DICER1腫瘍易罹患性
(DICER1 Tumor Predisposition)

[Synonyms:DICER1家族性胸膜肺芽腫易罹患性症候群,DICER1症候群]

Gene Reviews著者: Kris Ann P Schultz, MD, Douglas R Stewart, MD, Junne Kamihara, MD, PhD, Andrew J Bauer, MD, Melissa A Merideth, MD, MPH, Pamela Stratton, MD, Laryssa A Huryn, MD, Anne K Harris, MPH, Leslie Doros, MD, Amanda Field, MPH, Ann G Carr, MS, CGC, Louis P Dehner, MD, Yoav Messinger, MD, and D Ashley Hill, MD.
日本語訳者: 箕浦祐子(札幌医科大学大学院医学研究科遺伝医学)櫻井晃洋(札幌医科大学附属病院遺伝子診療科)

GeneReviews最終更新日: 2020.4.30.  日本語訳最終更新日: 2022.6.29

原文 DICER1 Tumor Predisposition


要約

疾患の特徴

DICER1腫瘍易罹患性(DICER1)は,胸膜肺芽腫(PPB),肺嚢胞,甲状腺腫瘍(多結節性甲状腺腫,腺腫および/または甲状腺癌),卵巣腫瘍(セルトリ-ライディッヒ細胞腫,ギナンドロブラストーマ,肉腫)および 嚢胞性腎腫のリスクが高まることを特徴とする.あまり一般的ではない腫瘍としては,毛様体髄上皮腫,鼻腔軟骨中皮性過誤腫,胎児型横紋筋肉腫,下垂体芽腫,松果体芽腫,中枢神経系(CNS)肉腫,その他のCNS腫瘍,仙骨前悪性奇形腫などがある.多くの腫瘍は40歳未満で発症する.PPBは一般的には6歳未満の乳幼児・小児にみられる.卵巣性索間質腫瘍の多くは40歳未満で診断される.嚢胞性腎腫は通常幼少期にみられるが,思春期での報告もある.他にも臨床的特徴として,巨頭症や眼科的異常,腎臓・集尿系の構造異常および歯牙異常(球根状歯冠)などもみられる.

診断・検査 

DICER1の診断は,発端者において分子遺伝学検査によって,機能喪失を引き起こすことが知られているまたは疑われるヘテロ接合性生殖細胞系列DICER1 病的バリアントが同定されることによって確立される.

臨床的マネジメント 

症状の治療
DICER1関連悪性腫瘍の治療は,腫瘍の種類と病期による.最も一般的な治療は,外科的切除で化学療法を伴うこともある.PPBの治療には,主に残存病変や再発を治療するために,放射線治療が行われることもある.甲状腺結節に気になる所見があれば,生検や外科的切除が必要となる.卵巣腫瘍は手術が必要で,化学療法を行うこともある.毛様体髄上皮腫は切除またはプラーク小線源療法によって治療される.

サーベランス
生殖細胞系列DICER1 病的バリアントのリスクのある乳幼児に対しては,生後間もなくの胸部X線撮影が推奨される.DICER1が確定すれば,PPB,甲状腺腫瘍,卵巣性索間質腫瘍やその他のDICER1関連腫瘍の徴候や症状に対して,臨床的評価や画像によるサーベイランスが推奨される.現在の画像評価に関するガイドラインでは,8歳までは4~6ヶ月ごと,8~12歳では12か月ごとのX線撮影を行うことになっている.生後3~6ヶ月の胸部CTと,生後30か月から3歳までに再度の胸部CTを検討する.12歳以降に診断された場合は,その時点での胸部X線または胸部CTを撮影する.甲状腺超音波検査は8歳から開始し,その後3~5年ごとの実施が推奨される.化学療法を施行された患者では,治療後3~5年以内に甲状腺超音波検査を開始する.3歳から少なくとも10歳までは,年1回の毛様体髄上皮腫のための視力検査や散瞳下での眼科検査が推奨される.年1回の身体検査には,外眼筋運動や赤色反射の評価,神経学的検査や甲状腺の触診が含まれる.家族に対する教育はサーベイランス継続の基本となる.

リスクのある血縁者の評価
家系内で生殖細胞系列DICER1病的バリアントが同定された場合,すべての年代の血縁者に対して,遺伝学的状態を明らかにし,年齢に応じて推奨されるサーベイランスを提供し早期介入するために,分子遺伝学的検査を実施することは適切である.

妊娠の管理:
稀に,大きな肺嚢胞が新生児の呼吸困難を引き起こすことがあるため,DICER1 病的バリアントのリスクのある胎児では,妊娠後期(third-trimester)の超音波検査が推奨される.肺嚢胞が検出された場合,高リスク出産および胎児医療の専門家へ紹介することが望ましい.

遺伝カウンセリング 

DICER1は低浸透率の常染色体顕性遺伝(優性遺伝)形式をとる.生殖細胞系列DICER1病的バリアントが検出されたPPB患者のうち,約80%は片方の親から生殖細胞系列病的バリアントを受け継ぎ,20%はde novo(新しい)バリアントである.DICER1生殖細胞系列病的バリアントを持つ患者の子は,それぞれ50%の確率で病的バリアントを受け継ぐ.浸透率が低いため,多くの生殖細胞系列DICER1病的バリアントを持つ人が臨床的に未発症のままである.家系内で生殖細胞系列DICER1病的バリアントが同定されれば,出生前および着床前遺伝学的検査が可能である.
訳注:日本では,本症に対する出生前および着床前遺伝学的検査は行われない.いずれにしても次世代への遺伝に関しては細心の遺伝カウンセリングが必要である.

 


診断

DICER1が疑われる所見

以下の腫瘍および/または臨床的特徴を呈する患者では,DICER1 腫瘍易罹患性(DICER1)を疑うべきである:

  • 胸膜肺芽腫(PPB)
  • 新生児または幼少期にみつかる単発または多発肺嚢胞および/または気胸
  • 甲状腺腺腫,多結節性甲状腺腫および/または高分化型甲状腺癌,特にDICER1の他の所見の家族歴のある患者.低分化型甲状腺癌も記録にある.
  • 性索間質腫瘍を含む卵巣腫瘍(セルトリ-ライディッヒ細胞腫,ギナンドロブラストーマ,胎児型横紋筋肉腫,未分化型肉腫など)
  • 嚢胞性腎腫.進行した腎臓の未分化型肉腫を伴うこともある
  • 毛様体髄上皮腫
  • 腺肉腫の所見のある子宮頸部またはその他部位の胎児型横紋筋肉腫
  • 下垂体芽腫
  • 松果体芽腫
  • DICER1関連中枢神経系(CNS)肉腫
  • その他のCNS胚細胞性腫瘍/ETMR様(多層性ロゼットを有する胎児性腫瘍)
  • 乳児期の仙骨前悪性奇形腫
  • 多嚢胞性肝病変
  • 胸膜肺芽腫様腹膜肉腫(腹膜PPB)
  • 巨頭症

検査機関における腫瘍組織検査の所見.腫瘍組織の分子遺伝学的検査で体細胞性DICER1病的バリアントが同定された場合,生殖細胞系列DICER1病的バリアントが存在している可能性がある.注;(1)分子学的検査には,新鮮凍結腫瘍が望ましい.ホルマリン固定パラフィン包埋検体も適している.(2) 生殖細胞系列DICER1病的バリアントがなくても,腫瘍組織内のDICER1病的バリアントが同定されている.
注:DICER1の所見のある患者ではDICER1病的バリアントの体細胞モザイクも疑われる.例えば,体細胞の過形成を伴う(または伴わない)上記の内1つの腫瘍( 臨床像参照,GLOW症候群

診断の確定

DICER1の診断は,発端者に分子遺伝学検査によって,機能喪失を引き起こすことが知られているまたは疑われるヘテロ接合性生殖細胞DICER1病的バリアントが同定されることによって確立される( Table 1参照).
分子遺伝学検査の手法には,表現型に応じて,標的遺伝子検査(単一遺伝子検査,マルチジーンパネル)や包括的ゲノム検査(エクソームシークエンス,エクソームアレイ,ゲノムシークエンス)の組み合わせがある.
標的遺伝子検査を行う場合は,臨床医がどの遺伝子に関連がありそうか決める必要があるが,ゲノム検査の場合はその必要はない.DICER1の表現型は幅広いため,疑わしい所見 に記載のあるような特徴的な所見があれば,標的遺伝子検査で診断がつくかもしれないが( Option 1参照),腫瘍感受性の高まる他の多くの遺伝性疾患と見分けのつかない表現型の場合は,ゲノム検査を利用した方が診断がつきやすいかもしれない(Option 2参照).

Option 1

臨床,画像,検査および/または組織病理学的所見がDICER1の診断を疑うものであれば,分子遺伝学的検査は単一遺伝子検査マルチジーンパネルが利用可能である.

  • 単一遺伝子検査:遺伝子内の小規模な欠失/挿入やミスセンス,ナンセンス,スプライス部位のバリアントを検出するために,最初に DICER1の配列解析を行う.注:用いる解析方法によっては,単一エクソン,複数のエクソン,全遺伝子欠失/重複は検出できない.配列解析でバリアントが検出されなかった場合は,エクソンや全遺伝子欠失や重複を検出するために,遺伝子標的欠失/重複解析 を行う.
  • DICER1と他の関連する遺伝子(鑑別診断を参照)を含む遺伝性腫瘍マルチジーンパネルは,基本的な表現型を説明しえない遺伝子の病的意義不明なまたは病的なバリアントの同定を制御しつつ,症状の遺伝的要因を特定できる可能性が最も高いと考えられる.注:(1)パネルに含まれる遺伝子と各遺伝子に用いられる試験の診断感度は検査施設と時期によって異なる.(2)マルチジーンパネルには,このGeneReviewでは言及されていない症状に関連する遺伝子が含まれることがある.(3) 検査施設によっては,臨床医が指定した遺伝子を含む,カスタム設計された施設独自のパネルや,表現型に焦点を当てたエクソーム解析パネルといった選択肢もある.(4)パネルで用いられる方法には,配列解析,欠失/重複解析,他の配列に拠らない手法のすべてまたはいずれかが含まれる.この疾患については,マルチジーンパネルについても欠失/重複解析が推奨される( Table 1参照).

マルチジーンパネルに関する概要はここをクリック.遺伝学的検査を発注する臨床医向けのより詳細な情報についてはこちらを参照のこと.

