点と欠点をより明確にするための研究として,造影強調MRI/MRCPおよび/またはEUSを考慮してもよい. |
EUS=超音波内視鏡;MRCP = MR胆管膵管撮影
避けるべき化学物質および環境
BRCA1またはBRCA2病的バリアントを持つ患者に特異的なデータはない.
リスクのある血縁者の評価
家系内で癌の易罹患性と関連するBRCA1またはBRCA2生殖細胞系列バリアントが同定された場合,リスクの高い血縁者に検査を行うことにより,このバリアントを持っていて,サーベイランスの頻度を高めて癌が見つかった時には特定の治療法を必要とする家系員を同定できる.
遺伝カウンセリングを目的としたリスクのある血縁者の検査に関連する問題については, 遺伝カウンセリングの項を参照のこと.
現在研究中の治療
BRCA1およびBRCA2関連乳癌と卵巣癌治療の新しいアプローチ法を探る様々な研究が進行中である.
多くの前向き無作為化臨床試験で,転移性膵癌に対するPARP阻害薬の治療が検討されている [Chi et al 2021, Macchini et al 2021].
疾患耐性や治療毒性を予測するバイオマーカーを見つけるための研究も進行中である[Jeong & Park 2021].
別のPARP阻害剤単独または他の全身治療との併用する追加の臨床試験も検討されている.
広範な疾患や症状の臨床研究に関する情報は,米国については ClinicalTrials.gov を,ヨーロッパについてはEU Clinical Trials Register を参照すること.
その他
ホルモン補充療法(HRT).一般集団での研究によれば,閉経後女性の長期的なエストロゲン補充療法は乳癌リスクを増加させるが,閉経症状に対する短期的な使用ではリスクは増加しない.しかし,HRTに関する無作為化プラセボ対照試験では,比較的短期間のエストロゲンとプロゲスチンの併用によっても乳癌の発症率が増加することが示されている [Chlebowski et al 2003].
HRTがBRCA1およびBRCA2ヘテロ接合体における乳癌リスクにもたらす影響について調べた3つの観察研究が公表されている.Rebbeck et al [2005]は,BRCA1またはBRCA2生殖細胞系列病的バリアントを持つ女性462人のコホートで,予防的両側卵巣摘出術後のHRTに関連した乳癌リスクを調べ,予防的両側卵巣摘除術後に行われるどのようなホルモン補充療法であっても,手術によって低減した乳癌リスクを大きく変化させることはなかった.術後の追跡期間は3.6年であった.BRCA1またはBRCA2生殖細胞系列病的バリアントを持つ女性において,短期間のHRTが乳癌リスクを実質的に増加させることはないと結論づけている.このコホートに対して続いて行われた延長試験のデータには1,299人の女性が含まれており,追跡期間の平均は5.4年であった.乳癌リスクは上昇しておらず,BRCA1ヘテロ接合体では,乳癌リスクが大幅に軽減していた[Domchek et al 2011].もう1つのBRCA1病的バリアントを持つ閉経後女性472人に関する対症例対照研究では,HRTが乳癌リスクの低減に関連していた[Eisen et al 2008].3つ目の平均追跡期間4.3年の432組のマッチングペアを対照とした症例対照研究でも,BRCA1ヘテロ接合体での乳癌リスクの低減が示された[Kotsopoulos et al 2016].まとめると,これらの研究は,外科的閉経を受けたBRCA1およびBRCA2ヘテロ接合体への短期的なHRTを支持する.
「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝学的検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的、倫理的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」
遺伝形式
BRCA1およびBRCA2関連遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)は,常染色体顕性遺伝(優性遺伝)形式をとる.
家族構成員のリスク
BRCA1またはBRCA2病的バリアントを持つ発端者の親
BRCA1またはBRCA2病的バリアントを持つ発端者の同胞.
発端者のすべての同胞のリスクは,発端者の両親の遺伝的状態によって異なる.
BRCA1またはBRCA2病的バリアントを持つ発端者の子.
