GRJ top > 遺伝子疾患情報リスト
grjbar

Birt-Hogg-Dubé症候群
(Birt-Hogg-Dubé Syndrome)

Gene Reviews著者: Jorge R Toro, MD
日本語訳者: 入部康弘(横浜市立大学泌尿器科学)・古屋充子(横浜市立大学分子病理)

Gene Reviews 最終更新日: 2014.8.7. 日本語訳最終更新日: 2018.8.22.

原文: Birt-Hogg-Dubé Syndrome


要約

疾患の特徴 

Birt-Hogg-Dubé症候群(BHDS)の臨床的な特徴には皮膚症状(線維毛包腫、毛盤腫/血管線維腫、毛包周囲線維腫、アクロコルドン)、肺嚢胞/気胸歴、そして様々なタイプの腎腫瘍が含まれる。病気の重症度は同一家系内でも患者により著しく異なりうる。皮膚病変は典型的には20代〜30代に現れ、年齢とともにサイズも数も増加していくのが一般的である。肺嚢胞はほとんどの場合、両側性また多発性に生じる。大抵は無症候性だが、自然気胸を発症するリスクが高い。BHDS患者は腎腫瘍発症のリスクが健常人の7倍となっており、典型的には両側性かつ多発性に発症するが通常は発育が遅い。腫瘍診断時年齢の中央値は48歳である。最も頻度の高い組織型はオンコサイトーマと嫌色素性癌のハイブリッド腫瘍(いわゆるhybrid oncocytic chromophobe tumor: HOCT)と嫌色素性癌である。家系によっては腎腫瘍と常染色体優性遺伝性の自然気胸の両方あるいはいずれかを発症するが皮膚症状は発症しない場合もある。

 

診断・検査 

BHDSは臨床所見と分子遺伝学的検査によって診断される。FLCN(別名BHD)はBHDSとの関連が唯一わかっている遺伝子である。シークエンス解析では患者家系の88%でFLCNに病的バリアントを同定することができるが、他の解析手法で同遺伝子の部分あるいは全欠失を認める例も3-5%存在する。したがって臨床診断基準を満たす患者のおよそ7-9%ではFLCNの病的バリアントを同定できない。

臨床的マネジメント 

症状の治療毛包腫/毛盤腫に対するレーザー焼灼は一時的に著明な効果をもたらすが、通常は再発する。気胸に対しては一般的な治療を行う。腎腫瘍に対しては可能ならば腎部分切除が好ましいが、腫瘍のサイズと部位にもよっては腎摘除が必要となる

サーベイランス:定期的な腎MRIが腎病変のスクリーニングに最も適している。MRIが撮影できない場合は腹部/骨盤造影CTを撮影するが、被曝を重ねることによる長期的影響はわかっていない。悪性黒色腫の検索のため全身の皮膚の定期的観察が検討されるべきである。

回避すべき薬剤や環境喫煙、高気圧、放射線は避けるべきである。

リスクを有する血縁者の評価分子遺伝学的検査を行い、家系特異的な病的バリアントを有する者を早期に同定することは、より確実な診断につながり、またコストの高いスクリーニング検査を、リスクはあるが実際には病的バリアントを受け継いでいない者に施行することも減らすことができる。

遺伝カウンセリング 

BHDSは常染色体優性遺伝形式をとる。BHDS患者の子どもは50%の確率で病的バリアントを受け継ぐ。発症している血縁者の病的バリアントが同定されていれば、出生前診断が可能である。


診断

臨床診断

Birt-Hogg-Dubé症候群(BHDS)の三主徴

  • 皮膚症状. BHDS患者は通常、ドーム型をした皮膚と同色の多発性小丘疹を顔、頸部、体幹上部に呈する。最初は線維毛包腫、毛盤腫、アクロコルドンが皮膚科的三徴とされた [Toro et al 1999]。しかし、BHDSに特異的なのは線維毛包腫だけである。毛包周囲線維腫と血管線維腫もまたBHDSに関連があるとされてきた。毛盤腫は本質的には、組織学的にも臨床的にも血管線維腫と区別し難い。毛盤腫という用語は、BHDSにおいて血管線維腫を発症するときの説明に用いられてきた。

    BHDSの皮膚科学的診断は、5つ以上の顔面または体幹の丘疹と、少なくとも1つの組織学的に確定した線維毛包腫がみられる者に対してなされる[Toro et al 1999]。
    • 線維毛包腫は中心毛包から伸びる2~4個の上皮細胞からなる網状束と定義される。境界明瞭でムチンの豊富な、あるいは肥厚した結合織からなる間質が上皮成分を被包することもある。診断には生検が必要である。
  • 注:薄片生検では通常は十分ではない。線維毛包腫の診断には1回以上の皮膚パンチ生検とパラフィン包埋ブロックの切片が必要なことがある。

    • 毛盤腫は過誤腫性の病変で、真皮網状層において肥厚した線維性結合織と血管間質が円形〜楕円形をなして境界明瞭に増生しており、辺縁には毛包がみられる。顔面では毛包が密集しているため、これらの病変の周囲にしばしば毛包がみられる。血管線維腫は臨床的にも組織学的にも本質的には毛盤腫と同じである。

