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ソトス症候群
(Sotos Syndrome)

[Cerebral Gigantism]

Gene Review著者: Katrina Tatton-Brown, BM BCh, MD, Trevor RP Cole, MB ChB, Nazneen Rahman, BM BCh, PhD
日本語訳者: 吉村祐実 (ボランティア翻訳者)、櫻井晃洋(信州大学医学部附属病院遺伝子診療部) 
Gene Review 最終更新日: 2012.3.8 日本語訳最終更新日: 2013.2.2

原文 Sotos Syndrome


要約

疾患の特徴 

ソトス症候群は、典型的な顔貌、過成長(身長および/または頭囲≧+2SD)、軽度(小児期は普通学級に通い、成人期には独立していることがある)、から重度(生涯にわたるケアとサポートが求められる)にわたる学習障害を特徴とする.主な特徴は、行動障害、先天性心奇形、新生児黄疸、腎奇形、脊柱側彎、てんかん発作である.

診断・検査 

ソトス症候群の診断は臨床所見と分子遺伝学的検査の組み合わせにより確定される.NSD1はソトス症候群を引き起こすことが知られている唯一の遺伝子である.ソトス症候群患者の約80-90%にNSD1遺伝子の変異が認められる.

臨床的マネジメント 

症状への対応:学習障害/言語遅滞、行動障害、心奇形、腎奇形、側彎症、てんかん発作の管理のための適切な専門医への紹介. MRIで脳室拡大がみられても、頭蓋内圧の上昇がなければ治療介入は行わない.

サーベイランス:年少児、多くの臨床症状を呈する患者、平均以上に支援を必要とする家族に対しては総合小児科医による定期的な診察を提供する.年長児や少年期で医学的問題が少ない患者にはより頻度の少ない診察.

その他:罹患者や家族に対し、本症の自然経過、治療、遺伝様式、他の血縁者の遺伝的リスク、一般向けの情報リソースについて教育する.若年成人に対しては子のリスクについて遺伝カウンセリングを提供する.

遺伝カウンセリング 

ソトス症候群は常染色体優性遺伝形式である.95%以上の罹患者は新生突然変異による.発端者の両親のどちらもソトス症候群でない時は、発端者の同胞のリスクは少ない(1%未満).罹患者の子孫へのリスクは50%である.家系内のNSD1変異が同定されているリスクの高い妊娠では、出生前診断が可能である.


診断

臨床診断

特徴的な顔貌、学習障害、過成長が見られる場合、臨床的に診断される.NSD1変異を有する500人以上の分析から、基本的な特徴は少なくとも90%の患者に見られることが示された.この3つ全ての臨床的基準を満たしていない場合、遺伝学的検査によって確定される (分子遺伝学的検査の項を参照) .

  • 特徴的な顔貌 顔貌の特徴はソトス症候群の最たる診断基準であると同時に、経験不足による誤診を招きやすい.特徴は1歳から6歳の間で典型的である.より年長の児と成人では顔の特徴は(典型的ではあるが)希薄である.典型的な顔貌は、頬部の紅潮、前頭部のまばらな毛髪、つきだした額、眼瞼下垂、長く狭い顔、下顎は細く突き出す.頭部は逆さまにした梨に似ているとされる.顔の形は成人になっても保持されるが、下顎は角張り、突き出すようになる.
  • 過成長 約90%の子どもは2SD以上の高身長および/または頭囲となる.身長は成人で普通程度になるが、生涯大頭である.
  • 学習障害 早期の発達遅延が見られ、大きな体格、筋緊張低下、協調性の乏しさにより運動技能力は特に遅れるが目立つことがある.言語障害も見られる.大多数の患者で、何らかの知的な発達の遅れが見られる.しかしながら程度はとても多様で、軽度(小児期は普通学級に通い、成人期には独立していることがある)から重度(生涯にわたるケアとサポートが求められる)に渡る.

検査

細胞遺伝学的検査 患者のほとんどは細胞遺伝学上の異常がみられない.まれに、5q35転座など細胞遺伝学上の異常によってソトス症候群が発症する.

