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ライソゾーム酸性リパーゼ欠損症
(Lysosomal Acid Lipase Deficiency)

[Synonyms: Acid Lipase Deficiency, LAL Deficiency; 酸性リパーゼ欠損症、LAL欠損症]

Gene Review著者: Erin P Hoffman, MS, CGC, Marci L Barr, ScM, Monica A Giovanni, MS, CGC, and Michael F Murray, MD..
日本語訳者: 和田宏来(県西総合病院小児科/筑波大学大学院小児科)                

Gene Review 最終更新日: 2016.9.1.日本語訳最終更新日: 2017.1.31

原文 Lysosomal Acid Lipase Deficiency


要約

疾患の特徴 

ライソゾーム酸性リパーゼ(lysosomal acid lipase, LAL)欠損症の疾患スペクトラムは、乳児期発症型(ウォルマン病)からコレステロールエステル蓄積症(cholesterol ester storage disease, CESD)として知られる後期発症型に及ぶ。

ウォルマン病(Wolman diseaseは乳児期発症の吸収不良による栄養不良、肝臓マクロファージへのコレステロールエステルやトリグリセリドの蓄積による肝腫大や肝疾患、副腎石灰化による副腎機能不全を特徴とする。造血幹細胞移植(HSCT)による治療が奏功しない場合、ウォルマン病患児は1歳過ぎまで生存することはない。

CESDは小児期にウォルマン病と同じような病型で発症する、もしくはそれ以降に血清脂質異常、肝脾腫、肝酵素上昇などで発症することがある。後期発症CESDでは、動脈硬化症(冠動脈疾患、脳卒中)、肝疾患(黄疸を伴う/伴わない肝機能異常、脂肪肝、肝線維化、肝硬変および食道静脈瘤、肝不全など)、脾機能亢進症(すなわち貧血、血小板減少)、吸収不良を呈する。CESD患者は重症度によっては普通の生活を送っていることがある。

診断・検査 

LAL欠損症は、肝腫大、トランスアミナーゼの上昇、典型的な血清脂質プロフィール(血清総コレステロール高値、LDL高値、トリグリセリド高値、HDL低値)を認めた場合に疑われる。LIPA遺伝子の両アレル変異、末梢血白血球・線維芽細胞・乾燥ろ紙血にてLAL酵素活性の欠損、いずれかを認めた場合に診断は確定する。

臨床的マネジメント 

病変の治療:

  • ウォルマン病とCESD双方 :最近セベリパーゼアルファによる酵素補充療法(ERT)がFDAにより承認された。用量は1mg/kg体重の隔週投与である。この治療により重症ウォルマン病で生存が可能となり、CESD患者でも生存期間の延長が認められている。また、肝臓専門医への紹介を考慮する。肝硬変や肝不全に進行した場合肝移植が適応となる可能性がある。
  • ウォルマン病 :経静脈栄養を含めて、可能なら栄養不良を防ぐために栄養チームに診療を依頼する。副腎不全を認める場合は糖質コルチコイドや鉱質コルチコイドを投与する。
  • CESD :スタチン、コレスチラミン、低コレステロール/トリグリセリド食によってコレステロールを低下させる。さらなる心血管リスク因子の積極的な低減や脂溶性ビタミンの補充もまた有用である可能性がある。成長障害を認める小児や体重減少を認める成人に対しては、栄養チームに診療を依頼する。

一次病変の予防: 造血幹細胞移植が成功すると代謝障害は軽快する。

二次合併症の予防: 食道静脈瘤合併例に対する非選択的β遮断薬の投与は出血のリスクを低減する。

定期検査: CESDの定期検査に関する標準的なガイドラインはない。

  • 小児 :成長および栄養状態を観察する。空腹時脂質レベル、血小板数、肝酵素の測定を6ヶ月ごとに行う。
  • 成人 :疾患の重症度に応じて6〜12ヶ月ごとに再評価を行う。栄養状態を観察する。空腹時脂質レベル、血小板数、肝酵素の測定をルーチンに行う。重度肝疾患を認める患者では、食道静脈瘤の評価のため上部消化管内視鏡を3年ごとに施行する。肝脾腫を認める患者では、血小板減少をモニターし、出血による合併症を予防するため治療を行う。
  • 小児および成人 :連続的な画像検査により肝臓脾臓のサイズを観察し、肝細胞癌をスクリーニングする。

