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ムコリピドーシスW型
(Mucolipidosis IV)

Gene Reviews著者: Raphael Schiffmann, MD, MHSc, Yulia Grishchuk, PhD and Ehud Goldin, PhD.
日本語訳者: 和田宏来(県西総合病院小児科/筑波大学大学院小児科)

Gene Reviews 最終更新日: 2015.6.30 日本語訳最終更新日: 2018.8.13

原文: Mucolipidosis IV


要約

疾患の特徴 

ムコリピドーシスW型は、1歳になるまでに明らかとなる重篤な精神運動発達遅滞、および角膜混濁や網膜変性によって緩徐に進行する視覚障害を特徴とする。出生後の10年間、遅くても10代前半までには、全てのムコリピドーシスW型患者は網膜変性による重篤な視覚障害を呈する。神経変性がみられるのは患者の15%にすぎないと考えられている。約5%の患者は非定型ムコリピドーシスW型で、精神運動発達遅滞や眼所見はより重篤でないことが多い。過去には、ムコリピドーシスW型はアシュケナージ系ユダヤ人の疾患であると考えられていたが、現在ほとんどの患者はアシュケナージ系ユダヤ人ではない。

診断・検査 

ムコリピドーシスW型は、典型的な臨床所見と血漿ガストリン濃度の上昇もしくは皮膚/結膜生検で多様な形をしたライソゾーム封入体を認めた場合に疑われる。MCOLN1遺伝子の両アレル病原性変異の同定により診断は確定する。2つの変異、c.406-2A>Gおよび6.4キロ塩基対欠失(g.511_6943delとしても知られる)は、アシュケナージ系ユダヤ人患者の病原性変異の95%を占める。

臨床的マネジメント 

症候の治療:
言語聴覚療法は痙縮や失調症に対する理学療法である。必要に応じて短下肢装具、抗てんかん薬。眼の刺激感には潤滑点眼液、人工涙液、ジェル、軟膏。斜視に対して外科治療を行う。視覚障害のある患者には白黒のコントラストが高いものを利用する。

二次合併症病変の予防:
永続的な関節拘縮を予防するために理学療法を行う。鉄の吸収不良による鉄欠乏性貧血を予防するため鉄剤を内服する。

遺伝カウンセリング 

ムコリピドーシスW型は常染色体劣性遺伝性疾患である。受胎時に同胞が罹患している確率は25%、無症候性キャリアである確率は50%、罹患もしておらずキャリアでもない確率は25%である。リスクのある親族に対する保因者診断やリスク妊娠における出生前診断は、家系内で双方のMCOLN1遺伝子変異が判明している場合に行うことができる。


診断

示唆される所見

以下のような臨床所見および検査所見を認める場合にムコリピドーシスW型を疑うべきである

臨床所見

  • 脳性麻痺のように非進行性、もしくは獲得した認知・運動能力が緩徐に失われていく早期発症の発達遅滞
  • 角膜混濁を伴う/伴わない網膜ジストロフィー

検査所見

ほぼ全てのムコリピドーシスW型患者で血漿ガストリン濃度の上昇を認める(平均1507pg/mL, 範囲400-4100pg/mL)(正常値0-200pg/mL)。

診断の確定

発端者において、MCOLN1遺伝子の両アレル病原性変異(表1を参照)を認めた場合、もしくは(分子遺伝学的検査を施行できない/同検査で確定できないとき)皮膚生検もしくは結膜ぬぐい液で特徴的な封入体を認めた場合にムコリピドーシスW型の診断が確定する

分子遺伝学的検査

分子遺伝学的検査の手法には、単一遺伝子検査多遺伝子パネルの利用、より包括的な遺伝子検査がある。

連続的な単一遺伝子検査 MCOLN1遺伝子のシークエンス解析を最初に行い、病原性変異が1つしか認めない/1つも認めない場合は標的遺伝子の欠失/重複解析を行う。

アシュケナージ系ユダヤ人を祖先にもつ者では、よく認められる2つの病原性変異、すなわちc.406-2A>Gおよび5’UTRから始まってエクソン6に及ぶ6.4キロ塩基対欠失の解析をまず施行してもよい。その2つは同民族でみられる病原性変異の95%を占める。ムコリピドーシスW型患者でアシュケナージ系ユダヤ人の子孫が占める割合は70%と推定される。