Option 2

腫瘍感受性の高まる他の多くの遺伝性疾患と鑑別が難しい表現型の場合,包括的ゲノム検査(医師が関連のありそうな遺伝子を決める必要がない)はよい選択肢となる.エクソームシークエンスが一般的に用いられるが,ゲノムシークエンスも可能である.

エクソームシークエンスで診断がつかない場合,-特に常染色体顕性遺伝(優性遺伝)が考えられる場合-(臨床的に可能であれば)シークエンス解析では検出できない(複数)エクソンの欠失や重複を検出しうるエクソームアレイを検討してもよい.

包括的ゲノム検査に関する概要はここをクリック.ゲノム検査を発注する臨床医向けのより詳細な情報についてはこちらを参照のこと.

1.
DICER1 腫瘍易罹患性に用いられる分子遺伝学的検査

遺伝子1 方法 検出方法ごとの病的バリアントの見つかる割合2
DICER1 配列解析3 >90%4
標的遺伝子欠失/重複解析5 脚注6参照.
  1. 染色体座位とタンパク質については Table A. 遺伝子とデータベース を参照のこと.
  2. この遺伝子で検出されるバリアント情報については,分子遺伝学 の項を参照.
  3. 配列解析では良性,おそらく良性,臨床的意義不明,おそらく病的,病的のバリアントが検出される.病的バリアントには小規模な遺伝子内欠失/挿入,ミスセンス,ナンセンス,スプライス部位バリアントが含まれる.通常はエクソンまたは遺伝子全体の欠失/重複は検出されない.配列解析結果の解釈に関して考慮すべき問題についてはこちらを参照のこと.
  4. ヒト遺伝子変異データベース(HGMD) Professional(定額制サイト)からのデータ [Stenson et al 2017]
  5. 遺伝子標的欠失/重複解析は,遺伝子内の欠失や重複を検出する.定量的PCR,広域PCR,多重ライゲーション依存プローブ増幅(MLPA)や,単一エクソンの欠失や重複を検出するために設計された遺伝子標的マイクロアレイなどの多様な手法が用いられる. 
  6. DICER1の全遺伝子または遺伝子内欠失が6家系以上で報告されている[Sabbaghian et al 2014Brenneman et al 2015de Kock et al 2018].

体細胞モザイクの検査.de novoDICER1病的バリアントが同定された約10%の患者では,そのバリアントの体細胞モザイクがある[Brenneman et al 2015de Kock et al 2016].DICER1の機能喪失型病的バリアントのモザイク患者では,生殖細胞系列の機能喪失型バリアントの臨床所見と同様の所見を呈する.このような患者では,白血球のような非罹患組織のDICER1分子遺伝学的検査は正常であり,体細胞モザイクの確定診断をするために複数の組織から分子遺伝学的検査を行う必要がある.腫瘍DNA検査では,DICER1の両アレルに病的バリアントが検出されるはずである.

小規模な集団で,DICER1病的バリアントモザイクがRNase IIIbドメインに同定された.これらの患者では,平均より多くの病巣があった( 遺伝型-表現型の相関参照) [Brenneman et al 2015de Kock et al 2016].


臨床的特徴

臨床像

現在までに,文献報告や未発表の国際PPB/ DICER1登録,NIH自然史研究データなどより,DICER1の生殖細胞系列病的バリアントは1,000人以上に同定されている.この疾患に関する以下の表現型についての記載はこれらの報告に基づく.
これまでの研究は,小児の胸膜肺芽腫(PPB),少女および女性の卵巣性索間質腫瘍,小児の嚢胞性腎腫,および甲状腺過形成家系,その他の腫瘍を発症する生殖細胞系列DICER1病的バリアントに焦点が当てられてきた.生殖細胞系列DICER1病的バリアントを有する患者は,40歳までに主な腫瘍を発症することが報告されている.生殖細胞系列DICER1病的バリアントを有する高齢者での悪性腫瘍や他の病態のリスクについてはあまり知られていない.

表2
DICER1 腫瘍易罹患性の抜粋した所見

所見 この所見に対してDICER1 生殖細胞系列病的バリアントを持つ人の割合 備考
巨頭症 ~42%
胸膜肺芽腫 肺嚢胞/ type Ir PPB 中25%-40%; PPB types I, II, & III 中 <10% PPB小児の 65%が DICER1 生殖細胞系列病的バリアントを持つ.
多結節性甲状腺腫 女性の32%;男性の13% 20歳まで
女性の75%;男性の17% 40歳まで
卵巣性索間質腫瘍 <10% SLCT とギナンドロブラストーマ患者の~50% が DICER1生殖細胞系列病的バリアントを持つ.1
嚢胞性腎腫 ≤10%
毛様体髄上皮腫 ~3%
分化型甲状腺癌 16~24倍リスク上昇
鼻腔軟骨中皮性過誤腫 家族歴の確認された人で~1% (非発端者)
その他腫瘍 胎児型横紋筋肉腫,下垂体芽腫,松果体芽腫,CNS肉腫,仙骨前悪性奇形腫, その他CNS 胎児型腫瘍/ETMR-様
多嚢胞性肝病変 非常稀2

CNS=中枢神経系;ETMR=多層性ロゼットを有する胚細胞性腫瘍;PPB=胸膜肺芽腫;SLCT=セルトリ-ライディッヒ細胞;type Ir PPB =退縮型または非進行性PPB

  1. Schultz et al [2017]
  2. 多嚢胞性肝病変については2例報告がある[Apellaniz-Ruiz et al 2019].

胸膜肺芽腫(PPBは主に幼少期に発生する.臨床的に重要なPPBは通常乳児から7歳未満の小児にみられるが,稀にそれよりも年齢が上の子どもでも発症することがあり,成人発症も1例報告がある[Hill et al 1999].
PPBは主に4つのタイプがある:

  • Ⅰ型PPBは悪性細胞の層を含有する嚢胞性病変のみである.I型PPBをそのまま放置すると,悪性成分がさらに増殖し,II型PPBに移行する可能性がある.典型例では,Ⅰ型PPBは乳児から幼少期(診断年齢中央値:生後8ヶ月)に,肺を占有する巨大な嚢胞による呼吸困難,あるいは含気性嚢胞の破裂による二次的な気胸により発見される.たまに,呼吸器以外の症状やサーベイランスのためにX線撮影を行う際に,無症状の子どもで肺嚢胞が見つかることがある.Ⅰ型PPBの5年生存率は89%である[Messinger et al 2015].
  • Ⅱ型PPBは嚢胞と充実性腫瘍が混在しており,発症年齢中央値は生後35ヶ月である.Ⅱ型PPBの小児の典型例は,体重減少,発熱,息切れ,胸部X線画像上の混濁または気胸を伴う.Ⅱ型PPBの5年生存率は71%である[Messinger et al 2015].
  • Ⅲ型PPBは充実性,進行性の肉腫で,呼吸困難や縦郭偏位を伴うことがある.Ⅲ型PPBの発症年齢中央値は生後41ヶ月である.Ⅲ型PPBの小児の典型例は,体重減少,発熱,息切れ,胸部X線画像上の混濁を伴う.Ⅲ型PPBの5年生存率は53%である[Messinger et al 2015].
  • Ⅰr(退縮型または非進行性)PPBはどの年代の患者にもみられ,悪性成分はない.5年生存率は100%である[Messinger et al 2015].

PPBの自然史は,多くの腫瘍で,肺嚢胞の形で前癌/初期癌病変を有することを示す.すべてのPPBの肺嚢胞が高悪性度肉腫に転向するわけではないが,どの嚢胞が肉腫に進行するのか,X線画像の特徴から同定する方法はまだ確立されていない.嚢胞から肉腫への進行は早いこともある.ひとたび進行が始まると,Ⅰ型PPBの間葉系細胞は嚢胞隔壁の拡大・増殖を示し,嚢胞が嚢胞性・充実性混在(Ⅱ型)または充実性(Ⅲ型)肉腫へと置き換わる.Ⅰ型PPBは転移することはないが,Ⅱ型・Ⅲ型PPB患者では,脳・骨・限所胸部リンパ節や肝臓に発症または転移しうる.

Ⅱ型・Ⅲ型PPBの小児では,胸部に限局した腫瘍の再発および/または遠隔転移することがある.PPBが転移する部位としては,脳についで骨が最も一般的である.予後不良であることが多いが,長期生存することもある [Priest et al 2007Nakano et al 2019a].

多結節性甲状腺腫 (MNG)および甲状腺癌. 生殖細胞系列DICER1病的バリアントは,甲状腺結節および/またはMNGのリスクが高まる.20歳までにDICER1病的バリアントを持つ女性の32%,男性の13%がMNGと診断され,および/または甲状腺摘出術を受ける[Khan et al 2017b].
しかしながら,データからは乳頭状および濾胞状甲状腺癌を含むDICER1関連分化型甲状腺癌(DTC)のリスクも示唆される [Hill et al 2009Rio Frio et al 2011Slade et al 2011Rutter et al 2016]. DICER1関連DTCは被包性であることが多く,通常,リンパ管侵襲,甲状腺外進展,局所リンパ節転移を伴わない[Rutter et al 2016van der Tuin et al 2019].
PPB治療歴があると,PPB治療後5年以内に潜伏期間の短いDICER1関連DTCのリスクが増加する[de Kock et al 2014b].このリスク増加の要因は, 化学療法への曝露および/または繰り返されるX線画像撮影によるDICER1関連 DTCの二次的なものである可能性がある.DICER1関連DTCの甲状腺腫瘍は寛解を得る可能性が高く,予後は良好である.

卵巣性索間質腫瘍.発症年齢は幼少期から成人後期まで幅広いが,ほとんどは生殖可能年齢の間に診断される(95%が40歳未満).多くの卵巣性索間質腫瘍は初期の段階で見つかる.卵巣性索間質腫瘍の種類には以下のものがある:

  • セルトリ-ライディッヒ細胞腫瘍(SLCT)は,腹部膨満感や腹部痛,腫瘍がふれるなど卵巣腫瘍の典型的症状で発見されることがある.月経周期の乱れ,無月経,思春期早発症を認めることもある.男性型多毛症,変声,ざ瘡などの男性化の徴候があれば,テストステロン濃度の測定などが必要となることもある. この腫瘍はどの年代でも発生しうるが,多くは思春期から若年成人で発症する.