避けるべき薬物/環境: 血小板減少を認める場合NSAIDsは避ける。

リスクのある親族の検査: 早期発見・早期治療によって恩恵を受けられるように、発端者の同胞を評価することがのぞましい。

遺伝カウンセリング 

LAL欠損症は常染色体劣性遺伝性疾患である。罹患者の同胞は、25%の確率で罹患者であり、50%の確率で無症候性キャリアであり、25%の確率で罹患者でもキャリアでもない。家族内でLIPA遺伝子の病原性変異が判明している場合、リスクのある親族に対する保因者診断や出生前検査を行うことは可能である。


GeneReviews Scope

ライソゾーム酸性リパーゼ欠損症:含まれる臨床型
  • コレステロールエステル蓄積症
  • ウォルマン病

同義語および、もはや使用されない名称については「命名法」を参照。


診断

臨床診断

LAL欠損症の疾患スペクトラムは、乳児期発症型(ウォルマン病)からコレステロールエステル蓄積症(cholesterol ester storage disease, CESD)として知られる後期発症型に及ぶ。LAL欠損症は臨床所見単独からは診断できない。

示唆的な所見

肝脾腫、嘔吐、下痢、成長障害を伴う乳児を診た場合にウォルマン病を疑う。腹部画像検査で副腎石灰化を認めた場合はウォルマン病が非常に疑われる。
肝腫大、肝疾患、腸管壁の脂肪沈着、黄色板症など脂肪蓄積の徴候を伴う患者(小児期早期から成人期まで)を診た場合にコレステロールエステル蓄積症(CESD)を疑う。

予備検査

血清の脂質およびリポ蛋白濃度はたいてい異常値を示す(表1)。

  • 血清総コレステロール濃度は通常高値で、LDLやトリグリセリドも高値である。
  • 血清HDLは典型的には低値である。

注:血清脂質レベルが正常でもLAL欠損症の可能性は除外できない。

表1 LAL欠損症患者33人における脂質成分値

  コレステロール1 トリグリセリド2
総コレステロール LDL HDL
正常 <200 <130 >50 <150
報告症例 範囲 106-428 147-292 8-87 60-443
平均 291 228 30 200
正常範囲外である症例の割合 88% 100% 96% 71%
  1. 単位mg/dL
  2. 単位mg/dL

診断の確定

LIPA遺伝子の両アレル変異、末梢血白血球・線維芽細胞・乾燥ろ紙血にてLAL酵素活性の欠損、いずれかを認めた場合に診断は確定する

分子遺伝学的検査の手法には、単一遺伝子検査多遺伝子パネルの利用、より包括的な遺伝子検査がある。

  • 単一遺伝子検査 LIPA遺伝子のシークエンス解析を最初に行う。変異が1つしか同定されない場合は標的遺伝子の欠失・重複解析を考慮する。
  • LIPAやその他関連遺伝子(「鑑別診断」の項を参照)を含む多遺伝子パネルも考慮される可能性がある。注:パネルに含まれる遺伝子や検査感度は検査施設や時期によって異なる。
  • より包括的な遺伝子検査(可能な場合)は、全エクソーム解析(WES)、全ゲノムシークエンス(WGS)、全ミトコンドリアシークエンス(WMitoSeq)などを含むが、連続的な単一遺伝子検査(もしくは多遺伝子パネルの利用)でLAL欠損症の特徴をもつ患者の診断を確定できないときに考慮することがある。遺伝子検査の解釈について考慮すべき問題はこちらをクリック。