  • 米国において、アシュケナージ系ユダヤ人のムコリピドーシスW型患者の約60%はc.406-2A>Gイントロン3’末端(スプライス受容部位)変異のホモ接合体を有する。
  • 33%はこの2つの病原性変異の複合ヘテロ接合体を有すると推定される。
  • 6.4キロ塩基対欠失のホモ接合体を有する患者は1人だけ認められている。

注:よく認められる6.4キロ塩基対欠失は、通常のシークエンシングでは同定することはできない。標的遺伝子の欠失/重複解析、もしくはこの欠失を同定するようにデザインされたジェノタイピング解析のような他の方法を用いなければならない。

MCOLN1遺伝子および他の関連遺伝子(「鑑別診断」の項を参照)を含む多遺伝子パネルも考慮することがある。注:パネルに含まれる遺伝子や感度は検査機関や時期によって異なる。

より包括的な遺伝子検査(可能な場合)は、エクソームシークエンス、ゲノムシークエンス、ミトコンドリアシークエンスなどを含むが、連続的な単一遺伝子検査(もしくは多遺伝子パネルの使用)でムコリピドーシスW型の特徴をもつ患者の診断を確定できないときに考慮することがある。包括的な遺伝子検査についての説明はこちらをクリック。医師が遺伝子検査を依頼するための詳細な情報はこちらで入手できる。

表1 ムコリピドーシスW型で用いられる分子遺伝学的検査の要約

遺伝子1 検査方法 この検査方法によって同定された変異2を有する発端者の頻度
アシュケナージ系ユダヤ人 アシュケナージ系ユダヤ人以外
MCOLN1 病原性変異のターゲット解析3 95% 6%-10%
シークエンス解析4,5 77%-81% 99%
標的遺伝子の欠失/重複解析6,7 18%/不明8 不明8
  1. 染色体座位と蛋白については、表A「遺伝子・データベース」を参照。
  2. 検出されるアレル変異に関する情報については,「分子遺伝学」の項を参照。
  3. c.406-2A>G(77%)および6.4キロ塩基対欠失(18%)に対する検査。注:この欠失の区切り点は報告によって若干異なる。ヒト遺伝子変異データベース(HGMD)を参照。
  4. シークエンス解析では、良性の変異、良性と考えられる変異、臨床的意義が不明の変異、病原性と考えられる変異、病原性変異が検出される。病原性変異には、小さな遺伝子内欠失・挿入、ミスセンス変異、ナンセンス変異、スプライス部位変異が含まれるが、典型的にはエクソンや遺伝子全体の欠失・重複は検出できない。シークエンス解析の結果の解釈について考慮すべき問題はこちらをクリック。
  5. アシュケナージ系ユダヤ人でよく認められる2つの病原性変異のうち、6.4キロ塩基対欠失は同定できない。
  6. 標的遺伝子の欠失・重複解析では、遺伝子内の欠失や重複が検出できる。検査方法には、定量PCR、ロングレンジPCR、MLPA(multiplex ligation-dependent probe amplification)法、単一エクソンの欠失や重複の検出を目的とする標的遺伝子マイクロアレイなどがある。
  7. アシュケナージ系ユダヤ人の子孫でよく認められる6.4キロ塩基対欠失やその他の新規(多数)のエクソン欠失を検出することが求められている。6.4キロ塩基対欠失を検出するようにデザインされたその他のジェノタイピング解析(ブレイクポイントPCRもしくはアレル特異的プライマー伸長)が用いられることもある。
  8. 6.4キロ塩基対欠失以外で標的遺伝子の欠失/重複解析の検出率に関するデータはない。

生検

過去には、皮膚生検でさまざまな細胞に異常なラメラ層構造や不定形の細胞質封入体を認めた場合にムコリピドーシスW型の診断を確定していた。その後、スワブを用いて得られた結膜細胞のPAS染色によって認められる典型的な空胞形成が診断に用いられた。


臨床的特徴

臨床像

ムコリピドーシスW型は患者の約15%に神経変性を認める神経発達症である。罹患者の表現型は定型的(患者の~95%)もしくは非定型的(患者の~5%)である。ムコリピドーシスW型患者は概して成人期まで生存するが、健常人と比べると平均余命は短い。

定型的ムコリピドーシスW型

もっともよく認められる症状は1歳になるまでに明らかとなる重篤な精神運動発達遅滞であり、つづいて角膜混濁および網膜変性による視覚障害を呈する。

神経学的所見 精神運動の発達は、一般に言葉はほとんどみられず、手の使用もあまりみられない。一部の患者は、支えなしの座位保持やハイハイを行うことができるようになる。ほとんどの患者は独歩を獲得できない。少数の患者は歩行補助用具で歩行を学習している。