    注:毛盤腫/血管線維腫があればBHDSを疑うが、診断を決定付けるものではない。血管線維腫は結節性硬化症(tuberous sclerosis complex [TSC])や1型多発性内分泌腫瘍(multiple endocrine neoplasia type 1 [MEN1])にもしばしばみられる。

    • アクロコルドン、あるいはスキンタグは有茎性の軟らかい丘疹で、組織学的には肥厚した軽度乳頭状の表皮に疎な結合織の間質と血管が伴うことが特徴である。
    • 毛包周囲線維腫は真皮網状層において線維性結合織および血管間質が毛包を取り囲むように境界明瞭に増殖したものである。
  • 肺嚢胞および自然気胸.ほとんどのBHDS患者(89%)には多発性、両側性の肺嚢胞があり、胸部HRCTで同定できる。1人あたりの肺嚢胞の総数は0から166(平均16)である。24%(48/198)のBHDS患者は1回以上の気胸の既往があった[Toro et al 2007]。
    • 気胸の既往がある患者は全員多発性の肺嚢胞が胸部HRCTで同定された。BHDS      関連肺嚢胞は小葉間隔壁に隣接し(88.2%)、嚢胞内隔壁(13.6%)や細静脈の嚢胞内への突出(39.5%)があるが細胞増殖や炎症はみられない。BHDS関連肺嚢胞は肺胞が結合織に接する箇所である傍腺房領域において発生することが示唆される[Kumasaka et al 2014]。
  • 腎腫瘍. 腎腫瘍は通常両側性、多発性に生じる。組織型としてHOCT、オンコサイトーマ、嫌色素性腎細胞癌、ごく一部に淡明細胞型腎細胞癌がある。注:FLCNのバリアントはいくつかの腫瘍でみられる。分子遺伝学、癌と良性腫瘍の項を参照。

注:BHDSの疾患像と診断は元々皮膚病理学に基づいていた。しかし最近の研究では、BHDS患者のなかには皮膚症状を発症することなく肺合併症と腎腫瘍のどちらか、あるいは両方を発症する者もいることが示されている。

分子遺伝学的検査

遺伝子

FLCNはその病的バリアントがBHDSをひき起こすことが知られている唯一の遺伝子である。

表1.
Birt-Hogg-Dubé症候群に用いられる分子遺伝学的検査の概略

遺伝子1 検査手法 当該手法による発端者の病原バリアントを同定率2
  FLCN エクソン11のシークエンス解析3,4 ~53%5
コーディング領域全体のシークエンス解析3 ~88%
欠失/重複解析6 ~3-5%
  1. 染色体領域と蛋白は表A. 「遺伝子とデータベース」、バリアントの情報は「分子遺伝学」の項を参照。
  2. [Schmidt et al 2005], [Toro et al 2008]
  3. シークエンス解析で検出されるバリアントは「良性」、「良性疑い」、「病的意義不明」、「病的疑い」、「病的」にカテゴリー分けされる。病的バリアントには遺伝子内の小さな欠失/挿入、ミスセンスバリアント、ナンセンスバリアント、スプライス部位バリアントも含まれうる。通常はエクソン単位、あるいは遺伝子全体の欠失/重複は検出されない。シークエンス解析で考慮されるべき事項に関してはこちらをクリック。
  4. 検出された病的変異:ポリシトシン部位における欠失(c.1285delC)/重複(c.1285dupC)
  5. 51家系中27家系(53%)でエクソン11のポリシトシン部位におけるシトシン塩基の欠失(c.1285delC)/重複(c.1285dupC)がみられる。変異のホットスポットといえる(表2を参照)。
  6. エクソン単位、あるいは遺伝子全体の欠失/重複はゲノムDNAのコーディング領域および隣接するイントロン領域のシークエンス解析では検出できない。様々な手法があるなかで利用されうるものとして定量的PCR、ロングレンジPCR、MLPA法、染色体マイクロアレイがある。

検査戦略

発端者の診断を確定するために

分子遺伝学的検査はBHDSと臨床的に診断された、あるいは疑われた全ての患者に対して推奨される。以下のどれか一つでも該当すればよい。

  • 顔面もしくは体幹に5個以上の丘疹と、少なくとも1個の組織学的に確定した線維毛包腫[Toro et al 1999]。BHDSの家族歴は問わない。
  • 顔面の丘疹が組織学的に血管線維腫と確定しており、かつ結節性硬化症(tuberous sclerosis complex [TSC])や1型多発性内分泌腫瘍(multiple endocrine neoplasia type 1 [MEN1])の診断基準を満たさない。
  • 多発性、両側性の嫌色素性癌、オンコサイトーマ、HOCT。
  • 単発性のオンコサイトーマ、嫌色素性、あるいはHOCTであるが、これらの組織型の腎腫瘍の家族歴がある。
  • 喫煙歴やCOPDの既往の無い原発性自然気胸の家族歴があり、常染色体優性遺伝である。