BRCA1またはBRCA2病的バリアントを持つ発端者の他の家系員.
他の家系員のリスクは発端者の両親の遺伝的状態により異なる.片親がBRCA1またはBRCA2生殖細胞系列病的バリアントを持つ場合,その家系の血縁者にはリスクがある.正確なリスクは,発端者との生物学的関係により異なる.
遺伝カウンセリングに関連した問題
リスクのある血縁者への早期診断・治療目的の評価に関する情報については,臨床的マネジメント, リスクのある血縁者の評価の項を参照されたい.
家族計画
遺伝性腫瘍のリスク評価とカウンセリング.
分子遺伝学的検査の実施の如何に関わらず,がんのリスク評価の過程でリスクのある者を同定することの,医学的,心理学的,倫理的な包括的説明は癌の遺伝的リスク評価およびカウンセリング-医療従事者用 (part of PDQ®,米国国立がん研究所)を参照すること.
リスクのある無症状の成人血縁者.
一般的に,BRCA1またはBRCA2生殖細胞系列病的バリアントをもつ患者の血縁者は,同一バリアントを受け継ぐリスク,分子遺伝学的検査の選択肢,癌のリスク,推奨される癌のスクリーニング(サーベイランスの項を参照),予防的手術( 一次予防の項を参照)についてカウンセリングを受けるべきである.
発端者で同定された癌の易罹患性と関連する生殖細胞系列病的バリアントを受け継いでいないリスクのある成人血縁者については,個人的なリスク要因に応じて,一般集団の癌発症リスクと同程度,もしくはそれ以上と推定される.例えば,家系特異的なBRCA1またはBRCA2病的バリアントを持たないリスクのある女性血縁者に,乳房生検で異型乳管過形成が見つかった場合,依然として乳癌リスクは高いといえる.
家系員のリスクが一般集団の癌発症リスクと同程度と判断された場合, 米国癌協会や米国総合癌ネットワーク (NCCN)などで推奨されている,平均的なリスクの人への癌のスクリーニングの実施が勧められる.注:この推定は,家系内の罹患者がBRCA1またはBRCA2分子遺伝学的検査を受けていない場合や,BRCA1またはBRCA2病的バリアントが同定されていない場合,同定するべきBRCA1またはBRCA2生殖細胞系列病的バリアントを持たない家系員には適用するべきではない.
18歳未満のリスクのある無症状血縁者への検査.
一般的に,BRCA1およびBRCA2関連HBOCでは18歳未満のリスクのある血縁者への遺伝学的検査は推奨されない.米国臨床遺伝学会と米国人類遺伝学会が共同で作成したガイドラインでは,18歳未満の場合,医学的管理に影響がある場合に限ってのみ,発症前遺伝学的検査を行うべきであるとされている.成人期に達して自分で決断ができるようになるまで,検査を先延ばしにした方がよいとされているため,BRCA1およびBRCA2関連HBOCのサーベイランスについては,一般的には25歳頃からの開始が推奨されている.しかし気をつけなければならないのは,非常に若い年齢で診断されたBRCA1およびBRCA2関連HBOC症例も稀に報告されているため,家系内で最も早く診断された年齢に基づいて個別にスクリーニングを行うことが勧められる.
さらなる情報については, 米国遺伝カウンセラー学会の成人発症疾患の未成年における遺伝学的検査に関する 意見書や,米国小児科学会および米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)の 声明:子どもの遺伝学的検査とスクリーニングにおける倫理的・政策的問題を参照のこと.
出生前診断と着床前診断
家系内でBRCA1またはBRCA2生殖細胞系列病的バリアントが同定されれば,BRCA1およびBRCA2関連HBOCに対して出生前診断や着床前遺伝子診断を行うことができる.
医療の専門家間や家族内においても,出生前診断に対する考え方の相違が存在しうる.多くの専門機関は出生前診断については夫婦の自己決定の問題だと考えているが,この問題については議論することが適切である.
訳注:日本では本症における出生前診断および着床前診断は行われていない.