卵巣性索間質腫瘍はFIGO(国際産婦人科連盟)分類を用いて病期分類する.高分化型であるⅠa期腫瘍は通常,良性に経過する.低分化型または進行期腫瘍は予後不良である.多くのDICER1関連SLCTsは中分化型であるが,高分化型も低分化型も報告されている.

  • ギナンドロブラストーマ.この腫瘍のある少女または若年女性では,ホルモン過剰産生の徴候があることもあれば,ないこともある.ギナンドロブラストーマは,Ⅰa期で見つかれば予後良好である.リスクの高い組織学的所見(低分化型,肉腫様成分など)があったり,病期が進んでいる場合は,補助化学療法を必要とすることもある.

嚢胞性腎腫(CN)はDICER1患者の腎病変で最も一般的である.CNは良性腫瘍と考えられ,嚢胞性実質腎腫瘍(多くは痛みがなく,腹部肥大や側腹腫瘤が一般的)として発症する.CNの多くは4歳未満の小児でみられるが,DICER1関連CNは思春期でも発症する.血尿や高血圧,尿路感染はあまりみられない.CNは急速に増殖して正常な腎機能に影響を及ぼす懸念があり,特に両側性の場合は注意する.
DICER1関連CNの小児患者の中には,少数,PPBのようにCNが後から高悪性度腎肉腫に発展することがある [Doros et al 2014].この腎臓での肉腫への転向は,肺のⅠ型からⅢ型PPBへの転向でみられるものに類似する.これらの腫瘍は腎臓の未分化肉腫として知られる [Wu et al 2018].

毛様体髄上皮腫(CBME)は,非色素性毛様体上皮から発生する原始神経上皮腫瘍である.CBMEsは幼少期で見つかることが多く,平均診断年齢は6歳である.腫瘍が小さい間は無症状のこともあるが,視力低下や白色瞳孔,新たな斜視が認められることもよくある.検査をすると,目に見える後水晶体領域へ拡張する毛様体腫瘤や水晶体亜脱臼を伴う白内障,続発性緑内障の可能性がみつかる.

CBMEsはその組織像に基づいて悪性度を検討するが,遠隔転移や死亡は稀である.CBMEによる死亡は通常,全身転移よりは頭蓋内に蔓延ることによる.生殖細胞系列DICER1病的バリアントを持つ103例の研究では,CBMEと診断される前1年以内に受けた散瞳眼底検査では正常だったのに,いつ発症したか不明の失明を呈した小児が2名いた[Huryn et al 2019].

鼻腔軟骨中皮性過誤腫(NCMH)は,通常慢性副鼻腔炎やうっ血,その他副鼻腔症状のある小児にみられる.NCMHは良性腫瘍と考えられる.一般には外科的切除により治癒するが,局所再発も起きる(臨床的マネジメント参照).生殖細胞系列DICER1病的バリアントを持ち,腫瘍の認められていない102例(非発端者)の研究では,NCMHの発症は約1%だった[Stewart et al 2019].

DICER1生殖細胞系列病的バリアントを持つ患者の子宮頸部の胎児型横紋筋肉腫(ERMS)は,思春期および思春期後の青年女子および若年女性に発症するのが一般的である.ERMSは膣出血を呈することがあり,どこの組織でも認められる.

下垂体芽腫は,2歳以下の小児に見られる稀な腫瘍であり,クッシング症候群,眼筋麻痺,尿崩症を呈することもある;患者の多くでACTH値が上昇する[de Kock et al 2014a].治療法としては補助化学療法を追加するまたはしない切除で治癒可能であるが,ある研究では13人中5人が切除後に死亡している[de Kock et al 2014a].

松果体芽腫は,主に小児に生じる松果体の原始神経外胚葉性腫瘍である.現在まで,DICER1生殖細胞系列病的バリアントとの関連が報告されているのは10例に満たない[de Kock et al 2020].松果体芽腫は通常大きく,診断時に閉塞性水頭症を呈する[Tate et al 2011].治療法は,外科的切除,頭蓋脊髄照射,化学療法を行う[Mynarek et al 2017].松果体芽腫は臨床経過が短く,予後不良であることが報告されている.

中枢神経系(CNS)肉腫は,最近になってDICER1関連腫瘍の一種として同定された.DICER1関連CNS肉腫の組織学的所見は,紡錘細胞型,横紋筋肉腫型,軟骨型などPPBからのCNS転移に似ている.特に小児において,原発性頭蓋内腫瘍にこの組織型が見られた場合,CNS 肉腫が原発性であり,転移性 PPB や他の転移性 DICER1 関連肉腫によるものではないことを確認するために,(胸部および腹部の画像診断を含む)さらなる検査が必要である[de Kock et al 2018Koelsche et al 2018Das et al 2019Kamihara et al 2020].
後頭蓋窩や視床,松果体にその他CNS胎児性腫瘍/ETMR様(多層性ロゼットを有する胎児性腫瘍)が生殖細胞系列DICER1病的バリアントを持つ2例で報告された [Uro-Coste et al 2019de Kock et al 2020].

仙骨前悪性奇形腫は,乳児に認められるDICER1関連腫瘍で,混合型の病理像を呈するため仙尾部奇形腫と間違われやすい[Nakano et al 2019b].卵黄嚢腫がない場合の横紋筋肉腫がこの腫瘍の手掛かりとなる.
Wilms腫瘍は稀に生殖細胞系列DICER1病的バリアントと関連する.

多嚢胞性肝病変が,DICER1患者の肝間葉系過誤腫として報告されている [Apellaniz-Ruiz et al 2019].この病変は,寄生生物によらない孤発性胆管嚢胞に類似している[Vargas & Perez-Atayde 2019].これらの肝病変は嚢胞性腎腫やⅠ型PPBに類似しており,原始肉腫に進行する可能性がある.

胸膜肺芽腫様腹膜肉腫は,1つまたは複数の腫瘤またはびまん性の骨盤や腹膜の肥厚を呈することがある.組織病理学的には,横紋筋肉腫の特徴を持つものと持たないものがあるが,原始肉腫の骨形成層様増殖のびまん性ではあるが不連続性の病巣と,散在する軟骨結節を示すことがある.組織病理学的には子宮頸部の胎児型横紋筋肉腫に類似しており,腺肉腫の所見が重複する.

その他の臨床的所見 [Choi et al 2019Huryn et al 2019Khan et al 2018]

  • 巨頭症は,DICER1患者の42%で報告されている.巨頭症は公表されている参照集団における97パーセンタイルより大きい頭囲と定義され,幼少期(5歳未満)に観察される.この表現型の先天的発現の頻度についてはデータが不足している.DICER1関連巨頭症の脳画像所見に関する公表されたデータはない[Khan et al 2017a].
  • 網膜の異常.家系に基づくコホート研究では,DICER1に生殖細胞系列病的バリアントを持つ人の網膜異常の割合 (11/103; 11%) は,対照家系(1/69; 1.5%)と比較して明らかに異なっていた.網膜の異常には,色素異常,黄斑上膜,ドルーゼン,網膜色素変性症などがある[Huryn et al 2019].
  • 歯牙異常(球根状歯冠)

DICER1病的バリアントの体細胞モザイク では以下の記録がある:

  • 良性の濾胞性腺腫および細胞診で診断困難な結節を含む甲状腺結節;
  • 分化型甲状腺癌,多くは低浸潤性,被包性の甲状腺乳頭癌の濾胞性異形,あるいは低浸潤性の濾胞性甲状腺癌から横紋筋肉腫に分化した紡錘細胞肉腫に関連する充実性異形,および低分化型の濾胞性甲状腺癌 [Ravella et al 2018Wasserman et al 2018Yang et al 2018];
  • Wilms腫瘍.

GLOW症候群global developmental delay;包括的発達遅滞, lung cysts;肺嚢胞,overgrowth;過成長,Wilms腫瘍).RNaseⅢbドメイン上にDICER1病的バリアントの体細胞モザイクのある小児2例で,発達遅滞と巨大多発肺嚢胞,過成長,巨頭症,両側性Wilms腫瘍が報告されている[Klein et al 2014].これはPI3K/AKT/mTOR経路の活性化により引き起こされるという仮説がある[Klein & Martinez-Agosto 2020].RNaseⅢbドメイン上にモザイクの病的バリアントを持つ小児5例では,DICER1生殖細胞系列機能喪失型バリアントを持つ小児より.有意に多くの病巣が見られ,診断年齢も若かった.RNaseⅢbドメイン上にDICER1病的バリアントの体細胞モザイクのある小児4例の詳細な研究では,腫瘍負荷の増大など,より重篤なDICER1関連表現型の重要な原因となることが示された[de Kock et al 2016].

遺伝型と臨床型の関連

RNaseⅢbドメイン上にモザイクのDICER1病的バリアントを持つ人では,病巣が多く,過成長が見られる.その他の遺伝型-表現型の関連は同定されていない.

浸透率 

ヘテロ接合性生殖細胞系列DICER1病的バリアントの浸透率は低く,年齢に依存する.生殖細胞系列DICER1病的バリアントを持つ145例と対照群135例の縦断的自然史研究では,40歳までのMNGの累積発症または甲状腺摘出術の実施は,女性75%,男性17%,対照群では女性8%,男性0%だった[Khan et al 2017b].
DICER1関連癌のリスクは,年齢と性別に応じて多様である.生殖細胞系列DICER1病的バリアントを持つ非発端者の男女102例の研究では,10歳までに5.3%で腫瘍が発生した(95% CI, 0.6% ~ 9.7%).50歳まででは19.3% (95% CI, 8.4%~29.0%)に発生した (女性 26.5%; 男性10.2%).10歳以降では男性に比べ女性のリスクが高まる[Stewart et al 2019].

病名

胸膜肺芽腫(PPB)は,"先天性嚢胞に発生した横紋筋肉腫 "と呼ばれる.
肺芽腫は,より幅広い年齢層に発生する肺の二相性上皮性・間葉性悪性腫瘍であり,通常,胸膜肺芽腫とは関連しない.
甲状腺結節過形成は一般的に甲状腺腫と呼ばれる.
毛様体(または眼の)髄上皮腫は,網膜上皮腫や神経奇形腫とも呼ばれる.

頻度 

Exome Aggregation Consortium(ExAC)からの53,105例の非がんのエクソーム解析では,生殖細胞系列の機能喪失型および/または既知のDICER1病的バリアントの頻度は2,529人に1人~10,600人に1人だった [Kim et al 2017].Cancer Genome Atlasで実施された同様の解析では,DICER1病的バリアントの頻度は4,600人に1人だった[Kim et al 2019].