単一遺伝子検査

BHDSが疑われる発端者の分子診断のための一つの戦略は、FLCNの段階的検査である。

  • 分子遺伝学的検査はまずエクソン11のシークエンス解析から行う。患者の多くはエクソン11に病原バリアントを持っており、特に頻度の高い2パターンのいずれかである。
  • エクソン11で病原バリアントが同定できなかった場合はコーディング領域全体のシークエンシングを検討する。
  • 遺伝子全体のシークエンスを解析しても病原バリアントを同定できない場合、FLCNの欠失/重複解析を考慮する。

パネル検査

BHDSが疑われる発端者の分子診断のためのもう一つの戦略は、当該病態の諸症状をひき起こすとされている遺伝子を含む多遺伝子パネル検査である(「鑑別診断」の項を参照)。パネルによって検査手法も網羅する遺伝子も変わってくる。したがってBHDSの特徴を有する患者で原因となるバリアントを検出できるかもパネルにより変わってくる。パネル検査の紹介はこちら。遺伝子検査をオーダーする臨床医向けのより詳細な情報はこちら

エクソーム解析

臨床的にBHDSと診断されるが病原バリアントが検出されない患者に対しては、エクソーム解析も考慮されうる。エクソーム解析の紹介はこちら。エクソーム解析をオーダーする臨床医向けのより詳細な情報はこちら


臨床的特徴

臨床像

Birt-Hogg-Dubé症候群(BHDS)の臨床的特徴には線維毛包腫(特異的皮膚病変)、肺嚢胞/気胸の既往、様々な組織型の腎腫瘍が含まれる。疾患の重症度は同一家系内でも家系間でも著しく異なりうる。

皮膚病変

BHDSは血管線維腫から毛包周囲線維腫、線維毛包腫にまでわたる皮膚過誤腫のスペクトラムと関連がある[Toro et al 2008]。FLCNの生殖細胞系列バリアントのある家系は、BHDSの皮膚症状として血管線維腫(すなわち毛盤腫)、毛包周囲線維腫、あるいはその両方を生じうる[Toro et al 2008]。口腔の丘疹と皮膚膠原腫を発症する者もいる[Nadershahi et al 1997, Toro et al 1999]。BHDS患者の約14%に多発性の表皮嚢胞がみられる[Kluger et al 2010]。

皮膚病変の発症時期は典型的には20代から30代である。皮膚病変は年齢とともにサイズも数も増してくる傾向がある。皮膚病変の発症が遅いことと皮膚の表現型が軽いこととの間には関連がある。女性は男性よりも病変が小さく数も少ない傾向がある。

BHDSは多発線維形成性黒色腫[Lindor et al 2001, Khoo et al 2002, Welsch et al 2005, Toro et al 2008, Sempau et al 2010, Cocciolone et al 2010, Mota-Burgos et al 2013]、脈絡膜黒色腫[Fontcuberta et al 2011]を含む皮膚悪性黒色腫と関連することが報告されている。BHDS患者が一般健常人と比べ黒色腫を発症するリスクが高くなるかについてはさらなる研究が待たれる。

BHDS家系内に、隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)を発症した者と皮膚平滑筋肉腫を発症した者とがいたケースも最近報告されている[Toro et al 2008]。

肺嚢胞と自然気胸

肺嚢胞はほとんどの場合、両側性・多発性である。肺嚢胞があるBHDS患者の多くは無症状であるが、自然気胸を発症するリスクが高く、しばしば繰り返す。気胸の臨床症状は、無症状から呼吸困難・胸痛まで幅がある。臨床所見には頻呼吸あるいは呼吸音の減弱〜消失が含まれる。気胸の確定診断のためには画像検査としては胸部HRCTが必要となることもある。胸部X線では小房化気胸に対する感度が低いかもしれないからだ。

Toroらの最近の研究によれば[Toro et al 2008]、FLCNの生殖細胞系列バリアントを有する人の89%は胸部CTで肺嚢胞が見つかった。先行する報告例を全部合わせても77%なので、それを上回る数字となる。

同研究[Toro et al 2008]ではFLCNの生殖細胞系列バリアントを有する人の38%には自然気胸の既往があった。先行する報告例を全部合わせると自然気胸の既往を有する率は33%なので、これは同等の率である。

BHDS患者で気胸の家族歴がある人は、気胸の家族歴が無い患者に比べて気胸のリスクが統計学的に有意に高い。

BHDS患者は同一家系内でBHDSでない者よりも自然気胸のリスクが50倍高い[Zbar et al 2002]。

腎嚢胞・腎腫瘍

フランスからの報告で、スクリーニング時に腎癌を発症していない22人のBHDS患者のうち10人(45%)にエコー、CT、MRIで腎嚢胞を認めたというものがある[Kluger et al 2010]。

FLCNの生殖細胞系列バリアントがあり腎腫瘍を発症している患者約70人についての報告がある報告がある[Toro et al 2008]。最も頻度が高い腫瘍はオンコサイトーマと嫌色素性癌のハイブリッドタイプ、いわゆるHOCT(67%)で、嫌色素性腎細胞癌(23%)、腎オンコサイトーマ(3%)がそれに続く。腎オンコサイトーマだけが良性腫瘍であると考えられている[Pavlovich et al 2005]。頻度は低くなるが他の組織型では淡明細胞型腎細胞癌や腎乳頭状腎細胞癌もみられる。