表2 ライソゾーム酸性リパーゼ欠損症に用いられる分子遺伝学的検査の概要

遺伝子1 検査方法 この方法3により同定された病原変異2を有する発端者の割合
同定された変異は1つ 同定された変異は2つ
LIPA シークエンス解析4 ウォルマン病
発端者7人のうち1人 発端者7人のうち6人
CESD
発端者31人のうち2人 発端者31人のうち29人
標的遺伝子の欠失・重複解析5 不明6 不明、報告なし7
  1. 染色体座位と蛋白については、表A「遺伝子・データベース」を参照。
  2. 検出される病原性変異に関する情報については,「分子遺伝学」の項を参照。
  3. Klimaら(1993)、Ameisら(1995)、Muntoniら(1995)、Seedorfら(1995)、Gascheら(1997)、Andersonら(1999)、vom Dahlら(1999)、Lohseら(2000)、Drebberら(2005)、Tadiboyinaら(2005)、Hooperら(2008)、Pisciottaら(2009)、Leeら(2011)、Fasanoら(2012)
  4. シークエンス解析では、良性の変異、良性と考えられる変異、臨床的意義が不明の変異、病原性と考えられる変異、病原性変異が検出される。病原性変異には、小さな遺伝子内欠失・挿入、ミスセンス変異、ナンセンス変異、スプライス部位変異が含まれるが、典型的にはエクソンや遺伝子全体の欠失・重複は検出できない。シークエンス解析の結果の解釈について考慮すべき問題はこちらをクリック。
  5. 標的遺伝子の欠失・重複解析では、遺伝子内の欠失や重複が検出できる。検査方法には、定量PCR、ロングレンジPCR、MLPA(multiplex ligation-dependent probe amplification)法、単一エクソンの欠失や重複の検出を目的とする標的遺伝子マイクロアレイなどがある。
  6. 巨大欠失はまれであるようだが、報告はされている(Leeら、2011)。
  7. エクソンもしくは全遺伝子欠失のホモ接合体は報告されていない。

ライソゾーム酸性リパーゼ(LAL)酵素活性測定 ウォルマン病では、CESDと比較して残存酵素活性がより著しく低下している(対照群の5%以下)。CESDは一般的により重症ではないが、残存酵素活性レベルの範囲はウォルマン病と重複する(残存活性は2-11%)。

注:(1)末梢血白血球のLAL酵素活性測定によりLAL欠損症の診断は確定される。しかし、酵素活性は迅速に輸送され適切に保存された肝細胞、皮膚線維芽細胞、もしくは乾燥ろ紙血でも測定することができる。(2) はじめにゲノムワイドシークエンスによってLAL欠損症が示唆されるLIPA遺伝子変異が同定された場合、LAL酵素機能の著しい欠損を確認することが推奨される。

肝生検 注:肝生検のような侵襲的な検査は、LAL欠損症が疑われる患者全員には必ずしも必要としない。


臨床的特徴

臨床像

LAL欠損症は、他の酵素欠損による疾患と同様に、広い疾患スペクトラムを呈する。乳児期発症LAL欠損症はウォルマン病として知られる。全ての後期発症LAL欠損症、これは小児期早期から成人期後期に発症する可能性があるが(しばしば無症状である)、コレステロールエステル蓄積症(CESD)として知られている。

ウォルマン病

ウォルマン病の乳児では、生後初日に嘔吐、脂肪便、腹部膨満で発症することがある。その他の乳児では数週〜数ヶ月のうちに成長不良で気付かれる。

肝臓マクロファージにコレステロールエステルやトリグリセリドが蓄積することによる肝腫大はよく認められ、かつ劇的となりうる。同様の機序による脾腫もまた認められる可能性がある。

消化管への脂肪沈着による消化管壁肥厚、およびその結果による栄養不良および消耗が認められる。

脂肪肝は肝不全に進行する可能性がある。

石灰化を伴う副腎腫大はウォルマン病に典型的な所見で、副腎機能不全に至ることがある。

ウォルマン病患児は通常は1歳を超えて生存することはない。造血幹細胞移植による治療結果は一定しておらず、さらなる研究が必要である。栄養不良、肝疾患、副腎機能不全の合併により死亡する。

コレステロールエステル蓄積症(CESD)

CESDは成長障害や発達の遅れなどウォルマン病と同じように発症することもあるが、ルーチンの検査で見つかった肝酵素の上昇もしくは血清脂質異常や、遺伝子異常を伴わない常染色体劣性高コレステロール血症(「鑑別診断」、常染色劣性高コレステロール血症を参照)のような、典型的ではない臨床型を示す患者も認められている。

高脂血症による動脈硬化は、冠動脈疾患や脳卒中を含む致死的な血管イベントのような、後期発症CESDに関連する病態の多くを占める。総コレステロールおよびLDLの著明な高値、CESDの他の特徴を伴わないコレステロールの肝臓への異常な蓄積を示し、常染色体劣性高コレステロール血症(「鑑別診断」を参照)に類似した臨床型が一家系に認められている。

コレステロールエステルとトリグリセリドの蓄積により、脾腫を伴う/伴わない肝腫大が頻繁に認められる。最初に認められる所見のなかでも、臓器腫大は診断に至る何年も前からしばしば認められることがある。脾腫を認める患者では脾機能亢進に伴う貧血や血小板減少を認めることがある。