鑑別診断

OMIMのPhenotypic SeriesにあるImmunodeficiency with Hyper-IgM(HIGM1とよく似た遺伝学的に多様な表現型の表)を参照。
X連鎖高IgM症候群(HIGM1)の鑑別診断には、以下の疾患が含まれる。

非X連鎖型のHIGM

  • HIGM2
    • 活性化誘導シチジンデアミナーゼ遺伝子(AICDA)の変異はHIGM2となる。HIGM2は、B細胞分化の異常によって特徴付けられ、反復性の細菌感染、呼吸器感染、消化管感染、まれに日和見感染をきたす。リンパ組織過形成がよくみられる。常染色体劣性遺伝形式をとる。
    • 高IgM症候群の常染色体優性遺伝形式をとるものとして、AICDA遺伝子における同一のナンセンス変異(p.Arg190X)が血縁のない4家系で報告されている。(参照配列 NM_020661.2)
  • HIGM3
    • CD40LGの受容体で、常染色体にあるCD40の両アレル変異により起こる。HIGM3は臨床的にHIGM1と区別することはできない。常染色体劣性遺伝形式をとる。
  • HIGM4
    • IgG産生の減少が見られ、HIGM2より軽度の臨床経過をとる、HIGMの型が同定されていない15人の罹患者が報告されている。HIGM4をもたらす遺伝学的な異常はわかっていない。
  • HIGM5
    • 常染色体にあるUNGの両アレル変異が原因で起こる。症状はHIGM2に似ており、常染色体劣性遺伝形式をとる。

分類不能型免疫不全症(CVID)(特に、生後10年のうちに確認される低ガンマグロブリン血症)。HIGM1のように、CD40LGタンパク質はCVIDを有する人で減少することがある。HIGM1とは対照的に、CVIDは、総T細胞数の減少、あるいはT細胞の機能低下を伴うことがある。CVIDの患者の遺伝的な原因のほとんどは現在のところ不明である。

重症複合免疫不全ニューモシスティス・イロベジイ肺炎を呈する乳児がいた場合、重症複合免疫不全(SCID)のいずれかを考慮しなければならない。SCIDは、通常、T細胞機能の欠損、Tリンパ球分画の量的な異常、SCIDの遺伝型とは関係なく、マイトジェン機能の顕著な低下を呈する。X連鎖のSCIDはIL2RGの変異により引き起こされる。SCIDにおいて、複数の他の遺伝子による両アレル変異は常染色体劣性遺伝形式をとる。

無ガンマグロブリン血症無ガンマグロブリン血症を伴う疾患のいずれか一つは、HIGM1の鑑別診断の一環として考慮しなければならない。X連鎖の無ガンマグロブリン血症(XLA)は通常、生後1年以内に、反復性細菌感染を呈する。ニューモシスティス・イロベジイ肺炎のような日和見ウイルス感染症はまれである(好中球減少のような血液疾患はまれであるため)。HIGM1とは対照的に、XLAは、典型的にはCD19陽性B細胞の欠損を呈する。XLAは、BTKの変異によって引き起こされる。無ガンマグロブリン血症において、他のいくつかの遺伝子の変異は、常染色体優性、常染色体劣性の遺伝形式をとる。

HIV感染HIVの感染は、ニューモシスティス・イロベジイ肺炎を呈する乳児で考慮されるべきである。

乳児期の一過性低ガンマグロブリン血症乳児期の一過性低ガンマグロブリン血症は、正常な抗体産生、正常な成長パターン、そして日和見感染がないことによって特徴付けられる。

IKBKG。IKBKB (以前にはNEMOとして知られた)の変異は、高IgM症候群を引き起こし、一般的に減汗性外胚葉異形成症と関連する可能性がある。日和見感染を含む重篤な感染症は、どの年齢でも起こる一般的な合併症であり、遺伝形式はX連鎖である。


遺伝学的に関連する疾患

GeneReviewに記載のない,生殖細胞系列DICER1病的バリアントに関連する表現型については報告されていない [Klein et al 2014de Kock et al 2016].
体細胞組織だけに生じているDICER1病的バリアントは遺伝性疾患とは考えられない.この件については分子遺伝学の体細胞 DICER1 病的バリアントを伴うがんと良性腫瘍の項にまとめた.


鑑別診断

胸膜肺芽腫(PPB)

先天性肺気道奇形(Congenital Pulmonary Airway MalformationCPAM)または先天性嚢胞状腺腫様形成異常(Congenital Cystic Adenomatoid Malformation CCAM)Ⅰ型PPBは,X線画像上は良性の先天性嚢胞性肺奇形と鑑別できないが,気胸と多巣性または両側性の嚢胞は,他の病態よりPPBの方が多い.PPBとCPAMの鑑別が難しいため,すべてのCCAMsの切除を提唱する小児外科医もいる[Priest et al 2009Oliveira et al 2011].

肺分画症および末梢性気管支原性嚢胞は一般的に出生前に診断される複合した病変である.X線画像や組織学的な特徴からPPBとの鑑別は容易と思われるが[Shanti & Klein 2008],DICER1患者の肺分画症の報告は1例だけである [Foulkes et al 2011].

肺嚢胞および気胸.肺嚢胞および/または気胸は,複数の遺伝性(Table 3)および非遺伝性疾患で表れる.しかしながら,これらの多くは,既往歴や検診に基づいてPPBと鑑別可能である.

小児期の肺固形腫瘍.PPBが最も発症しやすい年齢の7歳未満の小児では,その他胸部腫瘍は稀である.

  • 新生児期に最も表れる非PPB腫瘍は肺固形腫瘍である;胎児肺間質性腫瘍 [Dishop et al 2010],先天性気管支周囲性筋線維芽細胞腫,固形Ⅲ型CPAMも含まれる.これら3つの病態と遺伝的な関連はわかっていない.現在まで固形PPBは新生児で稀にしか報告されていない.
  • 滑膜肉腫は思春期および若年成人においてPPBと鑑別診断にあがる主たるものである.滑膜肉腫は胸膜原発のものと嚢胞性のものがある [Cummings et al 2010].通常PPBは滑膜肉腫よりも多様であるが,PPBおよび滑膜肉腫の紡錘形細胞成分は非常によく似ている.上皮マーカーを示す免疫組織化学,またはSS18(SYT)が関与する融合タンパク質の同定は滑膜肉腫の診断に役立つ.
  • 横紋筋肉腫とEwing肉腫は,肺実質よりも胸壁や横隔膜の軟部組織由来のものが多い.稀に悪性末梢神経鞘腫がPPBに類似した肉腫要素を持つ場合がある.
  • 肺芽腫は悪性上皮成分と間質成分からなる二相性腫瘍で,発症年齢中央値は43歳である[Van Loo et al 2011].
  • 炎症性筋線維芽細胞腫(IMT)は肺に発生し(典型例では3-4歳より大きい小児),限局した葉状腫瘤である.これらの腫瘍は平滑筋アクチンの免疫染色で染まる筋線維芽細胞からなる;IMTsの40~50%にはALK(ALKチロシンキナーゼ受容体をコードする)が関与する転座があり,ALKタンパクの免疫染色を示す.

その他腫瘍

多結節性甲状腺腫 (MGN)

  • 非症候性のMNGは,ヨウ素欠乏,女性,高齢と関連する.ヨウ素欠乏,甲状腺腫誘発物質,甲状腺ホルモン合成の先天的異常による甲状腺刺激ホルモンの上昇も,MNGを発症するリスクを高める.
  • 検出法は疾患頻度と関連する:身体検査よりも超音波検査や生検の方が発見率が高い.一般的にヨウ素が足りている国ではMNGの頻度は集団中4%と推定される[Pinchera et al 1996].家族性MNGはヨウ素欠乏でない若年発症MNGから示唆され,常染色体顕性遺伝(優性遺伝)形式で報告されることが多い [Paschke 2011].
  • MNGはヨウ素欠乏地域以外でも成人によくみられる[Colamaio et al 2012].家族性MNGと他の非甲状腺腫瘍と関連するMNGは,家族性非髄様甲状腺癌および家族性多結節性甲状腺腫を考慮する必要がある(表現型;甲状腺腫, 多結節性 参照).MNGに関連するその他の遺伝性疾患についてはTable 3 を参照.

卵巣性索間質腫瘍

  • 上皮性卵巣腫瘍は年配の女性に多いが,卵巣胚細胞性腫瘍は幼少期および思春期女子に多く見られる.
  • 高カルシウム血症型卵巣小細胞癌は,組織学的に卵巣性索間質腫瘍に似ている.術前にカルシウム濃度を測定することで,これらの特徴的な腫瘍の鑑別に役立つかもしれない.
  • セルトリ-ライディッヒ細胞腫瘍および(稀に)若年性顆粒膜細胞腫は共にα-フェトプロテインAFP)を分泌する,そのため,未熟な奇形腫や卵黄嚢腫の可能性も考えられる.性索間質腫瘍ではAFPの上昇は500ng/mL未満であり,病理学的検査で正しい診断がつくことが一般的である.

腎嚢胞および嚢胞性腫瘍

  • 嚢胞性腎腫または先天性中胚葉性腎腫(充実性および嚢胞性),嚢胞性部分的分化型腎芽腫,嚢胞性Wilms腫瘍,腎細胞癌,淡明細胞肉腫,多嚢胞性異形成腎など
  • 成人の嚢胞性腎腫(CN)を含む腎の上皮間質混合腫瘍(MEST)は50歳以上の女性で発生する.小児のCNとは異なり,MESTは生殖細胞系列DICER1病的バリアントとは関連しない[Vanecek et al 2017].
  • 孤発性腎嚢胞はDICER1患者でも見られるが.一般集団でもみられ,頻度は年齢と相関する.単房性腎嚢胞(Bosniak分類Ⅰ)および嚢胞性腎異形成は小児で最も多くみられる. Birt-Hogg-Dubé 症候群も腎嚢胞やオンコサイトーマ,嫌色素性腎細胞癌と関連する.これらの病変はDICER1生殖細胞系列病的バリアントとの関連は知られていない.
  • 多発腎嚢胞はヴォン・ヒッペル・リンドウ症候群常染色体潜性(劣性)多発性腎嚢胞,および常染色体顕性(優性)多発性腎嚢胞でもみられる(Table 3参照).