BHDS関連腎腫瘍のほとんどは両側性、多発性で発育が遅い。診断時年齢の中央値は48歳[範囲31-71歳]である[Schmidt et al 2005]。

BHDS患者は、BHDSでない同胞に比べて腎腫瘍のリスクが7倍となる[Zbar et al 2002]。アメリカ国立衛生研究所(NIH)のアメリカ国立がん研究所(NCI)皮膚科癌クリニックと泌尿器科癌クリニックの双方で評価した結果、FLCNの生殖細胞系列バリアントを有する人の腎腫瘍の有病率は29-34%であった[Toro et al 2008]。ただし他の調査によればBHDS患者における腎腫瘍の頻度は6.5%であり、この頻度の高さは評価バイアスを反映しているかもしれない。

BHDS関連腎腫瘍は死亡率よりは罹病率に影響するかもしれない。腎部分切除術は腎機能を温存することによって腎腫瘍関連の罹病率を引き下げるかもしれない。というのも患者は通常、多発性、両側性に腎腫瘍を発症するからである。

術後診断または剖検で腎オンコサイトーシスが認められることがあり、BHDS患者の腎腫瘍を発症するポテンシャルを示している。[Toro et al 2008]。

耳下腺オンコサイトーマ

BHDS患者で耳下腺オンコサイトーマを発症した例は2000年に初めて報告された[Liu et al 2000]。その後も報告が続いている[Schmidt et al 2005, Toro et al 2008]。さらには、耳下腺多形腺腫を発症した例[Palmirotta et al 2008]、耳下腺Warthin腫瘍を発症した例[Maffé et al 2011]が報告されている。両側耳下腺腫瘍も2例報告がある[Maffé et al 2011, Lindor et al 2012]。耳下腺腫瘍に対する特異的なスクリーニングを行っていないにも関わらずBHDS患者にこれだけの頻度で認めること、両側性・多発性に認めることから、耳下腺腫瘍はBHDSの徴候であることが示唆される。

口腔内丘疹

フランスからの報告でBHDS患者21人のうち9人(43%)が口腔内に丘疹を発症していたとあり[Kluger et al 2010]、他にも報告がある[Nadershahi et al 1997, Toro et al 1999] 。

その他の所見

  • 甲状腺癌 BHDS患者の甲状腺癌は3例報告されている[Toro et al 2008, Kunogi et al 2010]。多結節性甲状腺腫[Drummond et al 2002, Welsch et al 2005]、甲状腺結節や嚢胞がみられた例も報告されている。フランスからの報告ではBHDS患者20人のうち13人(65%)にエコーで甲状腺結節や嚢胞が認められたとある。髄様癌やその他の甲状腺癌は認められなかった。甲状腺結節や嚢胞が認められた患者で甲状腺癌の家族歴のある者はいなかった。FLCNの生殖細胞系列バリアントが認められたBHDS家系10家系のうち9家系(90%)で甲状腺結節を発症した患者がみられた[Kluger et al 2010]。
  • 結腸癌 患者に結腸癌がみられた例はいくつも報告があるが[Toro et al 2008]、結腸癌とBHDSとが関連付けられるかについては議論がある[Khoo et al 2002, Zbar et al 2002](「遺伝子型と表現型の関連」、「分子遺伝学」の項を参照)。
  • 他のがん種がBHDSの患者でみられたというのはまれである。
  • 頭頚部の扁平上皮癌[Toro et al 2008]
  • ホジキン病[Toro et al 2008]
  • 子宮体癌Toro et al 2008]
  • 前立腺癌[Toro et al 2008]
  • 乳癌[Toro et al 2008, Kunogi et al 2010]
  • 子宮頚部扁平上皮癌[Toro et al 2008]
  • 横紋筋腫[Toro et al 2008]
  • 副腎腫瘤および副腎腺腫[Toro et al 2008, Kunogi et al 2010]
  • 脂肪腫、血管脂肪腫、膠原腫[Toro et al 1999]
  • 皮膚の神経系腫瘍:神経鞘腫(皮膚の神経鞘を原発とする良性腫瘍)、髄膜腫[Vincent et al 2003]、多発神経鞘腫[Renfree & Lawless 2012]
  • 卵巣嚢腫[Godbolt et al 2003]
  • 副甲状腺腺腫[Chung et al 1996]
  • 脈絡網膜病変[Walter et al 1997, Godbolt et al 2003]
  • 神経内分泌癌[Claessens et al 2010]

遺伝子型と表現型の関連

遺伝子型と表現型の関連が報告されている。しかしこれらの症状が本当にBHDSと関連しているのかについては分かっておらず、さらなる研究が待たれるところである。

FLCNの病的バリアントのタイプと肺および皮膚症状との間に関連はみられない。

先行研究ではc.1285delCバリアントのある患者は他のFLCNバリアントのある患者に比べて腎腫瘍のリスクが低い可能性があることが示唆されているが、これは大規模研究で検証する必要がある。

