脊髄性筋萎縮症
(Spinal Muscular Atrophy)

Gene Reviews著者: Thomas W Prior, PhD, FACMG,Meganne E Leach, MSN, PNP and Erika Finanger, MD.
日本語訳者:佐藤康守(たい矯正歯科) 、加藤環、齋藤加代子(東京女子医科大学病院ゲノム診療科)

GeneReviews最終更新日:2026.2.12. 日本語訳最終更新日: 2026.8.7.

原文: Spinal Muscular Atrophy


要約


疾患の特徴

脊髄性筋萎縮症(SMA)は、脊髄前角細胞(すなわち、下位運動ニューロン)と脳幹神経核に生じる進行性変性と不可逆的喪失に起因して、筋力低下と筋萎縮が生じる疾患である。筋力低下の発症時期は、出生前から成人期まで幅がある。筋力低下は対称性で、遠位筋より近位筋優位で、進行性である。SMAの遺伝学的背景が明らかになる以前に、最高到達運動機能に基づき、臨床病型の分類がなされてきた。しかし、近年、SMAの表現型は臨床病型間に明確な境界線はなく連続性であることが明らかになってきた。支持療法のみの場合は、成長障害を伴う体重増加不良、拘束性換気障害、脊柱側彎、関節拘縮などの合併症が多く生じる。しかし、新たに標的治療が利用可能になったことで、本疾患の自然歴は今まさに書き替えられようとしている。

診断・検査

SMAは、進行性の運動機能障害、近位筋の筋力低下、深部腱反射の減弱/消失、運動単位の疾患の根拠、かつ/もしくは、分子遺伝学的検査でSMN1に両アレル性の病的バリアントが同定されることで診断する。表現型は、SMN2のコピー数により修飾される。

臨床的マネジメント

症状に対する治療:

標的治療:
疾患メカニズムを標的とした治療法として、SMAの全タイプを治療対象とするリス時プラム(エブリスディ®:SMN2指向性RNAスプライシング修飾薬)、ヌシネルセン(スピンラザ®;アンチセンスオリゴヌクレオチド)、およびオナセムノゲン アベパルボベク-xioi(ゾルゲンスマ®;遺伝子補充療法)がある。オナセムノゲン・アベパルボベック-brve(Itvisma® ;遺伝子補充療法)(訳者中:本邦未承認)は、2歳以上の患者に対して髄腔内投与による単回治療としても使用できる。SMA特異的疾患修飾療法は、症状が現れる前から開始すると最も効果的である。FDAは、ゾルゲンスマ®について、重篤な肝障害および急性肝不全の可能性を指摘する黒枠警告(訳者注:深刻なリスク、または生命を脅かすリスクに注意を喚起するための、FDAによる最大級の警告)を発している。 FDAはItvisma®についても、重篤な肝障害およびアミノトランスフェラーゼ値の上昇の可能性を指摘する黒枠警告を発令している。ゾルゲンスマ®またはItvisma®の投与前および投与後数か月間は、肝機能の綿密なモニタリングが推奨される。これらの標的治療は、SMAの一部の症状の発症を予防したり、進行を遅らせたりする可能性があるが、すでに変性または消失した運動ニューロンを回復させることはできない。治療を受けた患者には新たな表現型が現れており、これらの治療の長期的な影響は不明である。

支持療法
特に、最も重症なSMAの場合、多職種によるチームで支持療法を行うことが重要である。食事摂取障害や嚥下障害がある場合は、疾患経過の早い段階で胃瘻造設を検討する。胃食道逆流症や慢性便秘に対しては標準治療が行われる。SMAに詳しい呼吸器科医への正式な相談とフォローアップが必要である。呼吸機能の増悪時には、非侵襲的呼吸補助や気管切開が行われる。脊柱側彎症は、彎曲の進行度、呼吸機能、骨の成熟度などの状態に基づいて手術の検討を行う。股関節脱臼で痛みを伴う例については、外科的介入が行われることもある。

サーベイランス :
発症前の症例は、疾患修飾かつ/もしくは支持療法を開始する適切なタイミングを決定するために症状のモニタリングが必要になる。標的治療に関連する潜在的な副作用や新たな表現型に関する経過観察の推奨事項が公表されている。多職種による評価を6ヵ月に1度、あるいは、それ以上の頻度で、栄養状態、呼吸機能、運動機能、整形外科的状態の評価を進めて、適切な介入を行う。

避けるべき薬剤/環境 :
特に急性に悪化しているSMAの乳幼児は、長時間の絶食を避ける必要がある。

リスクのある血縁者の評価:
早期発見早期治療の観点から、発端者の無症状な同胞については、その遺伝学的状態を明らかにすることが適切である。

妊娠管理:
SMAの女性は、健常な女性に比べて早産率が高く、帝王切開が必要となる可能性が高い。また、SMAの女性は、特に妊娠を理由に疾患修飾療法を中止した場合、出産後に全身の筋力低下が持続的に悪化する可能性がある。呼吸不全のリスクがあるため、SMAを含む神経筋疾患の女性は、妊娠前に肺機能の基礎値を測定し、妊娠中は頻繁にモニタリングすることが推奨される。疾患修飾療法がヒト胎児の発育に及ぼす影響に関するデータはほとんどない。しかし、動物モデルに基づくと、妊婦へのリスジプラムの使用は避けるべきである。

遺伝カウンセリング

SMAは常染色体潜性(劣性)の遺伝形式をとる。すでにSMAの子どもを持つカップルでは、妊娠して罹患児が生まれる確率が約25%、無症状の保因者が生まれる確率が約50%、罹患者でも保因者でもない児が生まれる確率が約25%である。再発リスクの数字は、常染色体潜性(劣性)遺伝の予測値からわずかにずれる。その理由は、罹患者の約2%については、SMN1の一方のアレルの変異が新規バリアントだからである。その場合、SMN1のバリアントの保因者は片親のみのため、同胞がSMAに罹患するリスクが増加することはない。家系内に、分子遺伝学的検査によりSMAの診断が確定している人がいる場合には、リスクを有する血縁者に対する保因者診断、ならびに出生前検査が可能である。


GeneReviewの視点

脊髄性筋萎縮症:表現型
  • 脊髄性筋萎縮症0型
  • 脊髄性筋萎縮症Ⅰ型
  • 脊髄性筋萎縮症Ⅱ型
  • 脊髄性筋萎縮症Ⅲ型
  • 脊髄性筋萎縮症Ⅳ型

同義語や過去に使用された名称については、「疾患名」の項を参照されたい。
注:本GeneReviewでは、SMN1関連脊髄性筋萎縮症についてのみ述べることとする。
脊髄性筋萎縮症のその他の遺伝学的原因については、「鑑別診断」の項を参照されたい。


診断

SMA児の診断に関するコンセンサス文書は、最初にWangら[2007]により作成され、その後、Mercuriら[2018]によりアップデートが行われている(「診断の確定」の項を参照)。

本疾患を示唆する所見

シナリオ1.新生児スクリーニング(NBS)で陽性の結果が出た場合

シナリオ2.症状がある場合

遅発型SMAの非典型所見を示す例か、乳児発症型SMAで未治療例(NBSを未受検、もしくはNBSを受検したが結果が偽陰性)で、以下のような所見がある場合

診断の確定

発端者におけるSMAの診断は、進行性の運動機能の障害、近位筋の筋力低下、深部腱反射の減弱/消失、神経原性疾患を示す検査結果、かつ/又は、分子遺伝学的検査にてSMN1に両アレル性の病的バリアントの同定にて確定する(表1参照)。表現型は、SMN2のコピー数に修飾される。
注: (1) 米国臨床遺伝・ゲノミクス学会(ACMG)および分子病理学会(AMP)のバリアント解釈ガイドラインによれば、臨床現場において「病的バリアント」と「病的と推定されるバリアント」は同義であり、いずれも診断的意義があるとみなされ、臨床的判断に用いることができる。本GeneReviewにおける「病的バリアント」への言及は、病的と推定されるバリアントを含むものと理解される。(2) 意義不明の両アレル型SMN1バリアント(既知のSMN1病原性バリアント 1 つと意義不明のSMN1バリアント1 つ)が同定されたとしても、それだけでは診断を確定または除外することはできない。