肝疾患はよく認められる。黄疸を伴う/伴わない肝機能異常、脂肪肝、肝線維化、もしくは肝硬変を発症することがある。肝疾患により食道静脈瘤を合併し、出血リスクを伴い致死的となりうる。一部の患者で肝不全を認めることがある。
肝細胞癌は進行した肝硬変に合併する。

消化管壁への脂肪沈着により下痢や体重減少をきたしうる。

時折、高脂血症の徴候(黄色板症、とくに眼瞼)が見られることがある。

点状石灰化を伴う副腎腫大を認めうる。より重症の場合に多い。

CESD患者は重症度によっては普通の生活を送っていることがある。

肝生検

肝生検では微小脂肪変性もしくは「脂肪肝」を認める。共通の所見を有する一般的な疾患(「鑑別診断」を参照)とLAL欠損症(ウォルマン病およびCESD)の鑑別には、肝生検による以下の所見が一助となる。

  • "青藍"組織球("sea-blue" histiocytes)、空胞・脂肪滴・コレステロール結晶を伴う巨大クッパ―細胞などを含む支持的所見の存在。
  • ライソゾームマーカーであるカテプシンD、LAMP1(lysosomal-associated membrane protein 1)、LAMP2、LIMP2(lysosomal integral membrane protein 2)を含む免疫組織染色。
    ・凍結切片におけるマルタ十字型の複屈折。

遺伝子型と臨床型の関連

一般的に、残存酵素機能のないヌル対立遺伝子変異ではウォルマン病、LAL酵素活性が残存する病原性変異ではCESDを発症する。

酵素活性が残存するc.894G>A変異は欧州やヒスパニック系、そしてそれよりは少ないがアジアでも認められている。この変異はアフリカ系アメリカ人では認められていないが、リスクがないと結論付けることはできない。c.894G>AはCESDでもっともよく認められる変異で、報告されている変異の50%以上を占める。報告されているほどんど全てのCESD患者はc.894G>Aの複合ヘテロ接合体もしくはホモ接合体を有する。注目すべきことに、c.894G>Aのホモ接合体を持つ1家族3人で、常染色体劣性高コレステロール血症に類似した非典型的な臨床型が認められている(「鑑別診断」を参照)。

同じ遺伝子型を有する患者の間で、残存酵素活性レベルが異なることが報告されている。それゆえ、遺伝子型の予測価値はウォルマン病とCESDの鑑別のみに限られる。

酵素測定による残存LAL酵素活性レベルは経過を予測するのに有用ではなく、酵素活性レベルが同等であっても症状は非常に異なっている。

命名

ライソゾーム酸性リパーゼ(LAL)欠損症のほかに、過去に用いられ現在用いられていない名称には以下がある。

  • 酸性コレステロールエステル加水分解酵素欠損症
  • コレステロールエステル加水分解酵素欠損蓄積症

発生率

希少性と認知不足から、現在の正確な発生率は不明である。ドイツにおける推定では、CESDは50,000人に1人、ウォルマン病は350,000人に1人である。しかし、軽症型が認知されるようになり、LAL欠損症はより多く認められる可能性がある。

LAL欠損症はイラン系ユダヤ人ではより多く認められる。ある報告によると、ロサンゼルス地域のイラン系ユダヤ人において、c.260G>T創始者変異による発生率は4,200人に1人と高い。この病原性変異はウォルマン病およびCESD双方で報告されている。


遺伝的レベルでの関連疾患

このGeneReviewに記載した以外の臨床型でLIPA遺伝子変異と相関するものは知られていない。


鑑別診断

酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症(ニーマン・ピック病A型・B型) LAL欠損症とニーマン・ピック病A型・B型に共通する臨床所見には肝脾腫があり、ともによく認められる。また、同様の脂質プロフィールを呈する可能性がある(すなわち高脂血症を伴う低HDL血症)。

ニーマン・ピック病でよく認められる間質性肺疾患や眼科所見はLAL欠損症では認められない。
生化学検査により2つの疾患は鑑別される。SMPD1変異が原因であり、遺伝形式は常染色体劣性遺伝である。

ゴーシェ病(Gaucher disease, GD LAL欠損症とゴーシェ病に共通する臨床所見は肝脾腫と血小板減少である。
ウォルマン病(ときおりCESD)に典型的な副腎石灰化やLAL欠損症に典型的な脂質異常はゴーシェ病では認められない。ゴーシェ病1型によくみられる骨症状はCESDでは認められない。
生化学検査により2つの疾患は鑑別される。GBA変異が原因であり、遺伝形式は常染色体劣性遺伝である。