BHDS家系51家系で、頻度の高いFLCNバリアント2パターンで遺伝子型と表現型の関連を解析したところ、c.1285delCバリアント(エクソン11のC(8)モノヌクレオチドトラクトのバリアント)の患者はc.610delGCinsTAバリアントの患者よりも大腸腫瘍の発症リスクが有意に高かった(chi(2)=5.78, p=0.016)[Nahorski et al 2010]。

浸透率

三主徴に基づくと、BHDSの浸透率はかなり高いと考えられる。

促進現象

BHDSでは促進現象はみられない。

病名

Hornstein-Knickenberg症候群(HK)とは家族性多発性毛包周囲線維腫のことであるが、BHDSのスペクトラムに含まれるとされている[Schulz & Hartschuh 1999]。

頻度

様々な人種から100以上の罹患家系が報告されている。


遺伝子的に関連のある病態

常染色体優性遺伝性自然気胸

FLCNの生殖細胞系列バリアントは優性遺伝で自然気胸を発症する家系にもみられる。肺合併症のみが唯一の合併症のようである。浸透率は100%である[Graham et al 2005, Painter et al 2005]。


鑑別診断

皮膚病変

線維毛包腫は稀な疾患で、Birt-Hogg-Dubé症候群(BHDS)に特異的である。線維毛包腫は様々な皮膚病変に臨床的に似ているので、組織診が必要である。

アクロコルドン、別名スキンタグは非特異的で、BHDSでなくともみられる。

BHDS関連過誤腫は内臓悪性腫瘍のリスクの高い他の遺伝性皮膚疾患、例えば結節性硬化症(TSC)、家族性毛包上皮腫症、MEN1、Cowden症候群(PTEN過誤腫症候群;PTEN hamartoma tumor syndrome)といったものから区別されるべきである。

肺症状

いくつかの遺伝性あるいは非遺伝性疾患は、肺嚢胞と気胸の両方あるいはいずれかをきたす。詳細な病歴と身体診察がこれらの疾患とBHDSとの鑑別に有用である。こうした疾患には以下のようなものがある。

腎腫瘍

BHDSと違い、家族性腎癌症候群のほとんどはそれぞれ異なった組織像をとる [Linehan et al 2005]。家族性腎癌症候群とそれらの組織像は以下のものを含む。

  • von Hippel-Lindau症候群(von Hippel-Lindau syndrome;VHL症候群)。両側性・多発性の淡明細胞型腎細胞癌。VHL症候群の患者は中枢神経の血管芽腫、網膜血管腫、褐色細胞腫、内リンパ嚢腫瘍のリスクも高い。
  • 遺伝性腎乳頭状癌(Hereditary leiomyomatosis and renal cell cancer ; HPRC)。両側性多発性1型乳頭状腎細胞癌
  • 遺伝性平滑筋腫症および腎細胞癌(HLRCC)。通常は孤立性腎腫瘍で、管状乳頭腎細胞癌から2型腎乳頭状細胞癌、集合管癌まで一つの組織学的スペクトラムがある。HLRCCの患者は皮膚平滑筋腫と、発症が速く悪性度の高い子宮筋腫の両方あるいはいずれかを呈しうる。

臨床的マネジメント

診断がついたら行う評価

Birt-Hogg-Dubé症候群(BHDS)と診断された人に発現している症状と必要とされる治療を明らかにするために、以下の評価が推奨されている。

  • 皮膚科的精査と、疑わしい皮膚病変のパンチ生検を行う。
  • 肺嚢胞の評価には胸部の高解像度CT(HRCT)またはCTが強く推奨される。気胸の症候のある人には直ちに胸部X線とCTを撮り、適切な治療がなされるべきである。
  • 腹部/骨盤造影CTまたはMRIで腎腫瘍のスクリーニングを行う。エコーで腎の嚢胞性病変と充実性病変を鑑別できることがある。
  • 臨床遺伝専門医や遺伝カウンセラーにコンサルトする。

病変に対する治療

概して線維毛包腫と毛盤腫は良性病変であり、治療の必要はない。しかし、患者は審美的目的から治療を求めるかもしれない。特に病変が顔面にある場合は。線維毛包腫や毛盤腫は沢山出来るうえ再発するので治療が難しい。エルビウムYAGレーザーやフラクショナルCO2レーザーが相当程度の治療効果をもたらす可能性があるが、再発は起こりうる [Gambichler et al 2000, Jacob & Dover 2001, Kahle et al 2001]。シェービングや他の焼灼法も行われているが治療成績はまちまちである。

気胸の治療は一般的な例と一緒である。

腎部分切除術は可能である限り好ましい治療であるが、腫瘍のサイズと位置による[Pavlovich et al 2005]。BHDS関連腎癌の多発性・両側性に生じる性質に鑑みると、サイズの小さな腫瘍に関しては3.0cmに達するまでは経過観察するというアプローチが推奨される[Pavlovich et al 2005]。したがって3.0cm以上であったり急速に進行したりする腫瘍は通常、腎部分切除術が必要となる。外科的治療が推奨される状況においては全切除、少なくとも視認できる腫瘍はほぼ切除する。BHDS関連腎細胞癌においては外科的治療は「根治的」たりえないと考えられているが、BHDS関連腎腫瘍はしばしば発育が遅く、腫瘍減量や転移予防のために生涯で何度も外科的治療を受けるような例はほんの少数である。