分子遺伝学的検査のアプローチ

シナリオ1.新生児スクリーニング(NBS)で陽性の結果が出た場合

SMAを示唆する結果がNBSで得られた場合に確認のために行う分子遺伝学的検査は、通常、単一遺伝子検査である。SMN1のexon7を対象としたSMN1の遺伝子量を調べる遺伝子標的型欠失/重複解析を最初に行う。SMN1のexon7が1コピーなら、SMN1の配列解析を行う。SMN1のexon7が2コピーなら、別の疾患も検討する必要がある(「鑑別診断」の項を参照)。
SMN1の配列解析では、機能喪失型バリアントがSMN1SMN2のどちらに存在するかを判別することが困難なため(「分子遺伝学」の項を参照)、SMN1に存在するバリアントであることを確認するには以下のいずれかが必要となる。

注:分子遺伝学的検査でSMAの診断が確定した場合は、臨床に役立つ追加情報を得る見地から、遺伝子標的型欠失/重複解析を行ってSMNのコピー数を確認する(「遺伝型-表現型相関」の項を参照)。
SMAの診断アルゴリズムは、Mercuriら[2018]の公表したものがあり、図1にその概要を示した。

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図1:SMAの診断アルゴリズム

シナリオ2.遅発型SMA関連あるいは未治療の乳児発症型SMA関連の症候がみられる例(NBSが行われなかったか、NBSの結果が偽陰性だったことに起因)
分子遺伝学的検査のアプローチとしては、単一遺伝子検査(前記)、もしくは、SMN1SMN2その他の関連遺伝子(「鑑別診断」の項を参照)を含むマルチ遺伝子パネルが考えられる。

注:(1)パネルに含められる遺伝子の内容、ならびに個々の遺伝子について行う検査の診断上の感度については、検査機関によってばらつきがみられ、また、経時的に変更されていく可能性がある。
(2)マルチ遺伝子パネルによっては、今このGeneReviewで取り上げている状況と無関係な遺伝子が含まれることがある。したがって、臨床医には、どのマルチ遺伝子パネルを用いれば、現況の表現型と無関係な遺伝子の意義不明バリアントや病的バリアントの検出を抑えつつ、最も安価に疾患の遺伝学的原因を確定できる可能性が高いかという点を判断することが求められる
(3)検査機関によっては、パネルの内容が、その機関の定めた定型のパネルであったり、表現型ごとに定めたものの中で臨床医の指定した遺伝子を含む定型のエクソーム解析であったりすることがある。
(4)パネルに対して適用される手法には、配列解析、欠失/重複解析、ないしその他の非配列ベースの検査などがある。本疾患に関しては、欠失/重複解析を含むマルチ遺伝子パネルの使用が推奨される(表1参照)。

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表1:脊髄性筋萎縮症で用いられる分子遺伝学的検査
検査のタイプ 遺伝子1 その遺伝子の病的バリアントに起因するSMAの割合 その手法で検出される病的バリアント2の割合
配列解析3 遺伝子標的型欠失/重複解析4
診断,保因者診断,出生前診断 SMN1 100%近く 2%-5%5 95%-98%6,7
予後判定 SMN2 対象外 対象外 脚注8参照
  1. 染色体上の座位ならびにタンパク質に関しては、表A「遺伝子とデータベース」を参照。
  2. この遺伝子で検出されているアレルバリアントの情報については、「分子遺伝学」の項を参照のこと。
  3. 配列解析を行うことで、benign、likely benign、uncertain significance、likely pathogenic、pathogenicの変異が検出される。変異の種類は、遺伝子内の小欠失/挿入、ミスセンス・ナンセンス・スプライス部位変異などがあるが、通常、exonまたは遺伝子全体の欠失/重複は検出されない。配列解析の結果の解釈に際して留意すべき事項についてはこちらをクリック。
  4. 遺伝子標的型欠失/重複解析では、遺伝子内の欠失や重複が検出される。
    具体的手法としては、単一exonの欠失や重複を検出することを目的した定量的PCRやMLPA法などがある。
    SMN1SMN2はほぼ相同であるため、SMN1SMN2のコピー数を調べる目的で遺伝子標的型マイクロアレイを用いることはできない。
  5. 遺伝子内病的バリアント1つと、SMN1の中の少なくともexon 7を含む欠失との複合ヘテロ接合を有する2%-5%の例がこれで検出される[Parsonsら1998,Wirth 2000]。
  6. Bussagliaら[1995],Lefevreら[1995],Parsonsら[1996],Hahnenら[1997],McAndrewら[1997],Talbotら[1997],Ogino & Wilson [2002]
  7. 人口の5%-8%は、1本の染色体上にSMN1が2コピー存在する一方で、他方の染色体のSMN1は欠失する[2+0]型として知られる状態を有しているため、偽陰性が生じる場合がある。サハラ砂漠以南に起源をもつ人には[2+0]型が高頻度にみられる[Verhaartら2017](「保因者の特定」の中の「保因者検査の結果の解釈」の項を参照)。
  8. 注:分子遺伝学的検査でSMAの診断が確定した例については、表現型に関する情報を追加で収集する目的でSMN2の遺伝子標的型欠失/重複解析を行うことも可能である。SMN2のコピー数は0から5まで幅がみられる。
    定量的PCRとMLPA法は、SMN1SMN2両方のコピー数を調べられるよう設計されることが多い[Anhufら2003,Arkbladら2006,Scarciollaら2006](「遺伝型-表現型相関」の項を参照)。

保因者の特定を目的とした検査

これについては、「遺伝カウンセリング」の項で述べる。


臨床的特徴

臨床像

脊髄性筋萎縮症(SMA)は、脊髄前角細胞(下位運動ニューロン)と脳幹神経核に生じる進行性変性と不可逆的喪失に起因して、筋力低下と筋萎縮が生じる疾患である。発症時期は、出生前から成人期まで幅がみられる。筋力低下は対称性に生じ、遠位筋より近位筋に顕著で、進行性である。

分子遺伝学的診断が登場する以前から、SMAを個別の病型に分類する試みがなされてきた。しかし、近年では、SMAの表現型は1つの幅広い連続体を形成し、そこに病型ごとの明確な境界は存在しないことが明らかになっている。加えて、新たに承認された治療の選択肢(「臨床的マネジメント」の中の「症候に対する治療」にある表7を参照)がSMAの各病型の自然歴を変化させ、相互の境界はさらに不明瞭になってきている[Tizzano & Finkel 2017]。それでもなお、発症年齢と、支持療法のみで達成しうる最高到達運動機能を基準とする病型分類(表2)は、予後判定上や臨床的管理上、一定の有用性を保っている。

表2:発症時点におけるSMAの表現型のスペクトラム
表現型 発症年齢 寿命1 到達運動機能1 その他の所見1
SMA0型 胎児期 数週間,6ヵ月未満 なし
  • 新生児期の重度の筋緊張低下
  • 重度の筋力低下
  • 腱反射消失
  • 出生時における呼吸不全
  • 顔面筋麻痺
  • 胎動減少
  • 心房中隔欠損
  • 関節拘縮症
SMAⅠ型 6ヵ月未満 生存期間の中央値は8-10ヵ月 頚定獲得の児もあり、独座不可能
  • 頚定喪失
  • 軽度の関節拘縮
  • 顔面の筋力低下は無いか軽度
  • 哺乳障害・嚥下障害
SMAⅡ型 6-18ヵ月 25歳時点で70%が生存 座らせた時に独座可能、独歩不可能
  • 運動機能の喪失を伴う発達遅滞
  • 深部腱反射の減弱もしくは消失
  • 近位筋の筋力低下
  • 手指の姿勢時振戦
SMAⅢ型 18ヵ月以降 正常 独歩可能
  • 近位筋の筋力低下
  • (階段昇降困難、走行困難)
  • 運動機能の喪失
  • 易疲労
  • 手指の姿勢時振戦
  • 膝蓋腱反射の消失
SMAⅣ型 成人期 正常 正常
  • 易疲労
  • ・近位筋の筋力低下
  1. 支持療法のみの場合