分子遺伝学的検査

GeneReviewsは,分子遺伝学的検査について,その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り,臨床的に実施可能であるとする. GeneTestsは研究機関から提出された情報を検証しないし,研究機関の承認状態もしくは実施結果を保証しない.情報を検証するためには,医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない.―編集者注.

遺伝子 NSD1はソトス症候群と関係のある遺伝子として、現在唯一知られている.

臨床検査

表1 疾患の分子遺伝学的検査のまとめ

検査方法

検出される変異

変異検出頻度1

検査の利用可能性

日本人

日本人以外

シークエンス解析/
変異スキャニング

シークエンス変異3

〜12% 4

27% -93% 5

臨床 Image testing.jpg

欠失/重複解析6

NSD1を含む5q35微細欠失、NSD1遺伝子の部分欠失

〜50% 7,8,9

〜15% 8,9

FISH法

NSD1を含む5q35微少欠失

〜50% 4,8,10

〜10% 5,8,10

検査の実施に関してはGeneTests(TM) Laboratory Directoryを参照のことGeneReviewsは,分子遺伝学的検査について,その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り,臨床的に実施可能としている. GeneTestsは研究機関から提出された情報の検証や,研究機関の承認状態もしくは実施結果の保証は行わない.情報を検証するためには,医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない.

  1. 当該遺伝子に存在する変異の検出方法の精度
  2. 遺伝子全体に対するシークエンス解析や変異スキャニングの変異検出率は同程度であるが,変異スキャニングの変異検出率は使用する検出方法により検査機関ごとに大きく異なる.
  3. シークエンス変異で検出される変異の例には、小規模な遺伝子内欠失・挿入やミスセンス変異、ナンセンス変異、スプライス部位変異が含まれる.
  4. 日本人患者を対象とした限定的な変異のスクリーニングは実施されたことがない.
  5. 検出率の多様性はスクリーニングの適格基準を反映する.臨床医およびソトス症候群の専門医によって、臨床的に診断された場合、NSD1 遺伝子の検出率は90%を超える.
  6. シークエンス解析では容易に検出できないゲノムDNAイントロン内のコード領域や隣接領域に対する欠失・重複を同定する検査には,定量PCR法,ロングレンジPCR法,MLPA法,標的アレイGH法(遺伝子/セグメント特異的)など,様々な方法がある.ゲノム全域の欠失・重複を検出する全アレイGH解析には当該遺伝子/セグメントも含む場合がある.アレイCGHを参照.
  7. 日本人罹患者における、遺伝子の部分欠失の寄与は未だ明らかになっていない.
  8. FISH法や他の欠損/重複解析(MLPA法)と同等の感受性で微小欠失を検出できる.
  9. ソトス症候群の約5%がエクソン/多エクソン欠失 (1つ以上のエクソンの欠失)と関連がある.欠失/重複の解析が必要である.典型的に、FISH法ではエクソン/多エクソン欠失を検出できない.エクソン1およびエクソン2を含む欠失が最もよく見られ、隣接配列のAluの密度を反映する.
  10. 典型的に、FISH法ではエクソン/多エクソン欠失を検出できない.

検査結果の解釈

検査手順

発端者の診断目的

  • 診断がついたばかりの子ども:心エコー・腎臓超音波
    • 祖先が日系人でない患者では、シークエンス解析が第一選択検査となり、シークエンス解析で変異を特定できなかった場合、欠失/重複検査またはFISH法を実施する.
    • 祖先が日系人の患者では、欠失/重複検査またはFISH法が第一選択検査である.

注:分子遺伝学的検査で確定診断がついたら、骨年齢のX線検査と脳のMRI検査は必要ではない.

  • ソトス症候群の臨床的診断が確定できない、あるいは分子遺伝学的検査が陰性なら、通常の核型検査と脆弱X症候群の分子遺伝学的検査を実施するべきである(鑑別診断の項を参照).

発症リスクのある妊娠に対する出生前診断や着床前診断(PGD)には、家系内での疾患原因変異の事前同定が必要である.

注:GeneTests Laboratory Directoryには掲載施設で実施可能な臨床検査を載せることがGeneReviewsの方針である.ここで掲載されている検査は必ずしも著者や編集者や審査者が推奨をするものではない.