一次病変の予防

BHDSに対する予防的あるいは根治的な治療は無い。しかしながら、腎細胞癌の発症は喫煙と最も強い正の連関がある[Moore et al 2005]。

サーベイランス

クリニカルサーベイランスに関してコンセンサスは無い。コンセンサスカンファレンスが開催される日が来るまでは、推奨されている事項は暫定的なものである。

BHDSの診断がついた患者、臨床症候は無いがFLCN病的バリアントがあることがわかっている人、リスクはあるが遺伝子検査を受けていない血縁者は、BHDSのスペクトラムを熟知した医師による定期的なモニタリングを受けるべきである。

腎腫瘍スクリーニング

  • 18歳以上でBHDSと臨床診断された、あるいはFLCN病的バリアントが確認された者には腎の画像評価を行うとよい。しかし、それ以下の年齢での遺伝子検査や腎のサーベイランスに関しては腎腫瘍の家族歴をふまえ個別の対応をとるべきである。
  • 年1回の腎MRIは腎病変のスクリーニングとして最も良い方法である。
  • MRIが撮影できなければ腹部/骨盤造影CTが選択肢となる。しかし長期間にわたる被曝の累積効果がBHDS患者にもたらす影響は知られておらず、研究もない。
  • 腎腫瘍の悪性度が低く、泌尿器科医も3.0cmルールを適用しているので[Pavlovich et al 2005]、腎腫瘍の家族歴がなく、年1回のMRIを2-3回撮影して腎腫瘍が認められなかった患者は疑い病変が出るまで2年ごとのスクリーニングでよいかもしれない。 :エコー検査は腎病変の特徴を詳しく調べるうえでは有用であるが、最初のスクリーニングのためのモダリティとして使われるべきではない。

  ・疑わしい病変(直径1.0cm未満、不確定な病変、あるいは複雑性嚢胞)がスクリーニングで認められた場合は、年1回MRIを撮影するべきである。MRIが撮影できなければ腹部/骨盤造影CTが選択肢となる。

  ・3.0cm以下の腫瘍は定期的な画像検査でフォローする。最大の腫瘍が最大径3.0cmに達したら腎部分切除術を考慮して泌尿器科医の評価を受けるのが望ましい[Stamatakis et al 2013]。

  ・急速な発育をみせる病変や、痛み、血尿、非典型的な症状などがみられた場合には、より個別化したアプローチが必要である。PET-CTはそのような場合の評価方法のひとつとなる。

黒色腫

BHDS患者ではメラノーマのリスクが高いことから、着色病変が疑われる箇所がないか、  
全身の皮膚を定期的に検索することを検討すべきである。

回避すべき薬物や環境
以下のものは回避すべきである。

  • 喫煙
  • 高い大気圧;自然気胸を誘発する。
  • 放射線への被曝

リスクのある血縁者への検査

家系特異的な病的バリアントがわかっているときは、リスクのある血縁者に早期の同定をするために分子遺伝学的検査を実施することは診断の確実性を上げるとともに、リスクのある家系で病的バリアントを受け継いでいない人に対して高価なスクリーニング検査を実施する無駄を減らす。

早期に臨床症状を認識することで、適切な時期での介入が可能になり、予後が改善することがあるかもしれない。したがって、無症状でもリスクがある血縁者にはクリニカルサーベイランスを行うのがよい。

リスクのある親族への遺伝カウンセリング目的の検査に関連する問題点についてはGenetic Counselingを参照のこと。

研究中の治療法

幅広い疾患と症状に関する臨床研究の情報へアクセスするにはClinicalTrials.govwww.ClinicalTrialsRegister.euを検索するとよい。

注:この疾患に関する治験はないかもしれない。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

Birt-Hogg-Dubé症候群(BHDS)は常染色体優性遺伝形式をとる。

家族ひとりひとりのリスク

発端者の両親

  • BHDSの人には親が罹患者の人もいれば、de novo病的バリアントの結果としてBHDSになった人もいる。
  • de novo病的バリアントで発症した症例の割合は不明である。微細な症状に関して評価されていない親が相当数いるうえ、臨床的には発症していない親に対して分子遺伝学的検査を行った十分なデータもないからだ。
  • 発端者のFLCN病的バリアントが同定されている場合、de novo変異があると疑われる発端者の両親には、分子遺伝学的検査を含む評価が推奨される。

注:BHDSの診断を受けた人のなかには罹患者の親をもつ人もいるが、家族の症状が認識できていなかったり、親が発症する前に早逝したり、親の病気の発症が遅かったりして家族歴がないかのようになる場合もあるかもしれない。