GeneReviewsスタッフは、この疾患を持つ患者および家族に役立つ以下の疾患特異的な支援団体/上部支援団体/登録を選択した。GeneReviewsは、他の組織によって提供される情報には責任をもたない。選択基準における情報については、ここをクリック。
Breast cancer resources
National Human Genome Research Institute (NHGRI)
research.nhgri.nih.gov/bic/resources.shtml
670 North Clark Street
Suite 2
Chicago IL 60654
www.brightpink.org
A discussion forum specifically for women who are at a high risk of developing ovarian cancer or breast cancer
16057 Tampa Palms Boulevard West
PMB #373
Tampa FL 33647
Phone: 866-288-7475 (toll-free)
Fax: 954-827-2200
Email: info@facingourrisk.org
www.facingourrisk.org
48 Wall Street
11th Floor
New York NY 10005
Phone: 888-445-3248 (toll-free)
Fax: 917-305-0549
Email: info@gildasclub.org
www.cancersupportcommunity.org
An advocacy group seeking public policy change to benefit breast cancer patients and survivors
1101 17th Street Northwest
Suite 1300
Washington DC 20036
Phone: 800-622-2838 (toll-free); 202-296-7477
Fax: 202-265-6854
Email: info@stopbreastcancer.org
www.stopbreastcancer.org
6116 Executive Boulevard
Suite 300
Bethesda MD 20892-8322
Phone: 800-422-6237 (toll-free)
Email: cancergovstaff@mail.nih.gov
Breast Cancer
6116 Executive Boulevard
Suite 300
Bethesda MD 20892-8322
Phone: 800-422-6237 (toll-free)
Email: cancergovstaff@mail.nih.gov
Genetics of Breast and Ovarian Cancer (PDQ)
2501 Oak Lawn Avenue
Suite 435
Dallas TX 75219
Phone: 888-682-7426 (Toll-free Helpline); 214-273-4200
Fax: 214-273-4201
Email: nocc@ovarian.org
www.ovarian.org
National Cancer Institute Public Inquiries Office
6116 Executive Boulevard
Suite 300
Bethesda MD 20892-8322
Phone: 800-422-6237 (toll-free)
Email: cancergovstaff@mail.nih.gov
Probability of Breast Cancer in American Women
Linking young Jewish women in their fight against breast cancer
1086 Teaneck Road
Suite 3A
Teaneck NJ 07666
Phone: 866-474-2774 (toll-free); 201-833-2341
Email: info@sharsheret.org
www.sharsheret.org
Information, referrals to treatment centers. Answers questions from recently diagnosed women and provides emotional support. Funds research programs for women who do not have adequate medical service and support.
Phone: 877-465-6636 (Toll-free Helpline)
Fax: 972-855-1605
Email: helpline@komen.org
www.komen.org
Phone: 800-227-2345
www.cancer.org
275 Seventh Avenue
22nd Floor
New York NY 10001
Phone: 800-813-4673
Fax: 212-712-8495
Email: info@cancercare.org
www.cancercare.org
6116 Executive Boulevard
Suite 300
Bethesda MD 20892-8322
Phone: 800-422-6237 (toll-free)
Email: cancergovstaff@mail.nih.gov
www.cancer.gov
A consumer organization that advocates on behalf of all people with cancer
8455 Colesville Road
Suite 930
Silver Spring MD 20910
Phone: 877-622-7937 (toll-free); 301-650-9127
Fax: 301-565-9670
Email: info@canceradvocacy.org
www.canceradvocacy.org
Roswell Park Cancer Institute
Elm and Carlton Streets
Buffalo NY 14263
Phone: 716-845-4503
www.ovariancancer.com
分子遺伝学
分子遺伝学とOMIMの表の情報はGeneReviewsの他の場所の情報とは異なるかもしれない。表は、より最新の情報を含むことがある。
表A. BRCA1およびBRCA2関連遺伝性乳癌卵巣癌: 遺伝子およびデータベース
データは以下の標準的参照資料をもとに作成した.遺伝子は HGNC;染色体座位はOMIM;タンパク質は UniProtを参照した.リンクが提供されたデータベース(座位特異性, HGMD,ClinVar)の詳細についてはこちらを参照のこと.