毛様体髄上皮腫

  • 小児では,前眼部限局網膜芽細胞腫,毛様体嚢胞,平滑筋腫や毛様体の若年性黄色肉芽腫など,毛様体上の病変の鑑別診断にあがる.前眼部限局網膜芽細胞腫は年齢が上の小児で発症し,石灰化していることが多い[Vajaranant et al 2005].
  • 成人では,毛様体上皮の腺腫や腺癌(色素性または非色素性),中外胚葉性平滑筋腫,神経鞘腫,転移性癌,脈絡膜黒色腫,眼内トキソカラ症や肉芽腫が,毛様体上の病変の鑑別診断にあがる[Tadepalli et al 2019].

鼻腔軟骨中皮性過誤腫 (NCMH)

  • NCMHの未熟な間質細胞の密集した過細胞域に囲まれた軟骨結節は,胎児型横紋筋肉腫と混同されることがある.しかしながら,NCMHの間質細胞は筋原性の表現型を呈さない.
  • NCMHのその他の型は,脈瘤性骨嚢胞または線維性骨異形成と似ていることがある.

子宮頸部の胎児型横紋筋肉腫(ERMS)またはその他 泌尿器系部位病変

  • 子宮頸部ERMSは子宮口に発生する有茎性ポリープであるため,臨床的印象としては,頸管腺と扁平上皮粘膜からなる良性の子宮頸部ポリープであることが一般的である.
  • その他非異形成の子宮頸部ポリープ様病変は,肉芽組織ポリープや脱落膜,扁平上皮乳頭腫などがある.
  • 中胚葉間質性ポリープは,淡く染色される粘液様間質中の肥大した星状細胞と紡錘細胞からなり,腺構造を持たない.これらの間質細胞は横紋筋芽細胞の特徴を欠いている.
  • ミュラー管乳頭腫は複雑な乳頭腫パターンを示す純粋な上皮性病変で,小児では出血することがある.
  • ミュラー管腺肉腫は子宮頸部の悪性ポリープ様病変で,良性の頸管腺と横紋筋分化を伴わない紡錘細胞の肉腫性間質の成分からなる.子宮頸部胎児型横紋筋肉腫と重複する.

下垂体芽腫

  • 臨床的に,幼少期の下垂体腫瘍は,頭蓋咽頭腫,腺腫,下垂体過形成,胚芽腫,ランゲルハンス細胞組織球症,およびより稀ではあるが下垂体癌,過誤腫,奇形腫などを考慮する必要がある.
  • 非腫瘍性の炎症性および肉芽腫性物質も,この領域に影響を及ぼすことがある.

松果体芽腫

  • 松果体芽腫は,松果体腫や中分化型松果体腫瘍など,より分化度の高い松果体腫瘍と鑑別する必要がある.松果体嚢胞が発生することもある.松果体は胚細胞腫瘍の好発部位でもある.
  • 腫瘍が松果体に限局せず,むしろ脳下垂体領域まで進展している場合は,髄芽腫のようなその他の胎児型腫瘍も考慮すべきである.

表3.
DICER1 腫瘍易罹患性の鑑別診断に関連する他の遺伝子

DICER1と重複する鍵となる臨床所見 遺伝子 鑑別診断 遺伝形式 鑑別疾患における特記事項
気胸, 肺嚢胞, 多結節性甲状腺腫, 腎腫瘍 FLCN Birt-Hogg-Dubé 症候群 AD
  • 成人期に典型的な気胸
  • 肺嚢胞は通常両側性で多発性
  • BHDに関連すると報告されているMNGが本当に疾患と関連があるのかは定かではない
  • 腎腫瘍は通常両側性で多発性;診断年齢中央値48歳
  • 特徴的な皮膚病変(線維毛包腫,毛盤腫,線維性軟疣)が20~30代に表れる
肺嚢胞および/または気胸 CFTR 嚢胞性線維症 AR
  • 閉塞性肺疾患/気管支拡張症
  • 免疫反応性トリプシノーゲン値および汗中の塩化物イオン濃度の上昇
  • 消化器/栄養障害
  • 先天性精管欠損症
COL3A1 血管型エーラスダンロス症候群 AD1
  • 散発性および/または反復性の気胸
  • 血管の破裂/解離
  • 消化管穿孔または臓器破裂
FBN1 マルファン症候群 AD
  • 肺嚢胞に関連する反復性の気胸
  • 結合組織の所見
  • 水晶体偏位
  • 大動脈基部の拡大
SERPINA1 α-1 アンチトリプシン欠損症 AR
  • 主に成人における慢性閉塞性肺疾患(COPD;肺気腫および/または慢性気管支炎)
  • 肝疾患の発症は年齢と共に増加する
TSC1
TSC2
結節性硬化症 AD
  • リンパ脈管筋腫症
  • 腎血管筋脂肪腫および嚢胞
多結節性甲状腺腫, 腫瘍 FOXE1
HABP2
NKX2-1
SRGAP1
家族性非髄様甲状腺癌
(OMIM PS188550)
AD 多巣性両側性甲状腺乳頭癌および多結節性甲状腺腫と関連2
PTEN PTEN 過誤腫症候群 AD PHTSは甲状腺,乳房,子宮内膜腫瘍および特異な粘膜皮膚病変と関連する
GNAS 線維性骨異形成症/
McCune-Albright 症候群
脚注3参照
  • 自己免疫性甲状腺機能亢進症を伴うまたは伴わない甲状腺病変
  • カフェオレ斑, 線維性骨異形成, およびその他内分泌疾患
DUOX2
IYD
SLC5A5
TG
TPO
TSHR
甲状腺ホルモン合成障害
(OMIM274400,
274500274700,274800,
603372, 607200)
AR 家族性MNG
APC APC-関連ポリポーシス AD
  • 篩型甲状腺乳頭癌
  • 腺腫性大腸ポリープ, 胃底腺および十二指腸ポリープ,骨腫, 歯牙異常, 先天性網膜色素上皮肥大
PRKAR1A カーニー複合 AD
  • 家族性MNG, 多くは非機能性甲状腺濾胞腺腫
  • 皮膚の色素沈着異常, 粘液腫,内分泌腫瘍や機能亢進および神経鞘腫
TFAP2A ワーナー症候群 AD
  • MNG
  • 10代の急成長がみられない; 毛髪の脱毛や白髪化, 嗄声, 強皮症様の皮膚の変化, 両眼性白内障, 2型糖尿病, 性腺機能低下, 皮膚の潰瘍, 骨粗鬆症
卵巣腫瘍 SMARCA4
SMARCB1
ラブドイド腫瘍易罹患性症候群 AD
  • 高カルシウム血症型卵巣小細胞癌 (卵巣悪性化ラブドイド腫瘍)
  • 腎臓のラブドイド腫瘍
  • 早期からの癌発症 (5歳未満)
腎嚢胞および嚢胞性腫瘍 DNAJB11
GANAB
PKD1
PKD2
常染色体顕性(優性)遺伝性多発性嚢胞腎 AD
  • 多発性腎嚢胞
  • 肝嚢胞および頭蓋内動脈瘤のリスク上昇
PKHD1 常染色体潜性(劣性)遺伝性多発嚢胞腎 AR
  • 多発性腎嚢胞
  • 胆管拡張症および 先天性肝線維症
VHL ヴォン・ヒッペル・リンドゥ症候群 AD
  • 多発腎嚢胞および淡明細胞型腎細胞癌
  • 血管芽腫,褐色細胞腫, 膵嚢胞, 神経内分泌腫瘍, 内リンパ嚢腫, 精巣上体および子宮広間膜の嚢胞
WT14 Wilms腫瘍 AD 嚢胞性腎腫
松果体腫瘍 RB1 松果体芽腫 AD 網膜芽細胞腫

AD=常染色体顕性(優性),AR=常染色体潜性(劣性),BHD=Birt-Hogg-Dubé 症候群,MNG=多結節性甲状腺腫

  1. 血管型エーラスダンロス症候群のほとんどは常染色体顕性遺伝(優性遺伝)形式をとるが,稀な例として両アレル性の遺伝が報告されている.
  2. Shin et al [2001]Oue et al [2008]Rome et al [2008]
  3. 線維性骨異形成症/ McCune-Albright 症候群 (FD/MAS)は,遺伝しない.FD/MASを持つ小児において,この疾患の特徴的な症状を呈した親は報告されていない.同胞のリスクは一般集団と同等であると考えられる.FD/MASの垂直伝播例は確認されていない.
  4. Wilms腫瘍において最も一般的に報告される生殖細胞系列病的バリアントはWT1と11p15.5領域である.その他の遺伝子のバリアント報告も増えてきている.

臨床的マネジメント

最初の診断後の評価項目

DICER1腫瘍易罹患性(DICER1)と診断された患者に対しては,次にあげる2つの初期診断時評価を考慮する:

  • 悪性または悪性の可能性があるDICER1関連腫瘍の病変の広がり具合(病期分類);
  • その他のDICER1症状の確認(サーベイランスの項参照)

病変の広がり具合(病期分類)

胸膜肺芽腫Ⅰ型およびⅠr型.初期画像評価と追跡画像評価には胸部CTが必要である.これらの型では転移の可能性がないため,併発するDICER1関連腫瘍および臨床所見の評価のみでよい.

胸膜肺芽腫Ⅱ型およびⅢ型.

  • 病変の広がり具合および完全に切除できているかを評価するために胸部CTを実施
  • 転移病変の評価のための脳MRI.これは診断時および継続的な治療中を通して行う.
  • 転移性病変の評価および追跡期間中の画像評価の初期値としての放射線核種を用いた骨シンチグラフィおよび/またはPETスキャン
  • 腫瘍の心内進展,腫瘍血栓,または心嚢液貯留を評価するために必要に応じて心エコーを実施
  • 稀に,脊椎MRIによる傍脊柱または脊椎内進展の確認
  • 全身性塞栓症で,血管病変を示唆する場合(顔面潮紅,大静脈症候群,心雑音)は,血管超音波検査で調べる
  • 肝臓やその他の腹部転移を評価するための腹部/骨盤内CT.注:骨髄への転移は極めて稀

卵巣性索間質腫瘍

  • 臨床所見やDICER1の既往歴・家族歴に基づいて卵巣性索間質腫瘍が疑われる場合は,術前にテストステロン濃度,AFP,インヒビンAおよびB,エストラジオールを測定することで,これらのうちの1つ以上を腫瘍マーカーとして確立する上で有用である.
  • 術中の病期分類は, FIGO(国際産婦人科連盟)の病期分類基準に従って実施し,腹膜細胞診と術前・術中の破裂の有無も評価すべきである.可能な限り腫瘍を破裂させないように注意する必要がある.
  • 卵巣性索間質腫瘍が広範な腹部骨盤病変なしに胸部に進展することは少ない;しかしながら,胸部CTによるベースラインの評価は,併発疾患の評価をするために適当である.