家族性高コレステロール血症 総コレステロールやLDLの上昇のため、CESDは初期には家族性高コレステロール血症と混同される可能性がある。しかし、血清HDLやトリグリセリドは通常は正常範囲にとどまる。肝疾患や臓器腫大は家族性高コレステロール血症では認められない。LDLRAPOBPCSK9の変異が家族性コレステロール血症の60-80%を占め、遺伝形式は常染色体優性遺伝である。

常染色体劣性高コレステロール血症(Autosomal recessive hypercholesterolemia, ARH)OMIM) 総コレステロールやLDLが極めて高値を示すCESDは常染色体劣性高コレステロール血症に類似する可能性がある。LDLRAP1変異が原因であり、遺伝形式は常染色体劣性遺伝である。

肝脾腫は他のライソゾーム蓄積症を含む多くの蓄積症によく認められる。他の蓄積症は、合併する特徴によってLAL欠損症と鑑別することがしばしば可能である。

  • ムコリピドーシスU型やムコ多糖症(T型U型、WA型、WB型)で認めうる痙縮、骨格形成異常、粗野な顔貌はLAL欠損症では認められない。
  • 糖原病(T型U型、V型、W型、X型、Y型)で認めうる低血糖、腎疾患、心筋症はLAL欠損症では認められない。
    生化学検査により蓄積症は鑑別できる。

CESDによる肝疾患は、よく肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患、特発性肝硬変と間違われる。肥満に伴う非アルコール性脂肪性肝疾患は肝生検ではよく認められる所見である。それゆえ、"脂肪肝"の原因を考察するときは、BMIは他の徴候や症候とあわせて考慮するべきである。


臨床的マネジメント

初期診断後の評価

LAL欠損症と診断された患者における疾患の広がりとニーズを把握するために、以下の評価が推奨される:

  • 血算
  • 診断時に未施行であるならば、空腹時脂質プロフィール
  • 肝機能検査
  • 重症肝疾患患者で食道静脈瘤の評価のため上部消化管内視鏡
  • 臨床遺伝専門医への診療依頼

病変に対する治療

2015年の終盤にセベリパーゼアルファによる酵素補充療法(ERT)がFDAにより承認された。

  • 患者66人に対する第V相試験の結果、酵素補充療法によって重症ウォルマン病で生存が可能となり、CESD患者でも生存期間の延長が認められた。
  • 隔週で1mg/kg体重を静注する。

ウォルマン病

未治療のウォルマン病患者に期待できる生命予後に留意しながら、ほとんどの場合は通常の対症療法を行う。

吸収不良および栄養不良 可能な限り栄養不良を改善するために栄養チームに診療を依頼するべきである。難治性吸収不良の多くでは経静脈栄養が求められる。

肝腫大および肝疾患 肝硬変や肝不全に進行した場合は肝移植が考慮されうる。

副腎機能不全 副腎不全を認める場合は糖質コルチコイドや鉱質コルチコイドの投与が適応となる。

造血幹細胞移植(HSCT) 造血幹細胞移植による治療結果は一定しておらず、さらなる研究が必要である。生着に成功すると代謝障害は軽快しうるが、造血幹細胞移植は重篤化や死亡に至ることがある。

緩和ケアの選択肢についての議論も考慮する。

コレステロールエステル蓄積症(CESD)

高脂血症 コレステロールを低下させるため、スタチン、コレスチラミン、エゼチミブ、低コレステロール/トリグリセリド食を試みるべきである。

脂溶性ビタミンの補充もまた有用である可能性がある。

さらなる心血管リスク因子の積極的な低減を励行するべきである。

栄養 成長障害を認める小児や体重減少を認める成人に対して、栄養チームに診療を依頼するべきである。さらに、栄養チームは低コレステロール/トリグリセリド食の実施を補助することができる。

肝移植は肝硬変や肝不全に進行した場合に考慮されうる。少なくともCESD 4症例で肝移植の成功が認められており、移植の成功により5年越しに脂質プロフィールが改善した1例が報告されている。

二次合併症の予防

食道静脈瘤を認める患者では出血リスク低減のため非選択的β遮断薬を投与するべきである。β遮断薬は食道静脈瘤の発生を予防する効果は認められていない。

定期検査

LAL欠損症の定期検査に関する標準的なガイドラインはない。CESDに最もよく合併する症状のモニターのため、以下のスクリーニングを行う。

小児

  • 成長および栄養状態に特に注意を払うべきである。慢性的な下痢もしくは成長障害は吸収不良によることがある。
  • 空腹時脂質レベル、血小板数、肝酵素の6ヶ月ごとの測定を考慮する。