分子遺伝学的検査:臨床的検査

  • 遺伝子内変異スキャニング 日本人以外のソトス症候群と考えられる人たちに、変異スクリーニング(シークエンス、ヘテロデュプレックス、dHPLC分析)を行った結果、遺伝子内変異が27-93%の人で検出された.検出割合の範囲が広いのは、研究ごとにスクリーニングの適格基準が異なることによる.Melcher は、専門的知識レベルの異なる多くの臨床医から紹介のあった、ソトス症候群が疑われる全てのケースでNSD1のスクリーニングを行った.一方、Tatton-Brown と Turkmen は、専門知識のある臨床医が臨床診断を行った罹患者で研究を行った結果、NSD1の検出割合は少なくとも90%になった. 限局的な変異スクリーニングが日本人の患者で行われたが、遺伝子内変異を有する人は少数(12%以下)だった.
  • 5q35微少欠失分析 典型的なソトス症候群患者のうち、日本人の約50%、日本人以外の10%に、NSD1を含む5q35微細欠失が見られる.多くは、近接するlow copy repeatの非アレル間相同組み換えに由来する.微細欠失は、FISH法あるいはMultiplex ligation-dependent probe amplification (MLPA) による等感度により検出される.
  • 遺伝子部分欠失 部分的な遺伝子欠失(たとえば一つ以上のエクソンなど)はソトス症候群の原因の5%を占めると言われている.MLPA法(全てのエクソンのプローブを含む)はこれらの異常を検出できる.しかし単一エクソンの欠失は解釈に注意が必要で、可能であればlong-range PCRのような二次的方法で確認をするべきである.FISH法は、部分的な遺伝子の欠失を検出することができない.エクソン1と2を含む欠失が最も一般的であり、これはフランキング配列内の高密度なAlu反復配列を反映したと考えられる.

NSD1はソトス症候群と関係のある遺伝子として、現在唯一知られている.

遺伝子 現在、ソトス症候群の原因として知られているのはNSD1遺伝子のみである.

遺伝子レベルでの関連疾患

NSD1変異は、ソトス症候群に非常に特異的で、感受性が高い.小児期に過成長のある500人以上の患者(Marshall-Smith症候群、常染色体優性大頭症、非特異的過成長を含む)で、ソトス症候群以外の臨床診断を受けていた者にはNSD1の変異は同定されなかった.

稀な例として、ソトス症候群と重複する臨床症状を有し、NSD1に変異のあるケースが報告されている.

  • 大頭で背が高く知能は通常の家系
  • ソトス症候群と重複する臨床特徴の多いNevo症候群の患者.さらにNevo症候群は、エーラスダンロス症候群VIA型の対立遺伝子によることが明らかにされている.これらの疾患は、PLOD1遺伝子の両アレルの変異によると報告されている.
  • Beckwith-Wiedemann症候群(BWS)の所見が典型的ではないBWS患者2名.ソトス症候群と症状がかなり重複していた.
6人のWeaver症候群の罹患者.Weaver症候群とソトス症候群は乳児期の臨床症状がかなり重複しており、Weaver症候群の患者の一部にNSD1変異が見られ、時間の経過と共に、かなり古典的なソトス症候群の臨床症状を呈した.最近、Weaver症候群はヒストンメチルトランスフェラーゼ遺伝子EZH2によって生じることが明らかになっており、ソトス症候群とは臨床的にも遠い存在であることが示されている.

臨床像

自然経過

NSD1変異のある230人を対象とした研究によると、ソトス症候群の臨床的な特徴は、基本的な特徴(少なくとも罹患者の90%に見られる)、主な特徴(15-89%に見られる)、関連する特徴(二つ以上の特徴が、罹患者の15%未満に見られる)に分類される.

症例数の増加にともなって、関連する特徴もさらに増えていくと思われる.便秘のように、関連する特徴で、現在考えられているよりも高い頻度で起きてくるものもあり、それらは将来的には主な特徴に含まれていく可能性もある.