毛様体髄上皮腫.病期分類には,頭蓋内への直接的な進展および転移性病変を評価するための脳MRIを用いる.
子宮頸部やその他部位のブドウ状型胎児型横紋筋肉腫または卵巣肉腫.病期分類には,原発腫瘍の広がり,およびリンパ節,肝,肺への転移性病変の評価のためのMRIまたはCTを用いる.

中枢神経系(CNS)悪性腫瘍:下垂体芽腫,松果体芽腫,CNS肉腫,その他頭蓋内腫瘍.病期分類には,脳・脊椎MRIおよび脳脊髄液の細胞診を用いる.

症状に対する治療

胸膜肺芽腫(PPB)

Ⅰ型PPBは手術による完全切除を行い,補助化学療法を実施することもある.Ⅰ型PPBの5年生存率は89%である;Ⅰ型PPBが死亡につながるのは,Ⅱ型Ⅲ型PPBに進行した場合のみである.Ⅰr型PPBの治療は外科的切除のみ(または成人期など特定の臨床状況においては経過観察)である.Ⅰr型PPB患者のPPB関連生存率は100%である [Messinger et al 2015].
Ⅱ型およびⅢ型PPBは,より積極的な外科的切除と集中的化学療法を行う;5年生存率は,Ⅱ型71%Ⅲ型53%である.病変の広がりによっては初期の外科的切除が不可能なⅡ型またはⅢ型PPB小児も存在する.このような場合,生検→術前補助化学療法→切除→その後の化学療法が実施される.
PPBの切除は,Wilms腫瘍の切除と同様に,腫瘍の破壊や撒布を誘発しないように注意しながら行う必要がある.PPBの固形成分は非常にもろいため,少量の破壊や撒布は避けられないことが多い.
術中に胸壁内,心膜および/または横隔膜への広がりが確認された場合,肉眼で確認できる腫瘍はすべて取り切ることが推奨される.切除できない部位の残存病変は,チタンでクリップし,X線撮影による位置確認と放射線治療を考慮する.横隔膜に病変がある場合は,横隔膜の一部を切除し,ゴアテックスパッチを使用する必要がある.
診断時に切除不能と判断された腫瘍は,化学療法後に切除を行う.術前補助化学療法を受けた患者では,明らかな腫瘍縮小がみられることもあるが,この反応は一次的であり,腫瘍は急速に再発しうる.化学療法だけでは,固形PPBの根治には不十分である.
1回目または2回目の手術で肉眼的な完全切除が得られない場合,局所制御のために追加手術が必要になることがある.

胸水貯留.胸水のドレナージは慎重に行わなければならない.固形腫瘍が胸壁に浸潤し,胸膜腔が閉塞することがしばしばある.針やカテーテルを適切に配置するためには,X線による誘導がないと難しいかもしれない.

転移病変に対する手術.脳実質はPPBが遠隔転移する最も一般的な部位である.頭蓋内病変については,切除が強く提案される.脳PPB転移を切除した多くの患者が生存している[Priest et al 2007Nakano et al 2019a].
PPBの再発または転移治療または残存した切除不能な腫瘍の局所制御では,主に放射線治療が用いられる [Priest et al 1997Kamenova et al 2006Indolfi et al 2007Williams et al 2012].放射線治療は脳転移のようなPPBの他の症状に対する局所制御としても用いられる.
再発に対する治療は個別のアプローチが求められる.治療に関する更なる情報や,一律に治療されたPPB患者のコホートからの結果については,国際PPB/DICER1登録から入手できる(www.PPBregistry.org; dicer1@childrensmn.org).

多結節性甲状腺腫(MNG)および甲状腺癌

  • 生検を伴うまたは伴わない経過観察.術前の評価方法は,DICER1病的バリアントの有無に関わらず,散発性結節と同様である.米国甲状腺協会および米国臨床内分泌医会/米国内分泌学会/内分泌内科医会合同のガイドライン (こちらから入手可能) を参照のこと[Gharib et al 2016] (全文).
  • 結節の存在と性質を確認し,穿刺吸引細胞診(FNA)の必要性を決定するために,超音波検査を用いる [Francis et al 2015American College of Radiology].過去に放射線被曝の既往があり,かつ/または,充実性結節,低エコー性所見,横断画像で縦長の形状,有棘/小葉または浸潤縁,微細石灰化と一致する高エコー領域,および異常なリンパ節などの(これらに限らないが)超音波画像上の特徴を有する患者では,より小さい結節でもFNAが検討されるべきである.良性に見える濾胞細胞(Hürthle細胞および/またはリンパ球を含む)を示すFNAの結果は,(ほとんどの場合)結節性過形成,濾胞性腺腫,またはリンパ球性甲状腺炎を示唆するものである.変動のない結節がある場合は、継続的な追跡治療が適切である.
  • 症候性の結節,または継続したUS評価で明らかな増大のみられる結節や甲状腺細胞診報告システムであるベセスダシステムに基づく細胞診異常の結節に対しては手術が適応となる[Pusztaszeri et al 2016].FNAの結果が甲状腺乳頭癌陽性だった場合,甲状腺全摘術は,手術が可能な患者に対して選択される治療法である.
  • 放射性ヨウ素は,遠隔(肺)転移や再手術が困難な難治性患者に対して最も有効な治療法である.

卵巣性索間質腫瘍

卵巣性索間質腫瘍(セルトリ-ライディッヒ細胞腫瘍[SLCT],ギナンドロブラストーマなど)は稀だが,臨床的多様性,治療や予後に焦点を当てた研究がいくつかある.治療方法は卵巣胚細胞性腫瘍で用いられるものに基づくが,データは限定的である [Schneider et al 2002Schultz et al 2012Schultz et al 2017].
画像もしくは検査結果などから卵巣腫瘍の存在が示唆された場合は,婦人科腫瘍の専門家への紹介が提案される.通常,最初の治療として,外科的切除と病期分類を行う.多くの少女や若年女性に対し,妊孕性温存術が推奨される.
ほとんどの患者で片側卵管卵巣摘出術が施行され,腹水の採取と腹膜洗浄細胞診を行う.リンパ節はX線で評価し,術中も注意深く観察し,臨床的所見があれば切除するべきである.分化度や病期は予後に影響し,補助療法が必要かどうかを判断するのに重要である.腫瘍が破裂すると病期の進行を招きかねないので,極力避けるよう努めなければならない.破裂してしまった場合は,破裂したタイミング(術前なのか術中なのか)を慎重に記録し,腫瘍のタイプによっては,それにより補助化学療法が必要となる.
SLCTに対して,化学療法などの術後補助療法を実施するかどうかは,組織像と病期に基づいて決定される:

  • セルトリ-ライディッヒ細胞腫瘍.Ⅰb期以上(周術期または術前の破裂を伴うⅠc期を含む)のSLCTまたは低分化型SLCTに対しては,補助化学療法が必要となることが多い.病期および病態,妊孕性温存の希望や必要性に応じて,追加手術も検討する必要がある.

化学療法をする場合は,シスプラチン,エトポシド,ブレオマイシン(PEB)またはシスプラチン,エトポシド,イホスファミド(PEI)などの白金系レジメンが用いられることが多い.成人では,タキサン系またはアントラサイクリン系などのレジメンが使用されることが多い.現在,化学療法が必要で未治療の卵巣性索間質腫瘍患者に対する,PEBとカルボプラチン・パクリタキセルを比較する第Ⅱ相無作為化試験が,婦人科腫瘍グループで行われている.
卵巣性索間質腫瘍の経過観察は腫瘍マーカーと画像に注意する.CTよりもMRIや超音波の方が,電離放射線を伴わないので好ましいかもしれない;しかし,幼い小児に対するMRIは鎮静が必要となるため,限定的である.利用可能な測定機器は,小さい腫瘍や腹膜病変に対しては感度が低い.MRIを使用する場合は,適切な画像診断プロトコルが使用されるように,放射線科医に卵巣腫瘍が臨床的に疑われることを知らせるべきである.

  • ギナンドロブラストーマ.上記同様,ギナンドロブラストーマに対する治療も,診断時の病期とSLCTの分化度に基づいて決定される.

その他の腫瘍

嚢胞性腎腫

  • 手術.治療は,腎臓の部分切除または全摘出による外科的切除である.広範な両側性嚢胞が発生している場合は,外科的にすべての嚢胞を取ることは難しいかもしれない.
  • 化学療法.広範な両側性病変があり急速に増大しているような稀な症例では化学療法を用いることも考慮されるが,その効果は未確認である.

毛様体髄上皮腫(CBME)5つの治療選択があげられる:

  • 経過観察.CBMEとPPBを発症した9歳の患者1例では,高解像度画像と眼科検査により,2年間にわたりCBMEを6ヶ月間隔で経過観察した.CBMEの組織像は不明である [Priest et al 2011].
  • 部分的切除.小さく限局的な腫瘍(<3 clock hours)の場合,視力を保持したまま部分的な切除で治療可能なこともある.しかしながら,これらの腫瘍の多くは進行しやすい.41例のCBME患者の研究で,8人が部分切除を受けたが,50%で再発した[Kaliki et al 2013].
  • プラーク小線源療法は小さい腫瘍では考慮されうる.小線源療法を行った6例の研究では,5例で腫瘍の制御が達成され,4眼球が治癒に至った.2例が核出された;1例は局所再発のため,もう1例は放射線の影響で眼球癆が2次的に生じたためであった [Ang et al 2019].CBME41例を対象とした別の研究では,プラーク小線源療法は一次治療として3例に施行され,中央値1年の追跡期間中に再発なく奏効した[Kaliki et al 2013].
  • 核出術.診断時に進行しているCBME(壊れやすそうな大型腫瘍,腫瘍性毛様体炎膜,血管新生緑内障)は迅速に核出するべきである.この決定的治療後は長期生存できることが多い.CBMEとPPBを発症した5人のうち4人が核出術を受け,7ヶ月から44年の追跡が報告されている[Priest et al 2011Laird et al 2013] [Priest et al 2011Laird et al 2013].
  • 眼窩内容摘出術.稀にしかないが,眼球を越えて進展するCBMEには,内容摘出術(と補助化学療法および放射線照射)が必要となる.内容摘出術後の長期生存例もあるが,通常予後不良である[Tadepalli et al 2019].