SMA0型
SMA0型は、出生時に重度の筋力低下、筋緊張低下、呼吸窮迫を呈する。子宮内における胎動減少の既往や、関節拘縮、心房中隔欠損がみられる場合もある。SMA0型は重度の呼吸困難/呼吸不全を呈し、支持療法単独の場合、6ヵ月を超えて生存することは稀である[Dubowitz 1999,MacLeodら1999]。SMA0型の乳児については、ヌシネルセン治療や遺伝子治療を行った論文報告はない(表7参照)。

SMAⅠ型
SMAⅠ型は、生後6ヵ月未満の段階で、顕著な筋力低下と運動発達の退行がみられる。
症状の平均初発年齢は2.5ヵ月である[Linら2015]。頚定し、寝返りができた乳児も、その後急速に不可能になる。支持療法単独の場合、独座を達成できない。近位筋の対称性の筋力低下、運動機能の退行を伴う運動発達の欠如、深部腱反射の減弱または消失、筋緊張の低下が、主症状である。膝の関節拘縮がしばしばみられ、肘の関節拘縮がみられる場合もある。

支持療法単独の場合、全例ではないが、ほとんどの乳児に舌の線維束性収縮がみられる。初期には顔面筋は比較的保たれているが、新生児期あるいは生後数ヵ月以内に球筋の筋力低下がみられ、しばしば哺乳・嚥下の問題が生じる。そして、発育不全や反復性誤嚥を起こす。横隔膜筋群が比較的保存される一方で、肋間呼吸筋には筋力低下が生じるため、胸郭はベル型(釣鐘型)となり、奇異呼吸(腹式呼吸)がみられる。横隔膜は本疾患の進行の後期まで保たれている。認知機能は正常である。人工呼吸器使用下で長期生存が得られた複数の症例の研究で、重度の症候性徐脈が認められている[Bach 2007]。

I型小児の前向き研究で、生存期間の中央値は、支持療法単独の場合、24ヵ月である[Oskouiら2007]。より近年の研究で、死亡に至る、もしくは1日16時間超の人工換気が必要になるまでの期間の中央値は、8-13.5ヵ月であった[Finkelら2014,Kolbら2017]。呼吸管理と栄養補助を先手で行うことで、生存期間は改善しつつある[Grychtolら2018]。有効性の高い治療法が登場し、特に、発症前に治療開始することで、I型の自然歴は今まさに変化しつつある(表7参照)。

SMAⅡ型
SMAⅡ型は、生後6ヵ月から12ヵ月の間に症状が出現する。症状の平均初発年齢は8.3ヵ月である[Linら2015]。筋緊張低下は、出生時あるいは生後数ヵ月以内に明らかになることが多いが、5歳頃まではゆっくり運動機能の発達が続く。支持療法単独の場合、最高到達運動機能は独座までである。その後は次第に運動機能が低下し、独座不可能となる平均年齢は、10歳代半ばである[Mercuriら2016]。手の振戦が多くみられる。深部腱反射は、減弱又は消失する。疾患の進行に伴い、脊柱側彎がよくみられる。認知機能は正常である。心臓の異常が現れることは少ない[Finkelら2018]。進行性の呼吸筋の筋力低下により、拘束性肺疾患が生じ、これがⅡ型の人々の罹患率と死亡率に関係してくる。

支持療法単独の場合のⅡ型の人々の寿命については、正確には不明である。ドイツとポーランドの240例の報告で、25歳の時点で68%が生存していた[Zerresら1997]。立位能力を有無が、呼吸機能や寿命に関係している。しかし、このような自然歴は、新たな治療法の登場とともに改善される可能性が高い(表7参照)。

SMAⅢ型
SMAⅢ型は、生後18ヵ月以降に症状が現れ、発症年齢の平均値は39ヵ月±32.6ヵ月である[Linら2015]。上肢よりも下肢の障害が強い。支持療法単独の場合、自立歩行は可能だが、近位筋の筋力低下のために、転倒や階段昇降の困難が頻発する。易疲労が生活の質と機能を障害することがある。

支持療法単独の場合、6歳頃までは運動機能が向上し、その後、思春期頃にかけてゆっくりと機能低下が進む。思春期(20歳近くまで)に、より急速な形で機能低下が生じる場合もある。

支持療法単独の場合、成人期には機能低下の速度がそれまでよりさらに緩やかになる[Montesら2018]。一旦歩行能力を獲得するが、その後大多数は歩行能力を喪失する。3歳未満に発症した例の多くは、10歳代で歩行機能を喪失する。3歳から12歳の間に発症した例では、30歳代から歩行機能を喪失する例もみられる[Wadmanら2017]。
呼吸筋の筋力低下はほとんどみられない。また、心機能や認知機能も正常である。支持療法単独で治療が行われたドイツとポーランドの後ろ向き研究で、SMAⅢ型329人の寿命は、一般集団と変わらなかった[Zerresら1997]。このような自然歴は、新たな治療法の登場により改善される可能性が高い(表7参照)。

SMAⅣ型
SMAⅣ型は、10歳代か20歳代に筋力低下が現れる。骨格筋障害には特有のパターンがあり、三角筋、上腕三頭筋、大腿四頭筋の障害が強い。膝蓋腱反射が消失するが、上肢やアキレス腱の深部腱反射は残ることがある。手指の振戦を呈する例もみられる。心機能や認知機能は正常である。支持療法単独の場合の所見は、SMAⅢ型の場合とおおむね同じか、やや軽くなる。歩行機能の喪失は、起きても40歳代以降であることが多い[Braheら1995,Clermontら1995,Zerresら1997,Wadmanら2017]。寿命は正常である。SMAの中でⅣ型は最も少ないタイプで、SMA全体の中で占める割合は5%未満である[Kolbら2017]。

合併症

支持療法のみを受けているSMAの人に多くみられる合併症は、発育不全を伴う体重増加不良、拘束性肺疾患、脊柱側彎、関節拘縮、睡眠障害などである。発症直後ないし発症前に標的治療を受けた症例に、長期的合併症が生じるかという点に関しては、現時点で不明である。

栄養/消化器

呼吸器
支持療法単独の場合、Ⅰ型とⅡ型の子ども(稀にはⅢの子どもも)は、呼吸筋の筋力低下、胸郭の狭小化と肺コンプライアンスの低下、肺胞増殖の低下のために肺機能の進行性の低下が生じる[Chngら2003]。

整形外科
合併症として、脊柱側彎、股関節脱臼、関節拘縮が多くみられる。
脊柱側彎はⅡ型の大多数、ならびにⅢ型の半数で大きな問題となる。支持療法のみの場合は、以下の状況に至る。

代謝
原因不明の合併症の1つとして、病気の併発や長時間の絶食に際しての、ジカルボン酸尿と血清カルニチン濃度低下を伴う重度の代謝性アシドーシスがある[Kelley & Sladky 1986]。

予後

新しい疾患修飾治療(表7参照)が利用可能になることで、今後、本疾患の自然歴が書き替えられると予想される。さらには、発症前に新生児スクリーニングで診断がなされることと疾患修飾治療とが相まって、将来は本疾患の罹患率や死亡率が低下していくと思われる。

遺伝型-表現型相関

SMN1
SMN1の病的バリアントのタイプと疾患の重症度との間に、特段の相関はみられない。
ホモ接合性のexon7の欠失は、すべての表現型で同じような頻度で確認される。

SMN2
SMN2から生じる少量(4分の1以下)の完全長転写産物は、機能を有するタンパク質を産生し、軽症型であるⅡ型やⅢ型の表現型となって現れる。SMN2のコピー数(遺伝子量)(各染色体上にシス配置でタンデム型の配列を示す)は0から5までの範囲にある(「分子遺伝学」の項を参照)。SMN2が2コピーの場合、約80%の確率でⅠ型の表現型となり、SMN2が4コピー以上の場合は、約88%の確率で支持療法単独で歩行が達成される(Ⅲ型/Ⅳ型)[Caluchoら2018]。SMN2が3コピーの場合は臨床的な重症度に大きな幅がみられ、複数の修飾因子が関与している可能性が高い。Caluchoら[2018]のデータの概要を表3に示した。