基本的な特徴(少なくとも90%のソトス症候群の人にある)

  • 特徴的な顔貌
  • 学習障害
  • 過成長

主な特徴(15-89%のソトス症候群の人にある)

  • 問題行動
  • 骨年齢促進
  • 心奇形
  • 頭蓋MRI/CTの異常
  • 関節の過弛緩、扁平足
  • 母体の子癇前症(妊娠中毒症)
  • 新生児合併症
  • 腎奇形
  • 脊柱側彎
  • てんかん

基本的な特徴

  • 特徴的な顔貌 特徴的な顔貌は、出生時にも明らかだが、1歳から6歳にかけて最も顕著である.長頭蓋で広くつきだした額.しばしばまばらな前頭側頭部の毛髪.多くは眼瞼下垂.頬部の紅潮が見られることもある.下顎は出生時には小さいが、小児期にはとがり、成人期にはしばしば角張り突き出すようになる.
  • 学習障害 多くの患者にはさまざまな程度の知的障害がある.軽度の学習障害(独立した生活を営み、結婚して家庭を持つことが期待できる)から重度の学習障害(成人期に独立して生活することは困難)まで、スペクトラムは広い.小児期には言語障害があり、特に表現言語と明瞭な発音が困難であると言われている.多くの人は軽度から中程度の学習障害があり、知的障害の程度は生涯を通じて変わらない.
  • 成長 胎児期に始まる過成長が見られる.分娩は満期出産となることが多い.新生児の平均身長は約98パーセンタイル、平均頭囲は91〜98パーセンタイルであるのに対して、体重は基準値内(50〜91パーセンタイル)である.

10歳を迎える前までは、患児の成長は急速で直線状であり、同年児よりかなり大きい.身長と頭囲は平均の2SDを越える.しかし成長には両親の身長の影響もあり、成長パラメーターが98パーセンタイルを越えない児もいる.
成人後の最終身長に関する十分なデータは乏しいが、男性女性ともに、成人後の最終身長には幅がある.

de Boerらは、NSD1陽性の者に指極/身長比の上昇、座高/身長比の減少、手長の上昇が見られると報告し、Agwuらの成長学的研究データを裏付けた.これらのデータは、ソトス症候群罹患者の高身長は、主に手足が長くなることに起因するということを示唆している.

主な特徴

  • 問題行動 問題行動は全年齢で見られる.同輩集団での集団行動は、大きな体格・子どもっぽさ・社会性の欠如により困難である.こうした知見はNSD1陽性の小児と成人で確認されている.また、ADHDは通常ソトス症候群とは関係がない点も記されている.
  • 骨年齢 思春期前の小児の75-80%で、骨年齢は成長速度の促進を反映している.しかし、骨年齢の解釈は、意義深いとされる”閾値”・評価方法・主観的な解釈の間違い・評価のなされた年齢などにより影響を受ける.
  • 心奇形 約20%の罹患者に、動脈管開存、心房中隔欠損、心中中隔欠損、あるいは他の複合心奇形など、単独から重篤までさまざまな心奇形が見られる.稀に手術の必要な場合がある.
  • 頭蓋MRI/CTの異常 NSD1変異のあるソトス症候群の罹患者に広く認められる.脳室拡大(特に三角部で)は多くの人に見られた.その他の異常には、正中線の変化(脳梁の形成不全・発育不全、巨大大槽、透明中隔の拡大/透明中隔腔)、脳萎縮症、小脳虫部の萎縮などが含まれる.
  • 歯の異常 未熟な歯の出現および歯の質の悪さが報告されている.
  • 関節の弛緩/扁平足 関節の弛緩は罹患者の約20%に見られるとされている.
  • 妊娠 合併症が起こることがある.特に子癇前症は約15%の妊婦に見られる.
  • 新生児合併症 新生児に、黄疸(〜65%)、筋緊張低下(〜75%)、哺乳不全(〜70%)が見られることがある.これらの合併症は自然に消退するが、稀に治療を必要とすることがある.
  • 腎臓の異常 NSD1変異のある人の約15%には、腎臓の異常がある.膀胱尿管逆流はよくある症状である.無症状の場合もあり、成人期の腎機能不全で明らかになる.
  • 脊柱側彎 約30%の人には脊柱側彎があるが、装具による療法や手術の必要なケースはほとんどない.
  • てんかん発作 罹患者の約25%の人は生涯のある時点でてんかん発作がおこり、その後の継続的な治療が必要となる.欠神発作・強直性発作・ミオクローヌス発作・複雑部分発作が報告されている.