鼻腔軟骨中皮性過誤腫(NCMH).NCMHは通常,完全外科的切除により管理される.腫瘍が到達可能な場所である場合,経鼻内視鏡による切除が1つの方法である.完全切除が難しい場合は,多くの場合,減量手術でも効果的ではあるが,完全切除が望ましい.
子宮頸部の胎児型横紋筋肉腫(ERMS)は,通常子宮頸部に限局し,典型例では間質深部浸潤は見られないため,子宮全摘出までは必要ないことが多い.部分摘出後にERMSに適した化学療法を行うのが1つの方法である.化学療法後に残存腫瘍がないかを確認するために生検を行う.追加治療は化学療法後の生検結果と追跡期間中の画像評価に基づいて決定される.

下垂体芽腫.外科的切除が管理の主軸となる.文献に記載のある症例では,補助(通常は多剤併用)化学療法を実施した例や放射線治療例も記録されている[Scheithauer et al 2012].術後には内分泌系の検査結果,特にACTHの正常化が期待され,疾患活動性の指標として有用である.

松果体芽腫.当面の管理課題としては,閉塞性水頭症に対する介入が考えられる.生検よりは開頭除去術が治療選択となり,積極的な手術法が生存期間を延長させる.最大限の外科的切除後,標準的な補助療法として,分割放射線照射(脳および脊椎)と化学療法を行う[Tate et al 2011].この併用療法により,非転移性松果体芽腫では無増悪生存期間が60-70%だったことが報告されているが,放射線治療を受けなかった小児では予後不良のままであった [Mynarek et al 2017].

DICER1関連CNS肉腫.全体の摘出を目指した治療が管理の中心となる;補助放射線療法と多剤併用化学療法の使用も記載されている.

サーベイランス

生殖細胞系列DICER1病的バリアントを持つ患者に対するサーベイランスガイドラインが発表されている[Schultz et al 2018].患者/家族やその支援者への教育が,サーベイランスの肝となる.患者やその支援者は考慮すべき徴候や症状について知らされるべきである.腫瘍の徴候が見られた場合は,追加検査が必要となる.この表は腫瘍発見後のサーベイランスを取り上げるものではない.

表4.
DICER1 腫瘍易罹患性患者に推奨されるサーベイランス

臓器/関連事項 評価方法 頻度
胸膜肺芽腫 いずれかの徴候/症状の有無についての臨床的な評価(頬呼吸,咳,発熱,疼痛,気胸など) いずれかの気になる徴候や症状があればすぐに調べる
胸部CTおよび 胸部X線
  • 生後すぐのX線,8歳まで4-6ヶ月ごと,12歳までは年1回
  • 生後3-6ヶ月で胸部CTを考慮する.最初のCT画像が正常であれば: 2.5-3歳で再度CT撮影を実施する.
  • 12歳以降に診断された場合, その時点での胸部X線または胸部CT撮影を実施する.
多結節性甲状腺腫 /甲状腺腫瘍 甲状腺の非対称性および/または結節の有無を評価
  • 診断時(年齢によらず)
  • 年1回
甲状腺 US
  • 8歳までUSを考慮1.問題なければ,3-5 年ごとにUSを実施.
  • 甲状腺の非対称性および/または結節の早期発見
  • 化学療法後: 10歳までまたは治療後3-5年以内
甲状腺機能検査 甲状腺機能亢進症や低下症の臨床的徴候や症状があれば
卵巣性索間質腫瘍 (および子宮頸部腫瘍を含むその他女性器腫瘍)
  • いずれかの徴候/症状の有無についての臨床的な評価 (多毛症,男性化,腹部膨満感,疼痛,腫瘤,不正出血など)
  • 骨盤・腹部US
女性: 6-12ヶ月ごとの骨盤 USを8歳までに開始し,少なくとも40歳まで実施2
嚢胞性腎腫(およびその他腎腫瘍)
  • いずれかの徴候/症状の有無についての臨床的な評価(腹部または側腹の腫瘤, 疼痛, 血尿など)
  • 腹部 US
  • 8歳まで6ヶ月ごとの腹部US,12歳までは年1回
  • 12歳以降に診断された場合, その時点での腹部 USを実施
毛様体髄上皮腫
  • 視力測定
  • 散瞳眼底検査
  • 診断時(年齢によらず)
  • 3歳から年1回少なくとも10歳まで
鼻腔軟骨中皮性過誤腫 呼吸困難,摂食障害,鼻漏,鼻出血,視力障害,中耳炎のスクリーニングのための臨床的評価
  • 年1回
  • 徴候や症状があれば,耳鼻咽喉科に紹介する
下垂体芽腫 コルチゾール過剰分泌(クッシング症候群)や眼筋麻痺,斜視,尿崩症などの徴候/症状に対する臨床的評価 年1回
気になる症状があれば,画像診断を含む迅速な検査が重要であることを教育する
松果体芽腫 頭痛、胸部圧迫感、嘔吐、嗜眠、その他の神経学的特徴(上方視線麻痺、眼振)など閉塞性水頭症の徴候/症状に対する臨床的評価
DICER1-関連CNS肉腫 頭痛や嘔吐,歩様変化,その他神経学的変化の徴候/症状に対する臨床的評価

CNS=中枢神経系;US=超音波検査

  1. DICER1患者にみられる甲状腺癌は通常高分化型である.分化型甲状腺癌を早期に発見する重要性は,甲状腺髄様癌のリスクを増加させる腫瘍易罹患性と同様に確立されていない.医療機関や家系によっては,小児期の健康診断から18歳までに超音波検査に移行することを希望する場合もある.稀ではあるが,低分化型甲状腺癌もDICER1病的バリアントを持つ患者で報告されている[Chernock et al 2020].
  2. 小児期の腹部超音波検査を実施する際に,骨盤内超音波検査も早期に開始することを考慮するべきである.サーベイランスをいつ終了するのがいいかははっきりしていない;が,SLCTの95%は40歳未満で診断されている.小児や若年成人では経腹的骨盤超音波検査が最も適切であることに留意したい.青年後期または成人においては,個別に経腟超音波検査への移行を考慮する.

リスクのある血縁者の評価

年齢に応じた適切なサーベイランスと早期介入を推奨するために,見たところ無症状でリスクのある血縁者の遺伝的状態を明らかにするために,家系内のDICER1病的バリアントの分子遺伝学的検査を行うことが適切である.

  • リスクのある新生児(4ヶ月未満)への家系特異的病的バリアントの検査が推奨される.DICER1病的バリアントがあることがわかれば,CTスキャンによる肺のスクリーニングを開始する[Schultz et al 2018].
  • まだ実施していなければ,(介入を必要とするPPB腫瘍のリスクが高い)7歳未満の小児や(小児後半/思春期前半から若年成人の間に卵巣腫瘍のリスクのある)少女/若年女性から優先して分子遺伝学的検査を実施するべきである.

注:家系内のDICER1病的バリアントがわかっているリスクのある第一度近親者が,分子遺伝学的検査を受けられないまたは検査を選択しない場合,家系内のバリアントを受け継いでいないことを遺伝学的検査で確認できるまで,サーベイランスの項に記載のある推奨に基づいてサーベイランスを実施すべきである.

DICER1病的バリアントが疑われる発端者の血縁者.家系内の罹患者で確認のためのDICER1分子遺伝学的検査を実施できない場合,リスクのある血縁者で分子遺伝学的検査を実施することは可能で,先に配列解析を行い,病的バリアントが見つからなければ,遺伝子標的欠失/重複解析を行う.DICER1病的バリアントが同定されれば,その家系員は腫瘍易罹患性があると考えられる.DICER1病的バリアントが同定されなかった場合,腫瘍易罹患性のリスクは変化しない.

遺伝カウンセリングを目的としたリスクのある血縁者の検査に関わる問題は,遺伝カウンセリング  の項を参照のこと.

妊娠の管理

国際PPB/ DICER1登録(www.PPBregistry.org)のデータによると,出生前の超音波検査で,31-35週より早期に肺嚢胞を検出した.この知見に基づき,妊娠後期(third-trimester)の超音波検査が推奨される.
稀な例ではあるが,大きい肺嚢胞は呼吸困難を引き起こすため,出生前に肺嚢胞を検出した場合は,妊娠の経過観察と分娩管理のために,速やかに高リスク出産や胎児医療の専門家に紹介することが推奨される.

現在研究中の治療

DICER1関連癌のサーベイランスガイドラインを改良し,小児および成人の転帰を改善するために複数の研究活動が進行中である.より詳細な情報は,www.PPBregistry.orgを参照のこと.
広範な疾患や症状の臨床研究に関する情報は, 米国では ClinicalTrials.gov を, ヨーロッパではEU Clinical Trials Register を参照のこと.


 

遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝学的検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的、倫理的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

DICER1腫瘍易罹患性(DICER1)は,浸透率の低い常染色体顕性遺伝(優性遺伝)形式で遺伝する.

家族構成員のリスク

発端者の両親

  • DICER1関連胸膜肺芽腫(PPB)の診断のついている患者の約80%は,親のPPBやその他DICER1関連腫瘍の発症の有無に関わらず,片方の親からDICER1生殖細胞系列病的バリアントを受け継いでいる.
  • DICER1関連PPB患者の約20%は,de novo(新たな)生殖細胞系列病的バリアントの結果としてDICER1バリアントを有する[Hill et al 2010].
  • 両親の遺伝学的状態を明らかにし,発端者が親から病的バリアントを受け継いでいるのか,発端者で起こったde novo(新たな)のDICER1病的バリアントなのかを決定するために,発端者の両親に対して分子遺伝学的検査が推奨される.
  • 発端者で同定された病的バリアントが両親の白血球DNAで検出されなかった場合,発端者はde novo(新たな)病的バリアントを有しているか,理論的には片方の親の生殖細胞系列モザイクの可能性がある.

生物学的な親でない可能性も,明らかなde novo(新たな)病的バリアントの他の解釈として考えられる.