表3:SMN2のコピー数とSMAの臨床的表現型の関連
SMN2
コピー数
SMAの臨床的表現型1

I型

Ⅱ型2

Ⅲ型/Ⅳ型3

1

96%

4%

0%

2

79%

16%

5%

3

15%

54%

31%

4以上4

1%

11%

88%

Caluchoら[2018]より引用。

  1. 支持療法単独の場合の臨床的表現型。
  2. 支持療法単独の場合、最高到達運動機能は独座。
  3. 支持療法単独の場合、歩行は達成されるものの、それを維持できないことがある。
  4. Priorら[2004]は、SMN1がホモ接合性欠失、SMN2は5コピーを有する血縁関係のない3人の無症状例を報告している。これは、SMN2を5コピー有するときの発現レベルが、SMN1の発現が失われた状態を補償しうる量であることを示している。

その他の表現型の修飾因子

疾患名

Ⅰ型はかつて、Werdnig-Hoffmann病、あるいは急性脊髄性筋萎縮症と呼ばれていた[Hoffmann 1892,Werdnig 1971]。
Ⅱ型は、現在の分類法が用いられる以前、慢性脊髄性筋萎縮症、あるいはDubowitz病と呼ばれていた。
Ⅲ型は、「Kugelberg-Welander病」病、あるいは若年型脊髄性筋萎縮症と呼ばれていた[Kugelberg & Welander 1956]。
Ⅳ型は、思春期発症型脊髄性筋萎縮症、あるいは成人発症型脊髄性筋萎縮症と呼ばれていた。

有病率

正確な有病率は不明である。SMAの有病率に関する過去の研究は、遺伝学的確認がなされていないものが多いため数が限られており、かつ、重症型のものは生存期間が短いため評価から漏れていることが考えられる。SMAの全体としての有病率は、100,000人あたり1人ないし2人とされている[Verhaartら2017]が、血族結婚の割合が高い地域あるいはグループでは、SMAの発生率はそれよりも高い可能性がある。
訳者注:[Itoら2022]が、日本での発生率は、10,000人あたり0.51人、有病率は100,000人あたり1.17人と報告している。

表4:保因者頻度とSMAの発生率
集団 保因者頻度 発生率の推定値
アラブ系 1:59 報告なし。
アジア系 1:48 1:8,009
インド系 1:71 1:9,655
黒人(サハラ砂漠以南の起源) 1:100 1:18.808
白人 1:45 1:7,829
ヒスパニック系 1:77 1:20,134
ユダヤ系 1:56 1:10,000

Verhaartら[2017]より引用。


遺伝学的関連疾患

SMN1の病的バリアントに関連して生じるものとしては、本GeneReviewで述べたもの以外の表現型は知られていない。


鑑別診断

表5:脊髄性筋萎縮症との鑑別診断を検討すべき疾患
発症年齢 疾患名 遺伝子あるいは領域 遺伝形式 鑑別対象疾患でみられる臨床症候
SMAと重なる症候 SMAと異なる症候
先天性もしくは生後6ヵ月未満 X連鎖性乳児型SMA UBA1 XL 筋緊張低下
筋力低下
腱反射消失
先天性多発性関節拘縮
子宮内骨折
呼吸窮迫を伴う脊髄性筋萎縮症1型(SMARD1)1(OMIM 604320) IGHMBP2 AR 筋力低下
呼吸不全
腱反射の減弱あるいは消失
遠位筋により顕著な筋力低下
横隔膜麻痺
GARS1関連乳児発症型SMA2(OMIM 619042) GARS1 AD 筋緊張低下
筋力低下
腱反射消失
横隔膜麻痺
感覚障害
Prader-Willi症候群 15q11.2-q133 脚注3参照 筋緊張低下
摂食障害
呼吸不全は稀
筋強直性ジストロフィー1型 DMPK AD 筋緊張低下,筋力低下 顕著な顔面筋の筋力低下
先天性筋ジストロフィー 多数の遺伝子 AR
AD
筋緊張低下,筋力低下 中枢神経系と眼の病変,筋緊張亢進が現れる可能性
Zellwegerスペクトラム障害 PEXファミリー遺伝子 AR 筋緊張低下 肝脾腫,中枢神経系の病変
先天性筋無力症候群 CHAT
CHRNE
COLQ
DOK7
GFPT1
RAPSN 4
AR
AD
筋緊張低下 眼筋麻痺,眼瞼下垂,一時的な呼吸不全
Pompe病 GAA AR 筋緊張低下 心拡大
その他:先天性ミオパチー5,代謝性/ミトコンドリアミオパチー6,末梢性ニューロパチー7
生後6ヵ月超 ボツリヌス症 対象外 対象外 近位筋の筋力低下,腱反射の減弱 顕著な脳神経麻痺,急性発症
小児期後期 Guillain-Barré症候群 対象外 筋力低下 亜急性発症,感覚障害
Duchenne型筋ジストロフィー DMD XL 筋力低下,運動機能の退行 血清クレアチンキナーゼ濃度が正常の10-20倍
ヘキソサミニダーゼA欠損症(若年型,慢性型,成人発症型バリアント) HEXA AR 下位運動ニューロン疾患 緩徐な進行,進行性ジストニア,脊髄小脳変性症,認知/精神医学的病変
Fazio-Londe症候群(「リボフラビントランスポーター欠損症」のGeneReviewを参照) SLC52A2
SLC52A3
AR 進行性球麻痺 下位脳神経のみに出現;進行して1-5歳で死亡に至る。
一側上肢筋萎縮症(平山病)(OMIM 602440) 不明 筋力低下 主として頸髄;舌に病変が及ぶ場合あり(稀);他の脳神経は保存される。
その他:末梢性ニューロパチー7,筋ジストロフィー8
成人 球脊髄性筋萎縮症(Kennedy病) AR XL 近位筋の筋力低下,筋萎縮,線維束性収縮 徐々に進行;女性化乳房,精巣萎縮,妊孕性低下
筋萎縮性側索硬化症 多数の遺伝子9 AD
AR
XL
純粋に下位運動ニューロンのみの徴候として始まる場合あり。 進行性の神経変性;上位・下位の両運動ニューロンに病変が及ぶ。

AD=常染色体顕性(優性);AR=常染色体潜性(劣性);XL=X連鎖性

  1. SMARDは幅広い表現型のスペクトラムを有する[Guentherら2007]。
  2. GARS1の病的バリアントには、Charcot-Marie-Toothニューロパチー2D型(CMT2D)や遠位型脊髄性筋萎縮症Ⅴ型(dSMA-Ⅴ)の形で現れるものもある(「GARS1関連軸索型ニューロパチー」のGeneReviewを参照)。 CMT2DとdSMA-Ⅴは、思春期あるいは成人初期に独特のパターンの運動・感覚症候をもって発症する疾患で、発症年齢の範囲は8歳から36歳である。
  3. Prader-Willi症候群(PWS)は、15番染色体上のPWS/Angelman症候群クリティカル領域(15q11.2-q13)の父性インプリンティング遺伝子の発現が失われることに起因して生じる疾患で、その遺伝学的メカニズムにはいくつかのもの(父性アレルの欠失,母性片親性ダイソミー15,そして稀にインプリンティング異常)がある。
    PWS児の同胞の有するリスクは、15q11.2-q13領域の父性発現が失われるに至った遺伝学的メカニズムにより変わってくる。
  4. 現在では、神経筋接合部で発現するタンパク質をコードする複数の遺伝子の中の1つに生じた病的バリアントが、先天性筋無力症候群の各臨床病型に関連することがわかっている。
    表には、そのうちの代表的遺伝子のみを示した(「先天性筋無力症候群」のGeneReviewを参照)。
  5. 先天性ミオパチーについては、「X連鎖性中心核ミオパチー」のGeneReviewを参照。
  6. 代謝性/ミトコンドリアミオパチーについては、「糖原病Ⅰ型」「糖原病Ⅱ型」「糖原病Ⅲ型」「糖原病Ⅳ型」「糖原病Ⅴ型」「糖原病Ⅵ型」ならびに「ミトコンドリア異常症概説」のGeneReviewを参照。
  7. 末梢性ニューロパチーについては、「Charcot-Marie-Tooth遺伝性ニューロパチー概説」のGeneReviewを参照。
  8. 筋ジストロフィーについては、「ジストロフィン異常症」のGeneReviewを参照。
  9. 筋萎縮性側索硬化症」のGeneReviewを参照。