成人CESD患者では、疾患の重症度に応じて6〜12ヶ月ごとに評価を行うべきである。

  • 栄養状態に特に注意を払う。慢性的な下痢もしくは体重減少は吸収不良によることがある。
  • 空腹時脂質レベル、血小板数、肝酵素の測定をルーチンに行う。
  • 重度肝疾患を認める患者では、食道静脈瘤の評価のため上部消化管内視鏡を3年ごとに施行するべきである。
  • 肝脾腫を認める患者では、血小板減少をモニターし、出血による合併症を予防するため治療を行う。

小児および成人双方 連続的な画像検査により肝臓脾臓のサイズを観察し、進行性の肝硬変で認められる肝細胞癌をスクリーニングする。適切なスクリーング方法に関するコンセンサスは存在しない。

避けるべき薬物/環境

血小板減少を認める場合、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は避ける。

リスクのある親族の検査

早期の治療開始によって恩恵を受けられるように、発端者の同胞を評価することがのぞましい。

  • 家族内でLIPA遺伝子変異が判明している場合、リスクのある同胞の遺伝学的状況を明らかにするために分子遺伝学的検査を施行することができる。
  • 家族内でLIPA遺伝子変異が判明していない場合、LAL酵素活性測定は同胞が罹患しているか判断する一助となりうる。

遺伝カウンセリングとして扱われるリスクのある親族への検査に関する問題は「遺伝カウンセリング」の項を参照のこと。

研究中の治療法

酵素補充療法の臨床試験が施行中である。
さまざまな疾患に関する臨床試験に関する情報はClinicalTrials.govを参照のこと。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝学的検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的、倫理的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

LAL欠損症は常染色体劣性遺伝形式をとる。

患者家族のリスク

発端者の両親

  • 罹患者の両親は必然的にヘテロ接合保因者である(すなわち1つのLIPA遺伝子変異を有する)。
  • ヘテロ接合保因者(キャリア)は無症状である。

発端者の同胞 

  • 受胎時には、発端者の同胞の25%は罹患者、50%は無症候性キャリア、25%は変異をもたない非罹患者である。
  • ヘテロ接合保因者(キャリア)は無症状である。

発端者の子

  • LAL欠損症患者の子どもは必然的にヘテロ接合保因者である(LIPA遺伝子変異のキャリア)。
  • 子どもが2つ目のLIPA遺伝子変異を受け継ぐリスクはパートナーが保因者かどうかによる。患者のパートナーがキャリアかどうか調べるため、分子遺伝学的検査を申し出るべきである。

発端者の他の家族

  • 発端者の両親の同胞がLIPA遺伝子変異のキャリアであるリスクはそれぞれ50%である。

保因者(ヘテロ接合体)診断

リスクのある親族の保因者診断を行う前に、家族内のLIPA遺伝子変異の同定が必要である。

注:LAL酵素活性は、保因者と非保因者で結果が重複してしまうため、保因者診断に適当な方法ではない。

遺伝カウンセリングに関連した問題

早期診断・治療を目的としたリスクのある親族の検査についての情報は、「臨床的マネジメント」「リスクのある親族の検査」を参照のこと。

家族計画

  • 遺伝学的リスク評価、保因者診断、および出生前診断の可否などについての議論の最適な時期は妊娠前である。
  • 罹患者、キャリア、キャリアのリスクがある若年成人に対して遺伝カウンセリング(潜在的な子どもへのリスクや出産方法の選択肢に関する話し合いなど)を申し出ることがのぞましい。

DNAバンクは主に白血球から調整したDNAを将来利用することを想定して保存しておくものである。検査技術や遺伝子、変異、あるいは疾患に対するわれわれの理解が将来さらに進歩すると考えられるので、DNA保存が考慮される。

出生前診断

ひとたび家族内でLIPA遺伝子変異が同定された場合、リスク妊娠に対する出生前検査や着床診断を行うことは可能である。


更新履歴

  1. Gene Review著者: Erin P Hoffman, MS, CGC, Marci L Barr, ScM, Monica A Giovanni, MS, CGC, and Michael F Murray, MD..
    日本語訳者: 和田宏来(県西総合病院小児科/筑波大学大学院小児科)
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