  • 家系員が疾患を認識していない,浸透率が低い,あるいは家族の情報が不足しているなどの理由により,単発または複数のDICER1関連腫瘍を発症している患者において家族歴がないように見える.それゆえ,家系内の病的バリアントを確認しない限り,明らかに家族歴がないとは言い切れない.注:DICER1家系内で複数のPPB患者がいることは稀だが

発端者の同胞 

  • 同胞のリスクは母親が保因者であるか否かに依存する。
  • 母親が、疾患を引き起こすCD40LG変異の保因者である場合は、妊娠ごとに疾患の原因となる変異が遺伝される可能性は50 %である。変異を受け継いだ男性同胞は罹患し、変異を受け継いだ女性同胞は保因者となる。
  • CD40LG変異の保因者女性は無症候性であり、疾患の免疫学的、あるいは生化学的マーカーを持たない。
  • この疾患において生殖細胞系列モザイクが実証されている。このような場合、発端者の疾患の原因となる変異が、母親の白血球から抽出したDNAから見つからなくても、同胞のリスクは高いままである。

発端者の子

発端者の同胞のリスクは両親の遺伝学的状況に依存している.

    • 発端者の親が生殖細胞系列DICER1病的バリアントを有する場合,同胞がその病的バリアントを受け継ぐリスクは50%である.
    • 発端者で検出されたDICER1病的バリアントがいずれの親の白血球DNAにも認められない場合でも,理論的には親の生殖細胞系列モザイクの可能性があるため,同胞の再発リスクは1%と推定される[Rahbari et al 2016].
    • 両親がDICER1病的バリアントの検査をしておらず,臨床的に非罹患である場合,ヘテロ接合性の親における浸透率の低さや理論的には生殖細胞系列モザイクの可能性があるため,発端者の同胞は依然としてDICER1関連腫瘍やその他臨床症状のリスクは高いと考えらえる.

他の家族構成員

生殖細胞系列DICER1病的バリアントを有する患者の子はそれぞれ50%の確率で病的バリアントを受け継ぐ.

保因者の検出

他の血縁者のリスクは発端者の両親の遺伝学的状況に依存する:一方の親が生殖細胞系列DICER1病的バリアントを有する場合,その家系の血縁者にはPPBおよび/または関連腫瘍や臨床的特徴のリスクがある.

遺伝カウンセリングに関連した問題

早期診断と治療を目的とした,リスクのある血縁者の検査に関する情報は,マネジメント,血縁者に対するリスクの項を参照のこと.

家族計画 

  • 遺伝的リスクを決定し,出生前/着床前診断の利用を検討するための最適な時期は妊娠前である.
  • 罹患した,またはリスクがある若年成人に対して遺伝カウンセリング(子の潜在的リスクと生殖医療の選択肢の検討を含む)を提供することは適切である.

出生前診断と着床前診断

罹患した家系員に生殖細胞系列DICER1病的バリアントが同定されれば,出生前診断と着床前診断を受けることが可能である.注:出生前の分子遺伝学的検査で生殖細胞系列DICER1病的バリアントの有無を確認できるが,出生前検査ではDICER1関連腫瘍を発症しているかどうかは予測できない(浸透率の項参照).
医療の専門家の間や家族内においても,出生前診断に対する考え方の相違が存在しうる.ほとんどの施設では出生前診断を行うか否かの決断は両親に委ねているが,この問題に関しては議論することが適切である.
訳注:日本ではDICER1腫瘍易罹患性における着床前診断および出生前診断は行われていない


関連情報

GeneReviewsスタッフは、この疾患を持つ患者および家族に役立つ以下の疾患特異的な支援団体/上部支援団体/登録を選択した。GeneReviewsは、他の組織によって提供される情報には責任をもたない。選択基準における情報についてはここをクリック。

  • National Library of Medicine Genetics Home Reference

DICER1 syndrome

  • American Cancer Society

Phone: 800-227-2345
www.cancer.org

  • American Childhood Cancer Organization

MD
Phone: 855-858-2226
Email: staff@acco.org
www.acco.org

  • CancerCare

275 Seventh Avenue
22nd Floor
New York NY 10001
Phone: 800-813-4673
Fax: 212-712-8495
Email: info@cancercare.org
www.cancercare.org

  • National Cancer Institute (NCI)

BG 9609 MSC 9760
9609 Medical Center Drive
Bethesda MD 20892-9760
Phone: 800-4-CANCER
Email: NCIinfo@nih.gov
Children with Cancer: A Guide for Parents

  • National Coalition for Cancer Survivorship (NCCS)

A consumer organization that advocates on behalf of all people with cancer
8455 Colesville Road
Suite 930
Silver Spring MD 20910
Phone: 877-622-7937 (toll-free); 301-650-9127
Fax: 301-565-9670
Email: info@canceradvocacy.org
www.canceradvocacy.org

  • International Ovarian and Testicular Stromal Tumor Registry

Cancer and Blood Disorders
Children's Hospitals and Clinics of Minnesota
910 East 26th Street
Suite LL08
Minneapolis MN 55404
Phone: 612-813-7121
Fax: 612-813-7108
Email: krisann.schultz@childrensMN.org; otst@childrensmn.org
www.otstregistry.org

  • International Pleuropulmonary Blastoma (PPB) / DICER1 Registry

Cancer and Blood Disorders
Children's Hospitals and Clinics of Minnesota
910 East 26th Street
Suite LL08
Minneapolis MN 55404
Phone: 612-813-7121
Fax: 612-813-7108
Email: Dicer1@childrensMN.org
www.ppbregistry.org


分子遺伝学

分子遺伝学とOMIMの表の情報はGeneReviewsの他の場所の情報とは異なるかもしれない。表は、より最新の情報を含むことがある。

表A
DICER1 腫瘍易罹患性::遺伝子とデータベース

遺伝 染色体座位 タンパク質 遺伝子座位特異的データベース HGMD ClinVar
DICER1

14q32​.13

エンドリボヌクレアーゼ Dicer

DICER1 データベース

DICER1

DICER1

データは以下の標準的参照資料をもとに作成した.遺伝子はHGNC,染色体座位は OMIM,タンパク質はUniProtを参照した.リンクが提供されたデータベース(遺伝子座位特異的データベース, HGMD,ClinVar)の記述についてはこちらを参照のこと.

表B
DICER1腫瘍易罹患性に関するOMIMの情報(OMIMですべてを見る)

138800 甲状腺腫, 多結節性 1, セルトリ-ライディッヒ細胞腫瘍を伴うまたは伴わない; MNG1
180295 横紋筋肉腫, 胎児型, 2; RMSE2
601200 胸膜肺芽腫; PPB
606241 DICER 1, リボヌクレアーゼ III; DICER1

分子病理学

DICER1はマイクロRNA(miRNA)とsiRNAの生合成経路で,前駆体となる二本鎖RNAを活性型に切断する機能を持つRNaseⅢをコードする.DICER1の機能喪失型生殖細胞系列病的バリアントは,特定のアミノ酸の体細胞ミスセンス病的バリアントと組み合わさって( 下記参照),miRNAヘアピン構造の5’(5p)末端からの成熟miRNA産生を阻害する[Pugh et al 2014].ヘテロ接合性の生殖細胞系列DICER1機能喪失型病的バリアントを持つ多くの人は健康であり,これは野生型アレルからのDICER1酵素の発現が上昇しうるためと考えられる

疾患の発症メカニズム. DICER1腫瘍易罹患性(DICER1)は.機能喪失型機構で発症し,疾患発現には体細胞の”セカンドヒット”が必要である( 下記参照).

検査機関におけるDICER1特異的な技術的考察.この疾患では.体細胞モザイクが報告されているため,一次または追加の解析分析は予想されるレベルのモザイクを検出できるように設計されるべきである.

がんと良性腫瘍

体細胞性DICER1病的バリアントはさまざまな種類の腫瘍で報告されている [Slade et al 2011de Boer et al 2012Heravi-Moussavi et al 2012de Kock et al 2013aWu et al 2013Doros et al 2014Pugh et al 2014] .
体細胞ミスセンス病的バリアントはRNaseⅢドメイン(コドン1705,1709,1809,1810,1813)中のアミノ酸に優先的に影響し,“ミスセンスホットスポット”という特徴を持つ.これらの体細胞病的バリアントは,miRNAヘアピン構造の5’(5p)末端からの成熟miRNA産生を阻害するが,ヘアピン構造の3’(3p)末端からの切断機構は保存される[Gurtan et al 2012Anglesio et al 2013Pugh et al 2014].
他の腫瘍で検出された体細胞性DICER1バリアントの例

  • セルトリ-ライディッヒ細胞腫瘍とギナンドロブラストーマのほぼすべてで腫瘍の検査をしたところ[Schultz et al 2017],これらのうち半分はDICER1の生殖細胞系列またはモザイクと関連していた.
  • PPB15例中3例(20%)で,生殖細胞系列にはない腫瘍特異的なDICER1の機能喪失型ミスセンス病的バリアントがあった [Pugh et al 2014]
  • ERMS腫瘍52例中2例(4%)で,機能喪失型病的バリアントがあったが,生殖細胞系列DNAは調べられていない[Doros et al 2012].
  • 生殖細胞系列DICER1病的バリアントを持つ小児2例の松果体芽腫では腫瘍特異的な体細胞ミスセンス病的バリアントは検出されず,他の腫瘍形成経路があることが示唆される [Sabbaghian et al 2012].
  • 小児の原発性頭蓋内肉腫の95% [Koelsche et al 2018]
  • 鼻腔軟骨中皮性過誤腫の多くの症例.文献の系統的レビューにより,48例のNCMHが確認された [Mason et al 2015].
  • 細胞診が不確定な甲状腺結節で,良性の濾胞性腺腫から分化型甲状腺癌,稀に低分化型甲状腺癌まで幅広い[Ravella et al 2018Wasserman et al 2018Yang et al 2018Chernock et al 2020]

更新履歴:

  1. Gene Reviews著者: Kris Ann P Schultz, MD, Douglas R Stewart, MD, Junne Kamihara, MD, PhD, Andrew J Bauer, MD, Melissa A Merideth, MD, MPH, Pamela Stratton, MD, Laryssa A Huryn, MD, Anne K Harris, MPH, Leslie Doros, MD, Amanda Field, MPH, Ann G Carr, MS, CGC, Louis P Dehner, MD, Yoav Messinger, MD, and D Ashley Hill, MD.
    日本語訳者: 箕浦祐子(札幌医科大学大学院医学研究科遺伝医学)櫻井晃洋(札幌医科大学附属病院遺伝子診療科)GeneReviews最終更新日: 2020.4.30.  日本語訳最終更新日: 2022.6.29[in present]

     

原文 DICER1 Tumor Predisposition

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