この表現型に関与する遺伝子を閲覧するには、OMIMのPhenotypic Seriesを参照。

特に骨盤位分娩の際などに生じる頸髄の外傷も、鑑別対象となる。

臨床的マネジメント

SMA罹患者の治療に関する詳細な推奨がすでに公表されている。Finkelら[2018](全文はこちら)、ならびにMercuriら[2018](全文はこちら)を参照されたい。新生児スクリーニングを通じて診断が行われた乳児に対する治療のアルゴリズムも公表されている[Glascockら2018](全文はこちら)。

最初の診断に続いて行う評価

SMAと診断された罹患者については、疾患の重症度やニーズを把握するため、多職種チームの存在する医療機関への紹介が必要である。病型にかかわらず、臨床的ケアのあり方は、個人個人の状態に基づいて決める必要がある。
検討を要する事項を表6に示した。

表6:脊髄性筋萎縮症罹患者の診断後に実施を検討すべき評価項目
系/懸念事項 評価 コメント
体格 成長パラメーターの評価 標準の成長チャート上にプロット。
消化器/摂食 摂食機能障害ならびに胃食道逆流症に関する評価
  • 誤嚥リスク1、栄養状態、食事完了までに要する時間の評価を含むものとする。
  • 嚥下障害、誤嚥リスクを有する例については、栄養チューブ留置に向けた評価を検討する。
便秘に関する評価  
呼吸器 パルスオキシメトリーとカプノグラフィーの評価 SMAに詳しい呼吸器科医への紹介を検討2
年齢に応じた努力性肺活量(FVC)の評価を検討
  • 4-6歳以上の子どもであれば、手持ち型肺活量計が正確である。
  • FVCが40%超であれば、FVCが40%未満の場合に比べ、呼吸器感染中の代償不全の可能性は低い。
小児呼吸器科医による気道クリアランス機能の評価  
睡眠検査の検討(睡眠ポリグラフ) Ⅰ型の全例と、Ⅱ型の中で、筋力低下の顕著な例と夜間の低換気を示すデータないし懸念がある例について行う。
筋骨格 整形外科,理学療法/リハビリテーション,理学療法士、作業療法士の評価 以下の評価を含むものとする。
  • 粗大運動能と微細運動能
  • 関節拘縮,股関節脱臼,脊柱側彎
  • 可動性,日常生活動作,障害者用機器3の必要性
  • 理学療法(粗大運動技能の改善目的)と作業療法(微細運動技能の改善目的)の必要性
血液学 血小板減少症および凝固異常の評価 ヌシネルセン(スピンラザ®;アンチセンスオリゴヌクレオチド)およびオナセムノゲン・アベパルボベック(ゾルゲンスマ® )の投与前(表7参照)。
雑/その他 臨床遺伝専門医ないし遺伝カウンセラーとの面談 遺伝カウンセリングを含む。
家族への支援/情報資源 以下に関し評価を行う。
  • 地域の情報資源やParent to Parentをはじめとするオンラインの情報資源の活用
  • 親への支援を目的としたソーシャルワーカーの関与の必要性
  • 在宅看護への紹介の必要性
  1. 正式な嚥下造影検査の検討を含む。
  2. Wangら[2007]
  3. 罹患者本人・介護者の生活の質の向上に資するような、電動いすその他の家庭用機器をはじめとする安全(カーシート/カーベッド)と自立のための設備に関し、評価を行う。

症候に対する治療

現在のところ、SMAの根治療法は存在しない。

標的治療:
GeneReviewsにおいて、標的治療とは、疾患の発症に関わる特定の根本的なメカニズムに作用する療法(その遺伝性疾患の1つ以上の症状に対して著しい有効性があるかどうかにかかわらず)、疾患の根本的な遺伝的原因が判明していなければ検討されなかったであろう療法、あるいは治癒につながる可能性のある療法を指す。—編者注
SMAの疾患発症メカニズムを標的にした3種類の疾患修飾治療法がすでに利用可能になっており、疾患の進行に一定の効果を有することが確認されている(表7参照)。同時に、これらの治療は、特に症状発現前の段階で治療を開始した場合、SMAの自然経過に対しても好影響を及ぼすものと考えられる[Finkelら2017,Mendellら2017,Finkelら2018,Mercuriら2018]。
新生児スクリーニングでSMAと判明した例に対し、いつの段階で標的治療を開始するかの判断は、その遺伝型と現れた症状に左右される[Glascockら2018]。まず、確認のためのSMN1の遺伝学的検査を行い、その後は以下のようにする。

表7:脊髄性筋萎縮症の標的治療1,2
機序 治療 用量 考慮事項
低分子化合物;SMN2誘導性RNAスプライシング修飾剤 リスジプラム(エブリスディ®)  3 年齢と体重に応じて、1日1回経口投与
  • 生後2ヶ月未満:0.15mg/kg
  • 生後2ヶ月~2歳未満:0.2mg/kg
  • 2歳以上で体重20kg未満の場合:0.25mg/kg
  • 2歳以上で体重20kg超の場合:5mg
  • Evrysdi®は、溶解後は冷蔵保存する必要がある。
  • 動物実験では、妊娠中の使用により、胎児死亡や子孫の生殖機能障害などの催奇形性作用が認められた。
アンチセンスオリゴヌクレオチド 4SMN2誘導RNAスプライシング修飾因子 ヌシネルセン (スピンラザ® )  5、6、7 治療計画: 8
  • 1回あたり12mg
  • 髄腔内投与による初期投与を14日ごとに計3回行う。
  • 4回目の初回投与は3回目の投与から30日後
その後、4ヶ月ごとに維持量を投与する。
  • 副作用は主に投与方法(腰椎穿刺)に関連する。
  • 血小板減少症/凝固異常および腎毒性についてモニタリングする。
SMN1のウイルス送達による遺伝子補充療法 オナセムノゲン・アベパルボベック-xioi(ゾルゲンスマ®;旧AVXS-101)  9 体重に基づいた投与量で体重1kgあたり1.1× 10¹⁴ベクターゲノム(vg)を1回静脈内注射する 9、10
  • FDAは、ゾルゲンスマ®について、重篤な肝障害および急性肝不全の可能性を指摘する黒枠警告を発令した(処方情報を参照のこと)。
    • 輸液前に肝機能検査を行うことを推奨
    • 既存の肝機能障害のある患者にこの治療法を施す際には、注意が必要
  • その他のリスクとしては、血栓性微小血管症やトロポニンI値の上昇などが挙げられる。
Onasemnogene abeparvovec-brve (Itvisma ® )
  • 2歳以上の患者に対する1回限りの硬膜外注射 10
推奨投与量は1.2 x 10¹⁴ベクターゲノム(vg)
  • 通常、経口コルチコステロイドは、Itvisma ®の髄腔内注射の1日前から投与を開始し、注射後30日間投与する(30日後には徐々に減量)。
  • FDAは、ゾルゲンスマ®について、重篤な肝障害および急性肝不全の可能性を指摘する黒枠警告を発令した(処方情報を参照のこと)。
    • 輸液前に肝機能検査を行うことを推奨
    • 既存の肝機能障害のある患者にこの治療法を施す際には、注意が必要
• その他のリスクとしては、血栓性微小血管症やトロポニンI値の上昇などが挙げられる。
  1. これは疾患修飾療法(DMT)とも呼ばれる。
  2. この表で説明されている治療法は、病気の原因となる根本的なメカニズムに対処することを目的としており、罹患した個人が経験する兆候や症状を具体的に治療するものではない(表8を参照)。
  3. Darras et al [2021]、Mercuri et al [2022]、Sitas et al [2024]
  4. アンチセンスオリゴヌクレオチドは、 SMN2 pre-mMRAのエクソン7の下流にあるイントロン内のISS-N1調節モチーフに特異的に結合するように設計された一本鎖RNA分子である[ Rigo et al 2014 ]。この部位への結合はエクソン7の取り込みを促進し、全長SMN mRNAの増加、ひいては全長生存運動ニューロン(SMN)タンパク質の増加につながる。
  5. SMA Iの乳児121人を対象としたヌシネルセンの二重盲検プラセボ対照第III相臨床試験では、ハマースミス乳児神経学的検査(HINE)で評価したところ、治療を受けた乳児の51%が新たな運動発達段階を獲得したのに対し、対照群では0%であった。さらに、イベントフリー生存率(「イベント」=死亡または永久的な人工呼吸器補助の必要性)は、対照群よりもヌシネルセン群の方が高く(ハザード比0.53、P=0.005)、全生存率も同様に高くなった(ハザード比0.37、P=0.004)[ Finkel et al 2017 ]。
  6. 遅発性SMAの小児126人を対象とした並行二重盲検プラセボ対照第III相試験では、ヌシネルセンを投与された患者は対照群と比較して運動機能に有意かつ臨床的に意義のある改善が見られた[ Mercuri et al 2018 ]。
  7. すでに症状が出ている患者に対するヌシネルセンによる治療の有効性は完全には解明されていない[ Shorrock et al 2018、Gidaro & Servais 2019 ]。
  8. Shorrock et al [2018]
  9. SMA Iの患者15人を対象とした第I相試験では、15人全員が20か月時点でイベントフリー生存(「イベント」=死亡または永久的な人工呼吸器補助の必要性)を示したのに対し、過去の対照群ではわずか8%であった。治療を受けた患者は運動発達のマイルストーンの改善と、客観的な運動機能スケールのベースラインからの増加を示した[ Mendell et al 2017 ]。
  10. ゾルゲンスマ®もItvisma®も、すでに失われたり変性したりした運動ニューロンを再生することはできない。