その他

  • 腫瘍 約3%の罹患者に腫瘍が見られる.仙尾部奇形種、神経芽細胞腫、仙骨前神経節細胞腫、急性リンパ性白血病(ALL)、小細胞肺癌など.De Boerらは、これらの疾患について、ソトス症候群罹患者のうちNSD1変異を持っている人と持っていない人とでの比較研究を行なった.
  • その他の様々な臨床的特徴 便秘、中耳炎による聴覚障害のような、いくつかの関連する特徴が頻繁に見られる.今後の研究において、15%以上の罹患者にこのような特徴が見られ、一般頻度を上回った場合、NSD1変異に続く二番目の診断基準となるかもしれない.以下は、ソトス症候群患者の2〜15%に診られる特徴である.

関連する特徴

  • 乱視
  • 白内障
  • コレステリン腫
  • 伝導性聴覚障害
  • 便秘
  • 拘縮
  • 頭蓋骨縫合早期癒合
  • 潜伏精巣
  • 胃食道逆流
  • 血管腫
  • 片側肥大
  • 水瘤
  • 高カルシウム血症
  • 遠視
  • 歯数不足
  • 小爪症
  • 尿道下裂
  • 甲状腺機能低下症
  • 鼠経ヘルニア
  • 近視
  • 新生児低血糖症
  • 眼振
  • 漏斗胸
  • 包茎
  • 皮膚の色素沈着過剰
  • 皮膚の低色素沈着
  • 斜視
  • 内反足
  • 腫瘍
  • 臍帯ヘルニア
  • 脊椎異常
  • 足の第二・第三指間合指症

遺伝子型と臨床型の関連

NSD1変異を有する234名の評価から、5q35に微細欠失を有する罹患者は、遺伝子内変異を有する罹患者に比べて、過成長はそれほどでもなく、学習障害は重度であることがわかった.

ソトス症候群に関する他の臨床像(心奇形、腎奇形、発作、脊柱側彎)に関しては、遺伝子内変異と5q35の微細欠失による明らかな遺伝子型と臨床像の関連はない.さらに、遺伝子内変異のタイプ(ミスセンスなのか、短縮型なのか)と表現型には相関は見られず、変異の場所(5’側なのか3’側なのか)と表現型にも相関は見られなかった.

浸透率 

100を超える親の検体がスクリーニングされている.これまで、罹患していない両親あるいは、NSD1変異を有する罹患者の非罹患同胞において、NSD1変異及び欠失は同定されていない.従って、ソトス症候群は完全浸透疾患であると思われる.

注目すべきは、表現度が非常に多様である点である.同じ変異を有する同一家系内の人でさえ表現型は異なっている可能性がある.

促進現象

促進現象の報告はない.

病名

ソトス症候群は、1964年に、過成長、学習障害、特徴的な顔貌のある5人の子どもに関する報告をしたJuan Sotos博士の名にちなんで命名された.

頻度 

出生14,000人に一人とされている.


鑑別診断

本稿で扱われる疾患に対する遺伝学的検査の実施可能性に関する最新情報は,GeneTests Laboratory Directoryを参照のこと.―編集者注.