言語の受容は表出よりも良好である。一部の患者は意思疎通に最大50個のサインを用いている。

神経学的検査では、典型的には重篤な構音障害と失構音、緩徐な咀嚼、緩徐な摂食と嚥下、痙性両側麻痺もしくは四肢麻痺が認められる。筋緊張低下を認めるかもしれないが、腱反射は通常は亢進している。

一般的に神経障害は20代を過ぎるまで非進行性である。しかし、一部の患者では、神経機能の低下が連続的なMRI容積測定や拡散強調画像によって最もよく観察される。

脳MRIでは、典型的には吻部の欠損および膨大部の形成異常/欠損を伴う脳梁低形成、T1強調画像における白質の信号異常、視床や基底核へのフェリチン沈着の増加を認める。高齢の患者では小脳萎縮が認められる。

脳波でてんかん性発射はよく認められるが、臨床的に発作を認めることはまれである。

眼所見 定型的ムコリピドーシスW型患者は両側性・対称性の表層性角膜混濁を呈し、角膜の中心部がもっともよく見える。初期には角膜実質の異常も報告されたが、(著者の個人的な観察では)角膜混濁は実質病変や浮腫を伴わずに上皮に限局している。時折、角膜混濁は受診を促す徴候となる。

角膜びらんによる疼痛はよく認められるが、年齢とともに頻度および重症度は低下する。視力は幼少期には正常に近いことがある。10歳を超えると、様々な程度の血管減衰を伴った進行性の角膜変性、網膜色素上皮の変化、視神経乳頭蒼白によってさらなる視力低下がみられる。両側の標的黄斑症が1人の患者で報告されている。ほとんどのムコリピドーシスW型患者で視力の検査は難しいが、5歳を超えるとほぼ全員に低下がみられる。ほぼ全てのムコリピドーシスW型患者は、10代の初めまでに網膜変性によって重篤な視力障害を呈する。

まれに、孤発性の網膜ジストロフィーを伴うことがある。

その他の眼所見に、斜視(50%を超える患者にみられる)、眼振、眼瞼下垂、白内障がある。相対的求心性瞳孔障害の証拠がなくても対光反射は通常緩慢である。

腎所見 最近知られるようになった進行性腎不全は、現在では定型的ムコリピドーシスW型の特徴と考えられている。20代から明らかとなってくる(著者、未発表のデータ)。ムコリピドーシスW型では慢性的な筋萎縮のため、腎不全の診断には血中システインC値がもっとも感受性の高い検査法である。

その他 鉄欠乏が約50%に患者にみられ、鉄欠乏性貧血は約10%の患者に認めるが通常は治療を要さない程度である。

無胃酸症は無症状である。

顔貌は通常は粗くないが典型的な特徴を有する。

肝脾腫もしくは特異的な骨格異常は認めない。

非定型ムコリピドーシスW型

非定型ムコリピドーシスW型患者は、定型的ムコリピドーシスW型患者よりも重症度は低い、もしくは1つの器官系が不釣り合いに侵される。

一部の患者は独歩を獲得する、もしくは神経機能障害を伴わない孤発性の網膜ジストロフィーを呈する。失調症は緩徐に進行し、軽度の眼異常を認め、通常はアシュケナージ系ユダヤ人の子孫ではない。

一部は先天性ミオパチーを発症し、著しい全身性の筋緊張低下や血清筋クレアチンキナーゼ(CK)濃度の上昇を認める。

一部は非進行性の運動・精神発達遅滞とごく軽度の眼異常を呈する。

  • 渦巻き状の角膜混濁による進行性の視覚障害、網膜症、正常な精神運動発達、行動異常を認めた1人の女性は、20代に歩行が不安定となった。
  • 他の2人の患者は神経症状を示さず眼所見で診断された。無胃酸症や培養皮膚線維芽細胞における自家蛍光する封入体など、ムコリピドーシスW型の他の全ての典型的な特徴を有していた。

遺伝子型と臨床型の関連

アシュケナージ系ユダヤ人を祖先にもつ患者は、通常は重症型のムコリピドーシスW型を呈する。

MCOLN1遺伝子の新規のスプライス部位変異であるc.1406A>G(p.Phe454_Asn569del)は、ニューファンドランド出身のカナダ人家族より同定された。非定型ムコリピドーシスW型の原因となり、患者は独歩可能でコミュニケーションスキルはより良好である。