支持療法
SMAを有する子どもの支持療法は、病型を参考に、個人の運動機能(独座不可能か、独座可能か、独歩可能か)で個別化していく必要がある[Finkelら2018]。特定の合併症の発症する割合ならびにその重症度は、病型や、標的治療の開始が発症前か発症後かといった要素により異なる[Shorrock et al 2018](表8参照)。

表8:脊髄性筋萎縮症患者の症候に対する支持療法
症候/関連事項 治療 考慮事項/その他
球筋機能不全とそれに続く体重増加不良 胃瘻留置と栄養補充
  • 治療を受けていないSMA患者のほとんどは、12ヵ月齢以内に胃瘻が必要になる1
  • 嚥下障害や球筋機能不全の徴候・症候がみられるときは、臨床的摂食評価と嚥下造影検査の実施基準を低くする。
肥満 定常的栄養評価  
胃食道逆流症 標準治療  
腸機能不全 必要に応じ、便軟化剤、消化管運動機能改善薬、浸透圧性薬剤、下剤を使用。 便秘がみられる場合。
呼吸不全に対する選択肢2, 3, 4 呼吸支援なし、ないし緩和ケア 家族の選択次第では、1つの選択肢となる。
気道クリアランス策、ならびに気道分泌管理5
  • 特に急性疾患の際には、吸引と組み合わせた排痰補助装置の使用や胸部理学療法
  • 分泌物の吸引、薬剤の慎重な投与
  • SMAも含めた神経筋疾患をもつ子どもの治療にあたっては、呼吸器合併症予防の観点から排痰補助装置が有用と思われる。
BiPAP(二相性陽圧呼吸療法)などの非侵襲的換気5
  • 酸素飽和度の低下や、閉塞性睡眠時無呼吸などの低換気状態がみられる例6
  • Ⅰ型とⅡ型の患者で睡眠時の呼吸パラメーターが改善することが示されている7
  • BiPAPにより胸郭や肺の発達が改善することが考えられ、肺感染症や肺合併症の減少にもつながる可能性がある。
気管切開と恒久的人工呼吸 重症の罹患乳児に対する侵襲的換気の使用に関する倫理的問題に対処する必要がある8。
進行性脊柱側彎 整形外科医による外科的な標準治療
  • 彎曲が20°超の場合は、外科的介入に先立って体幹装具の使用が一般的9
  • 脊椎手術に際しての重要な考慮事項:将来、髄腔内投与を行う可能性を見越して、開口部を残しておく10
垂直拡張型人工チタン肋骨(VEPTR)の使用を検討する11 重度の脊柱側彎の例。
磁気制御式脊椎ロッド(MGR)の使用を検討する。
  • 体外のコントローラーを用いて外来診療で徐々に延長を進める12
  • 複数回の手術を要する可能性がある13
股関節脱臼 疼痛のある例には手術を検討する。 無症状の例については、手術は行わない14
疾患併発時の代謝性アシドーシス 早期に静脈内輸液・グルコース輸液を行う形での支持療法 長時間の絶食は避ける。
家族/地域社会 家族を地域の情報資源、休息、支援へと結びつけられるよう、ソーシャルワーカーが適切な形で関与できる態勢にする。 緩和ケアや在宅看護の必要性を継続的に評価していく。
複数のサブスペシャルティの予約、機器、薬剤、物品の管理を行うためのケアを調整する  
  1. 支持療法単独の場合[Finkelら2014]。
  2. 罹患者の肺機能改善につながる可能性のある標的治療の選択肢については、表7を参照されたい。
  3. 各選択肢については、実際に呼吸不全が生じる前の段階で、両親/介護者とよく話し合っておくことが必要である。
  4. 用いる呼吸支援のタイプは、個々の例の呼吸の状態、QOLの目標、機器へのアクセスといった条件により変わってくる。
  5. 肺機能に対する非侵襲性の介入は、いずれの病型のSMAであっても、取り入れていく必要がある。
  6. Chatwinら[2003],Miskeら[2004]
  7. Petroneら[2007]
  8. Finkelら[2018],Grychtolら[2018]
  9. SMAにおける脊柱側彎に対する体幹装具の有効性については、データが不足している。
  10. Mercuriら[2018]
  11. Chandranら[2011]は、Ⅰ型とⅡ型の子ども11人にVEPTRを使用し、初回手術後、平均43ヵ月間追跡した報告を行っている。手術時平均年齢は6歳であった。手術関連の合併症は確認されなかった。医学的合併症は2例にみられ、術後肺炎と貧血であった。
  12. 神経筋疾患の少数の罹患者(うち2人がSMA)を対象として、MGRと肺機能を評価した報告がみられる。脊柱変形矯正術後の罹患者は、努力肺活量とFEV1(1秒間の努力排気量)に改善がみられ、合併症はごくわずかであった[Yoonら2014]。
  13. Finkelら[2018]
  14. Sporer & Smith [2003]

定期的追跡評価

標的治療や支持療法の適切な開始時期を見極めることを目的として、発症前の患者については、症状の発現状況に関するモニタリングが必要である。発症前の乳児の評価を目的とした治療のアルゴリズムがすでに公表されている[Glascockら2018]。SMN2を5コピー持つ無症状患者は、標的療法および/または支持療法を開始する適切な時期を判断するために、症状の発現を注意深く観察する必要がある。
標的療法ごとに継続的な経過観察に関する推奨事項が急速に変化しているので、標的療法を受けている患者には、処方情報および添付文書を確認することが勧められる。標的療法に関連する潜在的な副作用や新たな表現型が次々と明らかになっている。
SMA罹患者は、少なくとも6ヵ月に1度は評価を行う。筋力低下の顕著な例については、さらに高頻度に評価を行う。
来院ごとに行う多職種のサーベイランスとしては、栄養状態、呼吸機能、整形外科的状態(脊椎,股関節,関節可動域)の評価などがある。

避けるべき薬剤/環境

特に、急性の合併症がみられるSMA乳児については、長時間の絶食を避ける[Mercuriら2018]。

リスクを有する血縁者の評価

標的治療や予防処置を迅速に開始することで利益が得られる人を可能な限り早期に特定することを目的として、罹患者より年下の同胞で、見かけ上、無症状の人に対しては、その遺伝学的状態を確認しておくことが望ましい。
リスクを有する血縁者に対して行う遺伝カウンセリングを目的とした検査関連の事項については、「遺伝カウンセリング」の項を参照されたい。