  • Weaver症候群(Weaver-Smith 症候群) は、ヒストンメチル基転移酵素EZH2の変異によって生じることが最近、明らかにされている.患者は高身長、典型的な顔貌を呈し、しばしば誕生時に緊張が見られ、湾曲指や拘縮などの関節障害に関連した症状が見られる.
    特に乳児期の典型的な顔貌は、ソトス症候群と重なる.しかし、Weaver症候群の顔は丸みを帯びており、両眼隔離がある.顎前突症は特徴ではないが、顎は「くっついて」いるように見え、しばしば顎と下唇の間に水平な皺がある.Weaver症候群とソトス症候群は、臨床症状が重複するので、EZH2変異が特定されない場合、Weaver症候群を疑う場合にはNSD1遺伝子検査を行う.
  • Beckwith-Wiedemann 症候群(BWS) BWSの罹患者は身長、体重ともに平均の2SDを越え、巨人症は主な診断基準となる.しかし、BWSのその他の症状である巨舌症、耳朶の縦溝、らせん状の耳のピット、臍帯ヘルニア、内臓巨大症は、ソトス症候群では明らかではない.分子遺伝学的検査によって、BWS患者の11p15染色体の後成的な遺伝子の異常を特定できる.(1)患者の50%において、imprinting center 2 (IC2)で母性染色体のメチル化解除(2)患者の20%において、11p15染色体の片親性ダイソミー(父系単一)(3) 患者の5%において、imprinting center 1 (IC1)で母性染色体のメチル化. CDKN1Cのシークエンス解析で 、BWSの家族歴のある症例の約40%、家族歴のない症例の約5-10%で突然変異が特定されている.

注目すべきは、BaujatらがBWS患者2名のNSD1変異について報告しているが、患者はいずれもBWSの診断基準を満たしておらず、ソトス症候群の診断基準を満たしていることである(遺伝的に関連のある疾患の項を参照).BWSとソトス症候群は臨床的に区別するべきである.両疾患の特徴が臨床的に重複する患者に対しては、分子遺伝学的検査を実施する.

  • Simpson-Golabi-Behmel症候群(SGBS) X連鎖の症候群であり、男児の出生前後の過成長に関係している.多指症、多乳首症、腹直筋離開、漏斗胸は、ソトス症候群ではあまり見られない.特徴的な顔貌も異なる.グリピカン3タンパクをエンコードしているGPC3遺伝子の微細欠失や変異が原因である.
  • Bannayan-Riley-Ruvalcaba症候群 常染色体優性遺伝・大頭症・血管奇形・回腸末端/結腸の過誤腫性ポリープ・陰茎体の色素性斑・脂肪腫ならびに甲状腺がんおよび乳がんリスクの上昇.PTEN遺伝子変異が約60%の人に見られる.過成長と、類似した顔貌の組み合わせがソトス症候群との混同を招くが、詳細に渡る診察と分子遺伝学的検査によって両者の鑑別が可能である.
  • 良性家族性大頭症 細長い/巨大な頭蓋で特徴づけられ、神経学的には正常.常染色体優性遺伝.異質性が高く、通常は除外診断.
  • 脆弱X症候群 脆弱X症候群とソトス症候群には類似点があるが、臨床の場では区別しやすい.分子遺伝学的検査で確実に区別できる
  • 母斑基底細胞癌症候群(NBCCS, Gorlin症候群)  10代で下顎の角化嚢胞が生じ、20代から基底細胞癌を発症する.分岐肋や楔状椎などの骨格異常もよく見られる.約60%の患者に大頭症、前頭の隆起、粗な顔貌が見られる.10カ月から18カ月までに頭囲は98パーセンタイルを超えるが、全体的な発達の遅れは認められない.NBCCSは、生殖細胞系列でのPTCH遺伝子変異が原因である.常染色体優性の遺伝形式を示す
  • 染色体異常 ソトス症候群様の表現型は、4p重複、モザイク型20pトリソミー、22q13.3欠失症候群に関連してきた.これらの染色体異常は核型検査で同定が可能である.
  • 非特異的過成長 過成長のある患者の多くは、上記の各疾患の診断基準を満たしていないが、それでも遺伝子に起因すると考えられる他の特徴(学習障害、特徴的な顔貌)を持つ.非特異的な過成長は多因性で異質性の高い一連の疾患と思われる.

臨床医への注:個別の患者に対するについては,SimulConsult(R)を参照.SimulConsult(R)は患者の所見を基に鑑別診断を提供する双方向型診断決定補助ソフトである(登録または施設からのアクセスが必要).


臨床的マネジメント

最初の診断時における評価

ソトス症候群患者の疾患の程度を診断するために、以下に示す評価が推奨される.