発端者の同胞

  • 発端者の同胞のリスクは発端者の両親の遺伝状況に依存する。
  • 発端者の親が臨床的に罹患していたりFLCN病的バリアントを有していたりしたら、発端者の同胞が当該病的バリアントを受け継いでいる可能性は50%である。
  • 発端者で同定されたFLCN病的バリアントをその両親とも有していなかったら、同胞の発症リスクは低いが一般の人よりは高い。胚細胞系列でモザイクが起こっている可能性があるからだ。

発端者の子

BHDS患者の子がFLCN病的バリアントを受け継いでいる可能性は50%である。臨床的重症度は予測できない。

発端者の他の血縁者

血縁者のリスクは発端者の両親の状態に依存する。親が罹患していれば、その人の血縁者はリスクを有していることになる。

関連する遺伝カウンセリング上の問題

リスクのある血縁者への、早期診断・治療を目的とした検査に関する情報については、前出の「マネージメント」中の『リスクのある血縁者への検査』を参照のこと。

明らかなde novo病的バリアントを有する家系における考慮事項

BHDS発端者の両親ともFLCN病的バリアントを有しておらず、臨床的にも支持する症候に欠ける場合、発端者のFLCNde novo変異が生じた可能性がある。しかし、父親あるいは母親と生物学的な繋がりが無い場合(例えば補助生殖)や、非公表の養子縁組といった医学でない点で説明がつかないかも考慮されよう。

リスクを有する無症状の血縁者に対する検査

リスクを有する血縁者への分子遺伝学的検査は、クリニカルサーベイランスを生涯にわたって続ける必要があるかを見極めるのによい。結果の解釈はFLCN病的バリアントが罹患した血縁者で同定されている場合に最も正確となる。病因バリアントを有する人は生涯にわたり定期的なサーベイランスが必要となる。病的バリアントを受け継いでいない血縁者とその子孫のリスクは一般と同等である。

リスクを有する人を早期に同定することは医療的マネージメントにも影響する。しかし米国臨床腫瘍学会(ASCO)は、小児悪性腫瘍を発症するリスクが高くない場合には、リスクを有する人への遺伝子検査は、18歳に達し遺伝子検査に関するインフォームド・ディシジョンができるようになるまで待つことを推奨している[American Society of Clinical Oncology 2003]。

家族計画

  • 遺伝リスクを見積もり、出生前診断を利用できるかを話し合うのに最適な時期は妊娠の前である。
  • 罹患している、あるいはリスクを有する若年成人には遺伝カウンセリング(子どもへの潜在的リスクや生殖に関する選択肢についての議論を含む)を提供するのがよい。

DNAバンク

DNAバンクはDNA(典型的には白血球から抽出される)を将来利用する必要に備えて保存しておくものである。検査手法も遺伝子、アレリックバリアント、あるいは疾患に対するわれわれの理解が将来さらに進むと考えられるので、罹患者のDNAの保存は考慮されるべきである。

出生前検査と着床前遺伝子診断

FLCN病的バリアントが罹患した家族で認められた場合、高リスクの妊娠例に対する出生前遺伝子診断やBHDSの着床前遺伝子診断を行うこともありえる。


関連情報

Gene reviewsスタッフが選んだ疾患特異的/包括的サポート機関、患者の利益に資するレジストリーを以下に掲載する。Gene Reviewsスタッフは他の機関が提供する情報に関して責任を負わない。選択基準に関する情報は、こちらをクリック。

  • My46 Trait Profile

    Birt-Hogg-Dubé Syndrome

  • National Library of Medicine Genetics Home Reference

    Birt-Hogg-Dubé syndrome

  • Kidney Cancer Association

    PO Box 96503
    Washington DC 20090
    Phone: 800-850-9132 (toll-free); 312-436-1455
    Fax: 847-332-2978
    Email: kidney.cancer@hotmail.com
    www.kidneycancer.org


分子遺伝学

下記の記述は最新の情報が含まれているため、GeneReviewsに記載されているほかの情報と異なる場合がある

表A
Birt-Hogg-Dubé症候群:遺伝子とデータベース

Gene Chromosome Locus Protein Locus-specific Databases HGMD Clin Var
FLCN 17p11.2 Folliculin The Folliculin Mutationn Database
Folliculin (FLCN) @ LOVD
FLCN FLCN

データは次のレファレンスより集めた。
遺伝子 HGNC
染色体領域 OMIM
蛋白 UniProt
リンクを貼ったデータベースの説明はこちら

表B
Birt-Hogg-Dubé症候群のOMIMエントリー (View All in OMIM)
135150

BIRT-HOGG-DUBE SYNDROME; BHD
607273 FOLLICULIN; FLCN

遺伝子構造

FLCN (BHD)はポジショナルクローニングにより同定された[Nickerson et al 2002]。この遺伝子は幅広い生物種で保存されている。ヒトFLCNは14のエクソンからなる。遺伝子と蛋白についての詳細なサマリーはAの”Gene”を参照。