表B. BRCA1およびBRCA2関連遺伝性乳癌卵巣癌に関するOMIMの登録 (OMIMですべてを見る)
113705 | BRCA1 DNA 修復関連タンパク; BRCA1 |
114480 | 乳癌 |
600185 | BRCA2 DNA修復関連タンパク; BRCA2 |
604370 | 乳癌卵巣癌, 家族性, 感受性, 1; BROVCA1 |
612555 | 乳癌卵巣癌, 家族性, 感受性, 2; BROVCA2 |
613347 | 膵癌, 感受性, 2 |
614320 | 膵癌, 感受性, 4; PNCA4 |
分子病理学
BRCA1 は乳癌感受性タンパク質1型(BRCA1)をコードし,正常な状態では核に存在するリン酸化タンパク質である [Chen et al 1996].BRCA1は,細胞周期の進行,遺伝子の転写調節,DNA損傷応答とユビキチン化など細胞経路に関与する複数のタンパク質と相互に作用する[Deng 2006, Rosen et al 2006].
BRCA1/BARD1タンパク質複合体は,中心体の機能を調節し,DNA修復と細胞周期調節に関与するユビキチンリガーゼ活性を高める [Bork et al 1997, Callebaut & Mornon 1997, Sankaran et al 2006].
BRCA1はBRCA2およびRAD51と共にDNA損傷部位に局在し,RAD51が媒介するDNA二本鎖切断の相同組換え修復を活性化する [Cousineau et al 2005].BRCA2は,一本鎖DNAを覆って核タンパクフィラメントを形成し,相同なDNA二重鎖に侵入して対になり,鎖交換を開始するRAD51の有効化と活性化を調節する[Venkitaraman 2002].
疾患の原因となる機構.機能欠失
表 6. BRCA1およびBRCA2関連遺伝性乳癌卵巣癌:遺伝子ごとの注目すべき病的バリアント
遺伝子 | 参照配列 | DNA 塩基変化 (別名1) | 予測されるタンパク変化 | 備考[参照] |
---|---|---|---|---|
BRCA1 | NM_007294.4 NP_009225.1 |
c.68_69delAG (185delAG or 187delAG) |
p.Glu23ValfsTer17 | アシュケナージ系ユダヤ人の創始者バリアント;この集団の病的バリアントの 72%を占める2 |
c.115T>G | p.Cys39Gly | アンマサリク出身イヌイットの創始者バリアント; この集団の病的バリアントの95%以上を占める3 | ||
c.815_824dupAGCCATGTGG (943ins10) |
p.Thr276AlafsTer14 | 西アフリカに祖先を持つ人の創始者バリアント4 | ||
c.5096G>A | p.Arg1699Gln | 中間リスクのバリアント5 | ||
c.5266dupC (5385insC or 5382insC) |
p.Gln1756ProfsTer74 | アシュケナージ系ユダヤ人の創始者バリアント; この集団の病的バリアントの26%を占める2 | ||
BRCA2 | NM_000059.4 NP_000050.3 |
c.771_775delTCAAA (999del5) | p.Asn257LysfsTer17 | アイスランド人の創始者バリアント6 |
c.5073dupA | p.Trp1692MetfsTer3 | ペンシルバニア州サマセット群のアマン派の創始者バリアント7 | ||
c.5946delT (6174delT) |
p.Ser1982ArgfsTer22 | アシュケナージ系ユダヤ人の創始者バリアント; この集団の病的バリアントの95% を占める2 |
表に掲載されているバリアントは著者らから提供された.GeneReviewsのスタッフはバリアントの分類分けの検証はおこなっていない.
GeneReviews はHuman Genome Variation Societyの標準的な命名規則に従っている(varnomen.hgvs.org).命名法の解説については,Quick Referenceを参照のこと.
原文 BRCA1- and BRCA2-Assohciated Hereditary Breast and Ovarian Cancer