  • 詳細な病歴をとって、既知の特性や特徴的な症状を調べる:学習障害・心奇形・腎奇形・てんかん発作・脊柱側彎.
  • 身体検査に含まれるべきは、心音聴診・血圧測定・脊柱側彎の検査である.
  • 重大な合併症や死亡をもたらす前に異常を検出できる検査
  • 診断がついたばかりの子ども:心エコー・腎臓超音波
    • 診断がついたばかりの子ども:心エコー・腎臓超音波
    • 診断がついたばかりの成人:静止期の慢性膀胱尿管逆流による障害を見極めるための腎臓超音波
    • 聴覚検査の照会:伝導性聴覚障害はしばしば見られる症状である.照会の閾値は低い
    • 臨床遺伝学的相談

病変に対する治療

心奇形、てんかん発作、腎障害、脊柱側彎や、学習障害、行動障害、言語障害のような臨床的な問題が確認された場合、適切な専門家への照会が推奨される.

MRI検査で脳室拡大が認められた場合でも、通常はシャントの必要はない.本疾患に関連する水頭症は停止性水頭症で通常は非閉塞性であり、頭蓋内圧の亢進とも関係しないからである.頭蓋内圧の亢進が疑われる場合は、神経の専門家と相談して検査やマネジメントを行なうことが望ましい.

北米の子どもの中にはリタリンが処方されたケースもあったが効果はまちまちであった.ヨーロッパでは行動管理がより頻繁に採用されているが、こちらも効果はまちまちである.

ニ次病変の予防

膀胱尿管逆流患者に対して抗生物質による予防が示されている

経過観察

幼児・合併症が多く、医療従事者の調整を必要とする患者・平均以上にサポートを必要とする家族には一年に一度の定期観察が望ましい.

高学年以上の小学生・中・高校生・合併症の少ない患者の定期観察は、二年に一度が望ましい.

適切な臨床的観察を以下に示す.

  • 既知のソトス症候群の続発症を特定するために詳細な病歴をとる
  • 脊柱の湾曲検査
  • 心音聴診
  • 血圧測定
  • 斜視や視覚に問題があると疑われる場合、眼科へ紹介
  • 聴覚に問題がある場合、あるいは子どもの頃の上気道感染が頻繁だった場合、耳鼻科へ紹介
  • 尿路感染を調べるための尿検査
  • 問題が特定されたときは、適切な医療の専門家へ紹介

注:腫瘍スクリーニングは推奨されない.(1)仙尾部奇形腫と神経芽細胞腫の絶対リスクは小さい(1%未満).このレベルのリスクは、定期検査の正当な理由とならない.特に、神経芽細胞腫のスクリーニングは、死亡率の低下と関係が無く、偽陽性の結果が出ることもある.(2)ウィルムス腫瘍のリスクは上昇するとは言えず、定期的な腎臓の超音波検査は必要ない.

リスクのある親族の検査

遺伝カウンセリングとして扱われるリスクのある親族への検査に関する問題は「遺伝カウンセリング」の項を参照のこと.

研究中の治療法

種々の疾患に対する臨床試験についてはClinicalTrials.govを参照のこと.

注:本症の臨床試験は行われていない.

その他

遺伝クリニックは、患者や家族に自然経過、治療、遺伝形式、患者家族の遺伝的発症リスクに関する情報を提供とするとともに、患者サイドに立った情報も提供する.Gene Test Clinic Directoryを参照のこと.

患者情報 本疾患の支援グループや複数疾患にまたがった支援グループについては「患者情報」を参照のこと.これらの機関は患者やその家族に情報、支援、他の患者との交流の場を提供するために設立された.


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

ソトス症候群は常染色体優性遺伝である.

患者家族のリスク

発端者の両親

適切な臨床的観察を以下に示す.

  • ソトス症候群と診断された患者の約5%の両親はその疾患の患者である.
  • 残りの約95%は新生突然変異が原因である.
  • NSD1遺伝子の異常が特定された患者の両親にソトス症候群の臨床的特徴が全くない場合、その親のNSD1遺伝子に変異を有する可能性は非常に低い.発端者のNSD1遺伝子変異が特定されている場合、親の変異の有無は分子遺伝学的検査で確認できる.