病的バリアント

表2を参照。Birt-Hogg-Dubé症候群罹患家系における様々な病的バリアントが同定されてきた。病的バリアントはすべて蛋白の短縮を示すものだった。最も頻度の高い病的バリアントはc.1285dupCとc.1285delCで、エクソン11のポリシトシン領域に置けるシトシン塩基の複製/欠失である。超可変領域の存在が示唆される。

表2
本記事で触れたFLCN病的バリアント

DNA塩基変化 予測される蛋白変化 レファレンスシークエンス
c.610_611delGCinsTA

p.Ala204Ter

訳者注:最新情報に改変
NM_144997 .6
NP_659434 .2
c.1285dupC
(1733insC)
p.His429ProfsTer26
c.1285delC
(1733delC)
p.His429ThrfsTer38

バリアント分類について:表に掲載したバリアントは著者が挙げたものである。Gene Reviewsスタッフがバリアントの分類に関して独自に検証することはない。
用語について:Gene reviewsではHuman Genome Variation Society (varnomen?.hgvs.org)の定める標準的命名法をフォローしている。命名法の説明についてはクイックレファレンスを参照。

さらに詳細な情報に関してはA参照。

正常遺伝子産物

Folliculin (FLCN)は579アミノ酸残基からなる。Folliculinの機能は5' AMP-activated protein kinase (AMPK)の制御とmTORシグナリング経路の活性化であることが示唆されている。具体的には、folliculinはfolliculin interacting protein 1/2 (FNIP1/FNIP2によってコードされる)と複合体を形成し、FLCN-FNIP複合体はAMPKと結合する[Baba et al 2006, Hasumi et al 2008, Takagi et al 2008]。最近の研究ではFLCNの発現がなくなるとAMPK/PGC-1α/OXPHOS/HIFシグナリングアクシスが亢進する[Klomp et al 2010]。FLCNが欠損すると恒常的にAMPKが活性化され、結果PGC-1αを介したミトコンドリア生合成とROS産生が増加することになる[Yan et al 2014]。仮説としてFLCNがAMPK依存性のHIF活性化とWarburg代謝変化を防止することで腫瘍形成を阻害しているということがいわれている[Yan et al 2014]。FLCNの欠損はAMPK-HIF依存性代謝リプログラミングを誘導し、腫瘍の発育に利することになる。

FLCNは皮膚や皮膚付属器、1型肺胞上皮細胞、腎臓の遠位尿細管を含む様々な臓器に高発現している[Warren et al 2004]。

異常遺伝子産物

FLCNの胚細胞系列病的バリアントは­–体細胞系列バリアントや腫瘍細胞におけるヘテロ接合性消失と同じく–folliculin蛋白の機能喪失はBHDSの腫瘍形成の基礎となっていることを示唆している[Vocke et al 2005]。BHDS患者の腎腫瘍においてfolliculinの発現が低下しているということはその腫瘍抑制における役割を支持するものである[Warren et al 2004]。

癌と良性腫瘍

FLCNの後天性ヌクレオチドバリアントは散発性淡明細胞型腎細胞癌[da Silva et al 2003, Khoo et al 2003]、結腸癌[Kahnoski et al 2003, Shin et al 2003]でも同定されているが遺伝性疾患に特徴的な他の種類の腫瘍ではみられない。

  • FLCN病的バリアントはマイクロサテライト不安定性を有する2株の細胞株で認められている[Shin et al 2003]。
  • ある研究によると、マイクロサテライト不安定性を有する散発性大腸癌の16%でFLCNのポリC8トラックに病的バリアントがあるという[Shin et al 2003]。
  • FLCNのエクソン11C(8)モノヌクレオチドトラクトの体細胞系列フレームシフトバリアントは、マイクロサテライト不安定性を有する散発性大腸癌の23%で認められる[Nahorski et al 2010]。
  • 大腸癌の細胞株でヘテロ接合性FLCNミスセンスバリアントが2例報告されている。

Folliculinの大腸癌発癌における役割を探究すべくさらなる研究が求められるところである。

分子病態

BHDS関連腎腫瘍は遺伝子発現においても染色体特性においても散発性腎オンコサイトーマや嫌色素性腎細胞癌とは別個のものである[Klomp et al 2010]。BHDS由来腎腫瘍ではミトコンドリア関連および酸化的リン酸化関連遺伝子が高発現しており、PGC-1α-TFAMシグナリングアクシスが脱抑制されている。さらには、FLCN発現の欠損はミトコンドリア遺伝子の高発現に関与している[Klomp et al 2010]。


更新履歴

  1. Gene Review著者: Jorge R Toro, MD
    日本語訳者: 入部康弘・古屋充子(横浜市立大学医学部分子病理学講座)    
    Gene Review 最終更新日: 2008.9.9. 日本語訳最終更新日: 2012.10.17.
  2. Gene Reviews著者: Jorge R Toro, MD
    日本語訳者: 入部康弘(横浜市立大学泌尿器科学)・古屋充子(横浜市立大学分子病理)
    Gene Reviews 最終更新日: 2014.8.7. 日本語訳最終更新日: 2018.8.22. in present)

原文: Birt-Hogg-Dubé Syndrome

印刷用

grjbar
GRJ top > 遺伝子疾患情報リスト