第1および第2膜貫通領域間ループの変異 第1および第2膜貫通領域間ループに変異が見つかり、1つはリパーゼ領域に存在し、1つはループの4つのシステインの1つを排除するもので、おそらくムコリピン1の安定性を低下させる。これらの病原性変異を有する患者は軽症で、自力の失調性歩行や自分の手を使用した食事摂取が可能である。

同じ領域のC.694A>C(p.Thr232Pro)変異は一般的により重症であるが、異常な蛋白がエンドサイトーシスの区画に到達できず小胞体に蓄積するという事実で説明できる。

第3膜貫通領域の変異 米国南東部の複数患者で、第3膜貫通領域にc.1084G>T(p.Asp362Tyr)病原性変異が同定された。この変異を認める場合、ムコリピン1を含む膜標本はチャネル活性を有さないが、緩徐に進行する網膜疾患や相対的に軽度な神経障害と相関する。

第4膜貫通領域の変異 いくつかのMCOLN1遺伝子変異は第4膜貫通領域に存在し、そのうちc.1221_1223delCTT(p.Phe408del)は最軽症型のムコリピドーシスW型を起こすことが知られている。

第5および第6膜貫通領域間の変異 いくつかの他の病原性変異は、第5および第6膜貫通領域間の推定チャネルポアをコードする領域に存在する。これらのほとんどは重症型のムコリピドーシスW型(表3)と相関する。

命名

ムコリピドーシスW型は、脂質と水溶性物質が同時に蓄積されていた初期の印象からムコリピドーシスに分類された。

発生率

アシュケナージ系ユダヤ人によく認められる2つの病原性変異のキャリア頻度は100~127人に1人である[Bargalら2001, Edelmannら2002]。注目すべきことに、他の研究者は123人の小グループにおいてより高頻度であることを見出した[Wangら2001]。

  • スプライス変異(c.406-2A>G)の頻度は欠失変異(6.4キロ塩基対欠失)の少なくとも3倍である。
  • 欠失変異は、ニューヨークの都市部における頻度(406人に1人)に比べ、イスラエル人では特にまれである(2000人に1人)。

ムコリピドーシスW型の分子学的診断が利用できるようになる以前は、非定型ムコリピドーシスW型患者は脳性麻痺を呈すると考えられていたため過小診断されている。


遺伝学的関連(アレル)疾患

このGeneReviewで論じられている以外に、MCOLN1遺伝子変異と関連する臨床型はない。


鑑別診断

ムコリピドーシスW型の神経学的異常は比較的に進行しないため、“脳性麻痺”と考えられている患者ではムコリピドーシスW型ではないか評価を行うべきである。

神経学的異常および組織生検で広範囲に蓄積する物質をみた場合、ムコリピドーシスT型(OMIM 256550)、ムコリピドーシスU型、ムコ多糖症(T型U型WA型WB型)などの他のライソゾーム蓄積病である可能性もある。OMIMでこの臨床型に関連する遺伝子を閲覧するにはムコ多糖症:OMIM臨床型シリーズを参照のこと。

白質異常や菲薄化した脳梁といった所見は、シアル酸蓄積症(サラ病)のような他の遺伝性大脳白質形成不全症を示唆する可能性がある。(遊離シアル酸蓄積症および白質ジストロフィー概説を参照)

角膜混濁は以下でも認められる。
 ・ムコ多糖症:T型、V型(OMIM 252900, 252930)、WA型WB型、Y型(OMIM 253200
 ・ムコリピドーシス(U型Vα/β型Vγ型
 ・GM1ガングリオシドーシス

ファブリー病で(角膜ジストロフィーを伴わない)渦巻き状角膜を認める。ムコリピドーシスW型の網膜ジストロフィーは、神経セロイドリポフスチン症、およびバルデー・ビードル症候群・アルストレム症候群といった網膜変性を伴うその他の遺伝性疾患で認められる所見と類似する。


臨床的マネジメント

初期診断後の評価

ムコリピドーシスW型と診断された患者における疾患の広がりを把握するために、以下の評価が推奨される。

  • 眼科診察
  • 脳MRI
  • 鉄代謝測定
  • 脳波を含む神経学的評価
  • 臨床遺伝専門医もしくは遺伝カウンセラーへの診療依頼

病変に対する治療

以下の治療を行うことがのぞましい。

  • 言語聴覚療法
  • 運動機能障害(主に痙縮や失調症)に対して理学療法およびリハビリテーション
  • 筋緊張低下や足関節背屈筋群の筋力低下を認める患者には短下肢装具
  • 抗てんかん薬
  • 幼少児でよくみられる間欠的な眼の刺激感に対しては潤滑点眼液、人工涙液、ジェル、軟膏
  • 斜視に対して外科手術
  • 視覚障害のある患者には白黒のコントラストが高いものを利用する