妊娠に関する管理

これまでに、SMA女性の妊娠経験を調査したいくつかの論文[Awaterら2012,Elsheikhら2017,Bencivengaら 2023]が報告されており、神経筋疾患の妊娠に関する国際ワークショップ[Norwood & Rudnik-Schöneborn 2012]も開催されている。SMA女性は、非罹患女性に比べ、早産の割合(27%)や帝王切開を要する割合(41~100%)が高い[Awaterら2012,Elsheikhら2017,Bencivengaら 2023]。SMA女性は、全身麻酔より局所麻酔が選択されるものの、重度の脊柱側彎を有する例や脊椎固定術のなされた例については、硬膜外麻酔が難しいことがある[Awaterら2012,Finkelら2018]。さらに、分娩後に全身の筋力に恒久的悪化をきたすような例もみられ(32%)[Awaterら2012,Elsheikhら2017]、特に妊娠のために疾患修飾療法が中止された場合にその傾向が顕著である。母体の高炭酸ガス血症と低酸素血症を伴う重度の呼吸窮迫により妊娠26週で死産に至った1例が存在する[Awaterら2012]。SMAを含めた神経筋疾患を有する女性については、呼吸不全のリスクがあることから、妊娠前にベースラインの肺機能を記録しておくとともに、妊娠中も頻繁にモニタリングを行うことが推奨される[Norwood & Rudnik-Schöneborn 2012]。

妊娠中の女性におけるヌシネルセンの使用に伴う発達リスクに関する十分なデータはない。ヌシネルセンを妊娠および授乳期間を通してマウスに皮下注射で投与したところ、試験したすべての用量で発達毒性(長期的な神経行動障害)が観察された。ヌシネルセンによる治療中に妊娠した症例が1件報告されている[ Schön ら 2023 ]。二絨毛膜二胎妊娠が確認された後、妊娠12週でヌシネルセンによる治療が中止された。ヌシネルセンがヒトの母乳中に排泄されるかどうかは不明である。
リスジプラムによる治療中または治療後にヒトの妊娠が報告された例はない。妊娠動物を用いた研究では、胎児死亡、奇形、生存した子孫の生殖機能障害などの催奇形性が認められている。動物実験の結果に基づき、妊婦へのリスジプラムの使用は避けるべきである。リスジプラムがヒトの母乳中に排泄されるかどうかは不明だが、授乳中の動物の乳汁中には排泄される。

脊髄性筋萎縮症(SMA)の妊婦にオナセムノゲン・アベパルボベック-xioiまたはオナセムノゲン・アベパルボベック-brveを投与した症例は報告されていない。妊娠中にオナセムノゲン・アベパルボベック-xioiを使用した場合の生殖リスクや胎児毒性の可能性を評価する動物実験は実施されていない。

研究段階の治療

すでに承認のなされた前述の治療薬に関するさらなる研究を含め、数多くの種類の治療的アプローチが現在、開発途上にある。前臨床および臨床開発段階にある治療法の一覧については、Cure SMAが管理するSMA治療薬パイプラインを参照のこと。

SMN2標的型の治療アプローチ
このカテゴリーの治療アプローチは、exon 7を含む転写産物の比率を高めることで完全長のSMNタンパク質を増加させることを目的として、SMN2のスプライシングを変化させることを狙ったものである。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SMN2転写産物における相補的配列を標的とし、exon 7が組み込まれるように設計された一本鎖RNA分子である。ヌシネルセンとリスジプラムは、この機序を介して作用する。

SMN非依存型治療アプローチ
SMA罹患者の筋力増強に作用する分子も、現在、研究途上にある。
レルデセムチブは、筋力出力の増加を引き起こすとされるトロポニン複合体活性化剤である[ Andrews et al 2018 ]。この分子は、SMA II~IVの患者を対象とした第II相臨床試験( NCT02644668 )で研究された。この研究の結果はまだ公表されていない。
現在、少なくとも3種類のミオスタチン阻害剤が脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療薬として臨床試験段階にある。結果はまだ公表されていないが、長期延長試験が進行中である。

さまざまな疾患・状況に対して進行中の臨床試験に関する情報については、アメリカの「Clinical Trials.gov」、ならびにヨーロッパの「EU Clinical Trials Register」を参照されたい。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝学的検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的、倫理的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」 -編集者注

遺伝形式

脊髄性筋萎縮症は、常染色体潜性(劣性)の遺伝形式をとる。

家族構成員のリスク(常染色体潜性遺伝)

発端者の両親

発端者の同胞 

発端者の子

他の家族構成員

発端者の両親の同胞は、SMN1の病的バリアントの保因者であることに関し、50%のリスクを有する。

保因者の特定

以下のような場合には、保因者かどうかを調べる分子遺伝学的検査を行うことが推奨される。

注:アメリカ臨床遺伝ゲノム学会(ACMG)とアメリカ産婦人科学会(ACOG)は、SMAの家族歴の有無にかかわらず、受胎前の段階でSMAに関する保因者スクリーニングの施行を推奨している(「集団スクリーニング」の項を参照)。

保因者検査の結果の解釈

SMN1のホモ接合性欠失を有するSMA罹患児の両親のうちの約6%は、以下の2つの理由から、SMN1の遺伝子量を調べる検査では、正常という結果が出る。

保因状態の確認
分子遺伝学的検査でSMAと診断された子どもの両親
子どものSMN1の両コピーに、exon 7の欠失が確認されている場合は、最初に、両親に対してSMN1の遺伝子量解析を行う。

(2)SMA罹患児の両親のうち、一方の5番染色体にSMN1が2コピーあり、他方の5番染色体にSMN1がない(すなわち、SMN1が[2+0]の遺伝型である)片親に保因者の子どもがあった場合、こちらの片親からSMN1が0コピーの染色体を継承し、保因者である他方の親からSMN1のexon 7の欠失あるいはSMN1の遺伝子内病的バリアントを継承する可能性があることから、その子どもはSMAに関し25%のリスクを有することになる。

子どものSMN1のうちの1コピーがexon 7の欠失、他方の1コピーが遺伝子内病的バリアントであることが確認された場合は、両親に対しSMN1の遺伝子量解析を行う。

SMAが疑われたものの分子遺伝学的検査はされないまま逝去した子どもの両親

最初のステップとして、筋生検(パラフィン包埋済のものでも可)や新生児スクリーニングの際の血液スポットなど、何らかの利用可能な子どもの組織サンプルが残っている場合は、そうしたサンプルから分子遺伝学的検査に必要な十分量のDNAが得られることも多いので、まずそれを用いて検査を試みる。
DNAが得られない場合は、SMN1の遺伝子量解析を両親に対して行う。

集団スクリーニング

複数の国内医師団体が、SMAの家族歴を有しない人に対しても、受胎前の段階でSMAに関する保因者スクリーニングを行うことを推奨している。SMAの家族歴がない人に対する保因者スクリーニングとしては、SMN1の遺伝子量解析が求められている。この検査でSMN1を少なくとも2コピー有していることが判明した場合、保因者である確率は約670分の1である(同一染色体上に2コピーのSMN1がみられる頻度が2%であることと、SMN1の遺伝子内病的バリアントの保因者であるわずかなリスクを勘案)。
注:一般集団では、たいていの人が1本の染色体上にそれぞれ1コピーのSMN1を有している([1+1]状態)。ところが、集団の5%-8%は、片方の染色体上にSMN1を2コピー有する一方で、他方の染色体ではこれが欠失する[2+0]と言われる状態を有している。サハラ砂漠以南に起源をもつ黒人は、[2+0]状態の比率が高く、他の集団に比べ、検出率が低下する(70%)[Verhaartら2017]。SMN1が[2+0]の例については、最も一般的に用いられている保因者検査の手法では、偽陰性のスクリーニング結果が出ることになる。


関連する遺伝カウンセリング上の諸事項

リスクを有する血縁者に対して行う早期診断・早期治療を目的とした評価関連の情報については、「臨床的マネジメント」の中の「リスクを有する血縁者の評価」の項を参照されたい。

家族計画

DNAバンキング

検査方法論や遺伝子、病原性メカニズム、疾患に関する理解は将来的に向上する可能性が高いため、分子診断が確定していない被験者(すなわち、原因となる病原性メカニズムが不明な被験者)のDNAをバンクに保存することを検討すべきである。詳細については、Huang et al [2022]を参照のこと。