発端者の同胞 

上の分析から、基本的な特徴は少なくとも90%の患者に見られることが示された.この3つ全ての臨床的基準を満たしていない場合、遺伝学的検査によって確定される (分子遺伝学的検査の項を参照) .

  • 発端者の同胞のリスクは,その両親の遺伝子型による.
  • 発端者の両親に病原性変異が見られる場合、その同胞が変異を受け継ぐ確率は50%である.
  • 臨床的に罹患していない両親から生まれた発端者の同胞のリスクは1%未満である.この残存リスクは生殖細胞系モザイクの理論的リスクおよび同じ家族に生じる第二の新規の突然変異の背景リスクに基づく.これまで、生殖細胞系のモザイクによる再発例は報告されていない

発端者の子

  • NSD1遺伝子の異常または臨床診断を受けた患者の子が変異を受け継ぐ可能性は50%である.
  • 形質発現は世代によって異なるため、子が罹患する可能性を正確に予測できない.

他の家族

  • 発端者の同胞のリスクは,その両親の遺伝子型による.
  • 発端者の両親に病原性変異が見られる場合、その同胞が変異を受け継ぐ確率は50%である.

遺伝カウンセリングに関連した問題

明らかに新生突然変異による家族 常染色体優性遺伝の発端者の親に病原変異が無い、あるいは臨床的な疾患の証拠を有しない場合、発端者は新生突然変異である可能性が極めて高い.しかし、生殖補助医療による非配偶者間人工授精、明らかにしていない養子縁組などの、非医学的な説明の可能性も考慮される.

家族計画 

  • 発端者の両親遺伝的リスクの算定、出生前診断の可能性についての話し合いは、妊娠前が最適である.
  • 罹患している若年成人やリスクのある若年成人に対して遺伝カウンセリング(子への潜在的リスクや生殖手段)の提供は適切である.

DNAバンキング DNAバンキングは、主に白血球から調整したDNAを将来の使用のために保存しておくものである.将来、検査方法や遺伝子・変異・疾患の理解は進歩するかもしれないので、罹患者のDNAの保存は考慮されるべきである.現在、利用可能な分子遺伝学的検査の感度は100%未満である.このサービスを行っている機関についてはDNAバンキングの項を参照のこと.

出生前診断

分子遺伝学的検査  リスクの高い妊娠に対する出生前診断は技術的には可能である.DNAは通常、胎生15−18週に採取した羊水中細胞や10−12週に採取した絨毛から調製する.出生前診断を行う以前に、家系内の罹患している家族において伸長したアリルが同定されている必要がある.

超音波検査 出生前診断では正確な超音波検査を実施できない.巨大頭蓋、高身長ソトス症候群の特徴は、超音波検査で発見する可能性があるが、特異的ではない.

注:胎生週数は最終月経の開始日あるいは超音波検査による測定に基づいて計算される.

発症リスクのある妊娠に対する出生前診断や着床前診断(PGD)には、家系内での疾患原因変異の事前同定が必要である.

着床前診断は事前に疾患原因変異が同定されている家系では実施可能である.着床前診断を行っている施設に関してはTESTINGを参照のこと.

注:GeneTests Laboratory Directoryには掲載施設で実施可能な臨床検査を載せることがGeneReviewsの方針である.ここで掲載されている検査は必ずしも著者や編集者や審査者が推奨をするものではない.


更新履歴

  1. Gene Review著者: Trevor RP Cole, MB ChB, Katrina Tatton-Brown, BM BCh, Nazneen Rahman, BM BCh, PhD
    日本語訳者: 末國久美子,三澤未来(お茶の水女子大学)
    Gene Review 最終更新日: 2007.3.23. 日本語訳最終更新日: 2009.3.10

  2. Gene Review著者: Katrina Tatton-Brown, BM BCh, MD, Trevor RP Cole, MB ChB, Nazneen Rahman, BM BCh, PhD
    日本語訳者: 吉村祐実 (ボランティア翻訳者)、櫻井晃洋(信州大学医学部附属病院遺伝子診療部) 
    Gene Review 最終更新日: 2012.3.8 日本語訳最終更新日: 2013.2.2 (in present)

原文 Sotos Syndrome

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