注:ドナーの角膜上皮はやがて患者の異常な上皮に置き換わってしまうため、角膜移植は成功していない。

二次合併症の予防

理学療法およびリハビリテーションは永続的な関節拘縮の予防に有用である。

食事に含まれる鉄の吸収不良による鉄欠乏性貧血の治療には、硫酸鉄の経口投与といった鉄剤が適応となる。

定期検査

総合診療医による年1回のフォローアップがのぞましい。

避けるべき薬物/環境

患者の培養皮膚線維芽細胞における報告に基づき、クロロキンは禁忌である可能性がある。

リスクのある親族の検査

遺伝カウンセリング目的のリスクのある親族に対する検査に関する問題については「遺伝カウンセリング」の項を参照のこと。

研究中の治療法

さまざまな疾患や病態に対する臨床試験に関する情報へアクセスしたい場合にはClinicalTrials.govを参照のこと。注:この疾患に対する臨床試験は行われていない可能性がある。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

ムコリピドーシスW型は常染色体劣性遺伝性疾患である。

患者家族のリスク

発端者の両親

  • 患児の両親は必然的にヘテロ接合体保有者(すなわち1つのMCOLN1遺伝子変異のキャリア)である。
  • ヘテロ接合体保有者(キャリア)は無症状で疾患発症リスクはない。

発端者の同胞

  • 受胎時に同胞が罹患している確率は25%、無症候性キャリアである確率は50%、罹患もしておらずキャリアでもない確率は25%である。
  • ヘテロ接合体保有者(キャリア)は無症状で疾患発症リスクはない。

発端者の子ども

ムコリピドーシスW型患者は妊孕性がない。軽症患者の妊孕性については情報がない。

発端者の他の家族

発端者の両親の同胞がMCOLN1遺伝子変異のキャリアであるリスクは50%である。

保因者(キャリア)検査

リスクのある親族で保因者診断を行うには、あらかじめ家系内のMCOLN1遺伝子変異が同定されている必要がある。

集団スクリーニング

アシュケナージ系ユダヤ人を祖先にもつ人で保因者頻度が高いことや、出生前診断だけではなく婚前・妊娠前・出生前に遺伝カウンセリングを利用できることから、“アシュケナージ系ユダヤ人の変異”パネルにはアシュケナージ系ユダヤ人の子孫でよく認められる2つのMCOLN1遺伝子変異がしばしば含まれ、妊娠前や出生前のリスク評価をより良くすることに関心のある人々に提供される。この種のスクリーニングによって、2人とも保因者であるカップルは、子どもを授かる前に自分たちの状況やリスクに気付くことができる。遺伝カウンセリングや出生前検査のオプションによって、そのような家族は、望むのであれば、胎児が罹患していない場合にのみ分娩することができる。

遺伝カウンセリングに関連した問題.

家族計画

  • 遺伝的リスクの確認や保因者診断、および出生前診断の利用に関する話し合いを行う最適な時期は妊娠前である。
  • キャリアである、もしくはキャリアであるリスクがある若年成人に対し、遺伝カウンセリング(潜在的な子どもへのリスクや出産方法の選択肢に関する話し合いなど)を申し出ることがのぞましい。

DNAバンクは(主に白血球から調整した)DNAを将来利用することを想定して保存しておくものである。検査技術や遺伝子、アレル変異、あるいは疾患に対するわれわれの理解が将来さらに進歩すると考えられるので、患者のDNA保存を考慮すべきである。

出生前診断および着床前診断

家系内でMCOLN1遺伝子変異が判明している場合、リスク妊娠における出生前診断や着床前診断を行うことができる


更新履歴

  1. Gene Reviews著者: Raphael Schiffmann, MD, MHSc, Yulia Grishchuk, PhD and Ehud Goldin, PhD.
    日本語訳者: 和田宏来(県西総合病院小児科/筑波大学大学院小児科)
    Gene Reviews 最終更新日: 2015.6.30 日本語訳最終更新日: 2018.8.13in present)

原文: Mucolipidosis IV

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