出生前検査ならびに着床前遺伝学的検査

高リスクの妊娠

両親のもつSMN1の病的バリアントが判明した、あるいは、家系内での連鎖が確立した場合は、SMAに関する出生前検査や着床前遺伝学的検査が可能である[Moutouら2003,Malcovら2004]。先に生まれた罹患同胞と同じ遺伝型(すなわち、分子遺伝学的検査の結果が同じ)を有する胎児であれば、臨床所見も同様であると思われるものの、表現型の現れ方には家系内でもばらつきの幅がある可能性がある。
出生前の検体でSMN2のコピー数を確定しておくことが、罹患児の表現型のより正確な予測につながるものと思われる。
注:検査結果の解釈や罹患児に現れる臨床所見の予測は容易ではない。
そのため、こうしたことは、正式な遺伝カウンセリングの場でのみ行うようにすることが必要である。

低リスクの妊娠

SMAに関しリスクが増加するとはされていないものの、胎動の減少を示す胎児については、SMA、ならびに「鑑別診断」の項で述べた各種疾患を検討する必要がある[MacLeodら1999]。


関連情報

GeneReviewsスタッフは、この疾患を持つ患者および家族に役立つ以下の疾患特異的な支援団体/上部支援団体/登録を選択した。GeneReviewsは、他の組織によって提供される情報には責任をもたない。選択基準における情報についてはここをクリック。


分子遺伝学

分子遺伝学とOMIMの表の情報はGeneReviewsの他の場所の情報とは異なるかもしれない。表は、より最新の情報を含むことがある。

表A:脊髄性筋萎縮症:遺伝子とデータベース
遺伝子 染色体上の座位 タンパク質 Locus-Specificデータベース HGMD ClinVar
SMN1 5q13​.2 運動神経細胞生存タンパク質 alsod/SMN1 genetic mutations
SMN1 homepage - Leiden Muscular Dystrophy pages
SMN1 SMN1
SMN2 5q13​.2 運動神経細胞生存タンパク質 alsod/SMN2 genetic mutations
SMN2 database
SMN2 SMN2

データは、以下の標準資料から作成したものである。
遺伝子についてはHGNCから、染色体上の座位についてはOMIMから、タンパク質についてはUniProtから。
リンクが張られているデータベース(Locus-Specific,HGMD,ClinVar)の説明についてはこちらをクリック。
訳者注:ALSoD/SMN1 genetic mutationsは見つかりません。
SMN2 databaseはSMN2 homepage – Leiden Muscular Dystrophy pages

表B:脊髄性筋萎縮症関連のOMIMエントリー(内容の閲覧はOMIMへ)
253300 SPINAL MUSCULAR ATROPHY, TYPE I; SMA1
253400 SPINAL MUSCULAR ATROPHY, TYPE III; SMA3
253550 SPINAL MUSCULAR ATROPHY, TYPE II; SMA2
271150 SPINAL MUSCULAR ATROPHY, TYPE IV; SMA4
600354 SURVIVAL OF MOTOR NEURON 1; SMN1
601627 SURVIVAL OF MOTOR NEURON 2; SMN2
602595 GEM NUCLEAR ORGANELLE-ASSOCIATED PROTEIN 2; GEMIN2
603519 SURVIVAL MOTOR NEURON DOMAIN-CONTAINING PROTEIN 1; SMNDC1

分子レベルの病因

SMN1は、下位運動ニューロンの機能に必要な完全長の運動神経細胞生存タンパク質を産生する[Lefevreら1995]。SMN2は、exon 7を欠く運動神経細胞生存タンパク質を主として産生するが、こちらのタンパク質は不安定である。
SMNタンパク質は「gems」と呼ばれる新しい核構造に局在している。gemsは、小型核RNAの処理と代謝に関与すると考えられているコイルドボディに似ており(そしておそらく相互作用している)、その構造はコイルドボディに似ていると考えられている[ Liu & Dreyfuss 1996 ]。証拠は、SMNタンパク質が小型核リボ核タンパク質(snRNP)の生合成と機能に関与していることを支持している[ Fischer et al 1997、Liu et al 1997、Pellizzoni et al 1998 ]。小型核RNPおよびおそらく他のスプライシングコンポーネントは、不活性化された機能型から活性化された機能型への再生を必要とする。SMNタンパク質は、これらのスプライシングコンポーネントの再構成と再生に必要である[ Pellizzoni et al 1998 ]。SMNタンパク質は、複数のRNA結合タンパク質を複数のRNAに集め、標的RNA上の特定のタンパク質の集合を促進するモジュール方式でこれを実現する。
SMNタンパク質は、アポトーシスや翻訳調節などの他の細胞活動にも影響を与えることが報告されている[ Strasswimmer et al 1999、Lefebvre et al 2002、Vyas et al 2002 ]。SMNタンパク質は、いくつかのカスパーゼやその他の細胞生存の主要調節因子の活性化を阻害することでアポトーシスを調節する[ Anderton et al 2013 ]。SMNタンパク質は、ポリソームと結合することで翻訳を調節し、その結果、翻訳が抑制される[ Sanchez et al 2013 ]。
脊髄 性筋萎縮症(SMA)は、スプライソソームsnRNP複合体の生合成と輸送における遺伝的欠陥の結果である可能性がある。SMA患者に見られるような変異型SMNタンパク質は、野生型SMNタンパク質の持つスプライシング再生活性を欠いている。SMNタンパク質の減少は、細胞がsnRNPを組み立てる能力を低下させ、その結果、スプライソソーム構成要素のレベルが変化し、スプライシングに欠陥が生じ、細胞の成長と機能に必要な特定のmRNAとそのコードタンパク質を産生する能力が損なわれる。スプライシングの欠陥がどのようにして運動ニューロン特異的な疾患を引き起こすのかは、依然として不明である[ Workman et al 2012 ]。
SMAは、SMN1の欠損に起因して生じる。その理由は、SMN2は、SMN1の産生するタンパク質の欠損を完全に補うところまでの機能を有しないことにある。ただ、SMN2のコピー数(遺伝子量)が増加した場合は、少量ながら、SMN2の産生する完全長の転写産物により、より軽症のⅡ型あるいはⅢ型の表現型となることが多い。

疾患発症のメカニズム
機能喪失。SMA患者は、SMN1遺伝子の少なくともエクソン7の欠失に関してホモ接合体であるか、またはそのような欠失と遺伝子内のSMN1不活性化病的バリアントとの複合ヘテロ接合体である。SMA患者の95%以上では、SMAの臨床サブタイプに関わらず、 SMN1遺伝子のエクソン7が検出されない。これは、ホモ接合性欠失の結果か、SMN1配列がSMN2配列に遺伝子変換された結果である(両者のヌクレオチド相同性が高いため可能)。

SMN1およびSMN2に特有の実験室での技術的考慮事項
染色体5q12.2-q13.3上の SMN 領域は、反復配列、偽遺伝子、レトロトランスポゾン、欠失、および逆位重複など、異常に複雑である [ Biros & Forrest 1999 ]。罹患していない個体は、各染色体上にタンデムに配置された 2 つの SMN タンパク質をコードする遺伝子、SMN1(テロメア側コピー、 NM_000344.3 ) とSMN2 (セントロメア側コピー、 NM_017411.3 ) を持っている

SMN1SMN2はそれぞれ9つのエクソンから構成され、8つのヌクレオチド(イントロン5つ、エクソン3つ、エクソン6、7、8にそれぞれ1つずつ)のみが異なっている[ Biros & Forrest 1999 ]。SMN1とSMN2は99 %以上のヌクレオチド同一性を共有しており、どちらもsnRNP複合体の効率的な組み立てに必要な294アミノ酸のRNA結合タンパク質である生存運動ニューロンタンパク質をコードすることができる。相同性が高いため、全エクソームシーケンスによるSMN1配列変異の検出はより困難になる可能性がある。
遺伝子とタンパク質情報の詳細な概要については、表 A「遺伝子」を参照のこと。


更新履歴:

  1. Gene Reviews著者: Thomas W Prior, PhD, FACMG,Meganne E Leach, MSN, PNP and Erika Finanger, MD.
    日本語訳者:佐藤康守(たい矯正歯科) 、加藤環、齋藤加代子(東京女子医科大学病院ゲノム診療科)GeneReviews最終更新日:2026.2.12. 日本語訳最終更新日: 2026.8.7.[in present]

原文: Spinal Muscular Atrophy

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